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Author: 中出 修

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748

歯の定期検診の重要性について

歯の定期検診の重要性について

日本では、高齢に伴って急に歯を失う人が多いと言われています。アメリカを始め他の国がお手本にしたいほどの手厚い国民皆保険制度を持つ日本ですが、国民は歯に問題がないと歯科を受診しない傾向にあると言われています。すなわち、歯の定期検査が国民に習慣として身に付いておらず、定期検査を受ける人の割合はアメリカよりずっと少ないのです。

日本の歯科医師会では、30年以上も前から80歳で残存する歯を平均20本以上を目標に頑張っています。80歳での残存歯数は以前より向上してきているようですが、まだ目標には届いていません。一方、予防歯科が国民に浸透しているスウェーデンなどでは、80歳でも平均20本の歯を保っています。アメリカはスウェーデンには及ばないものの、日本よりは80歳での平均歯数は上であると言われています。

歯の定期な検診と歯のクリーニングが歯の寿命を長くする

定期的な歯のクリーニングを受けていた人の方が歯数が多いという事実は、多くの研究によって支持されています。これまでの歯科治療は、虫歯になったら詰め、さらに進行したらルートキャナル、クラウンに、さらに悪くなったら抜くと言ったように、日本に限らずアメリカでも、悪くなった歯を抜いたり削ったりする治療方法が中心となっていました。しかし、根本の口腔清掃や歯の定期的クリーニングができていないと、詰め物やクラウン、ブリッジなどの人工物ばかり増え、治療は際限なく繰り返され、最後には歯を失うことになっていたのです。このような行き当たりばったりの歯科治療に疑問を持つ歯科医も最近は徐々に増え、問題が起こることを未然に防ぐ予防歯科の意識が広がっています。全身の健康に言えることだと思いますが、予防することは治療することに勝るのです。歯を長持ちさせるためには、治療を最小限に留め、まずはむし歯や歯周病にならないように予防すること。また継続して歯のメンテナンスを行い、その後も治療をなるべく防ぐことが重要なのです。

歯の定期検診およびクリーニングの頻度

通常は年2回程度を勧められることが多いと思います。その根拠は過去の多くの歯科医の研究や経験に基づくものです。しかしこの頻度は、患者さんのブラッシングを主体とした口腔清掃の善し悪し、歯肉の状態や歯石の付きやすさ、虫歯のリスクなどによって変わってきますので、歯科医とよく話し合って決めるといいでしょう。

歯の定期検診での検査項目

歯の定期検査の際には以下のような項目が検査の対象となり、多方面から口腔内の健康状態をモニタリングします。

  1. 患者さんの健康状態、病歴などの変化
  2. 口腔ガンおよび口腔軟組織病変のスクリーニング
  3. 口腔内レントゲン検査
  4. 歯肉および口腔清掃の状態検査および口腔清掃指導
  5. 虫歯を主体とした歯の状態の検査
  6. 顎関節症の検査

まとめ

最低でも年2回程度の歯の定期検診を行い、一生自分の歯で噛めるように心掛けたいものですね。

[健康な歯でスマイルライフ]

虫歯が無くなる日は来るか?

小生が日本で歯学部の学生だった頃、レーザーや虫歯のワクチンなどの開発で、近い将来虫歯がなくなる日が来るかもしれないといった内容の講義を受けたことがあります。あれから30年以上経ちますが、いまだ虫歯は撲滅されていません。今回は2016年最後のコラムということもあり、原点に戻って虫歯の予防をテーマに書いていきたいと思います。

虫歯の成り立ちと予防

虫歯は、S.ミュータンス菌を主体とした口腔内のいわゆる「虫歯菌」と糖質を摂取することで発生します。 肉食動物は虫歯になりませんが、クマやゾウなどの果実を食べる動物には虫歯があることが分かっています。これは糖質が虫歯の発生に必須であることを意味しています。ペットにおいても犬や猫は虫歯にはほとんどならないのですが、人間の食べるものを与えることにより、ペットでも虫歯になり得ることが知られています。
簡単に言うと、S.ミュータンス菌が炭水化物と糖質を分解して、乳酸などの酸とネバネバした多糖類(バイオフィルムあるいはプラーク)を産生します。ネバネバした物質が虫歯の発生に重要です。この物質をつくり出す能力があることから、S.ミュータンス菌が虫歯の原因菌の中でもっとも大きい要因とされています。その他の要因としては歯質の強度、唾液の量や質が挙げられます。

A. 虫歯菌に対するアプローチ

  1. 口腔清掃:歯の表面のネバネバしたプラークを取り除くことが重要です。主にブラッシング、フロス、歯間ブラシの使用により機械的に取り除くことが必要です。夜寝る前の口腔清掃は特に大切です。
  2. マウスウオッシュ:抗菌成分およびフッ素入りのものが望ましいです。
  3. プロバイオテイック:善玉菌を積極的に取り入れ、虫歯の原因菌を少なくするものです。ヨーグルトの摂取、善玉菌入りのトローチなど市販されているものもあります。
  4. ワクチン:S. ミュータンス菌に対するワクチンも昔から研究されています。間もなく普及するというニュースがこれまで何度もあったのですが、まだ人体での応用には至っていません。早期の実現が望まれます。

B.炭水化物や糖質の摂取:量、回数、質など、食習慣の検討が必要

C.歯質の向上:歯磨き剤、マウスウォッシュ、 飲料水、錠剤などでフッ素の活用

私たち自身が虫歯予防の意識をしっかり持って日々努力すれば、虫歯の大部分は防げるはずです。それでも虫歯がなくならないのは、甘いものの摂取を抑えて日々のブラッシングやフロッシングに励むのが、どれだけ難しいかを意味しています。また歯科医院での定期的なチェックを受け、アドバイスを聞くことも重要です。

虫歯のワクチンは動物実験では成功しているようですが、最終段階で足踏み状態が続いています。さて虫歯の克服はいつになるのでしょう? まだまだ当分は、毎日の地道な自己管理が虫歯予防には必須のようです。

[健康な歯でスマイルライフ]

アメリカで フッ化ジアミン銀が認可

乳歯がお歯黒みたいに黒くなっている子どもを日本で見かけたことがある方も多いと思います。あれは乳歯の虫歯に、フッ化ジアミン銀という虫歯の進行止めが塗布されたためなのです。フッ化ジアミン銀は日本、中国、オーストラリア、ニュージーランドなど多くの国で何十年も虫歯予防に使われてきた非常にポピューラーな塗り薬です。 小生がカリフォルニアで歯学部の学生として学んでいた時、ニュージーランドの歯学部出身の教授から、「なんでアメリカにはフッ化ジアミン銀がないんだろうね? 日本では使われているよね?」と聞かれたことがあります。アメリカで育った子どもの乳歯で、お歯黒のような乳歯を見かけることはまずありません。それはこの薬剤がアメリカで認可になっていなかったためなのです。しかし2014年にアメリカでもこの薬剤が認可され、今年になってカリフォルニアの歯科医師会雑誌にフッ化ジアミン銀の有効性の論文が掲載されて、今この薬剤がアメリカの歯科界では密かに注目されているのです。フッ素、銀はどちらも抗う蝕(むし歯を防ぐ)作用があります。
今回は虫歯予防の薬剤で知られるフッ化ジアミン銀について書いていきたいと思います。

フッ化ジアミン銀の用途

  1. 普通の虫歯治療が困難な小児あるいは来院の難しい高齢者の方の虫歯の進行予防
  2. 歯を削った後の知覚過敏やその後の虫歯の発生の予防

なお今後アメリカでは用途2の目的で使用されることが多いかもしれません。乳歯と言えども、歯が黒くなることへの抵抗感を示すことが予想されるためです。

フッ化ジアミン銀の乳歯う蝕の進行抑制目的
う蝕部の歯質を簡単に除去し、局部を消毒清掃乾燥後、3~4分間作用させて第1回目の処置とする。この塗布を2~7日間隔で計3回繰り返し行う。時期を見て必要に応じて詰め物等の修復処置を行う。

歯を削った後の知覚過敏や二次う蝕の抑制目的
局部の消毒清掃乾燥後、3~4分、1、2回本剤を塗布する。その後、詰め物やクラウンの作製を行う。

フッ化ジアミン銀の問題点

  1. 歯の神経(歯髄)の近くのような極端に深い虫歯では薬剤が歯髄まで到達するため、刺激を与えて痛みを引き起こすことがあります。
  2. 歯の着色。薬剤を使用して数日すると歯が黒くなりますので、永久歯の前歯には使うことが困難です。また、薬剤が歯肉、口腔粘膜、皮膚に付着するとなかなか取れないことがあるため、術者は注意が必要です。

まとめ

日本で何十年も前から使われている虫歯進行防止剤であるフッ化ジアミン銀ですが、歯が黒くなるため、日本では使われる頻度が減っています。このクラシックな薬剤が今頃になってアメリカで認可され注目を集めているというのですから、薬剤の流行り廃りというのは分からないものです。

[健康な歯でスマイルライフ]

上顎の歯の治療は注射なしの時代は来るか?

