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Author: 長野 弘子

ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)。ニューヨークと東京をベースに、ジャーナリストとして多数の記事を寄稿。東日本大震災をきっかけに2011年にシアトルへ移住し、災害や事故などでトラウマを抱える人々をサポートするためノースウエスト大学院で臨床心理学を専攻。米大手セラピー・エージェンシーで5年間働いた後に独立。現在、マイクロソフト本社の常駐セラピストを務める。hiroko@lifefulcounseling.com 

頭をスッキリさせて「今」にフォーカス! マインドフルネスの正しい実践法〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

頭をスッキリさせて「今」にフォーカス! 
マインドフルネスの正しい実践法

明けましておめでとうございます。新年の抱負はお決まりですか? この機会に、あなたの人生を大きく変えるかもしれない「マインドフルネス瞑想」を試してみましょう。

マインドフルネスとは、「今ここ」にいる状態に注意を向けること。不安感などのネガティブ感情を落ち着かせるのに効果的な方法として広く普及しています。「試したが長続きしなかった」、「忙しくて時間がない」、「効果が感じられなかった」といった声も聞くので、今回は1、2分で実践できる、簡単かつ効果的な方法をご紹介します。

まずは、始める前にストレス度合いをチェック。ストレスが最大の状態を10、完全にリラックスしている状態を0とすると、あなたは今どのくらいですか? 数値を記録したら、マインドフルネス瞑想に入ります。やり方は、深呼吸をゆっくり10回するだけ。その時に、体内に入ってくる空気の動き、肺やお腹の感覚をただ感じます。

私たちは1日に2万回以上も呼吸をし、毎分6リットルの空気を肺に取り込み、30兆個の細胞に新鮮な酸素を送っています。日頃はあまり意識を向けない自分の体に感謝しながら、深呼吸をしましょう。息を吸う時には新鮮な酸素を取り込み、息を吐く時には老廃物を外に出すイメージで行います。それではどうぞ。

深呼吸が終わったら、今の体の感覚と気分をゆっくりと味わってみてください。「気分が良くなった」、「意外と長く感じた」、「次のことを考えていた」など、反応はさまざまだと思います。最後にストレス度合いを再度チェックしてみましょう。始める前と比べて、数値に変化はありましたか?

少しでも気分が落ち着いた人は大成功です。この気分の落ち着きこそ、私たちのあるがまま、マインドフルネスの状態です。否定も肯定もなくただ存在して、今ここにいる自分を感じること、それが本来の自分とつながっている状態、つまりマインドフルネスなのです。その逆に、恐れや不安にとらわれて本来の自分とのつながりが外れてしまうと、好きなことをしているはずなのに集中できず、心の底から楽しめません。

「あなたは今、100%安全ですか?」という質問に対して、今ここに沿った思考と感情をしている人は「はい」とすぐに答えられます。しかし、過去の出来事や未来のリスクを思い浮かべる人ほど、とっさに「はい」とは答えられません。自分の脳を机に例えるなら、今ここと関係ない思考でいっぱいの状態は、ごちゃごちゃ物が散乱している机。今ここにつながったマインドフルネスの状態は、きれいに片付いてスペースがたくさんある机です。

「今ここだけに集中して生きると、計画性のない刹那的な人生になるのではないか」という誤解もあります。実はその逆で、マインドフルネス瞑想は人生の目標を見つけるのにも役に立ちます。

私たちは不安の中にいると、比較・競争・分断の思考が優勢になり、他人の目が気になったり影響を受けたりしてしまいがち。その逆に、落ち着いている状態では俯瞰・協力・調和の思考が優勢になり、他人がどう思うかよりも自分の本当にやりたいことや自分のできることに注意が向くのです。

不安や焦りが出るたびにマインドフルネス瞑想を実践していると、未来も過去も頭の中にしか存在せず、私たちはこの一瞬にしか生きていないということに気付きます。この瞬間をどう感じて、どう行動するかの積み重ねが人生なのだと実感すると、人生の目標ですら真の生きる目的ではなく、この一瞬を充実させるための手段だとわかるでしょう。ゲームで次々とチャレンジをこなしてステージをクリアする時、そのチャレンジ自体が楽しいですよね。人生もそれと同様、山あり谷ありの試練の中で移り変わる感情を味わい、チャレンジ自体を楽しむのが生きる目的と言えるかもしれません。

こうした心持ちで生きると、プロセスにフォーカスするので結果に執着しなくなり、失敗への恐れが減ります。それだけでも十分なメリットですが、さらに今ここに集中できるので新しいアイデアがひらめきやすく、失敗への恐れが低い分、積極的な行動につながり、願望が実現する可能性も高まります。

今ここを我慢して結果を重視する生き方から、今ここのチャレンジを味わう生き方へ。もし大勢が今を味わう生き方へ変われば、比較・競争の世界から、協力・調和の世界に近づくことができるかもしれませんね。
 

 

いじめから戦争までストレスが関係?「トラウマ反応」防ぐには〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

いじめから戦争までストレスが関係?
「トラウマ反応」防ぐには

何かと忙しい年末、ストレスがたまっていませんか?現代社会で生きる私たちは、多くのストレスを抱えて生活しています。ストレスは常に身近な存在とも言えますが、きちんと対処の仕方を知っておかないと、いつの間にかトラウマに変わっているかもしれません。今回は、「ストレス反応」と「トラウマ反応」の違いについて紹介します。

私たちはストレスを感じると、体内環境を調整する自律神経の交感神経が優勢になり、「闘争」や「逃走」のホルモンであるアドレナリンや、ストレスホルモンであるコルチゾールが分泌され、体内のエネルギーレベルが上がります。そのエネルギーを使って行動し、問題を解決できれば気分も良くなり、「自分はやればできるんだ」という肯定的な自己評価が生まれます。適度なストレスが健康に良いとされるのは、私たちはストレスにより積極的に課題に取り組み、それを解決することで前向きに人生を送れるからです。

しかし、機能医学を軸にしたトラウマ療法を提唱するエイミー・アピジアン博士によると、こうした通常のストレス反応ではなく、課題が解決しないままストレスホルモンが分泌され続けて体が疲弊し、活動をシャットダウンしてしまう、トラウマ反応と呼ばれる状態があるとのこと。横隔膜下の内臓を制御する「背側迷走神経」が優位になり、身体を守るために省エネモードに切り替わります。

「凍りつき」反応とも言われるこの状態に陥ると、私たちの体はエネルギー不足に。日常をこなすのもやっとになってしまいます。周囲からは普通に生活しているように見えても、体は重く、心の中は焦りや罪悪感、無力感などの自己否定の声でいっぱいです。

トラウマ反応を引き起こしやすいのは、責任感の強い真面目な頑張り屋タイプ。過度に他人に気を遣う反面、家の中では家族に怒りをぶつけたり、不安やうつ症状が現れたりする場合も。長く引きずると、免疫機能や甲状腺機能の低下、低血圧、消化不良、便秘、慢性痛、慢性疲労、冷え性など、体にさまざまな悪影響が出てきます。

体調が悪いのに、病院に行っても異常が見つからない場合、トラウマ反応の可能性も考えられます。誰かと話していても感情や現実感を伴わない、体の感覚が遠く感じる、という症状があれば要注意。

2022年11月に本コラムでも紹介した、逆境的小児期体験(ACE)を経験した人への大規模調査では、大人になってもトラウマ反応がいかに心身の健康を損ねるかを如実に示す結果が報告されています。虐待やネグレクトなどのACE10項目のうち4つ以上当てはまる人は、当てはまらない人に比べて学習や素行問題が32.6倍、うつは4.6倍、自殺未遂は12倍、アルコール依存症は7.4倍、慢性疲労症候群が6倍、線維筋痛症が4倍も増加、寿命にいたっては約20年も短いという驚くべきリスクが明らかになりました。

アルコールや薬物に依存したり、他人や自分を攻撃したりするのも、心の中に巣食う未解決の問題から目をそらすため。虐待やいじめ、さらには紛争や戦争もまた、個人単位や国家単位での未解決の問題がトラウマ反応を引き起こし、それが世代を超えて引き継がれている状態とも言えるでしょう。

では、このトラウマ反応から抜け出すには、どうすれば良いのでしょうか? まずは、やりたくない家事や仕事、不快な人など、日常生活で感じる小さなストレスに気付くことです。数分で良いので深呼吸してゆっくりお茶を飲み、温かさや香りを含め五感で味わってください。体に意識を向けて、少しずつ自分の安心できる時間を増やしていきます。体調の悪い自分を受け入れ、痛くない体の部分を探して感謝を伝えましょう。すると、自己否定が減って自律神経は次第に落ち着き、徐々に自分の欲求を認め、苦手な人からの誘いを断ったり、自分の意見を言えたりできるようになります。

ストレスに対して自分の中でどう折り合いをつけていくかが、トラウマ反応を回避するための鍵。まずは温かい言葉をかけて自分を労ることから始めてみましょう。全身をほっとする感覚で満たしてあげてくださいね。
 

参考文献

▪️The Trauma Healing Accelerated by Dr. Aimie Apigian 
https://www.traumahealingaccelerated.com 

現代の「奴隷制」、日米で見えてきた子どもの人身取引・性加害の闇〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

現代の「奴隷制」、日米で見えてきた
子どもの人身取引・性加害の闇

アメリカでは、スーパーのチラシにも失踪した子どもの写真が掲載されるほど、誘拐を含めた子どもの人身取引(人身売買)が増えています。人身取引とは、立場の弱い人を支配下に置き、売春や強制労働をさせたり、臓器売買を行ったりする深刻な犯罪行為。脅迫や暴力、誘拐、詐欺などがあれば、たとえ被害者が同意していても人身取引とみなされ、被害者が18歳未満の場合は、それ以外の状況でも人身取引に該当します。

国際労働機関(ILO)が2022年に発表したデータによると、人身取引の被害者は2016年から2021年までの5年間で1,000万人も増え、推定5,000万人に上ります。内訳は約2,760万人が強制労働(そのうち約630万人が性的搾取)、そして約2,200万人が強制婚となっています。また、公益社団法人のセーブ・ザ・チルドレンの調べでは、人身取引全体で子どもが占める割合は約27%とのことです。

アメリカで今夏公開された、子どもの人身取引の実情に迫る映画「サウンド・オブ・フリーダム」では、世界で200万人もの子どもが毎年連れ去られ、性奴隷や臓器売買の犠牲になっており、奴隷制時代の被害者数を超えているという衝撃的な事実が明かされました。連れ去りの多くが南米やアジア地域で行われ、悲しいことに、その大半がアメリカの富裕層の元へ送られています。

「ドラッグは一度売れば終わりだが、子どもは高値で何度でも売れる」という信じがたい理由で、多額な利益を生むビジネスとして拡大の一途をたどる人身取引。政情や経済が不安定な地域を狙い、ボランティアを装って割の良い仕事を紹介するとだまして連れ出し 、暴力で無理やり服従させる犯罪行為が横行しているのです。このウクライナ危機でも例に漏れず、支援者になりすました犯罪組織によるウクライナ難民の被害が報告されました。

身の毛のよだつような人身取引は、日本でも被害が続出。犯罪者はSNSやオンライン・ゲームのチャットなど至るところにいて、子どもたちをグルーミング(犯罪行為を目的に子どもを手なずける)して、実際に会う機会を虎視眈々と狙っています。モデルやタレント事務所を装いポルノ動画への出演を強要、オンラインで親密になり性的な画像や動画をばらまくと脅して風俗で強制労働させる、などが典型的な手法。

アメリカでも同様にさまざまな犯罪が潜んでいます。モデルになれる、短時間で稼げるといった甘い言葉に惑わされて、通常の生活を続けながらホテルやオンラインなどで性的に搾取される子どもたちが大勢います。私たちは子どもを守るために、何ができるでしょうか? まずは、こうした人身取引の現状を知ることが必要です。加害者のほとんどは知り合い。オンラインで仲良くなったからと気軽に会うのは危険だと子どもに繰り返し教えましょう。次に、子どもが人身取引に関わっているサインに気付くこと。以下のような兆候が見られたら要注意です。

