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Author: 中出 修

福井県出身。1985 年、北海道医療大学歯学部卒業。1993年、同大で博士号を取得後、講師に就任。 2003年、ロマリンダ大学歯学部卒業。歯科医勤務を経て2005年、タコマ近郊に開業。2006年10月にサウスセンターモール近くに移転。 パンパシフィック歯科医院 Panpacific Dentistry 411 Strander Blvd. Suite 207, Tukwila, WA 98188 ☎ 253-243-7748

歯周病予防に適した歯ブラシ

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯周病予防に適した歯ブラシ

中高年以降で歯を失う原因、第1位は歯周病です。最近では高血圧、糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞、未熟児出産のリスクを高めるなど、全身の健康の面からも歯周病予防の重要性が指摘されています。日本では、50歳以降で平均して2年に1本強の歯が喪失しており、60歳での平均歯数が17.8歯、80歳以上は4.6歯となります。中高年以降の歯の喪失をいかに防ぐかが大きな課題になっています。

一方、歯周病予防の重要なファクターのひとつである歯ブラシの選択においても、専門家間で実にさまざまな意見があり、完全な結論が出ているとは言えません。主な意見を取り上げつつ、筆者の臨床観察からの見解について書いていきたいと思います。

電動? 手動?

(1)電動歯ブラシ派の意見

手磨きよりも優れた電動歯ブラシを使ったほうが、口腔内の総菌数減少に効果があることがわかっている。短時間で効率良く磨ける電動歯ブラシは、口腔ケアの強い味方となる。

(2)手動派の意見

電動歯ブラシだけで口の中を隅々まで磨くのは難しい。また、電動歯ブラシの長期使用で歯がすり減ってしまう恐れがある。歯は普通の歯ブラシで磨き、電動歯ブラシは歯肉のマッサージ用くらいに考えておいたほうがいい(日本歯周病学会の見解も含む)。

歯ブラシの硬さ

(1)「ふつう」派の意見

毛が極細のやわらかい歯ブラシは歯垢の除去能力が劣る。ふつうの硬さが歯周病予防には良い。※歯周病予防という目的で硬めの歯ブラシを推奨する意見はほぼゼロ。

(2)「やわらかい」派の意見

歯肉を傷付けにくいので、歯肉が弱い方、出血しやすい歯周病を持つ方には最適。毛先も細い傾向にあり、ポケットの深部まで毛先が届き、清掃できる。

まとめ

筆者の見解としては、日々の臨床の観察および自身の使用経験から、手動で極細のやわらかい歯ブラシが歯周病予防に最適だと考えます。日本の歯周病学会の見解でも述べられていますが、電動のみで歯と歯肉の間や、歯と歯の間の細部まで磨くのは困難です。

歯周病予防で最も重要なのは、歯と歯肉の境をきれいにすること。歯ブラシの毛先はどうしても歯肉に当たるため、硬めの歯ブラシや、振動が強過ぎる電動歯ブラシを使うと、歯肉を痛めてしまいます。電動歯ブラシを使う場合、仕上げは手動のやわらかい歯ブラシで行ったほうがいいでしょう。

どの歯ブラシが推奨されるかは、専門家でも意見が分かれています。相性も多少あるかもしれません。しかし、大切なのは、自分が使用している歯ブラシで、実際にプラークがきれいに除去されているか、かかりつけの歯科医や歯科衛生士に定期的にチェックしてもらうことです。歯石除去と併せて日々のプラークコントロールを頑張ることが、歯の健康維持には欠かせないと言えます。

歯周病は遺伝する?

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯周病は遺伝する?

先日、歯科のセミナーを受講したところ、歯周病は糖尿病と同じぐらい遺伝性要因が関係した疾患であるという話でした。遺伝が全ての疾患原因である場合を1とすると、歯周病や糖尿病は0.7だそうです。確かに歯科の臨床に携わっていると、歯磨きはまずまずなのに、歯肉の炎症の程度が高い患者さんに遭遇します。親子で歯肉の炎症の程度が高いケースもよく見かけます。逆に、口腔清掃はあまり良くないのに、歯肉の炎症はそれほどひどくないケースもあります。今回は歯周病の遺伝的要因について書いていきたいと思います。

若年性歯周炎

早期発症型侵襲性歯周炎(若年性歯周炎)は、一般的な歯周病に当てはまらない特殊な疾患で、最も遺伝との関わりがあるとされる歯周炎です。全身は健康でも、急速な歯周組織破壊(歯槽骨吸収、深い歯周ポケット)が10〜30歳で出現し、家族内発症があるのも特徴です。一般的にプラーク付着量は多くなく、患者さんによっては、口腔内の歯周病と関連性の高い細菌(A.actinomycetemcomitansやP.gingivalis)の存在比率が高いと言われています。罹患(りかん)率は0.05〜0.1%で、プラーク中の口腔細菌が主たる原因ですが、疾患の発症と進行には遺伝的要因が関与していると考えられています。その詳細についてはまだ十分に解明されていません。治療には歯周基本治療、歯周外科手術、歯周組織再生療法が行われています。発見が遅れると早期に歯が脱落し、総義歯になってしまうことも少なくありません

歯肉炎自然発症ラット

実験動物においても歯肉炎を起こしやすいラットが存在します。1972年、大阪歯科大学で発見された、Wister-Kyotoというラットの系統では、自然に下顎前歯に歯垢が付きやすく、歯肉炎を起こすものがあります(ODUS/Odu)。同系統には、歯肉炎を起さない系統も存在し(Res)、これらの事実は歯周疾患の遺伝による影響を示唆しています。

一般的な歯周病と遺伝

一般的な歯周病は、遺伝的要因が関係するものの、同時に生活習慣(口腔清掃、喫煙、アル コール摂取など)も大きく関係するため、複合的要因が関係する疾患であると考えられています。歯周病に関係していると言われる遺伝子(Vitamin D receptor IL-1、IL-6、IL-10)について調べた研究がありますが、決定的な関連性を見出せていません。歯周病の遺伝子診断の研究も進んでいますので、将来的には遺伝子型に応じた治療計画というのも出て来るでしょう。 今後の研究の進展を待ちたいと思います。

まとめ

歯周病になりやすい人がすべきことは、毎日の口腔清掃の徹底と、禁煙、規則正しい生活です。また、定期的な歯の検診やクリーニングも、より頻繁に行うことが推奨されます。

食後の歯磨きで糖尿病や心血管疾患が防げる?

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

食後の歯磨きで糖尿病や心血管疾患が防げる?

 

歯磨きの回数に関して、磨き過ぎは良くない、1日2回が良い、毎食後磨くべきなどと議論が絶えません。現段階の歯科医師会の見解では、「1日2回以上」。実際の研究結果から、3回以上磨いても、2回と比べてそんなに違いがないということです。このコラムでも歯周病と全身疾患の関係について何度も取り上げてきましたが、今回は日本の聖路加国際病院で行われた研究(*)を中心に書きたいと思います。

*Association between toothbrushing and risk factors for cardiovascular disease: a large-scale, cross-sectional Japanese study | BMJ Open

2016年の聖路加国際病院の研究

2004年1月から2010年6月まで、聖路加国際病院で毎年健康診断で受けている人のうち、30歳以上85歳未満の8万5,866人を対象に調査を行いました。毎食後の歯磨き回数によって、1.1日3回以上、2. 1日1回以上、3. 1日1回未満の3グループに分け、それぞれ a. 高血圧、b. 糖尿病、c. 脂質異常、d. 高尿酸血症、e. 腎不全の有病率について比較検討した結果は以下の通りです。

*1日1回未満群と比べ統計的有意差あり

歯磨きの回数が1日1回未満のグループで、高血圧、糖尿病、脂質異常、高尿酸血症、腎不全の有病率が高い傾向が見られます。 統計学的に有意な差としては、3 回以上のグループと1回未満のグループ間の糖尿病と脂質異常の有病率があります。 結論として、歯磨きを怠ると糖尿病や脂質異常などの全身疾患にかかりやすくなる可能性があるということです。毎日の正しい歯磨きの習慣は、口腔内の健康の維持のみならず、全身の健康維持につながります。

歯周病と糖尿病

歯周病の原因のほとんどに口腔内の細菌が関係しています。歯周組織の炎症の際に放出される、ある種のサイトカイン(TNF- α, IL-6など)が血流を通して全身に行き渡り、血糖値をコントロールするインスリンの働きを阻害し、糖尿病にかかりやすくなると言われています。実際に、歯周病が改善されるに伴い、糖尿病診断の指標となる血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)値が改善されることはよくあります。歯周病があると糖尿病の発症リスクは2倍、重度の歯周病だと糖尿病患者の虚血性心疾患による死亡率は3倍との研究結果も出ています。

まとめ

毎日の歯磨きは大事ですね。丁寧に時間をかけて磨きましょう。また、定期健診と歯のクリーニングを根気よく続けることです。全身の健康のためにも頑張りましょう。

中高年以降で発症しやすい口腔がん

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中高年以降で発症しやすい口腔がん

先日、日本の元アイドルの有名芸能人が口腔がんの1種、舌がんの闘病中であることを公表(後日、食道がんも発覚)。日本では口腔がんを心配する方が増えていると聞きます。最初に診察した病院や歯科医院などにおける口内炎との誤診や、その誤診によりレー ザー照射などの治療を行うといった対応のまずさも指摘されています。残念なニュースのように感じた方も多かったのではないでしょうか? 手術は無事成功とのことですが、1日も早い回復を祈るばかりです。今 回は、このケースの問題点を含め、口腔がん 全般について改めて書きたいと思います。

口腔がんについて

口腔がんは、全身のがんの1~4%程度に過ぎないと言われています。しかし、噛みタバコの習慣のある東南アジアの国などでは、30%に及ぶ場合もあります。アメリカでは年間約5万3,000人、また日本では年間約2万人が口腔、咽頭のがんになると言われています。男女比では、男性に約2倍多く、ヒトパピローマウイルス(HPV)の口腔感染の増加に伴い、その発症は年々増加傾向にあります。