最近のペンシルバニア大学、エリオット・ハーシュ(Dr. Elliot Hersh)教授らの研究グループが、臨床トライアル(Phase III)において上顎の大部分(小臼歯~前歯)の歯科麻酔を注射なしの鼻のスプレーで行い、一定の成果を挙げたという論文発表をしました(J Am Dent Association)。開発された麻酔薬はFDA(アメリカ食品医薬品局)から今年の6月に承認を得たということです。歯科治療に対して恐怖心を抱く方には朗報と言える研究ですので、今回はこの研究について書きたいと思います。

研究の概要

製品名:

Kovanaze( 成分:局所麻酔薬テトラカイン+鼻づまり防止薬オキシメタゾリン)

治験の内容:

治験対象者150名の成人(内訳:100名にKovanaze 、50名に偽薬を使用)鼻スプレー:1回目のスプレー後4分待ち、続けて2回目をして10分待ち、上顎の大臼歯以外の小臼歯、犬歯、前歯において歯を削ってみた。この段階で痛みがあった場合は、さらに3回目の鼻スプレーを行った。3回目の後も痛みがあった場合にのみ、通常の注射による局所麻酔を施し治療を行った。

結果:

Kovanaze を使用したグループにおいて88%の患者は、鼻スプレーのみでの治療が可能であった。

主な副作用:鼻水、鼻づまり、血圧上昇現時点でFDAは、使用できる患者の体重を88ポンド(約40㎏)以上としているが、今後は子どもにおける安全性、より麻酔が必要な術式にも可能かどうか研究を続けるとしている。なお、妊婦における胎児への安全性は、確立されていない。

まとめ

ある統計によれば、アメリカの成人の75%は、歯科治療に対して多かれ少なかれ何らかの恐怖心を感じているそうです。その恐怖心の一旦は、歯科医院での痛みの経験にあると言われています。しかも歯科麻酔は歯科治療の重要な部分を占めています。
患者さんで歯科医院での麻酔の注射を好きな方はあまり見かけませんが、実は、われわれ歯科医も患者さんに麻酔をするのはあまり好きではありません。麻酔をする時は、患者さんに痛みを感じさせないように細心の注意を払っているのです。そのため歯科医もかなり神経を使い、ストレスを感じます。患者さんに痛そうな態度や恐怖心が見られたりするとなおさらです。今回の研究は患者さんと歯科医、お互いが恩恵を得られる結果と考えられ、まだまだ多くの課題はあるものの、近い将来、歯科治療にいい変化をもたらす研究と言えそうです。

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口の中が苦く感じられる

「ここ最近、いつも口の中、あるいは唾液が苦く感じるんですが、どうしてなんでしょう?」という患者さんに遭遇しました。今回は口の中が苦く感じる問題を中心に書いて行きたいと思います。
口の中が苦いと感じる原因は分からないことが少なくありませんが、理論上は以下の二つが挙げられると思います。舌には、味覚を感じる味蕾という細胞が存在しますが、その細胞のセンサーの異常に起因する場合と実際に苦み成分が口に増えていると考えられる場合です。

口の中が苦い、唾液が苦い原因

A.味覚のセンサーの異常(味覚異常)

多くの場合が、これに相当すると考えられています。実際には、唾液の成分には変化はないが、いろんな状況によって、味覚の苦みを感じる細胞のセンサーに変調をきたし、苦みを普通の状況でも感じる場合です。

(1)亜鉛不足:亜鉛不足が味覚異常を引き起こすのはよく知られており、亜鉛が不足すると味蕾細胞の新陳代謝を阻害し、味覚異常を引き起こすと言われる。

(2)喫煙:喫煙で味蕾細胞がダメージを受けて味覚異常を引き起こす場合。

(3)薬:ある種の薬によって、味蕾細胞に不調を来たし、味覚異常を引き起こす場合。薬の 種類を換えることにより、改善されることがある。

(4)ストレス、体調不良:口腔乾燥が起きやすくなり、口腔内に細菌が増えやすく、味蕾細胞にも不調を来たしやすい。

(5)更年期、妊娠:ホルモンの変化により、味蕾細胞に変調を来す場合。

(6)ドライマウス:口腔乾燥によって、細菌も増えやすく、味蕾細胞にも変調を来たしやすくなる。

(7)舌炎:舌の炎症によって味蕾細胞に変調を来す場合。

B.実際に口の中に苦み成分が増えていると考えられるケース

(1)胆汁の逆流:十二指腸に分泌される苦みの強い胆汁が胃に逆流し、さらに食道を通して口腔内に逆流して苦みを感じる。加齢で食道の筋肉が弱くなったり、胃酸過多を伴うと起こりやすい。

(2)舌苔:舌苔は舌の表面の角質が伸びた状態を指す。舌苔があると、その隙間に細菌や食べカスなどが溜まり、ガスを産生、ガスが唾液に溶け込み、苦みを感じると言われる。

(3)口腔清掃不良:口腔清掃が悪いため口腔内が酸性に傾いて苦み成分を産生する特殊な細菌が多くなり、苦みを感じやすくなる。唾液の分泌が落ちるとなおさら、細菌が増殖しやすくなる。

(4)薬、サプリメント:ある種の薬やサプリメントの苦み成分が唾液中に出て苦みを感じる場合。

口の中が苦く感じる時どうしたらいいか?

原因が分かれば、それをなくす対策を取れば症状は改善されるはずです。しかし、原因がはっきりしないことも少なくありません。その他、口の中が金属の味がする、酸っぱく感じる等の問題が起こる方もいます。味覚異常の症状がなかなか改善しない場合は、耳鼻科、Oral Medicine、内科などの専門家に診てもらいましょう。

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ナノ触媒で虫歯予防?

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人類の虫歯の歴史は古く、今から100万年以上前に存在したアウストラロピテクスには、すでに虫歯があったそうです。虫歯が劇的に増えていったのは、18世紀半ばの産業革命以降、炭水化物や砂糖の消費が増えた頃からと言われていますから、実に長い間、人類を悩ませ続け、未だに克服できていない厄介な疾患の一つであると言えます。克服できない理由の一つに、歯の表面に口腔細菌が作り出すバイオフィルムという膜状の構造体のため、抗生物質などの抗菌物質が入り込めないことが上げられます。この口腔バイオフィルムを破壊するための、酸化鉄のナノ粒子触媒を用いた、ペンシルベニア大学のKoo教授らの研究が注目されています。今回は、その研究を中心に書いていきます。

口腔バイオフィルムについて

バイオフィルムとは、固体の表面に微生物と微生物が作る、菌体外多糖などの産生物が集まってできた自然界に広く存在する構造体を指します。バイオフィルム内は微生物が密に存在し、バイオフィルムの外とは全く異なる環境です。歯垢(プラーク)はバイオフィルムの典型的なもので、口腔バイオフィルムとも呼ばれています。

口腔バイオフィルムを除去するには

  1. 基本となるのは、あくまでも物理的除去。すなわち、歯ブラシ、フロス、歯間ブラシなどで、機械的に除去することが重要。
  2. 薬物による除去:ミュータンス菌などの虫歯菌を殺菌してバイオフィルムを少なくする方法。クロルへキシジン、フッ素、過酸化水素水、あるいはテトラサイクリンやマクロライド系の抗生物質が使用されている。

今回の研究

薬物:酸化鉄(Fe3O4)のナノ粒子と1%の過酸化水素水(Hydrogen Peroxide、H2O2)を使用。
作用:酸化鉄のナノ粒子は、pHが中性付近では作用しないが、pH5あたりに近づいて虫歯を引き起こすぐらいの酸性になってくると触媒として作用を開始し始め、H2O2を分解し、フリーラジカルを生じさせる。このフリーラジカルが、バイオフィルムを破壊するとともにミュータンス菌を99.9%殺菌する。
動物実験:ミュータンス菌に感染させたラットを用いた実験(1日2回、1分づつを3週間)で、 酸化鉄(Fe3O4)のナノ粒子と1%の過酸化水素水を同時に使用すると、1%の過酸化水素水のみ使用した場合に比べ、明らかに虫歯の発生、および進行を抑制し、特に口腔粘膜などに副作用も見られなかったという。

まとめ

将来、酸化鉄(Fe3O4)のナノ粒子と過酸化水素水を歯磨き剤や洗口剤に応用できれば、虫歯予防に一定の効果を期待できるかもしれません。今後の研究の進展に期待したいところです。しかし、毎日の歯磨き、フロスなどの口腔ケアが重要なのは今後も変わらないことでしょう。定期検査とともに、やはり毎日の口腔ケアを大事にしましょう。

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乳歯の外傷が永久歯に影響?

ある統計によれば、子どもの約半数が、転落、けんか、スポーツなどで口に外傷を負うといいます。それに伴って、歯が外傷で脱臼してグラグラになることも珍しいことではありません。つい先日も、7歳の女の子の患者さんのお母さんから、最近生えてきた下の前歯(永久歯)のうち、1本が黄色っぽいと相談を受けました。その部分にあった乳歯は、患者さんが1、2歳の頃ぶつけて抜け落ちてしまっていました。
今回は、乳歯の外傷が原因で、その後が生えてくる永久歯に及ぼす影響について書いていきたいと思います。

歯の発生

歯の原型である歯胚が出来始めるのは歯の部位によって異なりますが、乳歯の場合、一番早いものでは、お母さんのお腹の中である胎生時の6~8週で始まり、 永久歯であっても胎生20週で始まります。乳歯が先に出来て、乳歯の根の下には永久歯の原型(歯胚)が成長しています。乳幼児期に一番外傷を受けやすいのは上の前歯ですが、乳歯の根のすぐ下には、通常は永久歯の原型が存在しているため、乳歯の外傷は後継永久歯の発育に影響を及ぼすこともあるのです。影響を受ける確率は、統計にもよりますが、約30〜60%に及ぶとされています。一般に、受傷年齢が低いほど、後継永久歯に与える影響が大きいといわれています(表参照)。

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乳歯の外傷が後継永久歯へ与える影響にはどのようなものがあるか?

1.歯の色の異常(歯の石灰化の異常)
一番多く見られるのは永久歯の一部分だけ白く濁って見える「白斑」といわれる状態です。後継永久歯の石灰化成熟期に受傷したときに見られます。次いで多いのが、黄色から褐色がかって見える「黄斑」といわれる状態です。黄斑は血液分解産物によるものが多く、乳歯が脱臼した場合に多いといわれています。

2.歯の色の異常プラス
歯の形の異常(歯の形成不全)
より早期に外傷を受け(1歳以下が多い)、永久歯の歯胚のダメージがより大きい場合、歯がいびつな形になり、黄褐色に変色しやすい。

外傷にダメージを受けた永久歯の治療は?