• 頻繁に学校を休んだり授業を抜けたりする。
• 帰宅時間が遅くなる。
• 体にあざや傷が目立ち、ぼーっとしているか不安な様子を見せる。
• 支配的で年齢がかなり上の恋人ができる。
• 服装やメイクが急に派手になる。
• ドラッグをやっている疑いがある。

日本には女子高校生を売りにして男性と交流することで利益を上げる「JKビジネス」、男性と関係を持ち金銭を受け取る「援助交際」や「パパ活」など、子どもや女性を搾取するシステムが多数存在します。また、一部で悪質な条件が問題視される外国人技能実習制度が、人身取引だと国際的批判を浴びています。最近では、旧ジャニーズ事務所の故ジャニー喜多川氏による長年にわたる大規模な性加害の実態も明るみに出ましたが、マスコミや芸能界では周知の事実でした。これらを容認し消費する社会全体が人身取引を拡大させる土壌を作っているとも言えるでしょう。

子どもを守るのは、社会ひいては私たち大人ひとりひとりの仕事。グルーミングにだまされないためには、心の隙間に入り込まれないよう子どもの心をしっかりと満たしてあげることが大切です。子どもを毎日抱きしめて「大好きだよ」と伝えることから始めてみませんか。
 
子どもが人身取引や性加害の被害を受けていると思ったら

・緊急の場合:警察(911)に通報

・全国人身取引ホットライン(National Human Trafficking Hotline)
   ☎1-888-373-7888、テキスト:BeFree(233733)、  
  https://humantraffickinghotline.org

・全国行方不明・搾取児童センター(National Center for Missing & Exploited Children) ☎1-800-843-5678、www.missingkids.org/gethelpnow


参考文献

(1)50 million people worldwide in modern slavery 
https://www.ilo.org/global/about-the-ilo/newsroom/news/WCMS_855019/lang–en/index.htm 
(2)Child Trafficking: Myth vs. Fact 
https://www.savethechildren.org/us/charity-stories/child-trafficking-myths-vs-facts 
(3)ウクライナ危機が生み出す新たな人身売買の危険 
https://www.japanforunhcr.org/news/2022/Ukraine-crisis-creates-trafficking-risks 
(4)人身取引・売買は日本の子どもたちにも起こっている?日本や海外の法規制や対策、行われている支援や寄付先のおすすめ団体とは 
https://gooddo.jp/magazine/peace-justice/human_trafficking/903/ 
 (5)Human Trafficking: Protecting Our Youth 
https://www.childwelfare.gov/pubPDFs/trafficking_ts_2020.pdf 

 

アロマンティック・アセクシュアルとは?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

アロマンティック・アセクシュアルとは?

多様な性のあり方を認めようとする世界的な流れの中で、最近よく耳にするのが「アロマンティック・アセクシュアル」です。アロマンティックは他者に恋愛感情を抱かない人のこと、アセクシュアルは他者に性的魅力を感じず、性欲が他人に向かない無性愛者を指し、英語では「Aroace(アロエース)」、日本語では「アロマアセク」とも呼ばれます。それぞれセクシュアル(sexual)、ロマンティック(romantic)の頭に否定を表す「ア(a)」が付きます。
 
アセクシュアルは生まれつきの性質であり、ストレスやトラウマなどで性欲が低下してしまう勃起不全(ED)や性的欲求低下障害(HSDD)、個人の信念や宗教上の理由による「禁欲」とは異なります。そのため、欧米では異性愛、同性愛、両性愛に並ぶ「第4の性的指向」として認知が広がりつつあります。カナダ・ブロック大学の心理学者、アンソニー・ボガート教授の研究によると、イギリスの人口のうち約1%がアセクシュアルに当てはまり、日本でも2019年に実施された大阪市民へのアンケート調査でアセクシュアルを自認する市民が人口の0.8%いたことが報告されています。
 
昨年1月、アロマアセクの男女が主人公のTVドラマ「恋せぬふたり」がNHKで放映され、大きな話題となりました。「恋しない人間なんていないもんね」と同僚が話す場面で、恋愛感情を理解できないアロマアセクの女性は複雑な表情を見せます。それに対して、同じくアロマアセクの男性は「恋しない人間もいると思いますよ」と言います。
 
このドラマでは、「普通」の恋愛をして「普通」に結婚して欲しいと期待する親や周囲の人間も描かれます。実際、「恋人作ったら?」、「選り好みし過ぎ」、「運命の人とまだ出会っていないだけだよ」と言われて悔しい思いをしたり、人間として何かが欠落しているのではと思い悩んだりするアロマアセクは大勢います。「冷血漢」、「愛情がない」などレッテルを貼られ、中傷的な言葉を投げかけられるケースも見られます。
 
それでは、アロマアセクの人は恋愛や性欲に関してどのような感覚を持っているのでしょうか? 彼らはドラマの恋愛シーンを観てもドキドキして興奮することはなく、体に触れられたり抱き寄せられたりしてもその意味がわかりません。また、他者に魅力を感じても、恋愛感情には結び付かず、性欲が多少あったとしても性的願望にはつながりません。周りに影響され、思春期には試しにつき合う人もいますが、相手の期待に応えられないので長続きしないのが特徴です。
 
アロマアセクへの大きな誤解のひとつが、「恋愛感情がないので結婚しない」というもの。恋愛感情がなくても、家族や友人にはちゃんと愛情を感じるので、愛情を感じる人と一緒に暮らしたいと望む人もいます。一般的なイメージの結婚とは違うかもしれませんが、信頼をベースにした関係という点では何の変わりもありません。逆に、どんなに深く愛し合っていても時が経つうちに恋愛感情は薄まり、浮気をするカップルもいます。そう考えると、恋愛感情ではない愛情に基づいた絆こそ、パートナーシップに不可欠な要素かもしれません。
 
現在、さまざまな性的少数派が認知されてきており、アロマアセクだけではなく、漫画やアニメの2次元キャラクターを愛する「フィクトセクシュアル」、物に恋愛感情を抱く「オブジェクトセクシュアリティ」(対物性愛者)なども、フェティシズム(性的倒錯)ではなく性的指向のひとつとして理解され始めています。
 
他者に対して恋愛感情や性欲を感じるのが多数派とされる一方で、さまざまな愛情の形があり、その指向性や対象は一枚岩ではないことがわかります。自分が少数派の場合、ありのままの自分を受け入れて、それを大切にすること。子どもや周囲にアロマアセクの人がいれば、理解しようとすることから始めましょう。多数派が「普通」で少数派が「異質」という考えをいったん横に置き、お互いにありのままを受け入れられる関係が築けるといいですね。
 

参考文献

1) Asexuality: prevalence and associated factors in a national probability sample 
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15497056/ 

 2)「大阪市民の働き方と暮らしの多様性と共生にかんするアンケート」
https://www.ipss.go.jp/projects/j/SOGI/%E7%B5%90%E6%9E%9C%E9%80%9F%E5%A0%B120190425%E5%85%AC%E8%A1%A8%E7%94%A8.pdf 

3)恋せぬふたり 
https://www.nhk.jp/p/ts/VWNP71QQPV/ 

自律神経の影響 ~現代人は「サバイバルモード」で生きている?~子どもとティーンのこころ育て

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アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

自律神経の影響 
~現代人は「サバイバルモード」で
生きている?~

「あの人は怒りっぽい性格だね」、「私は心配性なの」、「なぜそんなにやる気がないんだ」など、私たちが性格だと思っている個人の特徴は、実はストレスに対する神経反応なのかもしれません。生物には内臓の機能や代謝といった体内環境を調整する自律神経があり、体をリラックス状態に導く「副交感神経」と、活発化させる「交感神経」の2種類に分かれます。副交感神経が優位な状態では、心身共に落ち着き、消化・吸収、免疫機能もアップします。しかし、ストレスを受け、危険を察知すると交感神経が優位になり、呼吸や心拍数、血圧が上昇し、大量のエネルギーを筋肉に送って、戦うか逃げるかの「サバイバルモード」になります。
 
精神生理学・行動神経学者のステファン・W・ポージェス博士が近年提唱している「ポリヴェーガル理論(多重迷走神経理論)」によると、副交感神経はさらに、社会交流を促す「腹側迷走神経」と、活動をシャットダウンする「背側迷走神経」があり、前述の交感神経を含めて3つの神経システムが自己防衛機能を担っているとのこと。これらは進化の過程において順番に発達してきたものです。
 
まず、魚類時代に登場したのが背側迷走神経。安全な環境下では消化・吸収機能を高めますが、危機に瀕ひ んすると機能停止し「凍りつき」反応を起こします。その次、爬虫はちゅう類時代に発達したのが危機に立ち向かうための交感神経、そして哺乳類に発現したのが社会的つながりに関わる腹側迷走神経です。
 
腹側迷走神経は、群れの中で互いを守り合って生存確率を高めるための社会交流システムと言えます。人類はほかの動物に比べて体が弱いため、この神経が高度に発達しています。顔や喉、耳、心臓、肺に延びる神経系により豊かな表情や声のトーンが生まれ、友好的なコミュニケーションが実現するわけです。SNSで他者と関係を持ち安心したいという欲求も、この腹側迷走神経の働きによるものかもしれませんね。

3つの神経システム発達の流れ
背側迷走神経(魚類期)
「不動化」や「凍りつき」反応を起こす「低覚醒」システム

⬇︎

交感神経(爬虫類期)
戦うか逃げるかの反応を起こす「過覚醒」システム
 
⬇︎

腹側迷走神経(哺乳類期)
個体間のつながりを促進する「社会交流」システム


この3つの神経システムは階層構造をしており、危険を察知すると、いちばん新しい神経システムが優位になります。例えば、誰かと意見の相違があれば、腹側迷走神経がまず優位になり友好的な話し合いを試みます。それがうまく行かなかった場合には交感神経が優位になり、激しく口論になったり、対話を打ち切ったりなどの闘争・逃走反応(過覚醒)を起こします。最後に、強い恐怖などを感じると背側迷走神経が優位になり、思考停止して言葉が出なくなる、体が動かないなどの「凍りつき」(低覚醒)が生じます。
 
ストレスや危機に際してどの神経システムが優位になるかは個人差があり、自分の意思ではコントロールできません。意識的な知覚(Perception)と区別して、こうした体の神経反応を「ニューロセプション(Neuroception)」と呼びます。過去のトラウマ体験やストレスの多い環境下に置かれたことにより、ニューロセプションが過覚醒や低覚醒に傾きやすい人もいます。過覚醒が続くと、怒りや不安、焦燥感に苦しんだり、高血圧や睡眠障害の症状が出たりすることも。その逆に低覚醒状態が続くと、感情の起伏にとぼしくなり、無気力な状態に陥って、体のだるさや低血圧の症状も見られるように。
 
その対策ですが、腹側迷走神経システムを強化することがいちばん。最適な方法は、ポージェス博士の提唱するニューラル・エクササイズです。これは、社会的な関わりを通して自律神経の乱れの調整と安定を繰り返すことで、過覚醒や低覚醒になりにくくするというもの。例えば、赤ちゃんが泣いたらあやす、子どもの愚痴や文句を聞いてあげる、しゃべりたがらない時には無理に聞き出さないなど、相手が心の底から安心できる場所を提供するようにします。ストレスフルな現代社会、多くの人が過覚醒の「サバイバルモード」で生きています。日常的にリラックス状態を感じる時間を増やし、社会交流システムの神経を活性化させていきたいですね。
 