口腔がんの要因には、喫煙、飲酒、虫歯や不適合な歯の修復物による慢性的な機械的刺激、HPVなどが挙げられます。40歳を過ぎた中高年以降に発症しやすく、平均年齢は60歳前後。口腔の至るところで発生しますが、舌がいちばん多く、口腔がんの約半数を占めます。中でも多いのは舌の側縁、後方3分の1の部分です。見た目はさまざまで、特に初期においては目視だけだと診断が難しいことも少なくありません。白斑、紅斑、隆起型から凹んだ潰瘍状のもの、触って硬いタイプから軟らかいタイプ、痛みや麻痺を伴うものまであります。口内炎など炎症性のものは、その原因を取り除けば2週間以内に治癒することが多いのですが、良くならない場合は悪性の可能性を疑わなければなりません。一般歯科医の場合は、この時点で口腔外科などを紹介します。専門医による精査、細胞診や病理診などを経て確定診断が下されます。

口腔がんのスクリーニング

口腔内をいちばん診察する機会が多いのは、おそらく歯科医でしょう。歯科医院で初診時はもちろん、定期的に口腔内全般の粘膜および顎や頸部のリンパ節の視診、触診によるチェックを受けることが重要です。また、ごく稀ながんとして、顎骨内のがん(顎骨中心性がん)もあります。定期的なレントゲン検査によって見つかることもあるので、がんの発見には顎全体のレントゲンが有効となります。

セルフチェックもできます。口の中に白斑や紅斑はありませんか? 治りにくい口内炎は? 出血しやすい傷や硬くなった箇所はありませんか? 顎の下や首の脇に腫れはありませんか? 食べ物が飲み込みにくくありませんか? このような自覚がある場合は、歯科、口腔外科、耳鼻科などへの受

歯や口腔の健康に注意すべき食べ物や飲み物

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日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

歯や口腔の健康に注意すべき食べ物や飲み物

食べ物や飲み物の中には歯科的に問題を起こしやすいものも数多くあり、アメリカの歯科医師会でも注意を促しています。今回はその代表的例について書いていきたいと思います。

1. 硬いキャンディー

キャンディーをなめる分には、砂糖による虫歯を注意すれば良いのですが、硬いキャンディーをガリガリ噛むと、歯が欠けたり折れたりすることがあります。虫歯と歯の外傷の両面で注意が必要です。

2.硬いせんべい

非常に硬いせんべいが好きな方は少なくありません。歯が欠けたり折れたりのリスクが当然、高まりますので注意してください。

3.アイス

硬いアイスをガリガリ噛むのが好きな方も要注意。歯が欠けるリスクがあります。すぐにやめたほうが良さそうです。

4.柑橘類

柑橘類の食べ過ぎは、その酸によって歯が溶ける「酸蝕症(さんしょくしょう)」につながることが知られています。食べ過ぎは歯に禁物と言えるでしょう。

5.コーヒー

コーヒーそのものは虫歯にそれほど悪いとは言えませんが、砂糖を入れる場合は虫歯に気を付けなければなりません。また、飲み過ぎてカフェイン成分の過剰摂取になると、唾液分泌が下がり、「ドライマウス(口腔乾燥症)」を引き起こすので、虫歯のリスクが高くなります 。

6.ドライフルーツとポテトチップス

ドライフルーツやポテトチップスは、食べると口の中でネバネバして、歯の表面にくっ付きやすいスナックです。食べてすぐに歯を磨いたり、フロスを使ったりしないと、長く歯の周囲にとどまります。

7.ハードリカーなどのお酒

お酒に糖分が含まれていれば虫歯の原因になりますし、アルコールにより脱水症状、唾液分泌低下が起こると、局所免疫の低下につながります。また、飲み過ぎの場合は、全身の免疫能も低下させるため、歯周病になりやすくなります。飲んだあとに歯を磨かないで寝るのは厳禁です。

8.スポーツドリンク

スポーツドリンクは、身体の電解質バランスや水分補給には良いのですが、大量の砂糖が入っており、酸性であることも少なくありません。そのため虫歯を引き起こすリスクが高い飲み物と言えます。摂取後は水ですすいだり、歯を磨いたりする必要があります。

9.エナジードリンクやソーダ類

エナジードリンクやソーダ類にも大量の砂糖が入っています。強酸性であることが多いので、注意しましょう。また、カフェインが大量に入っている製品も多く、カフェインの取り過ぎによるドライマウスも懸念されます。飲み過ぎは禁物です。

まとめ

上記に列挙したものは、プラスの面が全くないわけではないと思います。しかし、くれぐれもマイナスの面を知ったうえで、必要なケアや注意をし、楽しむことが大切です。

唾液検査が注目されている

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日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます。

唾液検査が注目されている

唾液は無侵襲(被検者に負担をかけず随時に採取できる)の検査材料として貴重です。歯科では、虫歯予防など唾液の重要性が昔から認識されており、最近では虫歯リスクや歯周病進行度の判定に使われています。医学の分野では、同じく無侵襲で採取できる尿ほど利用されていませんでしたが、近頃は唾液に注目しているようです。

虫歯のリスク検査

  1. ミュータンス菌数:虫歯発生の主役級細菌 であるミュータンスの唾液中菌数を測定。
  2. 唾液緩衝能:糖質摂取により酸性に傾いた唾液が中性に戻る能力を判定。
  3. 唾液量:規定時間内に出る唾液の量を調べる。分泌が少ないと虫歯になりやすい。
  4. ラクトバチラス菌:できた虫歯を大きくすることに関与する菌の数を調べる。

歯周病の検査

歯周病による歯肉出血の指標となる唾液 中のヘモグロビン(Hb)や歯周病による組織 破壊の指標となる乳酸脱水素酵素(LDH)を 測定するキットが製品化されている。歯周 ポケットから出る炎症性サイトカインの量 を測定することもある。

唾液を用いたストレスや疲労度の検査

  1. アミラーゼ値:唾液に含まれる消化酵素のアミラーゼは、ストレスを受けると多く分泌されるという特徴がある。唾液のアミラーゼ濃度がストレスによる交感神経の興奮と密接に関係することを利用。
  2. クロモグラニンA:ストレスにより交感神経が興奮し、そこから分泌されるタンパク質の一種が上昇。唾液にも分泌される。
  3. コーチゾール値:ストレスがかかると副腎皮質ホルモンであるコーチゾールの分泌が高まり、血中や唾液中の濃度が高まる。
  4. ヒトヘルペスウイルス6、7(HHP-6、7)値:疲労が蓄積すると体内に潜伏してい たヒトヘルペスウイルスが再活性化。中でも唾液中に出やすいヒトヘルペスウイルス6や7の値を測定し、疲労度を判定。 東京慈恵会医科大学の近藤一博教授によって発見された。

唾液によるがんのスクリーニング

自分で採取した唾液を指定された病院に送付し、すい臓・大腸・乳腺・肺・口腔などのがんリスクを判定する簡易キットが製品化されている。

唾液を用いた遺伝子解析により、 病気のなりやすさを検査

唾液を用いた遺伝子検査により、病気のなりやすさや体質を判定するキットが数社から発売に。なりやすい疾患を予測できるため、予防に役立つとされる。

まとめ

今回は、歯科や医科で注目を集める唾液検査について書きました。唾液を使い、虫歯や歯周病だけでなく、がんのスクリーニングなどいろんな検査ができます。

興味のある方は、歯科医や医師に相談してみてください。

歯科麻酔後の痺れた感覚をなるべく早く消す方法

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歯科麻酔後の痺れた感覚をなるべく早く消す方法

虫歯の治療、クラウン、抜歯、ルートキャナルなど歯科治療の多くの場面で登場する注射による局所麻酔。残念ながら、歯科の注射の麻酔を好きな人はまずいません。歯科治療の恐怖心の大部分が、診療時の痛みと、この麻酔時の痛みによるものでしょう。われわれ歯科医は、可能な限り安全で痛くならないように、局所麻酔に細心の注意を払っています。

一方で、歯科麻酔後、どのくらいで麻酔が効かなくなるかを気にする方も少なくありません。歯科診療後すぐに食事や会話が必要なこともあるのでしょう。また、唇の感覚がなくなるために唇を誤って噛むことも軽減できるかもしれません。診療時に痛くなく、診療後は麻酔の痺れが速やかに消える、これが理想なのです。

しかし、診療が終わってすぐに麻酔の効果がなくなるというのは、まずありません。麻酔液が局所に残っている間は、麻酔の効力が残ることになるからです。ただ、少しでも早く効力がなくなる方法がないわけではありません。今回は、歯科麻酔後の痺れた感覚をなるべく早く消すほぼ唯一の方法、OraVerseという製品の注射について書きたいと思います。

OraVerseとは?

歯科の局所麻酔のほとんどが、その効力を高め、作用時間を長く維持させるため、エピネフリン(アドレナリン)などの血管収縮薬を少量入れています。麻酔薬が毛細血管から吸収されるのを抑制し、麻酔液が麻酔部位に長く留まるようにしているのです。

OraVerse (Phentolamine mesylate, an alpha-adrenergic antagonist)とは、簡単に言うと血管を拡大させる薬物です。麻酔薬が局所に留まる時間を短縮させ、麻酔作用時間を短くします。歯科治療が終わったら、その部位にOraVerseを注射して使います。しかしながら、OraVerseの作用機序(効果のメカニズム)については、まだ完全に理解されておらず、その他の作用機序が発見される可能性も残っています。

OraVerseの副作用

ごくまれに血圧の低下、不整脈等の副作用が報告されています。心血管系に持病がある場合、使用には慎重になる必要があります。また、3歳以下の子ども、あるいは体重が33パウンド(15キロ)以下の場合、安全性が確認できていないので使うことはできません。

OraVerseのコスト

現状では、保険でカバーされない場合がほとんどです。OraVerse使用には追加費用がかかると考えておきましょう。試したい方は、まず歯科医に相談してみてください。場合によってはOraVerseを使ってくれるかもしれません。

2018年の歯科の話題を振り返る

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2018年の歯科の話題を振り返る

新年明けましておめでとうございます。2018年、皆さんの歯の調子はいかがでしたでしょうか? 今回はいくつかの歯科の話題について書いていきたいと思います。

赤毛のアンを麻酔するのは難しい?(Anesthesiology 101:279-283, 2004)

これは新しい話題でもないのですが、筆者自身が最近知った事実です。麻酔の効き方に関しましては個人差がかなりあり、大酒飲みの方などは歯科の麻酔も効きづらいというのは、このコラムでも以前に取り上げました。大酒飲み以外でも、麻酔が効きづらい患者さんは、経験上います。