詰め物、ベニヤ、クラウンなどで、機能障害、変色や変形などによる審美障害を治すのが一般的です。どの方法を選択するかについては、障害の度合いや年齢によって異なってきますので、歯科医とよく相談してみてください。

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ルートキャナルの後に クラウンは必要か?

eyecatch_smilelife歯科医院でルートキャナル(歯の神経治療)が必要と言われた場合、その後、クラウン(被せ物)もあわせて必要と言われることが少なくないと思います。患者さんの立場から言うと、ただ単に詰め物をするのに比べ自分の歯を削られる量も多くなるし、費用も高額になるので、なんとか詰め物だけでできないかと思われる方も少なくありません。しかし、最近の研究を見ていると、正当な理由が見えてきます。そこで今回は、ルートキャナルの後のクラウンの必要性について書いていきたいと思います。

クラウンを入れると歯の寿命が伸びる。

2002年にアイオワ大学歯学校のAquilino らは、1985 年7 月から1987 年12 月までにルートキャナルがなされた280人の合計400本の歯について追跡調査を行った結果、クラウンを入れなかった場合はクラウンを入れた場合に比べ、その後何らかの理由で抜歯に至った率が6倍も高かったと報告しています。また2005年、タイのNagasiriらの報告では、ルートキャナルの後、クラウンを入れなかった場合、その歯の生存率は1年後で96%、2年後は88%だったのが、5年後の生存率はわずか36%であったと報告しています。

ルートキャナル後にいいクラウンを装着するとルートキャナル自体の成績も良くなる。

1995年にベルギーのGhent大学歯学校の Tropeらは、ルートキャナルとクラウンをそれぞれに質の良いものと悪いものに分類し、その後のルートキャナルの成功率との相関関係を調べました。その結果一番成績が良かったのは当然、ルートキャナル、クラウン共に質の良いものでしたが、驚くことにルートキャナル自体の予後に重要なのはルートキャナルの質よりもむしろクラウンの質だった、と結論付けています。その後、同様の結果を示す論文が多数報告されています。
このようにルートキャナル後にしっかりとしたクラウンを装着することは、その後、歯を長く持たせるために重要であると言われています。ルートキャナルの後ただ詰めるだけでは、詰め物と歯の微細な隙間から細菌感染を起こし、ルートキャナル後の再感染を起こす可能性がより高くなり、結局、ルートキャナルのやり直しにつながっていきます。また、強度においても十分ではないため、歯も壊れやすくなり、抜歯の可能性が増すというわけです。
一昔前までは、ルートキャナル後クラウンを入れるのは、時間の経過とともに歯がもろくなり、色も黒く変色するためと言われていましたが、最近ではルートキャナル自体の成績のためにもクラウン装着は重要と言われるようになってきました。ルートキャナルの後は、詰め物で終わるよりはクラウンを装着した方が賢明と言うことができると思います。

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歯周病と食道がんの関係

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歯周病が糖尿病、高血圧、心疾患、脳梗塞、誤嚥性肺炎、早産などを引き起こす原因となりうる可能性については、このコラムでも何度となく取り上げてきました。最近では、歯周病とがんの関係を示唆する論文も増えてきています。今回は歯周病と食道がんの関係について書きたいと思います。
食道がんについて
米国疾病予防管理センターによれば、毎年、約1万5千人が、食道がんと診断されるそうです。食道がんは男性に多く、その原因として、今のところもっとも確実視されているのは飲酒、喫煙あるいは刺激の強い食事といった生活習慣ですが、逆流性食道炎などの疾患が引き金となることもあるようです。飲酒と喫煙に関しては、ヘビースモーカーで、酒に強くなく飲酒で顔がすぐ赤くなる体質の人(アルコールが分解されて出来るアセトアルデヒドを分解する働きが弱いと考えられる)は、飲酒の量が増えると食道がんの発生が顕著に増えることが知られています。食道がんのタイプでは、欧米で多いのは腺がん、日本人に多いのは扁平上皮がんというものです。
歯周病と食道がんの関係を示唆する論文には次のようなものがあります。2004年:日本の国立がんセンターにおける研究。食道がんにおいて、高率に口腔内の歯周病や虫歯に関係した細菌が検出されたと報告。2008年:イランにおける研究で、食道の扁平上皮がんの患者283人および食道がんではない560人について追跡調査を行ったところ、歯の喪失本数と口腔
清掃の習慣の欠如は、食道がんのリスクを2倍以上高めると報告。なお、インドでも2013年に同様の研究結果が報告された。2009年:日本の愛知県がんセンターにおける研究で、5000人のがん患者を含む1万6000人を対象に、歯の本数とがんのリスクについて調べたところ、頭頸部がん(舌がん、口腔がん、咽頭がん、喉頭がん)と食道がんは、歯の本数と関係があることが明らかになった。21本以上歯がある人を基準とした場合、歯が0本の人は約3倍頭頸部がんのリスクが高まるという結果だった。
2016年:アメリカのLouisville大学と中国のHenan 大学の共同研究。100人の食道の扁平上皮がん患者および、食道がんには罹患していない30人の組織を調べたところ、食道がんの組織には61%と高率で、P. gingivalisという歯周病の原因菌として有力な細菌が検出された。がん組織に隣接した正常な食道組織には12%しか検出されず、食道がんに罹患していない人の食道組織からは、P. gingivalisは全く検出されなかった。
詳しい理由付けは今後の課題ですが、これらの統計学的研究や組織を用いた研究から、歯周病と食道がんには密接な関係が示唆されています。歯周病が食道がんの発生を増加させることは間違いないようですね。毎日の口腔ケアや定期検診によって健康を維持したいものです。
第110回筆者プロフィール:中出修福井県出身。1985年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経
て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。パンパシフィック歯科医院
Panpacific Dentistry411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188☎ 206-575-8180 www.panpacificdentistry.com
歯周病と食道がんの関係
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番外編 詐欺師は歯科医も狙う

eyecatch_smilelife歯科医院での怖い話、といっても患者さんが歯科医院で怖い経験をしたという話ではなく、われわれ歯科医院のほうがもう少しで詐欺の被害に遭うところだったという、つい最近経験したヒヤっとした話です。今回の話題は、歯の健康の話題からは外れますが、皆さんも被害に遭わないように共有させていただこうと思います。

体験談
当院は、歯科医院や医療関係のオフィスが集まった商業ビルの一角にあります。金曜の午後、ある男から電話がかかってきました。その男は、地元の大きな電力会社の社員を名乗り、受付にこう言ったそうです。

男:私はXXエナジーのテクニカル部門の社員ですが、そちらの電気代が2カ月滞納されているので40分後に電気を止めます。私はその担当の技術者です。

受付:当院の電気代は、ビルのオーナーが一括して払っており、こちらにはそういう請求書は送られてきていないんです。

男:あなたのところのアカウント番号はXXXXで、私の社員番号はXXXです。質問があれば、会社の請求部門の番号を教えますから、ここに電話してください。

受付は、診療中のドクターを呼んで状況を説明し、対応を相談。

ドクター:ちょっと変じゃない? なんでうちに連絡してくるの? 詐欺かもしれないよ。

ドクターは、ビルのオーナーの電話を知らなかったこともあり、患者さんを待たせる訳にもいかないので、オーナーには連絡を取らず、そのまま診療を続行する。受付は、教えられた番号に電話。音声ガイダンスに従い、請求部門に電話が繋がれ、女性が電話が出た。

受付:アカウント番号はXXXXで、電気を切られるって電話をもらっているんだけど、どうなっているの?

女:このアカウントは、$495.36の料金支払いの滞納がありますね。

受付:どうやって払ったらいいの? クレジットカードで払える?(電気を止められると困るので焦っている)

女:クレジットカードはだめです。現金しか受け取れません。

ドクターに詐欺かもしれないと言われていたこともあり、ここで受付は少し冷静になり、一旦電話を切ってインターネットで地元の電力会社の電話番号を調べ、電話する。先ほど聞いた音声ガイダンスと全く同じ内容の応答。

受付:お宅の会社から料金滞納で電気を止めるって言われたんだけど、このアカウント番号を調べてもらえますか?

電力会社:そんなアカウント番号は存在しません。それにたとえ料金滞納でも40分後に電話を止めるなんていう電話を顧客にすることは絶対ありません。

この電話によって、さっきのは詐欺だと確信しました。実際に40分後、電気を止められることもなく診療を無事終えることができました。
残念ながら、日本でもアメリカでもこのような人間はいるものですね。皆様も詐欺に遭わないよう、お気をつけください。

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歯磨き剤による アレルギー

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日本にいる知り合いの歯科医からの情報によると、ある会社の生薬入りの歯磨き剤を使用して唇の周囲や目の周りが腫れるといったアレルギー反応が出た患者さんが立て続けに来院して、驚いているとのこと。その歯磨き剤は日本製で、歯周病予防を目的に生薬を入れているようですが、アレルギー体質の方は特に、使用には慎重であるべきかもしれません。
今回は、歯磨き剤のアレルギー反応について書きたいと思います。

歯磨き剤でのアレルギー反応の主な症状

口腔周囲を中心に発赤、腫脹、疼痛などの炎症症状として出現することが多く、時には周囲組織や全身にまで及ぶこともあります。

  1. 口腔内:舌、歯肉、口腔粘膜の炎症。水泡が出来たり、赤くなったり、口内炎のように見えることもある。
  2. 口腔周囲の皮膚:口唇炎、口角炎等。
  3. 咽頭、喉頭:この部位が腫れると呼吸困難になることもある。
  4. 眼の周囲:眼の周囲の腫脹、眼球の充血など。ひどくなると眼が開きづらくなることもある。
  5. 全身:蕁麻疹、消化不良等。

市販歯磨き剤の成分

製品によってその成分は様々ですが、すべての成分がアレルギーの元となり得ると考えた方がいいでしょう。歯磨き剤の一般的な成分には次のようなものがあります。

1.研磨剤
リン酸水素カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等

2.発泡剤(界面活性剤)
ラウロイルサルコシンソーダ、ラウリル硫酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等

3.保湿剤
ソルビトール、グリセリン、プロピレングリコール等

4.結合材
アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース等

5.薬効成分

  • フッ素(フッ化ナトリウム、モノフルオロリン酸ナトリウム、フッ化スズ):虫歯予防
  • 殺菌剤:クロルへキシジン、エッセンシャルオイル等
  • 消炎:塩化リゾチーム等

市販の歯磨き剤も成分は様々で、ものによってはその人に合わない歯磨き剤も存在する可能性があります。生薬と書いてあっても安全とは限りません。臨床的な観察から、歯周病予防などは、製品に書かれた歯磨き剤の効力に頼らず、ブラッシングやフロスの使用によってプラークを取り除くのが最も重要と考えられます。歯周病の原因の大半はあくまでも口腔内の細菌によるものですから、プラークが残っていると、たとえ歯磨き剤に多少の抗菌作用があったとしても、細菌にまでは浸透しにくく、その効果は限定的だからです。歯磨き剤を使ってアレルギー反応が出た場合は、すぐに使用を中止してください。自分に合った歯磨き剤をしっかり見極め、毎日のブラッシングを充実させ、口腔内の健康を維持したいものですね。

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第107回 歯科治療で麻酔の注射がなくなる?