参考文献

ポリヴェーガル理論入門:心身に変革をおこす「安全」と「絆」 
ステファン・W・ポージェス著
 
https://www.shunjusha.co.jp/book/9784393365540.html 

中学進学を前に親も心の準備を〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

中学進学を前に親も心の準備を

まだまだ幼いと思っていた子どもが、いつの間にか小学校を卒業して中学生に。思春期に差しかかる子どもは中学に入ると、より多感な年頃を迎えます。中学生の息子の話によると、トイレにたむろして授業をサボり、奇抜な姿で登校し、中にはドラッグを持ち込んだり車を盗んだりして捕まる生徒もいるとのこと。アメリカの中学生のリアルな姿が目に浮かびます。新しい環境にとまどい、上級生の言動などに緊張やストレスを覚える子も多いことでしょう。親子共に不安を和らげ、子どもが新生活にスムーズになじめるようにする方法をいくつか紹介します。
 
まず、アメリカの中学校の授業システムは日本と大きく異なり、ホームルームはなく担任の先生もいません。大学の講義と同じように、生徒は授業ごとに教室を移動する必要がありますが、休み時間はたったの5分程度。慣れない中で大勢の生徒と入り交ざって時間通りに教室にたどり着けるか、心配する新入生もいるのではないでしょうか。大抵の学校では始業前の8月下旬に説明会があるので、親子で参加して学校の様子を見ておきましょう。事前に時間割をチェックし、各教室の場所を把握できれば子どもは安心します。また、それぞれ個別のロッカーが割り当てられるので、学校側がロッカーの鍵を支給するかどうかを確認し、鍵を事前に入手して使い方を練習するのも良いですね。ほかにも、指定の文房具やノート類をそろえる、同じ中学校に通う友だちと夏休み中に遊ばせるなどして、準備を進めるのも有効です。
 
授業内容も難しくなるので、最初のうちは子どもが授業や宿題についていけるようにフォローしましょう。慣れてきたら自主性を伸ばすためにも、基本的には本人に任せて。わが家では、親が介入するのは未提出の宿題の通知が来た時のみと決めています。また、中学にはさまざまな部活動やクラブがあります。子どもが興味を持ちそうなものが見つかれば、参加を促して活動範囲を広げる手助けをしてあげましょう。
 
中学生では感情の起伏も激しくなり、ちょっとしたことでやる気や自信を失うことも。自身の中学時代の挫折や失敗談を子どもに話し、「失敗しても大丈夫」、「不安を感じるのは自然なこと」と教えてあげてください。何が不安かわからない子もいるので、勉強、友人関係に関してどう思っているかを聞き、不安を感じているようであれば、解決策を話し合いましょう。「いじめを受けたり、目撃したりしたらどうする?」、「友だちに嫌なことを強要されたら?」など、事前に対応がわかっていれば、いざという時に落ち着いて行動できる可能性が高まります。
 
また、思春期の子どもは、自分がどう見られているかを過剰に意識し、大人が考えている以上にピアプレッシャー(同調圧力)によるストレスを感じやすいもの。親よりも友だちを優先するようになり、「取り残されることへの恐れ(FOMO:Fear of Missing Out)」からSNSが手放せない子もたくさんいます。子どもがなんとなく元気がないと気付いたら、まずは話をじっくり聞いてあげましょう。親が自分を無条件で受け入れてくれていると思えば、子どもは本当に助けて欲しい時に親を頼ります。「悩みがあればいつでも言ってね」と繰り返し伝え、深呼吸や好きなものリスト作りなど、気持ちを落ち着かせる方法を教えておくのもいいでしょう。また、親が子どもの話をダメ出しせずに聞いてあげると、子どもも自然と聞き上手になり、良好な友人関係を構築できます。
 
ただし、反抗期真っ盛りの子どもでは、親がいくら傾聴しようとしてもうまくいかない場合があります。自我が育っている証拠だと喜び、長い目で見守っていたいところですが、毎日のように怒鳴り合いのけんかになる、口を利かない、成績が急に落ちるなど目に余るようなら、うつや不安症状かもしれません。2週間以上、同じ状態が続くのであれば、専門機関のサポートを受けることも検討しましょう。備えあれば憂いなし。思春期におけるさまざまな課題に親子で取り組みながら、子どもが充実した中学生活を送れるよう、支えていけるといいですね。
 
 

夏休み中に注意したい子どもの動向 ~スマホ・SNS依存に気を付けて~ こどもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

夏休み中に注意したい子どもの動向 
~スマホ・SNS依存に気を付けて~

 
朝起きるとすぐにスマホをチェック、食事もTikTokやSnapchatなどのSNSを見ながらで、親子の会話はゼロ。そんな子どもに親はイライラを募らせ、親子げんかが絶えないといった相談が増えています。親として、どう対応すれば良いのか、本当に悩みますね。
 
若者のメンタルが悪化する原因のひとつとしてSNSの使用が取り沙汰されてきましたが、今年2月にCDC(米疾病対策センター)から発表された調査結果によると、2021年にアメリカの女子高生の約3人に1人が自殺を真剣に考えたことがあるそう。さらに、女子高生の57%が慢性的に「悲しい」または「絶望的」と感じており、これは過去10年間で最悪の数字です。自殺を真剣に考えたことがある男子高生も、女子よりは少ないものの、2011年の13%から14%に増加しています。
 
若者のメンタル悪化とSNS普及率には相関性が見られ、コロナ禍前から規制を呼びかける声が強まっていました。今年5月には、アメリカ心理学会によりSNSに関する初の健康勧告も。利用時間を減らすこと、14歳までは子どものプライバシーは尊重しつつも自傷行為や自殺などの内容がないか親がチェックすることなどを推奨しています。また、SNSをやめたいのにやめられない、うそをついてまで使い続ける場合は要注意と、警鐘を鳴らしました。
 
SNSの多くは、ギャンブル業界で広く使われている中毒性を高めるための行動心理学の手法を用いています。有名なのが、インスタグラムも取り入れている「可変報酬」です。これは、投稿に付く「いいね!」の数を留保しておき、予想よりも少ない「いいね!」の数にがっかりさせた後、一気に表示するというもの。快楽物質であるドーパミンが脳に大量分泌され、依存性が強まるのです。ほかにも、完成したものよりも、未完成のもののほうが記憶に残りやすくなる「ツァイガルニク効果」、報酬や反応をいつ得られるかわからない状況下では価値をより高く感じる脳の仕組み「不定期強化」などを利用して、ユーザーを長時間SNSに滞在させるよう仕向けています。
 
ターゲット広告や中毒性のあるアルゴリズムの存在を理解している大人でさえも、なかなかSNSをやめられないのですから、脳が未発達な子どもに「やめなさい」と言っても効果がないのは当然です。それではどうすれば良いのでしょうか?
 
まず、SNSを利用することでなぜメンタルが悪化するのかを理解すること。原因のひとつとして、FOMO(Fear of Missing Out)と呼ばれる「取り残されること、大事なものを見逃すことへの恐れ」があります。
 
次々と表示される友人たちの旅行や外食の写真、楽しそうなフィードを見ていると、他人の人生が自分よりも充実して素敵なものに思えてきます。さらに自分が誘われていないグループ写真などを見ると、自分だけ取り残された気分に。そして、自分を認めて欲しいという承認欲求を満たすことを目的にSNSを続ければ続けるほど、比較競争の罠わ なにはまって抜け出せなくなるのです。
 
その一方で、FOMOをほとんど感じない人もいます。そうした人の特徴として挙げられるのが、前回記事で「子どものやる気を引き出す方法」として取り上げた3つの心の欲求「自律性・有能感・関係性」が満たされていること。つまり、自分のやりたいことを自分で決めて実行する、自分の力で物事をやり遂げる、そして自分は他人から価値を認められて尊敬されていると思う人は、SNSによりメンタルが悪化することはあまりありません。
 
SNS依存気味の子どもは、ただでさえ心の欲求が満たされていないので、頭ごなしに否定したりSNSを一方的に制限したりするのは逆効果になるでしょう。前回記事の心の欲求を満たすための子育て法を試すなどして、子どもがなぜSNSをやりたいのかという気持ちを聞いてあげてください。子どもの自律性・有能感・関係性への欲求を満たす対話を根気強く続けることは、SNS依存の予防だけではなく、子どもが将来充実した人生を送るための近道でもあるかもしれませんね。
 
参考:

(1)Nearly a third of teen girls say they have seriously considered suicide, CDC survey shows 
https://www.cbsnews.com/news/teen-girls-suicide-depression-mental-health-cdc-survey/ 
 
(3)Motivational, emotional, and behavioral correlates of fear of missing out 
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0747563213000800?via%3Dihub 
 
(2)Dopamine, Smartphones & You: A battle for your time 
https://sitn.hms.harvard.edu/flash/2018/dopamine-smartphones-battle-time/ 

 

 

夏休みを最大限に生かして子どものやる気を引き出す方法〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

夏休みを最大限に生かして
子どものやる気を引き出す方法

約2カ月半と長いアメリカの夏休み、子どもには充実した時間を過ごして欲しいですよね。そこで今回は、子どものやる気を引き出し、将来役に立つ習慣をひとつでも身に付けてもらうためのコツを紹介します。

まず、やる気と言っても、2種類あるのをご存じですか? 心理学者のエドワード・L・デシ氏は、自分の興味や好奇心から湧いてくるやる気を「内発的動機付け」と呼び、それにより充実感、達成感、自己成長感といった「内的報酬」を得られるとしました。ゲームなどに夢中になっている子どもは、内発的動機付けにより喜びや充実感を覚えている状態。その逆に、給与、地位、評価など外から与えられる報酬を「外的報酬」と呼び、報酬をもらえるから、もしくは罰を受けたくないので行動することを「外発的動機付け」によるものとして区別しました。

報酬と罰に基づく外発的動機付けは即効性が期待できる一方で、報酬慣れしてしまい、報酬がなくなれば行動しなくなるリスクも。外発的動機付けが必ずしも悪いというわけではありません。お手伝いや宿題を何も言わずに進んでする子どもは、ほんのひと握り。行動を渋る子どもに対して、それが終わったらゲームや動画などのご褒美を与えるのは有効な手段です。ただ、外発的動機付けを多用し過ぎると、内発的動機付けによる行動の意欲を下げることにもつながります。

1969年にデシ氏が行った心理実験では、立体パズルを解いたら1ドルを受け取るグループ、受け取らないグループに分けてパズルを行ってもらいました。すると、外的報酬を受け取ったグループのほうが、パズルに取り組む時間が短いという結果に。デシ氏は、外的報酬が与えられたことでお金のためにやっているという意識が生まれ、パズルを解くことの純粋な楽しさ、つまり内的報酬が損なわれて内発的動機付けによる行動が減ったためと結論付けました。

こうした、外的報酬により逆にやる気が損なわれる現象を「アンダーマイニング効果」と呼びます。例えば、趣味で続けていた音楽やアートが仕事になったとたんにやる気が失われたり、好きでやっていた勉強やお稽古事も親からご褒美にお金をあげると言われて興味をなくしたりする場合があります。人間は、自分のやりたいことを外部から強制されるのではなく自分で決めて行動する時に、より創造的になって行動を持続できるのです。

それでは、どうやったら外発的動機付けを内発的動機付けに変え、子どものやる気を高めることができるのでしょうか? デシ氏によると、内発的動機付けを高めるためには、次の3つの欲求が必要だとしています。

内発的動機付けを高めるのに必要な欲求
❶ 
自律性:やりたいことを自分で決めて行動したいという欲求
 有能感:自分の力で物事に取り組みたいという欲求
❸ 
関係性:他者に価値を認められ尊敬されたいという欲求
 
まずは、何でも良いので、子どもにいろんな経験をさせてあげましょう。選択肢を与えて、自分のやりたいことは自分の意思で自由に決められるのだという「自律性」の欲求を満たします。いろんな経験をして、小さな成功体験をたくさん積み重ねることで、自分はできるという「有能感」も高まります。また、頑張ったことや努力を褒めると、価値を認められて尊敬されたいという「関係性」の欲求も満たせるでしょう。褒め言葉と叱責に関する心理実験でも、テストの答案を返すときに褒められたグループは点数が大幅に伸び、叱責されたグループは最初こそ多少伸びたものの、後半に低下したとの結果が出ています。

このように、外発的動機付けにより内発的動機付けが高まり、やる気が伸びることを、「エンハンシング効果」と言います。子どもを褒め、感謝やお礼の言葉をかけることで、エンハンシング効果を高めていきましょう。「夏休みに1冊本を読む」、「漢字を1日1個覚える」など、子どもが自分で目標を決めることができたら、内発的動機付けが育っている証拠。ますます子どもの興味や好奇心が膨らむ夏休みになるといいですね。
 
参考:

■Self Determination Theory and How It Explains Motivation 
https://positivepsychology.com/self-determination-theory/ 

 

激動のAI時代を生き抜くため、子どもに必要なスキルとは?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

激動のAI時代を生き抜くため、
子どもに必要なスキルとは?