この研究は、今から14年以上も前に論文になったのですが、とても興味深い内容です。日本人にはあまり関係ないかもしれませんが、赤毛の方は麻酔が効きづらいというものです。

カギとなるのは遺伝子の型のようで、赤毛の方以外でも、ある種の遺伝子の型を持っていると麻酔が効きづらい可能性があるということを示唆しているかもしれません。昔から麻酔科医は経験上、赤毛の人を麻酔するのは難しいと感じていたそうです。それが、この研究で証明されたわけです。

この研究では、健康な女性を赤毛(Bright red)と濃い髪(Dark)で10人ずつのグループに分け、電気刺激に対する反応を基に、ガス全身麻酔の効きやすさを比較しました。その結果、赤毛のグループでは、麻酔が効くまでに平均20%も多くのガスが必要なことがわかりました。この差は統計学上でも有意な差として認められたということです。また、10人の赤毛を持つ女性のうち、9人で1型メラノコルチン受容体の遺伝子に変異が見られました。

子どもにとって最初の乳歯が抜けるのはポジテイブな経験

2018年に行われた、スイスのチューリッヒ大学での研究。子どもが最初に歯が抜けるのは6歳前後ですが、その時の感情は、怖い、恥ずかしい、ハッピー、誇りに思うなどさまざまです。

この研究では、1,300人もの最初の歯が抜けた子どもの両親を対象に、子どもの心理状態について調査しました。その結果、80%の両親から、子どもがポジテイブな感情を持ったとの結果を得ました。わずか20%の子どものみがネガテイブな感情を抱いたようです。このような研究はこれまであまりなく、とても興味深い結果が得られたと言えるでしょう。

まとめ

2018年を振り返って2つの話題について今回は書いてみました。2019年もいろいろな歯科の話題を提供させていただけたらと思っております。今後ともよろしくお願いします。

喫煙によるルートキャナルのリスク

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喫煙によるルートキャナルのリスク

タバコが歯周病のリスクファクターであることは昔から知られており、研究も数多くあります。このコラムでも何度も取り上げてきました。一方で、タバコと歯の神経治療(ルートキャナル)の関係についての研究はさほど多くありません。実際には、歯の神経治療に携わる専門家の間で、喫煙者だとルートキャナルの治りが良くないと長年ささやかれていました。最近になって、タバコがルートキャナルに良くないことが徐々にわかってきています。今回は、喫煙とルートキャナルの関係について書いていきたいと思います。

ボストン大学の疫学的研究

811人の男性を喫煙者、生涯非喫煙者に分け、歯のルートキャナルの本数を比較検討しました。追跡期間は2~28年。現在の喫煙者は、生涯非喫煙者に比べて1.7本もルートキャナルの歯が多い結果となりました。普通のタバコとパイプタバコの間には有意な差は見られません。また、喫煙期間が長くなるとルートキャナルの本数も多くなり、禁煙期間が長くなるとルートキャナルの本数は減っていました。これらの結果から、喫煙は容量依存的にルートキャナルを増やすことが示唆されました。(J Dent Res 85:313-317, 2006)

ケース・ウエスタン・リザーブ大学の歯髄組織の免疫学的研究

32人の喫煙者と37人の非喫煙者から採取された歯髄(健康な歯髄および歯髄炎になった歯髄含む)における免疫物質、IL-1β、TNF-α、human β defensin-2(hBD-2)、human β defensin-3(hBD-3)の量の違いを比べた研究。その結果、喫煙者で、TNF-αおよびhBD-2という免疫に重要な役割を果たしている物質の量が減っていることが明らかになりました。健康な歯髄と炎症のある歯髄との間に、これらの免疫物質の有意な差は認められませんでした。この結果は、タバコを吸うと、歯髄(いわゆる歯の神経)のある種の免疫物質が減り、歯髄の防御反応が弱くなり、ルートキャナルになってしまう可能性が高まることを示唆しています。ルートキャナルの治療になった際に、治療が長引いたり、上手くいかなかったりする可能性もあります。(J Endod. 43:2009-2013, 2017)

まとめ

タバコはこれまで、1.感染に対する防御反応を悪くする 2.全身の骨量を低下させる 3.血流を低下させるなどの理由から、歯周病に良くないことがわかっていました。しかし、歯の神経に及ぼす影響はほとんどわかっていませんでした。タバコは全身の健康はもちろんのこと、口腔の健康にも良くないことは明らかなようです。やはり、健康のためには、禁煙するに越したことはなさそうです。

のど飴や風邪用シロップと虫歯

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のど飴や風邪用シロップと虫歯

秋も深まり、風邪やインフルエンザに気を付けなくてはならない季節となりました。今回は、これから使用頻度が増えそうな、のど飴や風邪用シロップと虫歯の関係を中心に書いていきたいと思います。

のど飴と虫歯

多くののど飴には、ハーブや殺菌成分のほかに、砂糖などの糖類が含まれています。のど飴ひと粒に平均5グラムもの砂糖が含まれていると言われています。当然、糖類、特に砂糖が含まれていると、虫歯になる可能性があるので注意が必要です。のど飴の大量摂取はもってのほか、長時間かけて何粒も続けて口に含んでいると、口の中で糖が細菌によって代謝され酸ができ、口内が酸性になってしまいます。その結果、虫歯になる危険性が高まります。このような使い方は避けたいものです。

のど飴を口に含んだまま寝てしまうのも、歯にとって極めて好ましくない行為ですので、絶対に避けなければなりません。のど飴をなめたら口をすすぐ、もしくはキシリトール入りのガムを噛む、できればフッ素入りの歯磨き剤を使用して歯を磨くことが必要です。特に寝る前には、必ず歯を磨くこと。シュガーフリーののど飴には砂糖が入っていませんので、虫歯の危険度は軽減されますが、果糖、麦芽糖などが入っていることが多く、やはり虫歯を引き起こし得るため、注意してください。

そんな中でも、キシリトールが使われているのど飴は、虫歯になりにくい製品と言えます。虫歯予防の観点から、キシリトールが50%以上入ったのど飴を選ぶのが賢明です。ただし、寝る前はやはり、歯を磨くことが大切です。

風邪用シロップと虫歯

ご存知の通り、子どもの風邪薬の多くはシロップ状の液体となっています。このシロップのほとんどの製品に、風邪薬とは別に砂糖と果糖が入っていて、子どもでも飲みやすく工夫されています。

また、これらの糖類のほかにクエン酸が含まれ、多くの製品には抗ヒスタミン成分が入っているため、さらにpHの低い酸性環境になっています。虫歯になりやすい溶液と言えますので、注意が必要です。できれば寝る直前のシロップの使用は避けましょう。どうしても寝る前にシロップ状の風邪薬を使用する場合は、すぐに歯を磨いてください。

まとめ

風邪の季節、多くののど飴、風邪用シロップは、虫歯を引き起こす可能性があります。医療目的で使うこれらの製品でも虫歯になり得るので、普通に甘い物を食べたり飲んだりした時と同様に注意を払い、虫歯にならないようにしましょう。

噛み合わせ異常による歯の振動

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噛み合わせ異常による歯の振動

歯のエナメル質破壊は「噛み合わせ異常」によって起こるとする考えが浸透しています。歯の根元で起きる欠損も、昔は歯ブラシの圧が強過ぎることで起こると言われていました。今では噛み合わせを含めた歯ぎしり、食いしばりに原因があるとされます。噛み合わせ異常には、「歯科的振動(Dental Fremitus)」というものがあります。歯を噛み合わせた時に、指の腹を上の前歯の唇側に当てると特定の歯が動くように感じる、あるいは、特定の歯に振動を感じる、というケースです。今回は、歯科的振動について書きたいと思います。

歯科的振動の問題点

振動があると、噛む度に特定の歯に外傷が加わることになります。そのため、歯を支える歯槽骨が吸収し、歯周病悪化の要因になったり、歯の外側を覆うエナメル質が破壊されたりします。また、歯の修復物、詰め物、ベニヤやクラウンの脱落または破壊の要因にもなります。これは歯科では大きな問題です。

歯科的振動がある場合の治療法

  1. 噛み合わせ(咬合)の調整:強くぶつかっている部分が1つの歯のみなど、ごく限定的である場合、強くぶつかっている部分を削り、周囲の歯と同程度に調整することで、咬合による外傷をなくす。
  2. ナイトガードやリテーナー:歯ぎしり(Tooth Grinding)、噛みしめ(Clenching)が強い場合、歯を保護すると同時に特定の歯が動くのを防止する目的で、主に夜間にプラスチック製のマウスピースを装着する。
  3. 歯の矯正治療あるいは、クラウンなどの補てつ治療による噛み合わせの再構成

前歯全体に歯科的振動がある場合など、前歯だけでなく奥歯を含めた全体の噛み合わせを変えないと治せないケースも少なくありません。歯の矯正治療や補てつ治療などを用いて、前歯が強く当たらないような噛み合わせに再構築する必要があります。

前述のように、歯科的振動があると、噛み合わせを変えない状態でクラウン、ブリッジなどを入れても、外れたり、壊れたりします。事前に矯正治療などの根本的な治療が不可欠となります。歯周病の予防や歯周病の悪化を防ぐ意味でも勧められます。

まとめ

噛み合わせが原因で起こる歯科的問題は思っている以上に多いようです。前歯の摩耗や損傷が激しい、また前歯のクラウンに問題が起こりやすい方、あるいは顎関節症の症状がある方は、噛み合わせが原因である可能性があります。歯科医と相談して、最適な治療を受けるようにしましょう。

歯の痛みのコントール

健康な歯でスマイルライフ

日本では北海道医療大学歯学部で博士号を取得。米国でもロマリンダ大学歯学部を卒業し、2005年にPAN-PACIFIC DENTISTRY(パンパシフィック歯科医院)を開業した中出修先生に、アメリカで生活する日本人へ向けて歯や口腔について、説明していただきます

歯の痛みのコントール

NIH(National Institute of Health)の報告によれば、アメリカでは、麻薬性の鎮痛剤を多く取り過ぎることにより、1日に約115人もの命が奪われており、深刻な社会問題になっています。

日本では歯科において、痛み止めに麻薬(opioid)入りの鎮痛剤を使うことは皆無と言っていいと思いますが、ここアメリカでは、比較的普通に処方されています。この違いは何かというと、痛みに対する国民性の違いに尽きると感じています。日本人は我慢強い傾向がありますからね。