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歯医者へ来院するに当り、恐怖心を抱く方は必ずしも少なくありません。その原因の大部分を占めると言っても過言でないのが、麻酔の時の注射に対する恐怖心です。皆さんもご経験があると思いますが、われわれ歯科医も歯科麻酔の注射の痛みを少なくしようと神経を使っています。具体的には、注射の前に表面麻酔を塗布する。可能な限り細い注射針を使用する。ゆっくり注射液を入れるなどです。恐がりの人にはとりわけ神経を使うので、歯科医の側のストレスも相当なものです。しかし、それでも完全に注射の痛みをなくすことは容易ではなく、また表面麻酔のみで歯科治療を行うことは、ごくごく簡単な治療に限られます。最近、ブラジルのサンパウロ大学のロペス教授のグループによって、電離療法(Iontophoresis)という方法を用いて歯科の注射の必要性を少なくする可能性のある研究が発表されました。今回は、この研究を中心に書いていきたいと思います。

電離療法(Iontophoresis)とは?

投薬方法の一つ:今から100年以上前から研究および実践されてきたもので、微少電流を流し、薬剤を結びつけたイオンを刺激し、正常な皮膚や粘膜を通してより効果的に吸収させる方法。

今回の研究の概要

使用された薬剤は、2種類の局所麻酔薬(Prilocain およびLidocain)を各々2.5%の濃度の水溶性ジェル状にしたもので、解体業者から得たブタ(死亡してから24時間以内のものに限定)の食道粘膜を使って行われ、微少電流を1時間流して、麻酔薬の組織への浸透性における効果を中心に調べました。その結果、表面麻酔に電離療法を併用すると麻酔薬の浸透性を高め(特にPrilocainで12倍)また組織における麻酔薬の集積を高める(特にLidocain)ことが分かりました。この研究から、表面麻酔に電離療法を併用することによって麻酔効果を高め、表面麻酔のみでもできる歯科治療の範囲が増えることが示唆されました。

歯科での注射はなくせるか?

このような、より効果的な表面麻酔を用いることで、簡単な詰め物の治療や歯石除去などの治療が注射なしでできる可能性がありますが、抜歯やルートキャナルなど、より完璧な麻酔が要求されるような治療では、現時点では無理がありそうです。

日々の口腔清掃および定期的な検診と歯のクリーニングやメインテナンス治療を徹底することにより、麻酔の注射が必要なくなることが、理想的な状態のように思います。

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歯周病治療で注目されるDel-1タンパク質

 人類で最も多い感染症であるとされている歯周病については、これまでもこのコラムで何回も取り上げてきました。歯周病は歯肉の炎症で始まり、それが 長く続くと歯を支える歯槽骨をも破壊し、歯がぐらぐらしてきて歯を失う原因となります。また重度の歯周病は、高血圧、糖尿病、肺炎、脳梗塞、心筋梗 塞などの全身疾患に罹患しやすくなる可能性に関してもこのコラムでも書いてきました。
 歯周病の根本的な原因は口腔内の細菌ですが、全身の免疫機能も深く関わっています。決定的な治療法はいまだ確立されているとは言えませんが、最近、 米国・ペンシルベニア大学のHajishengallis George教授および新潟大学の前川知樹助教などの研究チームはDel-1(Developmental endothelial locus-1) という血管内皮細胞や脳で多く作られるタンパク質が、歯周病治療に有効である可能性があることを明らかにし、非常に注目されています。今回はDel-1と歯周病の関係を中心に書いていきたいと思います。 

 これまでのDel-1 と歯周病の関係を示す研究を要約すると以下のようになります。 

1.1998年、Chiaki Hidai らによってDel-1が血管の内皮細胞という細胞から発見される。

 2.その後、Del-1には炎症作用を抑制する作用があることが明らかになった。 

3.Del-1の遺伝子を人為的に除去したマウスを作製すると、脳脊髄炎あるいは歯周炎が引き起こされた。 

4.人間においてもDel-1の遺伝子が欠損していると炎症性疾患が増えることが分かってきた。 

5.高齢のマウスでは、Del-1のレベルも低く、歯周炎の程度が顕著である。 

6.歯周病を実験的に作ったサルにDel-1を注射したところ、歯周炎の発症と進行が軽減された。 

 これまでの研究から、体内で作られるDel-1は歯周炎を防いでくれる可能性があることがわかっており、さらなる研究の進展が待たれるところです。しかしながら、歯周病や虫歯の予防としての毎日のブラッシング、フロスの使用を中心としたプラークコントロールの重要性には変わりはありませんので、 日々頑張っていきたいものですね。

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健康そうな歯に激痛

通常、歯周病以外の歯痛の多くは深い虫歯があるか、深い詰め物や被せもの (クラウン)がある場合に起こりますが、全く思いもよらない歯に激痛が走るという経験をされた方も多いのではないでしょうか。今回は、一見して重度の歯周病や虫歯のない健康そうな歯に激痛が走る場合について述べていきたいと思います。

ケース1.歯を何かにぶつけたことがある(歯の外傷の既往)
歯に過度の外傷が加わることによって歯の神経がダメージを受けて、その後、 歯の神経が死ぬことがあります。外傷を受けてから歯の神経が死ぬまでの期間は様々で、比較的すぐに死ぬ場合もあれば何年も後に死ぬ場合もあります。時間が長くなると患者さんは外傷を受けた過去を忘れていることもあります。
歯の神経が死ぬとそこに感染が起こり、歯の痛みや歯の根元が腫れてくるといった症状を伴います。歯の神経の生死の診断は、歯髄電気診といって歯に電流を流して痛みを感じるかどうかで判定するのが一般的ですが、レントゲン写真を撮ると歯根の先に黒い影が映ることがあります。この場合、 周囲の骨にまで感染が及んで骨が溶けている場合が少なくありません。この場合、 歯の神経に感染および炎症があるので、治療法としてはルートキャナルが必要になります。

ケース2.歯の矯正治療を受けたことがある。
歯の矯正治療で歯の神経が死ぬことは多くはないのですが、ケース1と同じように矯正治療に過度に力が加わると、時間を経てから歯の神経が死んで痛みを起こすことがあります。

ケース3.噛み合わせが強すぎる(咬合性外傷)
上下の歯が一定の部位で強くぶつかり過ぎると、噛む力が集中し過ぎて歯に外傷を引き起こします。通常は冷たいものや熱いものに対する知覚過敏や咬合痛程度で済むことが多いのですが、それが長く放置されたり、極端にひどい状態になると、やはりケース1のような状況に陥り、歯の激しい痛みを引き起こすことがあります。強くぶつかっている部分を削って噛み合わせを調整すれば痛みが引く場合もありますが、すでに歯髄のダメージが大きい時はルートキャナルが必要になります。

ケース4.歯にヒビが入った
全く健康な歯にも場合によってはヒビが入り、ヒビから細菌が入って、歯髄に炎症を引き起こし、激しい痛みを引き起こすことがあります。特に歯ぎしりをする人や固い食べ物をよく食べる人によく見られます。ルートキャナルにより歯を抜かなくて済む場合もありますが、ヒビの入り方によっては抜歯しなければならないこともあります。

ケース5.関連痛によるもの
実際は、痛みの原因がその歯ではなく、頭部や心臓など身体の他の部位あるいは、全く別の歯の痛みをその歯の痛みとして感じることがあります。こうした痛みを関連痛といいます。真の原因を除くとその歯の痛みは消えていきます。

今回は、一見、健康そうな歯に激痛が走る場合についてケースごとに述べてきました。このような状況に陥った場合は、まずはかかりつけの歯科医に相談して適切な診断、処置を受けるようにしましょう。

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抜歯後の注意事項

先日、口腔外科専門医で上顎の親知らず(智歯)を抜歯された患者さんから、具合が悪いので当院で診てほしいとの連絡を受け、診察する機会がありました。患者さんによれば、午前中に抜歯した後、鼻から出血し、帰宅して休んでいたものの抜歯部位からの出血がひどく、ふらふらになって歩くのも困難になってきたとのことでした。当院で診察した時は貧血症状は見られたものの出血は止まっていましたので、幸い大事には至りませんでした。今回は、抜歯後の注意事項について書きたいと思います。

1. 止血

抜歯後の出血の程度は、抜歯の傷の大きさ、感染の状態、患者さんの全身状態(血液疾患等)や使用中の薬(血液凝固阻害剤の使用等)の状態等で様々です。最も効果的な止血の方法は、傷口を圧迫して止血する圧迫止血です。抜歯後、歯科医の指示に従って一定時間ガーゼを噛んで傷口にしっかり圧力をかけることが重要です。帰宅後、出血がひどい場合は、改めてガーゼを1時間噛んでください。この場合、ガーゼが大きすぎると圧迫が上手くいかない場合があります。ガーゼのサイズを的確にして傷口にカーゼが当たるように注意してください。それでも止血がうまくいかない場合は、歯科医か病院の救急外来に連絡してください。