昨年11月末にリリースされた対話型AI「チャットGPT」は、まるで人間のように質問に詳細に答えてくれることから大きな注目を集め、公開からわずか2カ月で月間ユーザー数が1億人を突破しました。作詞作曲、小説や記事の執筆、プログラミング・コードの作成も数秒で完成させ、これまで人間にしかできないと思われていたクリエイティブな仕事も、AIに置き換え可能なことが証明されました。画像や動画など含め、新たなコンテンツを作成するAIは「生成系AI」と呼ばれており、ゴールドマン・サックスは最新の報告書で、生成系AIは世界で約3億人の仕事に影響を与え、市場に「大きな混乱」をもたらす可能性があると指摘しています。

新人の仕事の多くがAIに置き換わっていき、仕事の意味付けやライフスタイルまでもが激変する時代に突入しました。従来型の教育は、この数百年に一度の変化に対応できるようには設計されていません。正解のない時代を生き抜くためには、必要なスキルを家庭で培っていくことが不可欠です。以下、特に重要なスキルを2つ紹介します。

1) 問題に気付く力

AIを使いこなす側は、問題を明確に定義して指示を出す力が問われます。不測の事態に素早く対応する以前に、そもそも何が問題かを発見する視点が求められます。特に大切なのが、広い視野と柔軟な物の見方。それに長けているユダヤ人の子育て法が大きなヒントになります。

世界の人口のわずか0.25%ほどしかいないユダヤ人が、なぜノーベル賞受賞者の20%以上を占めているのでしょうか。それは長い迫害の歴史の中で、生き延びるための独自の思考法を培ってきたからです。親は子どもにユダヤ教徒の聖典である『タルムード』を読み聞かせ、その登場人物に関して「どうしてそうなったと思う?」「あなたならどうする?」「ほかにはどんな方法がある?」と問いかけて問題を認識させ、さまざまな解決方法を考えるよう促すのです。

ユダヤ人の子育てを参考に、日常生活のさまざまな出来事を題材として活用してみましょう。例えば、子どもが先生の文句を言ったら、「文句ばかり言わないの」とたしなめる代わりに、「それは嫌だね」「どうなったらいいと思う?」「そのために何ができる?」「自分が先生だったらどうする?」「自分が学校を作るならどんな学校にする?」など、子どもが自分の頭で考えられるような問いかけをします。「こんな風になったらいいな」と、少しでもワクワクし始めたらしめたもの。新しいビジネスを生み出す未来の起業家が育っています。

2)レジリエンス

先行きの見えない時代には、逆境に負けない心の強靭性「レジリエンス」が必須となります。レジリエンスとは、困難な状況に対し柔軟に対応して乗り越えていくことのできる精神的回復力のこと。楽観的思考、自己効力感などいくつかの要素がありますが、簡単に言うと、他人から何を言われようと「私はこれでいいんだ」という自分への強い信頼感です。

レジリエンスもまた、前述の「問題に気付く力」と同様に家庭で培うことのできるスキルのひとつです。いちばんの方法は、子どもに失敗や恥ずかしい経験をたくさんさせること。大切なのは成功することではなく、失敗した時にいかに素早く嫌な気持ちから立ち直り、挑戦し続けるかです。親の失敗談も共有し、失敗への恐れを和らげてあげてください。

失敗を恐れない子は、目標を達成できなくても現実を肯定的に受け入れ、目標を変更する柔軟な考え方も育っていきます。また、失敗を恐れずにプロセスや努力を楽しめる子は、ほかの人の失敗や欠点にも寛容になれるでしょう。

正解のない世界では、親や先生から言われることをうのみにする子どものほうが、AIに使われる側になるかもしれません。親の仕事は、子どもの柔軟な視点をつぶさないまま、子どものレジリエンスを高めてあげること。親としての考えを伝えることも大事ですが、子どもが何を考えてどう感じているのか、そしてどう行動するのかを応援してあげましょう。

参考文献
(1)The Potentially Large Effects of Artificial Intelligence on Economic Growth
 
https://www.key4biz.it/wp-content/uploads/2023/03/Global-Economics-Analyst_-The-Potentially-Large-Effects-of-Artificial-Intelligence-on-Economic-Growth-Briggs_Kodnani.pdf 
 


(2)ユダヤ人に成功者が多いのは「タルムード」に理由があった
 
https://diamond.jp/articles/-/212304 
 


(3)What Really Makes Us Resilient?
 
https://hbr.org/2020/09/what-really-makes-us-resilient 

ネット社会の行き過ぎた正義感、「キャンセル・カルチャー」とは?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

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ネット社会の行き過ぎた正義感、
「キャンセル・カルチャー」とは?

「キャンセル・カルチャー」という言葉を聞いたことがありますか? まるで買い物やサービスをキャンセルするように、不祥事を起こした企業や著名人に対してSNSなどを使い圧力をかけて「キャンセルする」ことからこの名が付きました。有名人の不適切発言を糾弾し、社会的地位をなくすよう大勢で抗議する風潮が世界的に広がり、ここ数年は連日のようにメディアをにぎわせている状況です。最近では、『ハリー・ポッター』シリーズの著者であるJ・K・ローリング氏、大御所ラッパーのカニエ・ウェスト氏もそのターゲットとなりました。

抗議活動はキャンセル・カルチャーという言葉でひとくくりにされていますが、虐げられた人々の権利を勝ち取るための抗議活動と、正義の名の下に相手の全人格を否定して社会から抹殺しようとする過激な行為は似て非なるもの。アメリカでは、公民権運動に加え、女性や性的マイノリティーの人権を勝ち取るために、長年にわたり血のにじむような努力が積み重ねられてきました。この努力は現在にも引き継がれ、2017年には性的被害者による「#MeToo」運動が、2020年には「BLM(ブラック・ライブズ・マター)」運動が全米で沸き起こり、SNSを活用して多くの人が団結しました。こうした活動は、多くの被害者に勇気を与える行為と言えるでしょう。キャンセル・カルチャーが通常の抗議活動と異なる点は、対話の余地を全く与えず、相手に悪のレッテルを貼り、最後まで追い詰める不寛容さです。例えば、奴隷制度を支えたという理由で、ジョージ・ワシントン初代大統領、トーマス・ジェファーソン第3代大統領など歴史上の人物の像が各地で撤去されています。また、今年2月28日には、19世紀に奴隷制を支持していたという理由で、フロリダ州内から民主党を追放するという法案「究極のキャンセル法」が共和党議員から提出されました。

こうした傾向は、表現の自由が断固守られるべき学術分野にも及んでいます。教育における個人の権利財団、FIREによると、2015年以降に591人の大学職員が「ポリティカル・コレクトネス(政治的な正しさ)」に反するとして何らかの処分を受けたと報告されています。2020年には136人の教授が解雇または処罰を受け、5年前の2015年から約4倍に跳ね上がりました。また、失職や社会的評価が下がることを恐れ、自分の意見を述べたくないと考える教授は52%に上ります。政治専門誌『ポリティコ』誌の調査では、46%のアメリカ人が、「キャンセル・カルチャーはやり過ぎだ」と考えています。

キャンセル・カルチャーが恐ろしいのは、誰もがターゲットになり、何年も前のネットの書き込みなどをチェックされ、気付かない間にSNSで一瞬のうちに拡散して攻撃される可能性があること。特に子どもやティーンは深く考えずにコメントを書き込みがちです。夜に書き込みをして、翌日学校に行ったら「キャンセル」されていたという可能性も十分にあるのです。

それでは、子どもがキャンセル・カルチャーの被害者や加害者になるのを避けるために、親はどうすれば良いのでしょうか? まずは、キャンセル・カルチャーについての情報を共有し、子どもにさまざまな質問をしてみましょう。「サイバーいじめとの違いはなんだと思う?」、「間違いや悪いことをした人を、どう思う?」、「一度の間違いをずっと責めるのは正しい?」、「自分が責められる側になったらどうする?」、「同じことを起こさないようにするには何が必要?」といった対話を通じて、相手を批判するだけでは社会の分断をさらに深くするだけで建設的ではないという、気付きや視点の変化を促します。辛抱強く対話をすること自体が、キャンセル・カルチャーのカウンター・アクト。お互いの意見をまず聞くことが、今いちばん必要とされていると粘り強く教えていきましょう。

参考文献
(1)Five professors tell how they were canceled — and why they fought back
 
https://nypost.com/2022/04/30/professors-on-how-they-were-canceled-why-they-fought-back/

(2)The Academic Mind in 2022: What Faculty Think About Free Expression and Academic Freedom on Campus

https://www.thefire.org/research-learn/academic-mind-2022-what-faculty-think-about-free-expression-and-academic-freedom 
 


(3)Americans tune in to ‘cancel culture’ — and don’t like what they see 
https://www.politico.com/news/2020/07/22/americans-cancel-culture-377412 
 


(4)What Cancel Culture Looked Like in the Middle Ages | NYT Opinion 

https://www.youtube.com/watch?v=RSt9CWAgdJg 

親は知らないティーンのドラッグ最新事情〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

親は知らないティーンのドラッグ最新事情

テキスト(SMS)を送る際によく使われる便利な絵文字ですが、子どものテキストで ❄️ 🍁 、🍪などの絵文字が頻繁に出てきたら、ドラッグの売買に関わっている可能性も。スマホやSNSを使ったティーンのドラッグ取り引きが深刻な問題となっており、例えば「🍪🚀🌲」は「高濃度の大麻をバルクで販売」、「🍫🚌」は抗不安剤の「ザナックス(Xanax)」を学校で売っていること、「📦🪂」は商品が届いたことを示しています。
 
米国医師会誌『JAMA』が昨年発表した調査によると、2021年に薬物を使用したティーンは、2010年の30%から減少して全体の19%にとどまりますが、それとは対照的に過剰摂取による死者数は急増しています。2019年には14~18歳の未成年者の過剰摂取による死者数は492人だったのに対し、2020年には倍近くの954人に跳ね上がり、さらに2021年には推定1,146人になると明らかにしました。
 
死者数が増えた最大の原因は、「フェンタニル(Fentanyl)」と呼ばれる合成オピオイドの乱用です。フェンタニルはがん患者や術後患者の激しい痛みに対して医療機関で処方される鎮痛剤ですが、微量で鎮痛効果がモルヒネの最大100倍、ヘロインの50倍以上と強力。常習性が高く、病院での処方をきっかけに依存症になる人も少なくないため、オンラインで違法購入する人が後を絶ちません。2020年4月~2021年4月の1年間で、アメリカでは薬物の過剰摂取により10万人以上が亡くなりましたが、その75%がフェンタニルやその他の合成薬物の過剰摂取によるもの。ティーンにおいても2020年で70%、2021年では77%にも上ります。
 
米麻薬取締局(DEA)によると、2021年9月29日から12月14日までの約3カ月で押収した違法フェンタニルは840万錠に及び、その42%が1錠で致死量だったとのこと。ティーン向けにカラフルな色合いをしたものや、オピオイド系鎮痛剤の「パーコセット(Percocet)」、「バイコディン(Vicodin)」の偽造薬も多く、ザナックスの偽造薬を飲み死亡したケースも。さらに最近では、動物専用の鎮静催眠薬「キシラジン(Xylazine)」とフェンタニルを混合した「トランク(Tranq)」と呼ばれる強力で持続時間の長い違法薬物が出回っており、体が壊死する強い副作用から手足を切断するケースが増えています。
 