そんな折、ケース・ウエスタン・リザーブ大学歯学部において、Advilの商品名で知られるイブプロフェンと、Tylenolの商品名で知られるアセトアミノフェンを併用するだけで、麻薬入り鎮痛剤よりもむしろ痛みに効果的であるとの報告がなされ、注目を浴びています。

今回は、この研究を中心に書いていきたいと思います。

歯科での麻薬中毒者の特徴

アメリカで歯科をやっていると、100%痛み止め狙いで来院する患者さんに稀に遭遇します。麻薬入り鎮痛剤をもらうためなら、痛くもないのに痛いとウソをつくのも平気ですし、場合によっては泣くこともできるようです。

われわれ歯科医院の側も患者の処方履歴を調べられますし、このような患者の特徴を把握しているので、そう簡単にはだまされないと思ってはいます。一方で、神経痛や関連痛など、歯とは一見、関係ない痛みが歯で起こることもあるので、見定めるのは容易ではありません。この辺が日本における歯科と大きく異なる点です。

彼らの特徴としては、1. 痛い痛いと強調する 2. 診療時間終了間際に電話してくる 3. 特に週末直前に電話してくる 4. 他の弱い鎮痛剤は効かない、あるいはそれにアレルギーがあると言ってくる 5. 他の医療機関にも多く受診している、などです。

今回の研究で明らかになったこと

460 以上の過去の文献を調べた結果、400mgのイブプロフェンと1,000mgのアセトアミノフェンを組み合わせて飲むと、どの麻薬入り鎮痛剤よりも痛みに効果があることが明らかになった今回の報告。麻薬入り鎮痛剤には、うつろになる、呼吸抑制、吐き気、便秘などの副作用もあり、歯科でのこれらの薬の処方は、最後の手段にすべきであると結論付けています。

まとめ

アメリカの歯科で問題となっている麻薬入り鎮痛剤。しかし、歯科の痛みの大半は、市販の薬の組み合わせでコントールできるようです。

アルコールによる 口腔環境への影響とは

最近、飲酒と口腔内細菌の関係に関するニューヨーク大学の研究で、1,000人以上の55歳から87歳までの白人を対象とする調査が行われました。そして、慢性的な飲酒により、口腔内の細菌、ウイルス、微生物を含む細菌叢(さいきんそう)のバランスが崩れると、歯周病、ある種のガンおよび心疾患に関係した細菌が増加すると報告されました。過剰な飲酒が、口腔内の細菌叢に直接影響を及ぼす可能性を示したのです。これほどまでの広範囲な研究は過去に例がなく、とても注目を浴びています。

今回は飲酒と口腔内の関係について書いていきたいと思います。

飲酒と免疫の関係
ごく少量の飲酒は、血行促進およびリラックス効果で、ガン細胞を撃退してくれるナチュラルキラー(NK)細胞も活性化することが知られています。実際、ウォッカのショットを4、5杯飲んだ後、免疫機能がどうなっているかを調べた有名な研究では、飲酒20分で免疫機能を上昇させるタンパク質の濃度が上がり、NK細胞が増加することが明らかになりました。しかし、飲酒2時間および5時間後では、免疫機能を減少させるタンパク質が増え、またNK細胞の数も減っており、免疫にも悪影響が出ることがわかりました。

深酒をした後、風邪を引きやすくなったり、体調を崩したりするのは、深酒による免疫力の低下とアルコールの代謝産物で毒性のあるアセトアルデヒドなどの有害な物質が体内に増えることが原因と考えられています。

アルコール依存症者の口腔内の特徴
ごく少量の飲酒なら、口腔内に特徴が出ることはほとんどないと言えるでしょう。酒飲みのよく使う言い訳に、「口をアルコール消毒する」なんていうものもあるようですが、慢性的に酒を飲み過ぎると、口腔内にもマイナスです。免疫機能の低下、唾液分泌の低下、胃酸の逆流の増加、口腔衛生の低下、酸性で糖質を多く含む酒しか飲まないと栄養状態の悪化、口腔内細菌叢の変化、グルタルアルデヒドなどの有害代謝産物や外傷が増えるなどの特徴が出てきます。

これらのことから、 1. 虫歯の発生率が3倍になる。通常できづらい箇所にも虫歯が認められやすい 2. 前歯の損傷、口唇の傷 3. 口腔、食道ガン発生率が激増 4. プラーク、歯石の増加および歯周病の増加 5. 口臭がひどい6. 歯の着色 7. 歯の喪失および咀しゃく機能の減退 8. 酸蝕症(唾液の低下、酒の酸および胃酸逆流による) 9. 歯科の局所麻酔が効きづらい、というような歯科的特徴がアルコール依存者には認められることが多いのです。

酒は節度を守って楽しみたいものですね。深酒して歯磨きもしないでそのまま寝るなんてことがないよう、気を付けましょう。虫歯になったり、歯周病が悪化したりする可能性が高くなります。

審美的なクラウンの進歩

虫歯などで削った歯にかぶせる「クラウン」。歯の色合いを持つ審美的クラウンは、ここ10年くらいで著しい進歩を遂げています。作製方法も、歯科技工士の職人的な手作りというより、コンピューターで画像を取り込み、材料のブロックから削り出して作るクラウンが急速に増えてきました。適合性も、従来のものよりもむしろ上と言われています。今回は、審美的クラウンの素材とその特徴を中心に書いていきたいと思います。

 

古典的な審美的クラウン

古典的な陶材焼き付けクラウン(Porcelain-fused to metal crown=PFM)の素材は、基本的に金属とポーセレンの2種類の組み合わせ(日本の保険が使えるクラウンでは、金属とプラスチックの組み合わせ、あるいはプラチックのみのクラウンも)です。金属の加工の容易さと強度に、ポーセレンの審美性をうまく組み合わせているのが利点です。現在でも使われてはいますが、その市場規模は年々減少。ポーセレンの部分が壊れてきたり、歯肉が下がると下層の金属の層が見えたりする可能性があるのです。いい色を出すために、歯をいっぱい削らなくてはいけないという欠点もあります。

 

最近増えている審美的クラウン

最近の素材で代表的なものは、ジルコニアとガラスセラミック(Lithium Disilicate)の2種類。急速にシェアを増やしており、より審美性を要求する場合は、さらにポーセレンを組み合わせて作ることも。また、ジルコニアとガラスセラミックを組み合わせたクラウンもあります。

ジルコニア (Zirconia、主な商品名:BruxZirconia):金属に近い強度を持っている上に白い色が出せるので、クラウンやブリッジに多用されている。最大の利点は、その強度から、歯の削除量を金属クラウン並みに減らすことが可能なこと。歯ぎしりの強い患者さんでも安心して使うことができ、ほぼ壊れることがない。欠点は、透明感に欠け、歯の自然な色調の再現がやや難しいこと。これまでは主に奥歯に用いられてきたが、最近では、かなりの透明感を持った前歯用のジルコニア・クラウンも出ており、応用範囲が拡大傾向にある。

ガラスセラミック(Lithium Disilicate、主な商品名:eMax):金属のリチウムとガラスのジシリケートとを組み合わせたガラスセラミック。最大の特徴は、透明感があり、天然歯と自然に調和し、極めて審美的なこと。前歯や奥歯のクラウンほか、ベニヤや長さの短いブリッジにも使用可能。欠点は、ジルコニアほどの強度はなく、壊れる危険性もあること。また、その透過性から逆に土台の歯の色が透けて、土台の歯が黒い場合は色の調節が困難になる可能性も。このように審美的なクラウンには、古典的方法含め、いくつもの選択肢があります。歯科医とよく相談して、自分の状況に合った最適なクラウンを選びたいものですね。

歯周病で失明のリスク?~歯周病と加齢黄斑変性との関係~

これまで、このコラムを通して歯周病とさまざまな全身疾患との関係について書いてきました。歯周病と眼の関係にしても、歯周病と糖尿病の関係を書いた際に少しだけ触れています。今回は歯周病と失明のリスク、特に加齢黄斑変性という眼の疾患との関係について紹介します。

眼の黄斑とは?

黄斑(macular)とは、網膜の中心部にある黄色い部位を指します。黄色いのは、キサントフィルという色素が豊富なため。黄斑は視野の中心であり、認識としての「視覚」のほとんどをここで担っています。

加齢黄斑変性とは?

欧米では失明原因1位の疾患が、加齢黄斑変性。日本でも3位には入ります。年齢を重ねると、網膜色素上皮の下に老廃物が蓄積してきます。その結果、直接あるいは間接的に黄斑部に障害が出る病気が加齢黄斑変性です。黄斑が変化すると、物がゆがんで見える、視野の中心が暗くなる・欠ける、視力が低下するなどの症状が出ます。加齢黄斑変性は、糖尿病性網膜症と緑内障と共に、失明を引き起こす病気として注意が必要です。

歯周病と加齢黄斑変性との関係

以下のような研究から、歯周病は、加齢黄斑変性の発症を増加させ、失明のリスクを高める可能性が示されてします。

  1. 2013年の事例:30歳以上の1,751人(内訳:加齢黄斑変性の人:56人、そうでない人:1,697人)における広範囲の検索から、男性で加齢黄斑変性の人は、統計学的に歯の総数が少なく、歯槽骨の吸収が大きいと結論付け、歯周病と加齢黄斑変性の関係を示唆する研究結果を報告。
  2. 2015年の事例:米国の40歳以上の8,208人(内訳:歯周病の人:52.3%、加齢黄斑変性の人:11.45%)における広範囲の調査から、60歳以下では歯周病が加齢黄斑変性の発症と有意に相関すると報告。
  3. 2017年の事例:韓国の13,072人の40歳以上において、軽度と重度の歯周病に分けて広範囲に検索した。62歳以下で重度の歯周病の人では、歯周病が加齢黄斑変性の発症と有意に相関すると報告。
  4. 2018年の事例:歯周病の有力菌であるPG(Porphyromonas Gingivalis)という細菌をマウスの網膜に注射したところ、マウスの網膜に加齢黄斑変性が見られる変化があったと報告。またヒトの網膜色素上皮細胞を使った実験では、PGがこの細胞に感染し、細胞の特徴を変化させたと報告。

以上、歯周病が悪化すれば、高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞、ある種の腫瘍などの発症リスクを上げることが示唆されています。

毎日の口腔清掃と少なくとも半年に1度の歯科検診、歯のクリーニングを欠かさず、健康な歯を維持することが、全身の健康にも重要と言えそうです。

自分の歯とインプラントをつなげるブリッジは可能?