2. ドライソケット

抜歯した後にできる穴(抜歯窩)に凝固した血液の塊がないと、抜歯後の治癒はうまくいきません。抜歯後、抜歯窩に血液の凝固がうまく起こらないため乾いた状態になり、感染が起きて治癒がうまくいかないことをドライソケットと言います。ドライソケットを防ぐには、激しいうがいは避ける、少なくとも3日間はたばこを吸わない、口の中の血液や唾液を強く吸ったり、ストローなどで飲み物を吸うのは避けるようにしてください。

3. 腫れ

抜歯の後、周囲の腫れがひどい場合は、氷または濡れたタオルで患部を冷やすと、腫れと痛みを抑えるのに有効です。冷やすことにより血管が収縮し、炎症反応を軽減してくれ、痛みを感じる神経の働きを抑えてくれるからです。ただし、氷を長時間使用しすぎると凍傷を引き起こし、傷の治りを悪くする恐れがあるので注意が必要です。

4. 痛み

我慢できない痛みの場合は歯科医師に処方された痛み止めや市販の痛み止めを服用してください。それらが効かない場合は、歯科医院に連絡しましょう。

5. 感染予防

抗生物質やうがい薬が処方されている場合は、指示に従って使用しましょう。

6. 食事

アルコール、刺激物、熱すぎるものなどは、1週間程度は避けた方が無難です。

7. その他

抜歯当日の激しい運動、長時間の入浴は、抹消血管が拡張し、出血や腫れの原因になることがあり、避けた方が無難です。

 

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活性炭(activated charcoal)で歯を磨く?

活性炭は身近のところでは、冷蔵庫の消臭や浄水に使われているのは、皆さんもご存知だと思いますが、解毒作用が期待できる活性炭のカプセル型サプリ メントも一部でブームになっています。一方、最近のインターネット情報によると、巷ではサプリメント用の微粒子の活性炭を用いて歯を磨き、歯を白く するという方法が広まってきているようです。興味のある方はYouTube等をご覧になるといいでしょう。今回は活性炭を用いた歯磨きについて書いてい きたいと思います。

活性炭について

活性炭とは、原料となる石炭やヤシ殻などの炭素物質を高温でガスや薬品と反応させて作られる、微細孔(直径1~20nm)を持つ炭素を指します。その 微細な穴に多くの物質を吸着させる性質があり、その性質を利用して、脱臭や水質浄化など、有害物質の吸着に用いられています。表面が非極性の性質を 持つため、水のような極性分子は吸着力が低く、細孔より小さな粒状の有機物質を選択的に吸着しやすいという特性を備えています。よく精製された活性 炭は、食品添加物や薬用炭として使用されています。

活性炭の歯を磨いた場合に期待される効果

1.歯を白くする効果

活性炭が、歯の表面に付いた飲食由来の色素と吸着してこれらの色素を吸着してくれるので、結果として歯が白く見える効果が少しは期待できると思いま す。しかし、歯の内部まで活性炭が浸透するわけではないので、歯科医院等で行われる過酸化水素等の薬液を使った漂白ほどの効果は期待できないと思い ます。一方で、薬液を使わないので、知覚過敏等の出現がない、または極めて少ないなどのメリットが予想されます。

2.プラーク除去効果

筆者が期待したいのは、この効果です。活性炭がプラークや口腔内細菌に吸着して、口腔内をより清潔にしてくれ、結果として歯周病や虫歯の予防につな がる可能性があります。

まとめ

活性炭を用いた歯磨きの効果については、一般の人々のあいだでの普及の方が進行し、研究がまだ追いついていない状況です。アメリカの歯科学会も活性 炭を用いた歯磨き法をまだ認めてはいません。筆者も最近、活性炭を使った歯磨きを始めて、いい感触を得ていますが、活性炭での歯磨きの是非について は今後の研究結果を待ちたいと思います。また、YouTube等でレモンなどの有機酸を用いた歯の漂白法なども見かけますが、使い方を誤ると酸によって エナメル質が溶けてしまい、いわゆる酸蝕症を引き起こし歯がボロボロになるといった危険性を感じる方法も見かけます。新しい方法を試す場合は歯科医 に相談してからの方が無難であるように思います。

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乳歯を早期に失った場合の補隙(ほげき)装置

お子さんの乳歯を虫歯や外傷などで早期に抜歯しなくてはならないケースに遭遇した場合、「どうせ生え変わるから」と、とかく簡単に考えがちですが、その後から生えてくる永久歯の歯並びがガタガタになるなど、思わぬ事態を招くことが少なくありません。乳歯は、咀嚼、発音のほかにも顎の成長や永久歯のスペースの確保に重要な役割を果たしています。今回は、乳歯を早期に失った場合に使われる補隙装置(Space Maintainers)について書きたいと思います。
補隙装置の種類にはどんなものがあるの?
大きく分けて、入れ歯のように取り外すタイプ(可撤式)とクラウンのようにセメントでしっかり固着するタイプ(固定式)があります。補隙装置は、後継永久歯が生えてくる間の一定期間、乳歯を失ったことでできるスペースを維持する目的に使われ、目的が達成されたら歯科医によって除去されます。
乳歯を早期に失うとどうなる?

1.乳歯の前歯(乳前歯)を失った場合左右の乳歯の犬歯(乳犬歯)が残っている場合、永久歯の歯並びの観点からは、さほど問題が出ることはありません。乳犬歯の歯根が長いため、周囲の歯
の移動を防いでくれるからです。
しかし、発音障害や抜けたスペースに舌を入れるような悪習癖が出るようなら、補隙装置を入れた方がいい場合があります。乳犬歯を含めた全ての前歯が抜けたような場合は、その奥の歯が中心部に向かって移動するため、前歯のスペースを確保する補隙装置を入れる必要があります。また、乳前歯が早く抜けすぎると、抜けた部位の歯肉が繊維化して厚くなり、永久歯の前歯が生えてこなくなることもあるので、注意が必要です。このように永久歯の前歯が交換時期になっても生えてこないような時には、簡単な歯肉の手術が必要になることも少なくありません。歯科医に相談する必要があります。2.乳歯の奥歯(乳臼歯)を失った場合
乳臼歯が早く抜けて、そのまま放置すると、さらにその奥の6歳臼歯と呼ばれる永久歯が身体の中心部に向かって傾いてきたり(近心という)、中心部に向かって移動し、後に生えてくる永久歯(小臼歯や犬歯)のスペースを狭くして、これらの後継歯が曲がって生えてきたり、ひどい場合は生えてこなくなったりして、将来、矯正治療が必要な事態を高い確率で招いてしまいます。このような事態を避けるために補隙装置を使用します。
乳歯だからと言って軽んじると、後で困ったことになります。日頃のデンタルケアや食事に気を付け、健康な乳歯列から健康な永久歯列に移行できるようにしたいものですね。

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米国医療保険制度が歯科治療にもたらす影響

歯科へのアクセスの低化が、医科の救急外来患者の増加につながる
アメリカの医療保険には、高齢者対象のメディケア(Medicare)や低所得者対象のメディケイド(Medicaid)などの公的な保険があるものの、ほとんどの人は、個人あるいは職場を通して民間保険に加入しています。歯科に限定された保険に関しても、大半は民間保険に依存していますが、メディケイドには歯科を含むものがあります。しかし、ここ10年の動向を見てみると、多くの州で、州政府の財政難を理由にメディケイドでの成人歯科治療費の保障を停止した時期がありました(子どもの歯科治療費に関しては維持)。その結果について、最近、興味深い研究報告がいくつか出ましたので、今回は、メディケイドの歯科治療費保障停止(つまり全額自己負担)がもたらした影響について書いていきたいと思います。

アイオワ大学歯学部の研究(Health Affairs; May 2015)
2009年〜2014年の間、カリフォルニア州政府は、州の財政難を理由にメディケイドの成人歯科治療費の保障を停止しました。その結果、州政府は2億4600万ドル(約307億円)の支出を削減できたのですが、その影響は300万人以上に及び、歯科医療へのアクセスを失った人々の、歯科問題が原因による救急外来患者が急増したと報告。
歯科治療保障の停止後
1年当りのメディケイド歯科医療費 2億4600万ドル減
歯科が原因の救急外来訪問数 32%増
救急外来でのコスト上昇率 68%

アメリカ歯科医師会の研究 2014
2008年〜2010年の間に歯科保険を持たない400万人が、歯科が原因で病院の救急外来を訪問し、そのコストは27億ドル(約3370億円)に及んだ。そのうち、101人が死亡に至った。また、その治療のほとんどが処方箋による抗生物質や鎮痛剤のみだった。歯科が原因での救急外来受診の増加傾向は今も続いている。

まとめ
財政難により、多くの州で停止されてきたメディケイドの歯科医療保険ですが、その分、他の医科の支出が増えたり、健康状態の悪化に伴う生産性の低化、生活の質の低化など様々なしわ寄せやマイナスな面が生じている可能性が考えられます。現状では、専門外の緊急外来で適切な歯科治療がなされているとは言えません。昨年あたりから、オバマケアによりメディケイドの歯科医療保険も復活傾向にありますが、申し込んでも州政府から認められないことも少なくありません。今後、救急外来で歯科医が協力できる体制を整え、歯科緊急医療を充実させる必要があるのは、間違いなさそうです。

キシリトールは虫歯予防に有効的か?