こうした薬物の危険度の悪化に加え、最近ではインスタグラムやスナップチャットなど人気のSNSを巧みに利用することで、薬物にアクセスしやすくなっているという問題があります。売り手は投稿した写真や動画が24時間で消える「インスタグラムストーリー」などを使い、ドラッグ売買を示す絵文字を載せます。買い手から連絡が来たら、送信者と受信者しかメッセージを読めない暗号化アプリのWhatsApp、Signal、Telegramに移動して詳細を確認。支払いはVenmoやZelle、Cash App、Remitlyなどでオンライン決済できるため、驚くほど簡単にティーンの手元に違法薬物が届いてしまいます。また、「ベイピング(Vaping)」と呼ばれる電子タバコの会社などは、SNSのインフルエンサーを使って中高生をターゲットにした広告展開をしており、強い薬物に移行する前のゲートウェイドラッグとして常習化が始まる危険があります。
 
子どもの身を守るために親ができることは何でしょうか?まず、偽造薬が出回っており、微量でも死に至ることを子どもに教えること。また、子どもが友だち以外の見知らぬ人と絵文字を多用してテキストをやり取りしていたら、話し合いの場を必ず設けてください。売人とやり取りしていた場合は警察に通報し、子どものケアとして主治医および専門機関の支援を仰ぐことをおすすめします。
 
ティーンにおける薬物をめぐる状況は、過去数年間で様変わりしたのを実感します。親が情報を知っていれば防ぐことのできた死が数多くあると思うと、やり切れない気持ちになります。子どもが😁🏫生活を送れるよう、親もこうした兆候を見逃さないように情報収集が必要ですね。
 
参考:絵文字の意味

薬物販売の広告     🔌 💰 💵

高濃度         🚀 💣 💥

コカイン        ❄️ ☃️ 🌨

ヘロイン                         🤎 🐉

大麻                               🌲 🍀 🍁

覚醒剤           💎

咳止めシロップ            🍇 💜    

参考文献

1Fentanyl drives spike in teen overdose deaths, even as drug use falls to new low 
https://www.nbcnews.com/health/health-news/teen-overdose-deaths-spiked-low-drug-use-rcna23103 

  2💊for💰 ― Drug traffickers using social media, emojis to peddle increasingly counterfeit narcotics 
https://www.news5cleveland.com/homepage-showcase/for-drug-traffickers-using-social-media-emojis-to-peddle-increasingly-counterfeit-narcotics 

  3EMOJI DRUG CODE | DECODED 
https://www.deadiversion.usdoj.gov/mtgs/chem_industry/documents/Emoji_Drug_Code_Decoded.pdf 

  4One Pill Can Kill 
https://www.dea.gov/onepill 

 

いつまでも達成感を得られないのはなぜ? 成功者が陥るインポスター症候群とは〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

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いつまでも達成感を得られないのはなぜ? 成功者が陥るインポスター症候群とは

自分の子どもには成功して幸せな人生を送って欲しい。そう願わない親はいませんね。ただ、それが行き過ぎると、子どもが「インポスター症候群」になってしまう危険性があります。インポスターとは「詐欺師」や「偽物」という意味。成功しても達成感を感じるどころか、その逆に「自分には実力がないのに周囲をだまして成功を手に入れた」と、ペテン師のように感じてしまう心理現象で、成功者の間で特に蔓延まんえんしています。

インポスター症候群は、心理学者のポーリン・クランス氏、スザンヌ・アイムス氏により1978年の論文で紹介されました。社会的に成功した女性の多くが自分の能力を信じることができず、「自分の無能さがいつかバレてしまうのではないか」と恐れているというものです。当初の研究では女性に多いとされたものの、最近の研究では男性にも女性と同じ割合で認められ、男性の場合は自己不信を表に出すことは弱さの表れと捉えて隠す傾向が強いことがわかってきました。男女共に、実に7割もの人がインポスター症候群の症状を一度は経験すると言われています。

インポスター症候群には、以下の5つのタイプがあります。

インポスター症候群の特徴
(1)完璧主義者:いついかなる時も完璧でなければいけない。ひとつでもミスを犯したら、自分はダメな人間と思ってしまう。自他共に厳しく、ストレスをため込みやすい。
(2)ヒーロー:自分は人の何倍も努力する必要がある。何もしていない時には焦燥感や罪悪感を覚える。人からの賞賛を求め続け、ワーカホリックになりがち。
(3)生まれつきの天才:誰よりも素早く的確に物事を理解したい。自分で全てを理解するのが当たり前なのでメンターを必要としない。小さな失敗に過剰に落ち込み、難しい課題を避ける傾向がある。
(4)独演者:人と話すと自分の無能さがバレると思い込んでいる。チームプレイは本当の実力を知られることになるので避けたい。誰にも助けを求めることができず、自分を追い詰めてしまう。(5)エキスパート:学んでも学んでもまだ足りない。評価されるたびに自分はペテン師だと強い罪悪感を覚える。昇進話も「自分には無理」と辞退する。研修を受け続けても自分に満足できず、転々とセミナーを渡り歩く「セミナージプシー」になる可能性も。

インポスター症候群に陥りやすい人は、特定の2タイプの親から育てられていることもわかっています。まず、兄弟や親戚の子どもと比較して欠点を指摘する否定的な親。子どもは、「今の自分ではダメなんだ」、「良い成績を取らないと愛されない」と思い込み、頑張って勉強しますが、欠点にフォーカスする思考回路になっているため、成績が良くても「まだ十分じゃない」と感じてしまいます。次に、その真逆で、成績や容姿など全ての面において子どもが優れているとほめて、大きな期待をする親。子どもは親の期待を裏切ってはいけないと強いプレッシャーを抱え、無理をして勉強も習い事も頑張るのですが、心は疲弊しており、「本当の自分は無能だ」という思いを募らせていきます。どちらのケースも、人間の価値は成績や容姿、能力で決まるという親の価値観に子どもが縛られている状況です。

最近では、成績を重視していない親から育てられても、マイノリティーの立場にいる人はインポスター症候群に陥りやすいことが明らかになっています。黒人やアジア人、女性など、大学や会社で少数派の立場にいる人は、発言しても賛同者が少ないなど構造的な差別や障壁から、自分はほかの人の数倍頑張らなければいけないという感覚を強めてしまうのです。

将来、子どもがインポスター症候群にならないために親ができることは何でしょうか。まずは、結果重視ではなく、どれくらい頑張ったかという努力を認めてあげましょう。そして子どもの気持ちをじっくり聞く時間を増やし、いろんな思いを受けとめてください。

自分の子育てに不安を感じることも、もしかしてインポスターの感覚かもしれませんね。「できる範囲で十分」と自分に言い聞かせ、子どもに対するのと同様に自分の努力を認め、「~すべき」と自他を責める思考回路から自分を解放してあげましょう。

参考文献

①The Imposter Phenomenon in High Achieving Women: Dynamics and Therapeutic Intervention 
https://www.paulineroseclance.com/pdf/ip_high_achieving_women.pdf 
 
②Men are suffering from a psychological phenomenon that can undermine their success, but they’re too ashamed to talk about it 
https://www.businessinsider.com/men-suffer-from-impostor-syndrome-2016-1?r=US&IR=T 

もっと生きやすくなる、セルフイメージを変える方法〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

もっと生きやすくなる、セルフイメージを変える方法

「ねえ、ちょっと太った?」、「こんな点数じゃ、どの大学も行けないよ」など、つい子どもに言ってしまった経験はありませんか。親から発せられた何気ないひと言が、子どものセルフイメージを形作り、ひいては将来の成功や幸せにも影響を与えかねません。

セルフイメージとは、「自分についてどう思っているか」という心の中の自分の姿です。私たちは、親や教師、友人との会話、メディアなどさまざまなものから情報を得て、自分自身のイメージを作り上げていきます。ルックスや性格、頭の良さ、社会性、才能、価値観、ジェンダーなども含めた自分に対するイメージは、必ずしも事実に基づく客観的なものではありません。親からあまり褒められずに批判されてきた子どもは否定的なセルフイメージを持ちやすく、問題行動を起こしがちで、心の病気になるリスクも高くなります。

セルフイメージの中でも、特に子どもや若者にとって重要なのは「ボディーイメージ」です。つまり、自分のルックスについてどう思っているかということ。最近は、自分のボディーイメージに否定的なティーンが多く、アメリカでは13歳の女子の50%が自分の体に不満を持っており、17歳の女子になるとその数字は80%に跳ね上がります。ティーンの女子の80%近くが、太ることへの恐怖を抱いているという調査結果も出ています。SNSにスラッとしたかわいい女の子の加工写真が大量にあふれる中で、SNSを利用する頻度が高ければ高いほど、自分のボディーイメージに否定的になり、整形などを考慮する確率が高まるとされます。2017年にアメリカの整形外科医を対象とした調査では、インスタグラムスナップチャットなどのSNSに載るフィルター加工したセルフィーを見せて、「こういう風にして」と希望する患者がいたとする医師は55%に上りました。こうしたトレンドから、「スナップチャット異形症」という名前も生まれています。

逆に、肯定的なセルフイメージを持つ人は、自分の長所も短所も客観的に見ることができ、ありのままの自分を認めることができる人。人生の課題にぶつかっても、理想の自分とのズレがあっても、自分の思いや欲求に忠実なので自分を押し殺す必要がなく、自然体で人と接することのできる生きやすい人生とも言えます。

否定的なセルフイメージを持つ人は、「今のままじゃダメ」、「~すべき」と、最初から自分がダメだと思っているので、理想の自分とのズレに自己嫌悪に陥ったり、自分の思いを隠して他人に合わせたり、生きづらさを感じがちです。「~じゃないと認められない」という条件付きの思考回路を持ったままだと、頑張って目標を達成しても「まだダメ」なので、次の解決すべき問題や目標に必死で取り組むことに。まるで延々と走り続けるラットレースのような人生になってしまいます。また、自分が信じられない分、他人という外部からの賞賛や評価という不確定なものに自己価値を委ねるため、評価が高まれば高まるほど逆に焦燥感や無価値感が強まる場合も。

それでは、どうすれば肯定的なセルフイメージを作ることができるのでしょうか? それは、自分を特別視しないことです。他人を見るように客観的に自分を見つめてみれば、極端に長所を過小評価し、短所を拡大解釈することが減ります。次に、大好きな人に対して話しかけるように「あなたは今のままで十分」と自分に話しかけ、大好きな動物を見るような優しい視線で「どんなあなたでも大丈夫」と自分を認めてあげましょう。最初は自己否定の声が大きく難しいかもしれませんが、自分が自分の大親友だと覚悟を決めて長所を探して応援し続けると、否定的な声は次第に小さくなります。

私たちは、他人から大切に思われたいのではなく、実は自分から大切に思われたいのです。生まれてから死ぬまで一生付き合う人間は、自分自身というたった1人。人生の最重要課題とは、セルフイメージをアップデートしながら、自分自身と素敵な関係を築いていくことかもしれませんね。

参考文献

①Body Image Statistics 2022: 47+ Shocking Facts & Stats 

https://breakbingeeating.com/body-image-statistics/#Children_and_Teenagers 

②Social Media and the Rising Trend of Cosmetic Surgery 

https://www.psychologytoday.com/us/blog/dissecting-plastic-surgery/201909/social-media-and-the-rising-trend-cosmetic-surgery 

 

イネイブラー ~気付かないうちに相手をダメにする人~ 〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

イネイブラー ~気付かないうちに相手をダメにする人~ 

「こんなに一生懸命やっているのに、なぜ子どもは言うことを聞いてくれないの?」、「言えば言うほど事態は悪化するばかり」という経験はありませんか。そんなとき、もしかしてあなたは「イネイブラー(Enabler)」になっているかもしれません。