土台となる既存の歯に被せて橋桁のように義歯を装着するブリッジ治療。歯科の臨床において、天然歯(自分の歯)とインプラント(埋め込むタイプの義歯)を連結する形のブリッジ(天然歯−インプラント・ブリッジ)を計画したくなるケースがあります。現在でも、専門家の間で多少意見が分かれており、いろいろな観点からあまり勧めないとの意見が大半だろうと察します。今回は、支える歯が、天然歯とインプラントが混在した形となるブリッジについて書きたいと思います。

天然歯−インプラント・ブリッジの利点

インプラントの本数を減らせるので、より経済的。ブリッジの歯は、抜けた部分の骨の量が十分でない場合にも、骨移植など他の手術なしで作製できるなどの利点があります。

天然歯とインプラントの違い

健康な天然歯の場合、歯とそれを支える骨の間には、歯根膜という靭帯のような組織が存在します。0.1Nの荷重がかかった場合、約200ミクロンメーター動く(沈む)と言われています。一方、インプラントと骨は歯根膜なしで直に接するため、0.1Nの負荷がかかっても、ほとんど動きません。せいぜい、骨の弾力に基づく、10ミクロンメーターまでしか沈まないと言われています。

天然歯とインプラントの性質の違いから発生する問題点

ブリッジを支える柱の一方が少し動き、他の一方はほとんど動かない状況を想像してみてください。道路のブリッジでこのような状態では、まず造らないのではないでしょうか?口の中も同じで、荷重的に非常に不安定で、複雑な状態になることは想像に難くありません。長期間続くと、

  1. インプラント自体が壊れる
  2. 天然歯が骨のほうに沈んでくる
  3. ブリッジを着けるセメントが壊れて、ブリッジが外れてくる
  4. ブリッジを支える土台の部分(天然歯側あるいはインプラント側)が壊れる
  5. ブリッジ自体が壊れる
  6. インプラントの土台を止めるネジがゆるむ
  7. 天然歯の土台とブリッジの間に隙間ができて虫歯になる
  8. インプラント周囲炎からインプラントがダメになる

などの問題が起きやすくなるのです。

成功率を上げるには

難しいとされる天然歯−インプラント・ブリッジの成功率を上げる方法としては、

  1. 天然歯が健康で動揺度が少なく、支えている骨もしっかりしている
  2. ブリッジの長さが短い症例を選ぶ
  3. 歯ぎしりのある患者さんは避ける
  4. 虫歯になりやすい患者さんは避ける
  5. ルートキャナル(根管治療)をされた天然歯が支えになる場合は避ける
  6. 負担のかかりにくいブリッジの噛み合わせになるように細心の注意を払う

などが言われます。

このような症例の提示があった場合はリスクをよく説明してもらい、歯科医と話し合いの上、総合的に判断することが大切です。

ロボットがインプラントを埋める?

医療におけるロボット支援を受けた外科手術(ロボティクス)の普及には、目を見張るものがあります。有名なのはダ・ヴィンチ・サージカルシステムで、1999年に完成。2000年にアメリカ食品医薬品局(FDA)より承認され、2016年までに全世界で3,803台が導入されています。米国においては全身麻酔のロボット、遠隔診断ロボットなどが普及しつつあります。最近、ロボット支援を受けた外科手術は歯科にも確実に押し寄せようとしています。今回は、ロボットを用いた治療の現状について書きたいと思います。

インプラント手術専用ロボット

フロリダ州マイアミに拠点を置くNeocis社による歯科インプラント手術専用ロボット「Yomi」が、FDAの承認を得たと2017年3月に発表されました。インプラントは、顎骨に埋め込む人工歯根のこと。Yomiは、患者さんのCTスキャンをもとに、術者がインプラントを埋め込む際のドリルの位置、方向性、深さなどをコントロールし、術式の変更にも速やかに対応します。

このロボットを使うと、臨床手術の前にドリルがぶれないよう予め製作するサージカルガイドも必要なくなり、多数歯のインプラントがより簡素化されると注目されています。

中国でインプラント全自動手術

2017年9月に中国の西安において、歯科医師ロボットによる世界初のインプラント全自動手術が行われました。術中はスタッフが待機し、局所麻酔はロボットではなく歯科医が行いましたが、勇気ある女性患者に2本のインプラントがロボットによって埋入されたそうです。

術前のシミュレーションと比較した誤差は臨床的許容範囲とされる0.2~0.3mm以内で、手術は無事成功と判定されました。術前処置として、スタッフが患者に歯科医師ロボットの誘導装置を固定し、ロボットに適切なポジショニング・術中の動き・器具の角度や深さなどをプログラミング。その上で、ロボットの動作確認を行い、取得されたデータに基づいた微調整後、ロボットによる実際の手術へ。術中の患者の動きに合わせ、ロボットも動きを自動調整できるようです。現在、中国では年間約100万本のインプラントが埋入されている一方で、技術水準を満たした歯科医師の不足が問題視されており、その解決策として歯科医師ロボットへの期待が高まっているそうです。

まとめ

今後、ロボットを用いたインプラント手術の成績のデータ蓄積が行われ、精度、安全性が確認されていけば、歯科でも一気に普及が進むことも考えられます。設備投資、コストの面もあり、一般開業医までの普及はかなり先とは思われますが、今後の研究の進展に注目したいもの。将来は、ロボットが歯の治
療のほとんどを行い、歯科医は診断と治療方針を決めるだけという時代が来るのかもしれませんね。

[健康な歯でスマイルライフ]

歯を削らない治療がトレンドのひとつに

 

考えてみれば、歯科の国家試験の治療法に関する正解というのは日米問わず実にいいかげんです。日米で国家試験を受けましたが、正解が違うこともありました。歯の治療法は、料理でたとえるなら「調理法」。正しいやり方をひとつに決められるものでもありません。歯科医の数ほど治療法があると言われます。それでも受験生は正解をひとつ選ばなければならず、実に気の毒なことです。20~30年前の国家試験の正解が、今では不正解ということもあります。現に昔、教科書で習ったことが、今ではやってはいけない治療とされる場合も。現在の歯科の常識も10年、20年経てば怪しくなることでしょう。

つまり、今言われている歯科の常識も100%信じてはいけない、ということです。歯科の新製品でもダメなものは数年で淘汰され、自社の研究ではいいと主張していても、臨床成績が伴わないと歯科医から見向きもされなくなります。科学、テクノロジーの進歩、治療結果の蓄積で歯科の治療スタイルも変わります。そのような状況の中で、歯科界では歯をなるべく削らない治療に流れがシフトしてきています。今回は、ここ20年の歯科の治療法で特に大きく変わっている点について書きたいと思います。

虫歯の予防拡大という概念予防

拡大とは、虫歯の治療の際、虫歯の部分のみならず健康な部分まで削る範囲を拡大し、虫歯の再発を予防するための処置です。長年(100年くらい)この概念が教えられてきましたので、実践する歯科医も少なくないと思います。ただ、歯の削除量が多いと歯が力学的に弱くなり、後に歯が欠けたり割れたりする確率が高くなります。クラウンになり、さらに健康な歯を削ってルートキャナルになり、歯根破折を起こして抜歯、そしてインプラント、入れ歯になってしまいます。2000年頃から接着技術が急速に発達し、虫歯の部分だけを削って最小限の詰め物で、歯の強度を損なわないようにする治療が浸透してきました。

歯の神経治療

不幸にして歯の神経(歯髄)を取らなければならない場合、治療のやりやすさから、歯髄周囲の象牙質(特に上部1/3)を大きく削除して治療する方法が正しいとされてきました。昔ながらの、歯をいっぱい削る神経治療をする歯科医もまだいます。しかし、この方法では、神経治療そのものは成功しても歯根が弱くなって歯根が折れ、結局、歯を抜くことになる可能性が高いと分かってきたところです。

まとめ

歯をより削らない治療で歯の寿命を長くできます。治療しなくていいように予防することも大事。日頃の歯ブラシ、フロスを徹底し、健康に良い食事を心がけ、定期的な歯科検診、クリーニングを欠かさないようにしましょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

子どもの歯科治療、親も入室OK?

 

小生が歯学部で学生だったころは、小児歯科治療では「4歳以下の場合を除き、親を診療室に入らせない」が原則でした。それはドクター・スターキーという方が提唱する「治療の際は親と子どもを引き離す(Parent-child separation)」という概念が、小児歯科の世界で信じられていたからです。しかし、ここ最近はこの概念が大きく変わってきているようです。今回は小児歯科治療における親の入室の是非について書きたいと思います。

長い間行われていた Parent-child separationの理由

4歳以下または心身に障害のある子どもには、親が治療に参加することが有意義であるとされていましたが、下記の理由で原則として診療室に親を入れないほうが良いとされていました。

  1. 親がいろいろ命令して治療中の歯科医と子どもを困らせることがある。
  2. 親の監視下では反対されるなどして、歯科医側が子ども向けに声のイントネーションを使った語りかけをしにくい。
  3. 子どもの注意力が歯科医と親に分断され、そがれる。
  4. 歯科医の注意力も親と子どもに分断され、そがれる。
  5. 歯科医は、親が診療室の外にいてくれたほうが、リラックスして診療できる傾向にある。

最近の研究

  • 2010年:アメリカでは74パーセントの小児歯科医が、子どもの治療中、親の入室を許可して いる(J N Dent Assoc 81:32-37)。
  • 2011年:イランでの研究。5歳児67人(男児33人、女児34人)を2グループに分け、親の存在が歯科診療における不安や行動に影響するかを比較検討したところ、有意な差が認められなかった。
  • 2016年:ヨーロッパにおける研究。平均7 歳の患者における100人の親を対象に、入室の是非を調査。親がいないと子どもはより不安に感じ、2回目の虫歯の治療に悪影響を与えるが、親の存在は子どもの行動自体にはあまり関係ないことがわかった。つまり、親が診療室に入ることは問題なく、むしろ子どもの精神状態に良い結果を及ぼす可能性が考えられる(Eur Arch Paediatr Dent 17:381-386)。 