これまで虫歯予防効果が期待できるとされ、チューインガム、歯磨き剤、キャンディ、お菓子などに広く使用されてきた甘味料、キシリトール(Xylitol)ですが、最近、英国のマンチェスター大学の研究グループが、これまでの論文を広範囲に検証した結果、キシリトールの虫歯予防効果に懐疑的な研究結果を発表し、ちょっとした話題になっています。このコラムでも以前、キシリトールの有効性について取り上げました。今回は、改めてキシリトールの虫歯予防効果について書いていきたいと思います。

キシリトールについて
ガムなどに含まれるキシリトールは、白樺などの木から工業的に作られることが多いのですが、一般的にキシリトールは自然界の果実、野菜などに幅広く含まれる糖アルコールです。例えばイチゴには、乾燥重量100gあたり約300mgのキシリトールが含まれています。人の体の中にも存在していて、肝臓のグルクロン酸回路で一日に15gほど産生されています。

考えられているキシリトールの虫歯予防効果
1. 虫歯の原因となる酸を発生しない
2. 砂糖と異なり、虫歯菌の足場となるネバネバした物質(プラーク)を生産しづらく、プラーク中の細菌の数を減らす
3. 甘味作用で唾液の分泌量を上昇させる
4. 抗虫歯作用があるといわれるフッ素の効果を相乗的に増加させる
5. 再石化促進作用があるかもしれない

今回のマンチェスター大学の研究
データベースから、キシリトールを含む製品が虫歯に及ぼす効果を評価した10件の試験結果(参加者合計6000人近く)を解析した結果、試験結果および研究に、信頼性に欠けるものが多いと判断されました。例えば、コスタリカの2件の試験(13歳以下の子ども約4200人が対象)で、キシリトール添加歯磨き粉は、添加していない歯磨き粉と比べると、3年間で虫歯が13%減少したという結果がありましたが、証拠の質は低いうえに普遍性に乏しく、この集団に限られた結果である可能性が考えられたと言います。
研究者たちは、ほかのキシリトール含有製品(チューインガムなど)では、キシリトールの恩恵を示す証拠がほとんどなかったのは驚きだったと述べています。ほかにもキシリトールには膨満感や下痢などの副作用が知られていますが、一部の研究では副作用があったにも関らず、それに関する報告が一切なかったといい、今後の研究では副作用について必ず報告すべきだと述べています。
理論的には、砂糖よりもはるかに虫歯発生の危険の少ないキシリトールです。しかし、今回の研究からも分かるように、現在のところ、虫歯予防効果に関しては過度の期待をすべきではなさそうです。キシリトールの虫歯予防における有効濃度は、10%以上とも言われわれているので、濃度的な問題があるのかもしれません。今後の研究を積み重ねていく必要がありそうです。

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歯周病とアルツハイマー病

06-illust370歯周病が高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、肺炎、ある種のガン、未熟児出産などのリスクを高める可能性を、これまでもこのコラムで何度となく取り上げてきました。一方、高齢化社会を迎え、認知症の増加が社会問題となっていますが、最近では、認知症の半数以上を占めるアルツハイマー病を歯周病が悪化させる可能性を示唆する研究が増えてきました。今回は歯周病とアルツハイマー病の関係について書きたいと思います。
<2010年>アメリカ、ニューヨーク大学の研究グループは、デンマーク人男女152人を20年にわたって追跡調査した結果、70歳の時点で歯周病を罹患している場合、認知機能の低下と密接に関係していると報告。
<2013年>イギリスのセントラル・ランカシャー大学の研究チームは、アルツハイマー病を有する10人とアルツハイマー病を有しない10人の脳の検体を比較したところ、アルツハイマー病患者の脳の検体からは歯周病の有力な原因菌の一つであるポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis、以下、Pジンジバリス)が検出されたが、アルツハイマーを持たない人の脳からは検出されなかったと報告。脳への細菌の侵入経路の可能性には、血行を介するものと、歯の神経を介して脳へ感染する経路が考えられるとしている。
<2013年>日本の国立長寿医療研究センター、名古屋市立大学および愛知学院大学の研究グループは、アルツハイマー病モデルマウスにPジンジバリスを投与、感染させた実験的歯周炎モデルを作製して、行動変化および脳内の病態を非投与群と比較した。その結果、Pジンジバリス投与群では、歯槽骨の高度な吸収を伴った歯周病の発症を認め、なおかつ認知機能の低化を認めた。さらに脳内の海馬と皮質にアルツハイマー病の特徴であるベータアミロイドの沈着をより広範囲に大量に認めた。加えて脳内において、歯周病によって増えることが知られているサイトカイン、TNF-α、IL-1βが有意に増加し、歯周病がアルツハイマー病の悪化に関与している可能性を実験的に証明した。歯周病がアルツハイマー病を増悪させるメカニズムとしては、菌、サイトカイン、リポ多糖(LPS)などが口腔から血液を介して脳へ運ばれ、なんらかの影響を与えている可能性があると考察している。
歯周病とアルツハイマー病の関係は、まだ完全に証明された訳ではありませんが、関係を示唆する研究が確実に増えています。毎日の口腔清掃と定期的な歯科検診により健康な口腔状態を維持することが全身の健康に良いことは、間違いなさそうです。

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二重顎を改善する脂肪溶解注射 カイベラ(Kybella)

smileLife_0525_1肥満大国アメリカ。下顎に脂肪が過剰に溜まり、二重顎に悩む方も少なくありません。従来の改善方法としてダイエットに励んだり、顔のマッサージや運動療法、あるいは脂肪吸引手術が行われてきました。このような二重顎に対し、皮膚の切開を伴うような手術ではなく、カイベラ(Kybella)と呼ばれる新薬の注射による改善方法が、つい最近、FDA(The Food and Drug Administration)の認可を得たというニュースをテレビで見ました。顔にメスを入れることなく二重顎を改善でき、傷跡も残らず麻酔も必要ないことから、世界中で注目を集めています。診療科としては、美容外科や皮膚科で取り扱われると考えられますが、顎の周囲の治療ということで歯科にも多少関ってきますので、今回はこの治療法について書いていきたいと思います。

カイベラで使われる成分:デオキシコール酸
デオキシコール酸は胆汁酸の一種で脂肪代謝に関わっています。肝臓で作られた胆汁酸は胆嚢で一旦蓄積、濃縮された後、腸に分泌され、食事で摂取された脂肪を分解します。カイベラは、下顎の皮下脂肪にデオキシコール酸を直接注射することで注射部位の脂肪細胞膜を破壊し、脂肪の分解を図るものです。
● 注射の方法:顎の下の脂肪の多い部分に何カ所かに等間隔で注射部位をマーキングし、各々0.2 mlを毎月1回、2~6カ月間注射する。

FDA承認のための治験研究:
この薬剤の製造元であるカイセラ製薬(Kythera Biopharmaceuticals)という製薬会社が行った研究によれば、全米およびカナダにおいて被験者1000人以上、治験の行われた施設数70カ所。被験者の68.2%で少なくともグレード1以上(グレード数が多いほど高度の脂肪減少を意味する)の下顎の脂肪組織の減少を認めた(生理的食塩水のみの擬似注射の場合は被験者の20.5%に脂肪の減少)。そのうち16%で、グレード2以上の脂肪減少を認めた(生理的食塩水のみの擬似注射の場合は1.5%)。このような効果はMRIによっても確認され、FDAは満場一致でこの治療法を承認した。

● 副作用;注射部位周囲に炎症が起こり、多少の痛み、発赤、腫脹が2、3日続く場合がある。ただし包帯等は必要ない。治験結果によれば、4.3%の被験者に顔面神経損傷による非対照的顔貌が出現(平均42日間)。約2%に嚥下障害(平均2日間)が報告されている。

●この治療に向かない症例:過度の脂肪でしわしわにたるんだ皮膚の場合は、首の皮膚の挙上手術が必要なので、向いているとは言えない。

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水道水のフッ素の添加について

歯を丈夫にし、虫歯予防に有効とされるフッ素。現在ではほとんどの歯磨き剤にはもちろん、うがい薬の一部にも含まれています。しかしながら、フッ素を水道水に人工的に添加するとなると、選択の自由や健康への懸念といった理由から抵抗を示す人も少なくありません。このような状況の中で、国を挙げて水道水のフッ素化に取り組んでいるアイルランドでつい最近、興味深い研究が発表されました。今回はこの研究と水道水のフッ素化について書いていきたいと思います。

フッ素の虫歯予防における歴史
20 世紀初頭、アメリカ、コロラド州の一部地域で、斑状歯(歯に褐色の斑点ができる症状)を発症している子どもが多くいることを発見。調べてみると飲料水に高濃度(2 ~13.7p p m)のフッ素が含まれていることが分かりました。しかし、同時にその地域の子どもには虫歯が少ないことが判明。それ以降、アメリカでは水道水中フッ素濃度の低い地域と高い地域で、虫歯予防効果および健康における影響を中心とした大々的な疫学調査を推進。20 世紀半ばまでに、斑状歯の発祥が少なく虫歯の予防効果が高い、健康的に問題のない水道水のフッ素最適濃度は1p p m 程度だと確立されました。

水道水フッ素添加と世界の傾向
アメリカやオーストラリアではすでに約70 %の地域で水道水のフッ素化が行われています。水道水フッ素化に取り組む地域は毎年増加傾向にあり、それはワシントン州でも同じといえます。しかし世界的に見ると、水道水にフッ素を添加しているのは、約 24 カ国、372 万人、世界全人口の約 6 %程度に過ぎません。ちなみに日本でフッ素を水道水に添加している地域は日本全体の 1%以下で、ほぼ皆無といった状況です。