イネイブラーとは、身近な人を心配して良かれと思って行うことが裏目に出て、逆に相手の問題行動を助長してしまう人のことを言います。もともとは、アメリカでアルコール依存症の治療において、患者が病院や自助グループで治療を受けて回復したあと、家に戻ると再発してしまうことから研究が進められました。そして、アルコール依存症の家庭には患者の飲酒を促進してしまう人がいることが明らかにされたのです。1980年代くらいから、こうした人を、問題行動を「可能にする人」という意味で「イネイブラー」と呼ぶようになりました。また、面倒をかける人とお世話をする人という役割が固定化した機能不全な関係は、いわゆる「共依存(Co-Dependency)」でもあります。現在では、ゲームやギャンブルなど、ほかの依存症に加え、DV、ひきこもり、その他の心の病気にも、こうした共依存関係が見出されるようになっています。

それでは、実際にイネイブラーの行動とはどういったものなのでしょうか。主に、相手を変えようとして、相手の「行動」、「理由」、「結果」をコントロールします。まず、最初の「行動」では、問題行動自体をやめさせようと躍起になります。たとえば、ゲーム依存の場合、毎日説教をして口げんかになり、挙げ句にゲーム機やパソコンを取り上げます。次の「理由」では、ゲームする理由をコントロールします。退屈させないように外に連れ出したり、ゲームをしなかったら報酬を与えるなどして機嫌を取ったり、ゲームの話題を避けて顔色をうかがったり、ということが挙げられます。最後の段階の「結果」では、本人の問題行動により生じた不利益の後始末をします。ゲームで夜ふかしをして朝起きられない子どもを起こしてあげる、学校に「体調が悪い」と連絡を入れてそのまま寝かせておく、などが考えられます。子どもが怒って壊したものを片付けるなども典型的な例です。本人は失敗体験から自らを省みる機会がなくなり、逆にこうしたお世話(コントロール)に反発し、「全て親のせい」という他責思考になっていきます。

イネイブラーになりがちな人の特徴は、「自分が何とかしなくては」という責任感の強い人、自分よりも他者を優先するタイプの優しい人で、いわゆる「いい人」タイプ。普通の人だったら「関わると面倒だな」と敬遠する人に対しても優しく接するような人です。こうした優しさと責任感が裏目に出て、相手の問題を自分が肩代わりし、問題解決のできない依存型の人間に相手を育ててしまうのです。

それでは、どうすればいいのでしょうか? まずは、「私が何とかしてあげなくてはこの子はダメになる」という価値観が自分のアイデンティティーになっていることを自覚し、それを手放すことです。「自分さえ我慢すれば家族はうまくいく」という自己犠牲の精神、問題に直面することへの恐れもあります。まずは、これまでの自分を、つらい状況の中でよくやってきたと褒めてあげてください。そして、専門機関の助けを借りることが必須。これからは問題行動の責任は本人に取ってもらうことを本人に伝え、自分はお世話をやめること。新しい対応の仕方を学びながら、本人が少しずつ自立していくよう導いていきます。

本当の愛情とは、本人の痛みを和らげようと責任を肩代わりすることではなく、本人が痛みを感じている時にそばにいて精神的な支えになってあげることです。前者はイネイブラー、後者はヘルパーとも言えるでしょう。イネイブラーは本人の自立する力を奪い、ヘルパーは本人の自立する力を伸ばします。「この問題の責任は誰に帰結するのか」と常に自分自身に問いかけ、子どものヘルパーになれるといいですね。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

逆境的小児期体験(ACE)とは?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

逆境的小児期体験(ACE)とは?

子ども時代の不遇な経験が、成人してからの心身の健康や寿命に極めて有害な影響を与えることが最近の研究で明らかになっています。CDC(米疫病対策センター)と医療保険会社のカイザー・パーマネンテが1995年から1997年にかけて行った調査によると、虐待などの逆境的小児期体験(ACE:Adverse Childhood Experiences)を経験した子どもは、成人してからさまざまな病気になるリスクが高まるという結果が出ています。

ACEは、精神的虐待、身体的虐待、性的虐待、育児放棄(ネグレクト)、情緒的ネグレクト、親の依存症、親の精神障害、母親のDV被害、離婚や別居、親の犯罪行為という10項目に分けられます。アメリカでは6人に1人がそのACE10項目のうち4つ以上に当てはまり、当てはまらない人に比べて、学習や素行問題が32.6倍、うつは4.6倍、自殺未遂は12倍、アルコール依存症は7.4倍に増加すると報告されています。さらに、線維筋痛症が4倍、肺疾患は3.9倍増加し、がん罹患率も1.9倍、脳卒中も2.4倍に。寿命に至っては、約20年も短くなるとのことです。子ども時代のトラウマ体験が、成人後の健康状態にこれほど大きな影響を与えるのはなぜでしょうか?

人間の脳には危険を察知する部位として、扁桃へんとう体があります。この扁桃体が過剰反応することで、体は緊急事態だと認識し、戦ったり逃げたりするためのエネルギーを出すホルモンのコルチゾールやアドレナリンを分泌します。しかし、過剰に分泌されると、次第に免疫反応が暴走し始め、逆に炎症反応を起こしてしまいます。常に危険やストレスにさらされている子どもは、体が緊急事態だという指令を出し続け、慢性的な炎症が続くのです。これが、ACEにより大人になってからの健康リスクが高まる要因とされています。

心と体は互いに大きく影響し合っています。私たちには体温や代謝といった体の機能を休むことなく見張っている「自律神経」があり、心と体を休ませる「副交感神経」と、活発化させる「交感神経」が絶妙なバランスを取ることで、日々の生活が成り立っています。通常は「リラックスモード」である副交感神経が優勢で、差し迫った危険もなく、心身共に安心して深い思考ができ、クリエイティブなアイデアも生まれやすい状態です。多くの細胞の修復も、このリラックスモードの際に行われます。逆に、交感神経は前述した「戦うか逃げるか」の非常事態に優勢となり、生き延びるために何でもやる「パニックモード」の状態と言えます。ACEによりストレスにさらされ続けることで、このパニックモードが常態化してしまいます。これでは心も身体も疲弊するわけですよね。

なお、女性は男性よりも被害に遭いやすく、ACEスコアが高い傾向が見られます。さらに、ACEが及ぼす影響も男性より有害で、女性はACEスコアが2以上でも自己免疫疾患のリスクが大幅に上がると言われます。もともと、女性ホルモンのエストロゲンが自己抗体を増やし、男性より抗体反応が強力なことから、女性は自己免疫疾患を発症しやすいとされています。

「自分のせいじゃないのにパニックモードに設定されてしまったなんて、どうすればいいの?」と落ち込む人もいるかもしれません。また、ACEに当てはまらない人でも、繊細な人はパニックモードに陥りやすいので、意識してリラックスモードに切り替える必要があります。

切り替える方法として、ACEの概念を広めたナディン・バーク・ハリス医師が提唱しているのが、まずは十分な睡眠と栄養のある食事を取ること。次に、運動と瞑想、そして、セラピーや信頼できる人間関係などの精神的サポートです。これらを日常に意識して取り入れることで、脳機能やホルモンバランスが改善され、ストレスや不安な気持ちが大幅に軽減されます。そして、心身の修復を促すリラックスモードへと次第に戻っていきます。

自分がどちらのモードにいるのかを意識しながら、子どもの世代に負の遺産を引き継がないようにセルフケアをしていきたいですね。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。


参考記事

(1) Adverse Childhood Experiences (ACEs) 

https://www.cdc.gov/vitalsigns/aces/index.html  

 (2) Adverse Childhood Experiences (ACEs) 

https://burkefoundation.org/what-drives-us/adverse-childhood-experiences-aces/ 

セルフハーム:なぜ自分で自分を傷付けるの?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

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セルフハーム:なぜ自分で自分を傷付けるの?

ティーンの自傷行為がコロナ禍で急増しました。アメリカでは2020年における13〜18歳の自傷行為が、前年比で99.8%増加したとのこと。コロナ以前にも、自傷行為は年間約200万件に及び、ティーンエイジャーの17%、大学生の15%が自傷行為を経験していると報告されています。成人では5%、5〜10歳の子どもでは1.3%と比較的少ないため、ティーンに特有の症状とも言えます。男女の比率は、女子65%、男子35%と女子が男子の2倍近くあり、バイセクシャルでは約半数近くにも上ります。

なぜ、自分で自分を傷付けてしまうのでしょうか? 自傷行為の原因はさまざまですが、一般的なイメージである「誰かの気を引くため」に行われるケースはごくまれです。強い怒りや無力感、絶望感、孤独感といった耐え難い心の痛みから逃れるために、突発的にやってしまうことがほとんどです。また、自己評価が低く自分を責める傾向にある人や誰にも悩みを打ち明けられない人なども、自分を罰する行為として自傷行為に及ぶことがあります。本コラムで以前取り上げた解離(トラウマから自分の心を守る防衛手段として意識を逃し、自分が自分でないと感じる)症状のある人はより深刻で、意識がないまま気付いたら自傷しており、その逆に、自分の感覚を取り戻すために自傷行為に及ぶことも。

痛みというものは通常は避けたいものですが、けがなどで痛みを感じると、それを和らげるために脳内麻薬のβエンドルフィンやエンケファリンが分泌され、一時的に気分が高揚したり逆に落ち着いたりします。この気分を求めて自傷行為を繰り返し、さらなる依存に陥ります。自殺企図(実際に自殺を試みる)との大きな違いは、「死ぬため」ではなく「生きるため」の手段として、やむにやまれずやっているということ。なので、何とか止めようとして「やめなさい」と怒るのは、生きるための手段を奪い、当人をさらに追い詰めることになるので逆効果です。

それでは、子どもが自傷をしている場合、どのように対処したらいいのでしょうか。まずは、自傷に至るほどの心の苦しみを理解したうえで、とにかく優しく接してあげること。自傷は、安心して悩みを相談できる場所が存在しなかったことを示しています。その悩みを聞き、ほかの方法で心の苦しさを解消できるようにすることが大切です。

具体的には、自傷行為のきっかけや状況を客観的に見るため、「行動記録表」をつけます。いつどこで誰と何をしたか、その時の気持ちや考えなどを記録することでパターンがわかり、自分の記憶が曖昧な場合は解離を起こしているなどと気付きます。

また、自傷行為をほかの方法に置き換える「置換スキル」も有効です。自傷の衝動が起こったら、赤ペンで手首に線を引く、手首にはめた輪ゴムをはじく、氷を握りしめる、枕やクッションを殴る、広告の紙などをビリビリに破る、大声で叫んだり歌ったりするなどの代替行為を代わりに実践します。

ただし、こうした方法は、最初は効果があっても次第に慣れてくるので、根本的な問題を解決する必要があります。発達障害、もしくは不安障害や摂食障害などに起因している可能性も考えられるので、専門家の診断を受けることを検討してください。たとえば、不注意優勢型の注意欠如・多動性障害(ADHD)の女性は、自分の髪の毛を抜いてしまう抜毛癖(トリコチロマニア)など、自己刺激行動を起因とする自傷が多いと言われています。

自傷をするティーンの中には、友だちが自傷をしており、親子げんかなどでイライラした時に、ふとその友だちのことを思い出して「自分もやってみよう」と行動に移す場合もあります。子どもだけで自傷をやめさせるのは至難の技なので、子どもが安心して悩みを打ち明けられるような家庭の雰囲気作りを日頃から心がけましょう。そして、自傷をする理由に理解を示したうえで、ほかにもたくさんの選択肢があること、友だちや自身が自傷をしていたら教えて欲しいことを伝えましょう。小さなサインを見逃さないことが大切です。

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*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。


参考記事

(1) The Impact of COVID-19 on Pediatric Mental Health 
https://s3.amazonaws.com/media2.fairhealth.org/whitepaper/asset/The%20Impact%20of%20COVID-19%20on%20Pediatric%20Mental%20Health%20-%20A%20Study%20of%20Private%20Healthcare%20Claims%20-%20A%20FAIR%20Health%20White%20Paper.pdf 
 
(2) Who self-injures? By American Psychological Association 
https://www.apa.org/monitor/2015/07-08/who-self-injures 