まとめ

これまでは、小児診療時に親を入室させないのが良いとされていたが、最近の研究では、少なくとも関係ないか、むしろ親を入れたほうが、子どもの治療がスムーズに行くといった考えが定着してきたようです。子どもの扱いに関しては親がいちばん詳しく、スムーズに治療できるよう子どもを落ち着かせ、治療を助けることも少なくありません。

しかし、子どもによっては、親が側にいることで甘えが出て、治療にマイナスなこともあるように、経験上は思います。原則、親が希望すれば入室を認め、治療をサポートしてもらいつつも、ケースによっては、親と引き離したほうが良い結果が出るかもしれません。

[健康な歯でスマイルライフ]

日本の銀歯の話

 

先日、ある日本人の方から、日本で治療した銀歯を、白いセラミックのクラウンにしたら、その後再三にわたり痛みが出て困っているという電話がありました。セカンド・オピニオンとして診療させてもらうことになったので、今回はその時の模様を中心に書いていきたいと思います。

治療の経緯

患者さんは、職場近くの個人開業歯科医に数年前から通っていました。通って間もなく、日本で作製した奥歯の銀歯を見たその歯科医から、「これはアメリカのスタンダードではないから、セラミックのクラウンに替えたほうがいい」と言われたそうです。何の問題もなかったのに、その歯科医に言われるままにセラミックのクラウンに替えたところ、クラウンを入れた直後から調子が悪く、痛みに襲われました。抗生物質を投与されるも症状は改善せず、結局、ルートキャナル(歯の神経治療)が必要と言われ、その治療を受けました。治療後、いったんは痛みが治まりましたが、その半年くらい後に再び神経を刺すような痛みに襲われ、再度受診。ルートキャナルに問題はなく、理由はよく分からないということで、抗生物質の投与を受けました。しかし、それでも症状は良くならず、困り果て、当院受診となったようです。

所見と治療の経過

セラミックのクラウンが装着され、レントゲンで診てもルートキャナル治療自体はなされていました。しかし、神経管のひとつが治療されておらず、痛みの主な原因は、治療すべき神経を除去していなかったことが原因だろうと思われました。さらに治療された神経管のひとつに、ファイルという治療器具の破片を示唆する像が認められましたが、ファイルの破損について、患者さんには一切告知されていませんでした。ルートキャナルの専門医を紹介し、治療を顕微鏡下でやり直した結果、痛みはなくなり、長かっ たその銀歯の治療がようやく完了しました。

最初の歯科医の問題点を挙げると、以下のようになります。

  • 日本の銀歯(インレー)をアメリカのスタンダードではないと決めつけ、明らかな虫歯や問題がなかったにもかかわらず、治療を始めてしまった。
  • 治療されていないルートキャナルがあったということは、レントゲンで明らか。また、ルートキャナルでの道具(ファイル)が破損したにもかかわらず、そのことを患者さんに伝えず、専門医への紹介など必要な治療を怠った。

まとめ

問題のない銀歯に手をつけたことにより、クラウン、ルートキャナル、ルートキャナルやり直しと度重なる残念な結果を招いた一例をご紹介しました。

このようにアメリカでは、日本の銀歯について時に理解を得られないことがあるかもしれません。銀歯が外れた場合など、本当はセメントで再着すれば済む治療でも、クラウンを作らなければならないと言われることも少なくないと聞きます。

日本の銀歯の再治療など治療方針に納得がいかない場合は、日本の歯科事情に詳しい歯科医院でセカンド・オピニオンを試したり、相談したりするのが良いでしょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

全米展開の歯科が増えてきた?

最近、全米展開の歯科チェーンについて、どういうものか患者さんから質問を受けました。全米規模で展開する歯科医院のほとんどが、歯科医でない人が雇用主であり、歯科診療のプロではない経営のプロによってマネジメントされていて、DSO(Dental Service Organization)と呼ばれています。アメリカでは、かつて地方で全米展開のウォルマートなどが増えて個人の小売業が衰退していったように、歯科においても DSOによって全米展開の歯科医院が確実に増えているようです。今回はアメリカでの歯科経営形態と共に、全米展開の歯科医院が増えている背景などについて書いていきたいと思います。

アメリカの歯科経営形態あれこれ

  1. 個人(Solo Practice) 個人経営。勤務歯科医を雇う場合もある。以前は90%以上を占めていたが、縮小傾向。とはいえ、依然として最も多い経営形態。
  2. パートナーシップ(Partnership) 数人の歯科医が共同で経営する。
  3. 小規模グループ(Small Group) 地域の歯科医がグループでいくつかの歯科医院を経営。
  4. 大規模グループ(Large Group) 一般的に数州にわたる。経営の母体は歯科医でなく大きな会社。DSOはここに該当することがほとんど。

以下、大規模グループ歯科の増加の経緯を見て みましょう。

  • 1992年 157歯科医院が該当。他のほとんどは、個人開業医だった。
  • 2007年 3,009の歯科医院が該当。
  • 2012年 約20%の歯科医院が該当。

アメリカ歯科医師会(ADA)は、2025年までに約50%が大規模歯科経営会社が経営する歯科医院になるのではないかと試算しています。

アメリカの最近の歯科医の傾向

44歳以下の歯科医のうち、60%が女性。女性の歯科医は、男性歯科医に比べ、パートタイムで働く確率が2倍になります。また女性の歯科医は、歯科医院の院長になるよりも、勤務医として働く傾向がやはり2倍。女性はリスクを嫌い、安定を望む傾向を持ちます。最近の新卒歯科医の80%が、個人で開業したいとは思っていません。2011年の新卒歯科医の学生ローンによる平均負債額は、私立で $213,000、公立で$161,000と莫大です。

患者側から見たDSOの価値

  • DSOの考えられるメリット →さまざまな歯科保険、格安な歯科プランを受 け入れていることが多い。ほとんどの場合、専門医も同じ医院で診てくれる。
  • DSOの考えられるデメリット →行く度に歯科医が変わる可能性がある。経営優先の治療にならないか(経営側からのプレッシャーは?)、歯科医療の質はどうかという懸念。

まとめ

新卒歯科医の学生ローンの増加、女性歯科医の比率の上昇などから個人開業のリスクを回避して大きな全米展開の歯科グループで働く歯科医が年々増加傾向にあると考えられています。いずれにせよ、自分にあった歯科医院 を選びたいものですね。

[健康な歯でスマイルライフ]

上の前歯が小さい場合の治療法

歯の大きさが正常の歯の大きさよりも小さくなっていることがあります。こういう場合の歯は矮小歯(わいしょうし、Microdontia)と呼ばれています。また、反対に大きい場合は 巨大歯(Macrodontia)と呼ばれます。

矮小歯が歯列全ての歯に見られるのは極めて稀で、通常は歯列の一部の歯のみに出現します。矮小歯が出現しやすいのは退化傾向のある歯で、智歯(ちし、親知らず)や上顎の側切歯(そくせっし、中心の大きめの歯から1本外側のやや小さめの歯)に多く出現し、これらの歯は最初から生えてこないこともあります。

智歯が小さいのは、抜歯してしまえばいいだけと考えられがちなので、臨床的に問題になることはほとんどありません。しかし、上顎の側切歯に矮小歯が出現すると、審美的に問題になることがあります。 以前にも矮小歯をトピックで取り上げたことがあるかもしれませんが、今回は上顎の側切歯が小さい場合の治療法に関して書いていきたいと思います。

上顎の側切歯

この歯に矮小歯が出現すると、ほとんどが円錐形となり、栓状歯(Pegged tooth)と呼ば れています。 この栓状歯が、左右どちらかの1本あるいは 左右両方に出現するとその部分に隙間ができやすく、臨床的に問題となることがあります。 特に唇のラインが高い場合は上の前歯が目立つので、気にする方がいます。

栓状歯の治療法

患者さんが審美的に気にしなければ、何も治療の必要はありません。しかし、隙間が気になるなら、コンポジットレジンあるいはセラミックによるベニアや矯正による治療がで きます。 場合によっては、ベニアと矯正を併用することもあります。それぞれの利点・欠点は以下になります。

● コンポジットによるベニア

  • 利点:比較的コスパが良い。治療がその日のうちに完了する。壊れてもやり直しが容易。
  • 欠点:壊れることがある。微妙な色調を再現す るのが容易とは言えない。

● セラミックによるベニア

  • 利点:自然な色調をより再現できる。
  • 欠点:完成までに1、2週間かかることが多い。比較的高価。壊れた場合、やり直しに時間がかかる。

● 矯正

  • 利点:自分の歯はそのままで、歯を削る必要がない。
  • 欠点:左右1本だけ栓状歯の場合は、ほかの方法と併用しない限り、形を左右対称にできない。治療に時間も費用もかかる。

まとめ

上顎の側切歯に出現する矮小歯(栓状歯) は、審美障害を伴うことがあります。いろいろな治療法がオプションとして挙げられますが、気になる方は歯科医に相談し、最適な治療法を選択しましょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

処方箋レベルのフッ素入り 歯磨き剤

とかくその安全性が議論になりがちなフッ素ですが、70年ほどのフッ素研究の結果から、濃度を間違えなければ安全な物質で虫歯予防効果も明らかだとされています。2003年のMarinhoの研究によれば、市販のフッ素入りの歯磨き剤は、虫歯を24%ほど減らすことが できるそうです。そのため、実際に市販の歯磨き剤には、虫歯予防のためにフッ素が含まれ ている製品が多いですが、歯科医院では、さらに5倍ほど高濃度の歯磨き剤を処方することがあります(製品名;Previ Dent 5000 Plus、 SF 5000 Plus、Clinpro 5000、Denta 5000 Plusなど)。今回は処方箋を通じてしか購入できないレベルの高濃度フッ素入り歯磨き剤について書いていきたいと思います。

どうしてフッ素は虫歯予防に効果があるのか?