今回のアイルランドの研究
アイルランドでは、1964 年から水道水へのフッ素添加が行われてきました。国の約85 %でフッ素が添加され、残りの 15 %は個人の井戸を使っている地域なので、フッ素が添加されていません。今回、ダブリン大学トリニティカレッジ(Trinity College Dublin)の歯学部の大規模な研究で、50 歳以上の大人、約5,000人の長期に渡る追跡調査を行ったところ、水道水へのフッ素添加は、子どもを虫歯から守るだけではなく高齢者の虫歯予防にも効果があることを明らかにしました。高齢化社会を迎える多くの国で、高齢者の歯の根元の虫歯の増加が問題となっていますが、最適なフッ素濃度に調整した水道水は高齢者の虫歯予防にも寄与することが明らかになり、注目を集めています。
まだまだ論争が続く水道水のフッ素添加ですが、感情論ではなく科学的根拠に基づいた議論が望まれます。フッ素を賢く利用して、なおかつ日々の歯磨き等の手入れを怠らずに、健康な歯を維持したいものですね。

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歯科医の数が増えると肥満が減る?

smileLife_20150325人口の30% 以上が肥満(BMI 30 以上)と言われるアメリカ。確かにアメリカで生活していると実感しますよね。これまでこのコラムでも、肥満と歯周病の関係について書いてきました。最近のイエール大学の研究で歯科医の数が増えると肥満の割合が減る傾向にあることが報告され注目されています。日本でも最近、某テレビ番組で取り上げられ、ご覧になった方もいるかもしれません。今回はこの研究を中心に書いていきたいと思います。

肥満のもたらす負の影響
皆さんもご存知の通り、肥満は高血圧、糖尿病、動脈硬化など様々な疾患を引き起こす要因となります。アメリカでは、肥満により増加する費用(医療費、生産性の低化)は年間1,500 億ドル以上と推定されています。肥満は今後も増え続けることが予想され、2030年には、肥満の人口割合が40%を超えるのではないかとの推定もあり、アメリカにとっては頭の痛い問題となっています。

イェール大学の研究
イェール大学の公衆衛生学の研究者グループは、全米2,841の郡で成人の肥満の割合と人口1万人当たりの歯科医の数との関係を調べました。この調査では、同時に家庭医の数、ファーストフードを提供するレストランの割合や人口当たりのレクリエーション施設などの社会環境、貧困の割合、人種構成、年齢構成なども同時に調べました。その結果、人口に対して歯科医の数が多いところでは肥満の割合が減少することが明らかになり、その他の因子を考慮しても統計学に有意な結果として示されたのです。この研究では、人口1万人に対して歯科医が1人増えると肥満人口率が1%下がるとの結果が得られました。
歯科医と家庭医の数が肥満に及ぼす影響に関しては、歯科医および家庭医の数がともに多い地域の場合、肥満の割合がより低い傾向が顕著に見られ、歯科医の数が多くても家庭医の数が少ない地域では、肥満人口の割合減少は顕著ではなく、歯科医および家庭医、双方がそろった時に肥満減少効果が最も得られやすいとしています。この研究では、どうして歯科医が多い地域で肥満人口の割合が減るのか明確には分からないとしていますが、歯科医が、虫歯予防のため甘い物を控えるように患者さん(特に子ども)に指導することが、肥満減少の啓蒙活動となっている可能性を挙げています。
このような全米規模での研究は今回が初めてで、今後、歯科医が個人開業医なのか公共の医療施設に所属している歯科医なのかなど、さらに研究を発展させていく必要があるようです。日本でも同様の研究が行なわれ、歯科医の数と肥満の関係がより明らかになっていってほしいものです。

[健康な歯でスマイルライフ]

フッ素の局所投与による虫歯予防、特にフッ素ヴァニッシュについて

fusoフッ素は、魚介類や野菜、肉、牛乳、塩、お茶の葉など、ほとんどの食品に含まれており、ビタミン類のように、毎日摂らなければならない必須栄養素に位置づけられています。現在、われわれは食べ物から 1 日当たり、1~2 ㎎のフッ素を摂取しているといわれています。昔から賛否両論の絶えないフッ素ですが、濃度を間違えなければ、歯を丈夫にしたり、再石灰化促進作用や虫歯の原因菌を減らすことが期待で希、それによって虫歯を減らすことは、50 年以上の科学的データから明らかです。現在ではほとんどの歯磨き剤にフッ素が入っており、多くの科学者、歯科医師会および歯科医がフッ素を虫歯予防に取り入れることを推奨しています。
アメリカにおいて近年増えてきた局所的フッ素の投与方法に、マツ由来のネバネバした天然樹脂に高濃度のフッ素を配合したフッ素ヴァニッシュ(Fluoride Varnish)という方法があります。歯科医院で子どもから大人まで使用されることが増えています。今回はフッ素ヴァニッシュについて解説したいと思います。

一般的なフッ素ヴァニッシュの方法
歯科医院で歯の表面清掃の後、歯をエアーやガーゼで簡単に乾燥させたら、フッ素ヴァニッシュ剤を直接、筆などで歯の表面に塗る。従来のフッ素の洗口剤の場合、30 分ほど飲食は避けなければいけないのに対し、ヴァニッシュの場合はすぐに飲食をすることも可能です。しかし、あまり硬い物や粘着性のあるものを食べるとヴァニッシュが取れることもあるので、そういった食べ物は避けた方が無難でしょう。また、少なくとも 4時間以上は歯ブラシを使用しないことが重要です。

フッ素ヴァニッシュの利点
トレーなどの特別な器具を必要としない。フッ素を高濃度(5%フッ化ナトリウム)に含んだネバネバした天然樹脂を歯の表面に少量塗るだけなので、小さな子供でも誤飲の危険が少ない。長時間、歯の表面にフッ素が留まるため、虫歯の予防効果がより高い。知覚過敏の治療や高齢者の歯根表面の虫歯予防にも効果が期待できるなどが挙げられる。

フッ素ヴァニッシュの欠点
ヴァニッシュの色が数時間留まるため、審美的に問題が生じる可能性がある。天然樹脂にアレルギーがある場合は使えない。

フッ素ヴァニッシュが歯科臨床の場で使われる頻度が高まっています。毎日の口腔清掃の大切さは変わりませんが、フッ素も正しく使って虫歯予防につなげたいものですね。

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ソーダ税で肥満や虫歯を減らす?

3人に1人が肥満といわれる肥満大国アメリカ。数年前、米疾病対策センター(CDC)によって、2030 年には国民の42 %が肥満になるとの見通しが示されました。肥満は糖尿病や心臓病の原因の一つです。医療費の高騰がアメリカの社会問題になっているのは皆さんもご存知の通り。今後20 年間で、肥満の人、極端な肥満の人の増加に伴い、医療費は年間5,500 億ドル( 約44 兆円)の負担増になるという試算もあるのです。このような問題を抱えているのはアメリカだけではなく、世界各国で、砂糖入り飲料への課税(ソーダ税)を導入して少しでもカロリー摂取を少なくし、健康な社会を築こうという動きが広がっています。以前このコラムでも取り上げましたが、炭酸飲料は強い酸性で、大量の砂糖が含まれている製品が多く、歯にとっても好ましくない飲み物です。そこで今回は、ソーダ税に関する世界の動向に書いていきたいと思います。

世界の動向
● 2010 年:ルーマニア政府はジャンクフード税の導入を発表。
● 2011年:デンマークでは、飽和脂肪酸が2.3%以上含まれる食品に対し、いわゆる脂肪税を導入するも1年あまりで廃止に追い込まれる。食品価格の高騰を招いたうえ、近隣国のドイツで国民が買い物をするようになってしまい、何の効果もなかったためである。
● 2011年:ハンガリーでは、砂糖や塩分の多い飲食品に課税する、いわゆるポテトチップス税が施行された。
● 2011年:フランスでは、砂糖の添加がより多い炭酸飲料に課税する、通称ソーダ税が承認された。
<アメリカ>
● 2010 年:オバマ大統領がソーダ税の導入を検討。行政側は導入による税収入の増加および医療費の削減が期待できることから導にあい、見送りとなった。
● 2014 年:カリフォルニア州バークレー市が住民投票で、炭酸飲料など糖分入りの飲料に課税するソーダ税を2015 年1月1日から導入することを決定。バークレー市のソーダ税はレジで計算して徴収する売上税で、税率は糖分入り飲料1oz 当たり1セント。AP 通信によるとアメリカでは30 以上の都市で同様の税が検討されたが、バークレー市が初の導入例となった。ソーダ税の効果は?
ソーダ税は「Sin Tax」(シン・タックス=悪行税・罪悪税)と呼ばれる好ましくない行為を防ぐための税の一種。日本ではたばこ税が有名な例で、現在1箱430 円の商品には、売値の6 割近くを占める244.88 円の税金が含まれています。日本たばこ協会によると、たばこの年間販売量は平成10年に3,366億本だったのが25 年には1,969 億本と4 割ほど減少し、効果があった一例と考えられています。
バークレー市のソーダ税率は日本のたばこ税率よりもかなり低く、効果を疑問視する意見も少なくありませんが、こういった動きが全米に広がり、健康志向や食の大切さが国民に浸透していけば、一定の効果を上げられそうだという意見もあり、今後の動向に目が離せないのは間違いなさそうです。いずれにせよ、炭酸飲料の飲み過ぎによる肥満や虫歯等の発生には注意したいものですね。

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高齢者の夜間の入れ歯装着と肺炎

最新の日本人の死因のトップは、ガンで、以下、心疾患、脳血管疾患ですが、こと高齢者で要介護者の死因で最も多いのは肺炎と言われています。その中でも口の中の細菌が唾液等に混ざり、誤って肺に入り込んで発症する「誤嚥性肺炎」の割合が高いと言われています。この誤嚥性肺炎を防止するのに重要なのが、入れ歯を含めた口腔内清掃の徹底だということは、これまでもこのコラムで何回か取り上げてきました。最近日本の研究で、高齢者の夜間の入れ歯の使用と誤嚥性肺炎の関係について興味深い論文が発表されましたので、今回はこの話題を中心に書いていこうと思います。

高齢者が入れ歯を装着して寝るのは、危険!