(3) Self-Harm Statistics and Facts
https://www.therecoveryvillage.com/mental-health/self-harm/self-harm-statistics/ 

勧誘の場はSNSの時代、子どもをカルトから守るために〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

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勧誘の場はSNSの時代、

子どもをカルトから守るために

7月8日に発生した安倍晋三元首相の銃撃・死亡事件は、世界に衝撃を与えました。逮捕された山上徹也容疑者は犯行の動機を、母親が旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の熱心な信者で総額1億円以上を献金した結果、「破産し、家族がバラバラになった」ことで恨みを募らせ、教団と関係の深い安倍氏を狙ったとしています。今回の事件により、悪質な霊感商法で90年代のワイドショーを騒がせた旧統一教会に再度スポットが当たり、報道が下火になった現在も600億円近くの献金を日本で集めていたという事実が明るみになりました。

著名な精神科医であるロバート・J・リフトン氏は、カルトの特徴として「崇拝されているカリスマ的リーダー」、「洗脳や強制的な説得」、「信者の経済的・性的・その他の搾取」の3つを挙げています。特に重要なのが「洗脳」です。統一教会を脱会した『マインドコントロールの恐怖』の著者、スティーブン・ハッサン氏によると、洗脳は「解凍」、「変革」、「再凍結」という3つのプロセスを経て完成します。「解凍」とは、睡眠を奪うなど心身に大きな負荷をかけ、自我を揺さぶり自己の信念や思考体系を崩壊させること。次の段階の「変革」で、繰り返し新たな信念を植え付け、古い人格が崩れた心の空白に新しい人格を導入し、定着させていきます。最後の「再凍結」では、新たな人格を強化するために名前、目的、役割、活動を与え、時間やお金を貢がせて社会的・経済的・心理的に孤立させて教団への依存度を高めます。教義に疑問を持つことはタブー。自分たちは選ばれた存在で、非信者は「サタン(悪魔)」という風に、恐怖心と純粋な信仰心をたくみに利用しながら搾取システムが確立されるのです。

旧統一教会の教義では、植民地支配により韓国を苦しめた日本は悪い「サタンの国」、「エバ国家」であり、「アダム国家」の韓国に貢ぐのが使命といった極端な反日思想が根本にあります。合同結婚式で韓国人に嫁いだ日本人妻が虐待されても耐え忍び、常軌を逸した高額献金による自己破産もやむなし、という事例が後を絶たないのは、その教えが大きな要因。教団の運営資金の7割は日本から来ており、搾取されたお金の多くが、政治的な影響を強めるためにアメリカなど世界中で利用されています。

カルトが社会問題化する中、「自分の子どもがカルトにだまされないためにはどうすれば?」という問い合わせも目立っています。私たち親はどう気を付ければ良いのでしょうか。まず、子どもには、カルト団体というものがあること、またその手口などもしっかり伝えましょう。たとえば、カルト入信の3分の2は、家族や友人、会社の同僚を通して行われます。困っている時に親身に話を聞いてくれた友人からのさりげない勧誘ほか、ボランティア団体や大学サークルなどのフロント団体を使っての偽装勧誘も典型的なパターンです。

筆 者 も、ア メ リ カ の 大 学 で UPF(Universal Peace Federation)と名乗る国連NGOの会議に参加したことがあります。平和活動の紹介やフレンドリーなメンバーたちとの語らいはとても楽しかったのですが、終了後「この団体の母体は統一教会」と言われ、あわてて会場を出たことがありました。残っていた参加者も大勢いたので、帰り道に「だまされる人も多いだろうな」と思ったことを今でも覚えています。

最近では、勧誘の場がSNSを中心にオンラインへとシフトしてきているので厄介です。たとえば、アニメが好きでSNSに関連コメントなどを投稿していると、信者が好意的なコメントを残し、何回かコメントのやり取りをしてから、アニメイベントに参加しないかと誘うのです。正体を明かすのは仲良くなってから。「世間では悪く言われるけれど、本当はそんなに悪い人たちじゃない」と子どもが言い出したら要注意です。その場合、頭ごなしに非難して止めると逆に反発し、孤立していく可能性もあります。早急に専門家に支援を求めましょう。

反社会的な活動による多くのトラブルが報告されながらも、なお力を保ち続けているカルト。学歴や貧富の差に関係なく、誰もが洗脳される可能性があると心に留めておくことが大切です。

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*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。


参考記事

1.旧統一教会献金の実態は?内部資料独自入手【報道特集】 https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/116657?display=1 

2.Cults in the Age of Influence  https://www.psychiatrictimes.com/view/cults-in-the-age-of-influence 

3.Watch out for tell-tale signs https://www.theguardian.com/commentisfree/belief/2009/may/27/cults-definition-religion 

マインド・コントロールの恐怖 https://www.amazon.co.jp/-/en/スティーヴンハッサン/dp/4765230716/ref=sr_1_1?qid=1660409326&refinements=p_27%3Aスティーヴン+ハッサン&s=books&sr=1-1&text=スティーヴン+ハッサン 

4.「旧統一教会の会見について」全国霊感商法対策弁護士連絡会が記者会見 https://www.youtube.com/watch?v=6TAEw136rrQ 

統一教会 日本宣教の戦略と韓日祝福 https://www.amazon.co.jp/統一教会日本宣教の戦略と韓日祝福櫻井義秀/dp/4832967207 

5.「フロント団体と誤解されるのはしょうがないが」旧統一教会と同一視される国際勝共連合会長の言い分  https://president.jp/articles/-/60422 

学校に行かなきゃダメ? 「不登校」の最前線 〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

学校に行かなきゃダメ?「不登校」の最前線

どうしても学校に行けずに長期間休んでしまう、そんな不登校児童生徒が日本で増え続けています。昨年10月に政府が発表した調査によると、不登校の小中学生は約19万6,000人と、前年度から1万5,000人近く増加し、過去最多を記録。全児童生徒数に占める割合は小学校で1.0%、中学校で4.1%に上ります。文部科学省によると不登校児童生徒とは、病気や経済的といった特別な理由がなく、精神的、身体的、社会的な要因により「年間30日以上欠席した者」と定義されています。

アメリカでは国による明確な定義はありませんが、年間の授業日数(160〜180日)の約10%である3週間(15授業日)以上を欠席すると、学業に支障が出たり留年のリスクが高まったりするとされています。アメリカで2015〜16年度に3週間以上欠席した児童生徒は700万人以上おり、全児童生徒数の約16%を占めています。ちなみに日本の年間授業日数は200日前後ですので、その10%に当たる年間20日以上の欠席日数で調べるとさらに数が増えると推測されます。

不登校の典型的なパターンは、朝に元気がなく、「学校に行きたくない」と行き渋ります。泣き叫んだり癇癪を起こしたり、頭痛や腹痛などの身体的症状が出る場合も。最初は月に数回だったのが次第に増えていき、親も焦って説得したりなだめたりと、何とか学校に行かせようとしますが効果はなく、学校からのプレッシャーもあり親子共に精神的につらい状態が続きます。ホームスクールやオンラインとのハイブリッドなど多様なサービスが充実しているアメリカでも、子どもは学校に行けない罪悪感を強く感じています。

親にとってみれば、不登校は「問題の始まり」に見えるかもしれませんが、実は「問題の最終段階」だと訴えるのは、信州大学医学部の本田秀夫教授。行き渋りは、「学校に行く自分っていう人生を捨てたという、もう最後の段階です」。この段階から頑張っても行けるようになる確率は低いので、休ませてあげるのが大事。日本政府も2016年には「不登校を問題行動と判断してはならない」とし、2017年には不登校児童生徒を学校に戻すことが目標ではなく「社会的に自立すること」と大きく方針転換。フリースクールへの参加を出席扱いにする学校も増えてきました。

不登校の子どもにはどう接するべきなのでしょうか?
まず、子どもたちが最も求めているのは「ただ理解して見守ってくれる大人の存在」です。彼らの多くは学校に行けない自分を責め続けています。過度な期待や励ましは思い切って手放しましょう。「学校へは行かなくていいよ」とその子の選択を尊重し、「何かできることがあったら教えてね」と子どもの主体性を陰で支えましょう。

次に、「ほっとできる居場所」を作ってあげましょう。たとえ自分の部屋にいても、親が「学校に行って欲しい」という思いでいると、家の中にも居場所がなくなってしまいます。とにかく何も考えず休むことのできる場所が必要です。子どもの気持ちを十分に聞いてあげ、「途中でやめてもいいよ」、「逃げてもいいよ」と伝え、家庭を居心地のいい安心の空間にします。

さらに、「好きなことのできる時間」を確保します。小学2年から中学3年まで学校に行かずにゲームにハマったという小幡和輝さんは、ゲームに費やした時間がおよそ3万時間。著書『学校は行かなくてもいい』の中で「音楽、パソコン……なんでもいいからとことんハマれ!」と訴える小幡さんは、高校3年生の時に起業し、現在ではオンラインでゲームを教える会社、ゲムトレを経営しながら、「不登校は不幸じゃない」というメッセージを込めたイベントを日本全国で開催しています。

これからは、学校の成績よりも何かにひとつでも秀でている人が重用される時代。学校は選択肢のひとつでしかありません。親自身も先行きが見えない不安感や本音を話し合える、支援や息抜きの場を見つけましょう。子どももまた、やる気を伸ばして、同じように悩んでいる仲間と出会える場所が必ず見つかるので大丈夫。焦りを手放したときに子どもへの対応が変わり、子どもも変わっていきます。子どもの生きる力を信じてあげましょう。

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第8回 9月1日(木)7:30pm~8:30pm

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*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考記事)  

1.https://www3.nhk.or.jp/news/html/20211217/k10013362471000.html

2.https://www2.ed.gov/datastory/chronicabsenteeism.html

3.https://www.youtube.com/watch?v=ywwVQkwDC70

4.https://www.obatakazuki.com/4800060

5.「学校は行かなくてもいい ――親子で読みたい「正しい不登校のやり方」

https://www.amazon.co.jp/学校は行かなくてもいい-――親子で読みたい「正しい不登校のやり方」-小幡和輝/dp/4907838905

運動のやり過ぎは良くない?「エクササイズ中毒」に注意

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運動のやり過ぎは良くない?
「エクササイズ中毒」に注意

子どもの運動不足で悩むのとは逆に、「うちの子は運動のし過ぎで……」と悩む親も大勢います。家族や友人との約束よりも運動を優先し、運動ができないと強い焦燥感に駆られるようであれば、それは「エクササイズ中毒」かもしれません。

エクササイズ中毒者は90年代から徐々に報告が増えています。主な特徴は生活の全てが運動を中心に回っていること。けがをしても運動がやめられず、強迫的に繰り返し、日常生活に支障をきたすほど激しい運動を続けます。アメリカでは成人人口の0.3〜0.5%がエクササイズ中毒と推定されていますが、この数字はアスリート学生の間では4%、スポーツ愛好家では8〜9%にまで跳ね上がります。

スポーツのクラブやチームに入っている子はより長い時間運動をして、ある程度はほかの活動を犠牲にする必要もありますが、彼らとエクササイズ中毒者の違いは何でしょう。専門家が考案した「エクササイズ中毒目録(EAI)」を目安にチェックできます。以下の項目で、「全く当てはまらない」を1、「完全に当てはまる」を5として、1から5までの点数を合計し、24〜30点になるとエクササイズ中毒の可能性が高いと言えるでしょう。

あてはまる人はエクササイズ中毒?