歯は口腔内の細菌が糖質を分解して酸を産生し、結果としてpHが5.5 以下の酸性になると、歯のミネラル成分であるカルシウムやリンが溶け出してしまいます(脱灰=虫歯)。

フッ素には以下の作用があり、虫歯の発生を減少させると考えられています。

  1. 歯質の向上;フッ素は歯の結晶構造に取り込まれ、その結晶構造を安定化させ(フルオロ アパタイトの形成)、歯をより酸から守る
  2. 再石灰化の促進;フッ素には、唾液中のカルシウムやリンと結合して歯にくっつく性質があり、歯の再石化を促進して、歯の微少なダメージを修復する
  3. 抗細菌作用;糖質の分解酵素、エノラーゼを 阻害し、酸の産生を阻害する。また細菌の歯質への接着も阻害し、歯垢の形成自体も阻害する

市販と処方箋レベルのフッ素入り歯磨き剤の濃度の違い

  • 市販品;1000-1500 ppm
  • 処方箋;5000 ppm

処方箋レベルのフッ素入り歯磨き剤が使われる時(適応)

  1. 虫歯のリスクが高いと考えられる時;歯の質が弱い。過去に虫歯の治療を数多く受けた。クラウンやブリッジが多い。唾液の分泌が低下している。歯肉が低下し、歯根が露出傾向にある
  2. 歯の知覚過敏傾向

処方箋レベルのフッ素入り歯磨き剤の使い方

  • 子ども;毎日1回。使用後、水でゆすぎ、口腔内に残さない。飲み込むのは絶対に止めること。形成中の歯にフッ素の悪影響(斑状歯)
  • 大人;毎日1回。最初は市販の歯磨き剤で磨き、水でゆすぐ。その後、処方箋の歯磨き剤に替えでさらに2分磨く。使用後は水でゆすがず、唾液を出すのみにする。なるべく飲み込まないようにする。30分は飲食を控える

まとめ

歯科医院では、より虫歯予防効果が高い歯磨 き剤が処方されることがあります。しかし、毎日の徹底したブラッシングとフロスの使用などの口腔清掃が重要なことに変わりはありません。処方箋レベルの歯磨き剤を正しく使うことにより、虫歯予防に万全を期したいものですね。

[健康な歯でスマイルライフ]

歯科でボトックス治療?

審美的医療の分野で「シワ取り治療」として普及が進んでいるボトックス(botox)ですが、徐々に歯科での応用も進んできているようです。今回はボトックスの歯科における応用について書いていきます。

 

ボトックスとは?

A型ボツリヌス毒素には、筋肉の伝達物質であるアセチルコリンの働きを弱める作用と、筋肉の収縮を弱める働きがあります。その結果、美容の分野ではシワをなくす働きがあるのです。

ボトックスの効果の持続期間;

注入後、約2週間で効果が出てきて、効果は4〜6カ月持続すると言われています。反復施術することにより、持続時間が延長されます。しかし、逆に考えると注射を止めるとシワ取り効果は元に戻るので、決断する前によく考える必要がありそうです。また、シワと言っても筋肉の過剰な収縮によるシワは改善できますが、それ以外が原因のシワ(皮膚のゆるみなど)には効かないので注意が必要です。この他、シワ取りの他にボトックスが有効な症例として、偏頭痛(側頭筋などの過剰な筋肉の収縮を緩和することによる)、エラの張り(咬筋の過剰な発達を抑制)などに有効とされています。

歯科での応用

1.顎関節症の軽減;偏頭痛の緩和と同様のメカニズムで顎関節周囲の筋肉の過剰な収縮が痛みや開口障害の原因になっている場合、ボトックスが効力を発揮すると言われる。また過剰な歯ぎしり、食いしばりでをボトックスで軽減することができるとされる

2.笑うと歯肉が露出する;口の周りの筋肉の働きを抑えることで、いわゆるガミーフェイスが改善することが期待できる

ボトックスの副作用;

ボトックスは比較的安全な治療とされていますが、以下のような副作用が出ることがまれにあるようです。

1.眼瞼下垂;ボトックスが目を動かす筋肉に作用してしまうと起こり得るので、注射部位には注意

2.複視;眼瞼下垂に似たメカニズムで眼を動かせる筋肉の動きにアンバランスが生じ、物が二重に見えることがまれに起こる

3.内出血による青あざ;注射による内出血。血液凝固阻害剤を服用している患者は特にに注意が必要

4.新たなシワ;ボトックスの量が多すぎるとその周囲にシワができることがある

5.アレルギー反応;過敏反応

ボトックス治療が行えない方

下記の患者さんはボトックスの安全性が確保されていないので、使うことができないとされています。

1.妊婦;安全性がまだ確立されていない

2.ボトックスに過敏症のある方

3.全身性の神経筋接合部の障害を持つ方(重症筋無力症等);症状を悪化させる可能性がある

まとめ

ボトックスを治療に使っている歯科医院はまだ多くはありません。しかし、顎関節症やガミーフェイスの治療に効果を上げ、注目されています。

[健康な歯でスマイルライフ]

子どもの睡眠障害と歯科との関わり

 

 

 

 最近の研究では、子どもに睡眠障害があると自閉症 (Autism)やADHD (Attention Deficit Hyperactivity Disorder、注意欠如多動性障害)の発生リスクが高まるとの報告があります。歯科と睡眠は一見してあまり関係ないと思われがちですが、噛み合わせや顎位あるいは扁桃腺の過度の肥大は気道の狭窄(きょうさく)と大きく関わっており、睡眠障害に歯科的問題が関わっていることも少なくないのです。今回は、子どもの睡眠障害と歯科との関わりを中心に書いていきたいと思います。

 

子どもの睡眠障害

 ある統計によれば、3歳から5歳児の20~50%に睡眠障害を引き起こすような呼吸が見られるとのことです。また米国の医師会は、6〜19歳の子どもを対象に、就寝前にベッドでスマートフォンなどを利用すると睡眠時間が不十分になり、睡眠の品質も低下し、日中眠くなりやすいと警告しています。子どもに睡眠障害があると、自閉症、ADHD、逆流性食道炎、肥満、2型糖尿病、高血圧などの発生リスクが高まることが分かってきており、全身に極めて深刻な悪影響を及ぼすと言っても過言ではありません。

 

子どもの睡眠障害が疑われる症状

①寝付きが悪く夜中や朝方に目が覚める、②イビキをかく、③手足のムズムズ感や突っ張り感がある、④夜中に突然大声で叫ぶ、⑤日中居眠りをしやすい、などの症状がある場合は要注意と言われています。

 

子どもの睡眠障害の原因

1.肥満や扁桃肥大;大人と同様に、睡眠時無呼吸症候群の原因になる

2.親の都合による夜型生活の習慣

3.自閉症やADHD;子どもの睡眠障害が自閉症やADHDの原因になり得るが、逆に自閉症やADHDも子どもの睡眠障害の原因になり得る。

4.過度のストレス

5.アトピーなどのアレルギーが原因のかゆみ

 

子どもの睡眠障害と歯科

 われわれ歯科医は、子どもの扁桃腺が過度に肥大していないか歯科来院時に注意深く観察します。歯科医が扁桃腺の過度の肥大(アデノイド)を最初に発見することも少なくないのです。アデノイドが認められた場合は、直ちに耳鼻科に紹介してアデノイドの切除を依頼する必要がありますし、睡眠の専門家や小児科と連携することもあります。また、歯列の狭窄や噛み合わせの異常(不正咬合)などが、気道が狭まり睡眠障害を引き起こす原因となり得ます。このような場合は他科とも連携しながら、矯正治療、歯科的イビキ防止装置の作成などを行います。歯科を受診する際、子どもに睡眠障害の徴候が認められた場合は、その旨を歯科医に伝えるといいでしょう。このような観点から、子どもの定期的な歯科受診は子どもの口腔内のみならず、全身の健康維持のために重要です。

[健康な歯でスマイルライフ]

接着技術で歯を保存する

 

今、「Biomimetic Dentistry」 (直訳すると、生命をまねる歯科)という言葉が、歯科ではトレンドになりそうな気配を感じます。Biomimetic Dentistryの目指すところは、接着技術を駆使してルートキャナル(根幹治療)や抜歯を避け、自分の歯を残し、残した歯もなるべくクラウンを避け、元の歯質を最大限に保存しようという治療です。同じような概念として、「接着歯科(Adhesive Dentistry)」や「Minimally Intervention Dentistry」といった言葉があります。

現在の歯科界は、米国を中心に、問題のある歯を早めに抜歯してインプラントにする治療が好まれています。しかし一方で、このように自分の歯にごだわる動きもあるのです。今回は、歯の接着技術で歯を保存するというテーマで書いていきます。

歯の接着技術

歯の接着技術がそれほど発達していなかった時代は、歯を修復した部分が取れないようにするために、虫歯以外の部分まで大幅に削る必要がありました。例えば、「アマルガム」などの金属修復物には歯との接着性がないため、保持構造を健康な歯の内部に求めるので、より多く歯を削らなくてはなりません。すると自分の歯自体がもろくなり、壊れやすくなってしまうのです。

しかし1970年代、「コンポジットレジン」と呼ばれる、歯の色に近いレジン接着技術が開発されました。これにより、審美的に優れ、歯と化学的に接着する詰め物やセメントの開発が進み、歯科治療は一変しました。

コンポジットレジンを使うことにより、歯を削る量が減って、長期的にもより良好な結果が得られるようになってきました。

歯の接着の応用の具体例

1. 深い虫歯

深く大きな虫歯で、歯の神経(歯髄)までほぼ達していて、症状が特になく、歯髄の炎症がほぼない状態というケースがあります。虫歯を全部取ると神経が露出し、完全にルートキャナルになってなってしまうような場合でも、神経に接するごく一部の虫歯をあえて残して、その部分を消毒して特殊な材料で覆い、その後、コンポジットレジンで修復する治療が行われています。

2. 歯の破折

外傷で歯が大幅に欠けた症例で、歯髄がむき出しになりそうなケースでも、壊れた歯を接着技術で元の形態に復元したり、あるいはコンポジットで修復し、同じようにルートキャナルやクラウンを避けられる場合があります。

まとめ

接着技術によって、ルートキャナルやクラウンを避け、歯を保存できる場合があります。自分の歯にこだわりたい方、再治療の可能性を容認できる方は、かかりつけの歯医者さんで相談してみるといいでしょう。

[健康な歯でスマイルライフ]

歯科における笑気吸入鎮静法

<はじめに>

ある統計によれば、日常の出来事で恐怖に感じることの2番目にランクされるのが、歯科医院を訪れることだそうです(ちなみに1番は公の場でのスピーチです)。歯科で何に恐怖を感じるかについては、やはり痛みに対して、特に歯科の局所麻酔の注射に不安を感じる方が多いようです。