日本大学歯学部の飯沼利光博士らの研究グループは、平均年齢87.8歳の高齢者524名(内訳:男性228名、女性296名)を無作為に抽出し、口腔の健康状態、入れ歯の装着状態、全身の健康状態、血液検査、肺炎での死亡状況等を3年に渡り追跡調査した結果、入れ歯を使用している人の40.8パーセントが睡眠中も入れ歯を装着しており、睡眠中は入れ歯を外しているという人に比べ、肺炎を発症する確率が2倍以上高いことを明らかにしました。この研究から、入れ歯の夜間装着は避けるべしとの意見が歯科医の間でも大半を占めていると思われますが、特に高齢者の場合は寝る前に外した方が賢明ということです。

成人の口の中には300種類以上の細菌が生息していて、歯に付着した歯垢1mgに1億個以上の細菌がいると言われています。夜間は唾液の分泌が低化し、特に、高齢者で自分で歯を磨けなかったり、入れ歯を清潔に出来ない場合はこれらの細菌が爆発的に増え、誤嚥性肺炎等の生命に関る疾患になる可能性が高まります。

注目される飲んでも安心な歯磨き剤

そうした中で、今、日本で開発された飲んでも安心な歯磨き剤が注目されています。製品名はオーラルピースといい、乳酸菌由来の抗菌物質であるネオナイシンAが主成分で、その他の成分もすべて天然原料であるため、飲み込んでも安心といわれています。日本では、マスコミでも取り上げられ、要介護の高齢者や重度の心身障がい者、闘病中の方、乳幼児をはじめ、誤飲の心配があったり口腔ケアが難しい方に重宝されているようです。北米での購入は、まだ始まっていないようですが、今後、世界中に普及されることが期待される日本発の製品といえるでしょう。

高齢者の口腔ケア

このように口腔ケアは、高齢者、特に要介護者における誤嚥性肺炎の防止に重要です。最近では、清掃を中心としたケアに加え、口腔乾燥の予防や嚥下機能を高める訓練も同時に行われています。専門家のアドバイスを受けながら口腔ケアを実践することが、重要と言えそうです。

高齢者の口腔ケアは、命に関る重要な要因の一つで、専門家のアドバイス、指導の下、口腔清掃や嚥下機能の訓練は、徹底して行うべき。また夜間の義歯装着は、避けるべきということですね。

ビタミンDと虫歯の関係 1148

ビタミンDは健康な骨の成長や維持に欠かせない栄養素として知られていますが、歯との関係については、骨ほどはわかっていません。ここ最近の研究では、歯の形成時にビタミンDが不足すると虫歯になりやすい歯になることが、わかってきました。今回は、ビタミンDと虫歯の関係を中心に解説していきたいと思います。

ビタミンDの作用

ビタミンDは通常、皮膚でプロビタミンD3が合成され、食事によっても摂取されます。皮膚でプロビタミンD3が合成されるには日光を浴びることが必要です。このビタミンDが、まず肝臓で25位が水酸化され、25(OH)D3となります。その後、腎臓で活性型ビタミンD3が合成されます。活性化されたビタミンDには、腸からのカルシウムの吸収を高めたり、腎臓でカルシウムの血中から尿への排出を抑制するなどして、血中のカルシウム濃度を高くする作用があります。 また骨では、短期的には血中にカルシウムの放出を高める作用がありますが、長期的には骨の代謝を活発にして丈夫な骨を作る作用があります。 この他、ビタミンDには、免疫、癌、うつ、心疾患、歯周病、糖尿病、神経系など多様な役割があることがわかってきており、多方面で研究が進められています。

ビタミンDと虫歯

2013年のワシントン大学(University of Washington)の研究では、アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで行われた24の臨床報告(2~16歳までの約3,000人の子ども。平均年齢10歳)におけるビタミンDレベルと虫歯の関係を文献的に分析し、ビタミンDレベルが高いと虫歯の発生率が50%少ないことを明らかにしました。 2014年、カナダ、マニトバ大学(University of Manitoba)の研究において、207人の妊婦(平均年齢19歳)のビタミンDレベルと被験者の子どもが1歳時の虫歯の関係を調べ、被験者のビタミンDレベルが低いとその子どものエナメル質の形成不全と虫歯の発生率が高いことを明らかにしました。

大人になってからもビタミンDは虫歯の予防に重要か?

一旦歯が形成されてしまってからビタミンD欠乏になった場合、もう歯の石灰化は基本的に終わっていますので、歯が弱くなって虫歯になりやすいとは考えにくいと思われます。しかし、これに関してはまだよくわかっていません。あるいは、大人になってからもビタミンDは重要だという研究結果が出てこないとはいえません。前述したように、ビタミンDは全身の組織、臓器の機能維持に関わっているようです。ビタミンD欠乏にならないよう、食事や日光を浴びるなど、日々の生活に注意して健康な毎日を過ごしたいものですね。

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電動歯ブラシは細菌が付着しやすいか?

皆さん、電動歯ブラシにはヘッドの部分が中空(hollow)になっているものと、ヘッドが中空になっていないもの(solid)の2種類があることをご存知でしたか? 電動歯ブラシは、通常、柄の部分とヘッドと呼ばれる毛先の部分が接合する構造になっており、取り外しができます。その接合部分から先の毛先部分が空洞になっているものを中空ヘッドと言います。最近の、テキサス・ヘルスサイエンス大学歯学部ヒューストン校のドナ・ウォーレン・モリス教授(Donna Warren Morris, R.D.H., M.Ed.)らによる研究 (Journal of Dental Hygiene)では、この2種類の歯ブラシにおける細菌数を比較した興味深い結果が報告されています。今回は、この研究を中心に歯ブラシについて書いていきたいと思います。

ヘッドが中空タイプのものは要注意

モリス教授らの研究では、中空のヘッドの歯ブラシはそうでないタイプに比べ、最大で3,000倍もの微生物が増殖していることが明らかになりました。この研究から、市販の電動歯ブラシでかなりの割合を占める中空タイプの歯ブラシは、衛生面から勧められないという結論になりました。なお、手動の歯ブラシの場合は、中空タイプのものはごく稀なので心配することはなさそうです。

歯ブラシに微生物が多く残ったまま磨くと健康に良くないか?

実際にどれほど健康面に良くないかは、まだわかっていませんが、大腸がんの一因と考えられているフソバクテリウム属(Fusobacterium)や、歯周病や心臓疾患の一因と考えられているポルフィロモナス・ジンジバリス(Porphyromonas gingivalis)なども含まれているので、歯ブラシに付着する微生物数は少ないに越したことはありません。モリス教授によれば、歯ブラシを乾燥させたり、マウスウォッシュ液に20分浸すと、かなりの数の細菌を減らすことができるとのこと。また最近の電動歯ブラシでは、紫外線殺菌できるタイプのものもでています。普段の歯ブラシの保管を日当たりのいい場所にするのも一案かもしれません。

歯ブラシの毛のタイプは?

モリス教授はナイロン製のソフトなものをすすめていますが、筆者も同感です。歯ブラシが固くないと磨いた気がしないとおっしゃる方も少なくないようですが、歯周病を予防するには、歯肉と歯の境界を磨くことが重要で、歯と歯肉の境界部分に歯ブラシを長時間触れさせる必要があります。その時に固い歯ブラシを使うと、歯磨きで歯肉を痛める可能性が高く、歯肉を退縮させてしまう可能性が高いのです。歯ブラシの選択はとても重要です。かかりつけの歯科医にどのような歯ブラシがいいかアドバイスを受け、最適なものを選びたいものですね。

 

歯髄細胞が失明の危機を救う?

神経の再生医学の分野で歯髄(いわゆる歯の神経と呼ばれている部分)の幹細胞が注目されています。以前にもこのコラムで紹介したことがあります。最近の英国バーミンガム大学の研究では、ラットにおいて歯髄由来の幹細胞が網膜損傷後の網膜細胞の死から守り網膜細胞の細胞再生を促進することを明らかにし、脚光を浴びています。同様の実験は日本でも着々と進められています。今回は歯髄幹細胞と網膜再生の話題を中心に解説していきたいと思います。

歯髄の特徴

歯髄は歯の中心部にあり、神経、血管、幼弱な結合組織による細胞の集合からなる組織ですが、元々の発生は神経提という神経由来の細胞であるため、神経系細胞への分化能に優れています。そのため、歯髄由来の幹細胞を使った網膜再生、脊髄損傷、脳梗塞の治療への応用に関する研究が、世界中で競って進められています。

網膜細胞について

哺乳類において、成熟した網膜細胞は自己再生能がほとんどありません。そのため、外傷、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性などで網膜に損傷が起きると失明の危機に陥るのです。これまでの研究では、歯髄細胞自体の網膜細胞への分化能は高くないと考えられていましたが、最近では移植された歯髄細胞から産生されるいくつかの成長因子が既存の網膜細胞を活性化させ、網膜の再生が誘導されると考えられています。

歯髄幹細胞か人工多能性幹細胞(iPS細胞)か?

iPS細胞を用いた再生医療研究の中で最もヒトへの応用が近いとされるものが網膜再生に対する再生医療であるといわれています。しかし、遺伝子導入されたiPS細胞には癌化のリスクという不安が付きまといます。それに対し、本人の歯髄幹細胞を使えばより安全と考えられ、その取り扱いも簡単というメリットがあるため、神経再生治療における可能性に期待が高まっています。

歯の銀行

日本では、抜いた歯を凍結保存するシステムがいくつか出来ています。親知らずや矯正治療の際に抜歯された歯が主な対象です。凍結保存された歯は、将来、いろんな面で役に立つと考えられています。1.再植:将来、自分が抜歯に陥った場合に、インプラントの代わりに凍結していた自分の歯を、抜歯した穴に再植すること。2.iPS細胞の供給源:歯髄細胞からiPS細胞を作製し、様々な臓器の再生に応用すること。3.歯髄幹細胞を取り出して神経再生治療に応用することなど、様々な可能性を秘めており、歯の細胞は再生医療の分野で今後ますます注目されることでしょう。

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