このような歯科の恐怖を和らげる方法として「笑気ガス」を用いた鎮静法があります。アメリカの歯科では3割以上の歯科医院でこの笑気吸入鎮静法(笑気濃度20 〜 30%、酸素70〜 80%)が使われているとの報告があります。中でも小児専門の歯科では、ほぼ全ての医院が常備しているのではないかと思います。しかし、日本では笑気ガスを使用する歯科医院はごくわずかです。日本人の我慢強い国民性のためではないかと想像しますが、コスト面も関係しているのかもしれません。

笑気は1772年に発見された気体ですが、医療に応用され始めたのはそれから100年以上後のことです。今回は、歯科で使われる笑気を用いた吸入鎮静法について解説します。

<笑気ガスの特徴>

無刺激、ほとんど無臭、透明、不燃性。重さは空気の1.5倍。

<歯科での笑気ガスのメリット>

  1. 不安や恐怖心を緩和し、より治療に協力的になる。
  2. 痛みの閾値を上げる(痛みを感じにくくする)。
  3. 高血圧、糖尿病、心疾患、歯科治療で失神した既往などのある患者さんのストレスを軽減し、いつでも酸素吸入可能な状態にあるので、治療の安全性が高まる。

<笑気吸入鎮静法の利点>

  1. 静脈注射の必要がない。
  2. 笑気濃度を下げ、酸素吸入により、迅速に鎮静状態から回復する。
  3. 治療後30分で運転して帰宅できるので、付き添いがいらない。
  4. 酸素を併用するので緊急時にも容易に対応できる。

<笑気吸入鎮静法の欠点>

  1. 鼻にマスクをするので上顎の前歯の治療がやや困難になる。
  2. 風邪などで鼻呼吸ができないと使用できない。
  3. 精神鎮静剤を静脈内投与して行う鎮静法よりも、鎮静効果の成功率がやや低い。

<まとめ>

笑気は全身麻酔にも使用可能な麻酔ガスの一種ですが、歯科で使用する笑気は濃度20~30%の低濃度で酸素と併用して使用するので安全で、意識を消失することはありません。つまり歯科治療をリラックスしてできるように笑気の助けを借りるというものです。恐怖心、不安感を抑制する効果が期待でき、歯科の麻酔の痛みも感じにくくなりますので、恐怖心の強い子どもでも容易に治療ができるようになることが多いです。笑気使用後も自分で車の運転が可能など、鎮静状態からの回復が迅速なのも特長と言えます。

[健康な歯でスマイルライフ]

新しいタイプの口腔ガン

従来、口腔ガンはガン全体の5%程度で、それほど多いガンではありませんでした。また喫煙者や大酒飲みに多いという統計があり、生活習慣に起因したガンであると言われてきました。しかし近年、新型の口腔ガンが増えており、口腔ガンの概念が変わってきています。今回は新型タイプの口腔ガンを中心に、口腔ガンについて書いていきます。

従来型と新型の口腔ガンを比較すると次の通りです。

新型の口腔ガンはHPV16 が関係したSexually transmitted diseases (STDs)であること多く、急速に患者数を増やしています。比較的稀だった口腔ガンは、ガン全体の6番目に多くなり、全体の口腔ガンの男女比は、従来6:1程度だったものが現在では2:1と、女性の増加傾向が顕著になってきました。

口腔ガンのリスクファクター

喫煙や飲酒、特に両方が重なるとそのリスクは飛躍的に増すと言われています。最近ではHPV感染、その他にも過剰な日焼けが口唇のガンのリスクファクターとして知られ、注意が必要です。またマリファナは口腔ガンの発生を増やすとの報告があります。免疫能力の低下によっても口腔ガンになりやすいので、規則正しい生活習慣や健康な食生活を心がけることは、口腔ガンを予防する上でとても重要です。

口腔ガンの症状

初期は口腔の粘膜に白い斑状の赤い斑状の変化が出ることが多いですが、症状がないことがほとんどです。進行すると予期せぬ出血や麻痺、感覚異常、痛みが、口腔や顔面、首、のどなどに起こります。しつこい痛みや出血が2週間以上続く場合は、要注意です。

口腔ガン検査(Oral Cancer Screening)

アメリカの歯科医師会によれば、アメリカ人の60%が毎年1回は歯科医を受診しているそうです。しかしその中でも、定期的に口腔ガンの検診を実施している歯科医は、子宮ガンや乳癌など他のガンと比べるとまだまだ少ないというのが現状で、アメリカの歯科医師会がその啓蒙活動に力を注ぎ始めています。早期に前ガン状態などの異常を発見できれば、良好な予後が期待できます。皆様も定期的な歯科検診を欠かさず、口腔内の粘膜の異常を早期に発見してくださいね。

[健康な歯でスマイルライフ]

予期せぬ歯の移動について

歯は矯正力のような力を加えない限りは動かないと思っている方が多いですが、何もしなくても少しは動いています。歯を支える骨もダイナミックに代謝していて、造ると壊すを繰り返して一定ではありません。家に例えると、家の土台自体が動いているのです。歯の矯正後のリテーナー(保定装置)や部分入れ歯を1カ月もしていないと、もう入らなくなったり、入りにくくなるのは、歯が動いている証拠なのです。今回は、予期せず歯が移動するケースについて書いていきたいと思います。

1. 歯の矯正後の後戻り(Relapse)

歯に力をかけて移動して矯正が終わっても、歯の周囲の靭帯、繊維組織、筋肉、骨がしばらく落ち着いていない状態があります。落ち着くまでには一定の時間がかかり、動かした直後は矯正で伸び縮みした歯の周囲の靭帯や繊維組織などが元に戻ろうとします。歯の周囲の組織の力が働くために、動いた歯が元の位置に戻ろうとするのです。この歯の周囲の組織が安定するまで、一定の時間がかかります。従って矯正後の一定期間はリテーナー(保定装置)の装着が必要になります。その期間は矯正の治療内容や年齢などによって変わります。

2. 歯ぎしりによる歯の移動

臨床で患者さんを診させていただいていると頻繁に遭遇するのが、歯ぎしりによって歯が動いてしまうケースです。噛む際に歯の特定の部分だけが強くぶつかり、知覚過敏や痛みを引き起こすのです。原因としては歯ぎしりが左右均等でなく、特定の歯だけに力が加わっていることが考えられます。噛み合わせで外傷を引き起こしていますので、噛み合わせの調整が必要です。ナイトガードも必要ですが、場合によっては上下同時に作成して装着し、歯の移動を防止する必要があるでしょう。

3. 歯周病による歯の移動

歯周病が進行し、歯を支える靭帯や繊維組織が緩んでくると、ほんの小さな力でも歯が動いていきます。歯周病治療の他に歯のマイナーな矯正や固定、リテーナーの装着が必要になってきます。

4. 親知らずによる歯の移動

親知らずが横向きに埋まっていて手前の歯を押すような状態だと、さらに前方の歯の歯並びに影響を与えることがあります。このような場合は、埋まっている親知らずの抜歯やその後の矯正治療が必要になってきます。

5. 隣の歯の喪失による歯の移動

上下左右の歯がなくなると、近隣の歯は無くなった歯のスペースの方に移動する傾向にあります。インプラント、ブリッジ、部分入れ歯などの補綴(ほてつ)治療が必要になってきます。

今回は予期せぬ歯の移動を引き起こすケースを挙げてみました。この他にも指をくわえたり、舌で歯を押す癖(悪習癖)などがあると歯が動く原因になります。早めに歯科医に相談し、対処してもらいましょう。

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アメリカの歯科保険の裏事情 〜開業歯科医の立場から〜

日本とアメリカの医療保険システムが全く異なることは、皆さんもよくご存知だと思います。今回は開業歯科医の立場から見たアメリカの歯科保険の裏事情について書いていきたいと思います。

アメリカの歯科保険は、個人個人で異なる

日本では国民皆保険が浸透しており、歯科治療には国民健康保険でカバーされる部分と、カバーされない自費扱いの二通りしかありません。歯科医の立場からすると、診療報酬のクレーム先は国民健康保険の1カ所で基本的には大丈夫です。しかしアメリカでは、個人が勤務先などを通して加入している保険会社にクレームしなければいけません。さらに同じ保険会社であっても、各々で契約内容が異なるため、あらかじめ個人の契約内容を把握しておく必要があります。一年の限度額、どの治療にどのくらいの比率が保険でカバーされるか、あるいは治療をするにあたって生じる患者さんの一定額の負担分(免責)など詳細に契約されており、各々について調べなければなりません。請求すれば保険会社から契約内容が送られてくるのですが、不明瞭な点はその都度、さらに問い合わせて確認します。

保険会社によって支払いの判断は異なる?

車の保険でもそうでしょうが、あるクレームに対して、比較的すんなり保険で払ってくれる傾向のある会社とそうでない会社は確かに存在します。実際に歯科保険業務をしていると一目瞭然です。前は支払いが良かった会社が、社長が変わったらひどい対応になるということもあります。我々はアメリカ歯科医医師会(ADA)の治療コードを基準に保険会社にクレームするのですが、その保険会社で独自の基準を設け、支払いに応じないことも多いのです。

例えば、歯周病でADA コードに照らし合わせてディープ・クリーニングを計画し、患者さんに説明するとします。そして保険会社にクレームする訳ですが、保険会社によってはすんなり払ってくれません。さらなる情報(レントゲン、歯周ポケットのデータなど)を要求し、支払いを遅らせようとします。レントゲンを送ったのに送られてないとか、理不尽なことも多々あります。ひどい会社は科学的合理性を欠くような独自の判断基準を作って支払いを却下するのです。自分たちに有利な基準を作って査定し、支払いを拒むのですから、たまったものではありません。このようなことが色んな保険会社で個別に起きます。保険会社が支払わないと、負担はすべて患者さんの負担になります。そうすると患者さんの不満は多くの場合、保険会社でなく、歯科医院にぶつけられてきます。私たちも必死で何度も保険会社と交渉を何度も重ねて、保険で支払ってもらえように最善を尽くしています。このようにアメリカの歯科治療の舞台裏では、保険会社と歯科医院側の攻防が日夜繰り広げられているのです。

今回はアメリカにおける歯科保険の裏事情について触れてみました。少しでも参考になれば幸いですが、ちょっと愚痴っぽくなったかもしれません。失礼しました。

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