私の人生で最も重要なものは運動だ。

運動のし過ぎが原因で、家族や友人と対立することがある。

気分転換のために運動をしている(例:気分を良くするため、問題を忘れるため)。

この1年間で、日々の運動量が増えた。

毎日運動をしないと落ち着かず、いら立ちや悲しみを感じる。

運動量を減らそうと試みたことがあるが、結局いつもと同じくらい運動をしてしまう。

特に真面目で完璧主義、負けず嫌いな性格の子は、知らず知らずのうちに自分を追い詰め、気付いた時にはやめられなくなっている場合も。少しでも気になるようであれば主治医や専門家へ相談しましょう。

エクササイズ中毒には、さまざまな原因があると考えられています。まず、一次的エクササイズ中毒は運動自体が中毒のもとで、ギャンブル中毒ととても似ており、興奮を求めて運動量が増え、報酬系の反応から依存が形成されていきます。その一方で、二次的エクササイズ中毒の原因はボディーイメージや低い自己肯定感から来ており、体重や外見を変える目的で運動がやめられなくなるというもの。自分の美醜に極端にこだわる強迫観念を持ち、鏡に映った自分を見続けるなどの強迫行動を繰り返す「身体醜形障害」との関連性も指摘されています。

また「摂食障害」を併発している場合も多く見られます。最近の調査では、摂食障害の患者間ではエクササイズ中毒が通常の4倍近くとされ、他の調査でも摂食障害の患者の実に21%がエクササイズ中毒の可能性があるとの報告があります。

こうした身体醜形障害や摂食障害が背景にあるエクササイズ中毒では、女性は「太り過ぎ・体が大き過ぎる」と思い込み、無理なダイエットに長時間の運動を重ね、命の危険に至るまで身体が衰弱してしまうケースも少なくありません。逆に男性は「痩せ過ぎ・体が小さ過ぎる」と思い込み、ステロイドやプロテインを過剰摂取しながら体調を崩すのも構わず筋トレを長時間行う人も。こうした症状はビッグ(大きい)とアノレクシア(拒食症)を組み合わせた「ビゴレクシア(bigorexia)」と呼ばれ、ジム通いの若い男性やボディビルダーの間で増加しています。

人気ユーチューバーのフィットネスコーチ、スコット・マレー氏が今年2月に心不全のため、27歳という若さで亡くなりましたが、彼も摂食障害とエクササイズ中毒に苦しんでいたとされています。嘆き悲しむ多くのファンの中には、自分や友人もエクササイズ中毒かもしれないと初めて認識した若者もいることでしょう。

運動は健康的というイメージがあるからこそ、潜んで見えにくいエクササイズ中毒。やり過ぎかもと思う人は、何のために運動しているのかを今一度見つめ直してみると良いかもしれません。

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(参考記事)  

(1) Psychometric properties and concurrent validity of two exercise addiction measures: A population wide study 

https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1469029212000829   

(2) Exercise addiction in adolescents and emerging adults – Validation of a youth version of the Exercise Addiction Inventory 

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6035018/  

(3) The exercise addiction inventory: a quick and easy screening tool for health practitioners 

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15911594/ 

(4) Eating disorders linked to exercise addiction 

https://www.sciencedaily.com/releases/2020/01/200128114642.htm 

なぜ増える?自閉症やADHD~発達障害についての最新研究~

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

なぜ増える?自閉症やADHD
~発達障害についての最新研究~

自閉症スペクトラム障害や注意欠如・多動性障害(ADHD)などの発達障害が世界的に急増しています。CDC(米疾病対策センター)によると、アメリカにおける自閉症の子どもの数は、2000年には150人に1人だったのが、2018年には44人に1人となり、20年弱で比率が3.4倍に増えました(1)。また、ADHDの子どもの数も、2003年の440万人から2016年には610万人に。13年間で1.4倍近く増加しています(2)。

こうした発達障害は生まれつき脳に機能障害を抱えていることが原因とされており、親のしつけや育て方とは関係がありません。現在のところ、正確な原因は特定されていないものの、複数の関連遺伝子によって発症する「多因子遺伝疾患」と捉えられています。遺伝子を受け継いでどのように発症するかは解明されておらず、親子や兄弟で自閉症の症状が見られる場合もそうでない場合もあります。

また、自閉症やADHDに関する認知度が上がり、これまでは障害ではなく個性だと思われていた特徴が障害だと認識されたケースや、診断基準が変わったために診断率が上がったという意見も。しかし、これらは発達障害が急増している要因の一部に過ぎません。

こうした遺伝的・社会的な要因に加えて、最近では妊娠中に母親が服用した薬や周産期のトラブル、化学物質への暴露などさまざまな環境要因が複雑に絡み合って脳機能の働きが阻害されるのではないかと考えられています。特に気を付けたいのが、妊娠中の薬の服用です。

抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウムは、胎児の大脳皮質にダメージを与え、知能低下や自閉症のリスクを高めることがわかっています(3)。また、抗うつ薬を妊娠中に服用した場合、赤ちゃんの自閉症のリスクが高まるという調査結果も出ています(4)。ただし、抗うつ薬が原因であるとは証明されていません。もともと社会生活を送るうえで生きづらさを感じやすい方が抗うつ薬を飲む比率が高く、そうした母親を持つ子どもも似たような遺伝的傾向を受け継いでいるという可能性も考えられます。

最近では、タイレノールなど市販の風邪薬や痛み止めに含まれる解熱鎮痛成分のアセトアミノフェンが自閉症とADHDのリスクを高めるという調査結果が発表され、多くの人に衝撃を与えました。2021年にヨーロッパで複数の調査を分析した結果によると、妊娠中にアセトアミノフェンを服用した場合、子どもの自閉症のリスクが19%高まり、ADHDのリスクも21%高まったとのことです(5)。

ほかにも、妊娠中のアルコール摂取、葉酸の不足または過剰摂取、抗生剤の服用、妊娠35週以前の早産が影響するとされます。さらに、除草剤として使われる農薬のグリホサートなど環境化学物質や、水銀、カドミウムといった重金属への暴露などが中枢神経系への機能障害を引き起こし、自閉症のリスクを高めると言われています(6)。

環境汚染は自分だけではどうしようもない問題ですし、「タイレノールですら安心して飲めないなんて……」と、やりきれない気持ちになってしまうかもしれません。やみくもに怖がったり無視したりするのではなく、まずはリスクを知ることが大切です。少なくとも、こうした知識が頭の片隅に入っているだけで、食品や薬に対する認識が変わるかもしれません。

自閉症やADHDの子どもに限らず、現代の新生児は生まれた時からすでに平均で約200種類の有害物質に汚染されていると言われています(7)。それらはテフロンや農薬、難燃剤、ファストフードのパッケージに使われる物質などで、ほとんどに発がん性があり、脳や神経にも有害です。

個人でできることはたくさんあります。たとえば、食品に用いるプラスチック容器はガラス容器に変える、ラップをかけたまま電子レンジで加熱しない、デトックス効果のある野菜を食卓に取り入れるなど。日々の習慣を見直し、次の世代に負の遺産を渡さないように心がけたいものですね。

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参加費無料

本コラム執筆者の長野弘子さんが主宰する、子育ての悩みやコツをオンラインでシェアし合う交流の場。申し込み・詳細はウェブサイト(www.lifefulcounseling.com/support-group.html)にて。

*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考記事)  

1https://www.cdc.gov/ncbddd/autism/data.html 

2https://www.cdc.gov/ncbddd/adhd/data.html 

(3)https://jamanetwork.com/journals/jama/fullarticle/1681408 

(4)https://sciencebasedmedicine.org/antidepressants-and-autism/ 

(5)https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34046850/ 

(6)https://www.youtube.com/watch?v=QqkMwoOCZOg 

http://www.qlifepro.com/news/20200513/asd-glyphosate.html 

https://www.chiba-u.ac.jp/general/publicity/press/files/2020/20200512asd.pdf 

(7)https://childlifenutrition.com/in-the-news/body-burden-the-pollution-in-newborns/ 

思春期の脳はどうなっているの?~興奮を抑える「前頭前野」の重要性~

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思春期の脳はどうなっているの?~興奮を抑える「前頭前野」の重要性~

子どもが思春期に突入すると、会話の内容がグンと大人びて、できることも増える反面、感情的になって相手を攻撃したり危険なことに手を出したりと、その急激な変化に親はとまどうばかり。けれども、こうした理解に苦しむティーンの行動は、脳の発達段階を理解すれば納得できます。今回は、思春期の脳はどうなっているのかを探ってみましょう。

一般的に、ヒトの脳は3歳までに大人の脳の80%、6歳までに90%の大きさに成長します。ただし、それはあくまで大きさであり、合理的に物事を判断できるようになるのは、脳の司令塔である「前頭前野」が十分に成熟する25歳前後だと言われます。

前頭前野は、やる気や意欲を自分の夢または目標として設定し、計画的な実行、物事の客観的判断、問題解決などをできるようにします。また、相手の気持ちに共感したり、自分の感情を抑えて適切な行動をしたり、生きて行くうえで不可欠な「社会性」をつかさどる部位でもあります。

その一方で、前頭前野より早い段階で形成されるのが、感情の中枢である「扁桃体」です。五感や思考などの刺激に反応し、「快」か「不快」か、「好き」か「嫌い」かを瞬時に判断して、すぐさま身体にシグナルを送ります。このシグナルにより、心臓の鼓動が速くなったり筋肉が緊張したりと、自律神経のさまざまな反応が起こるのです。扁桃体の反応を適度に抑えるのも前頭前野の果たす役割なのですが、思春期の子どもは前頭前野が未発達のため、理性よりも感情に素早く反応してしまい、恐怖や不安でパニックになりがち。こうした状態は「扁桃体のハイジャック」とも呼ばれ、冷静に物事を対処できずにトラブルになりやすい状況を作ってしまいます。

思春期はまた、受け入れて欲しい対象が、親から友人・恋人などに変わる時期です。しかし、理性の前頭前野と感情の扁桃体がうまく接続できていないので、相手の表情を誤解して受け取ることが多く、不安や孤独、怒り、失望を感じやすくなります。他人からの影響が大きく、感情の切り替えも苦手なため、衝動的な行動に出るリスクが大人より高いのです。

扁桃体と同じく前頭前野より早く形成される脳の部位が、「報酬」をつかさどる「側坐核(そくざかく)」です。思春期の子どもはリスクを考えるより先に報酬を求めて動きます。大人よりもお酒やドラッグ、性的な欲求に弱いのは、報酬を求める脳をストップさせる機能が未発達のため。まさに、思春期の脳はブレーキのないアクセル全開の車のようなものですね。

反抗期で親の言うことを聞かないティーンが薬物などに手を出した場合、さらに脳の発達に悪影響が及ぶことに。それでは、親はどうしたらいいのでしょうか?

(1)気持ちを落ち着ける方法を教える

深呼吸をする、水を飲む、その場を立ち去る、お気に入りの場所をイメージする、音楽を聴くなど、有効な方法をリストアップしてみると良いでしょう。

(2)曖昧な表現を避けて誤解を減らす

自分の気持ちを明確に伝えると同時に、相手の気持ちもくみ取り、共感性を高める対話を増やせるようにしましょう。

(3)失敗は成長の糧

失敗してもやり直しはいくらでも利くことを教え、やりたいことにチャレンジさせてあげましょう。

(4)合理的思考を取り入れる

行動を起こす前にリスクとベネフィットを考えて書き出すなど、正しい判断が下せるような方法を教えましょう。

(5)良好な親子関係を築く

困ったことがあったら、どんなに小さなことでも親に相談するように繰り返し伝えましょう。親子の絆を強めることが子どもを守るいちばんの方法です。

皮肉なことに、前頭前野は脳で最も遅く成熟し、早く老化が起こる部位。大人へと急成長を遂げている思春期の前頭前野はまだまだ発達段階であるのに対し、更年期に差しかかった親の前頭前野はすでに萎縮が始まっています。最近では、デジタル機器を多用すると、20代から機能低下が起こることがわかってきました。この脳の司令塔を健やかに成長させ、いかに日々意識して維持するかが、親子共に充実した人生を送るカギになると言えそうですね。

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*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考記事)

1https://www.medicalnewstoday.com/articles/319185 

2https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3621648/  

知らないうちに口にしているかも?相手を傷付ける「マイクロアグレッション」

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知らないうちに口にしているかも?相手を傷付ける「マイクロアグレッション」

心当たりがないのに、なぜか人に避けられた経験はありませんか? 気付かないうちに相手に嫌な思いをさせてしまう、または逆に、他人からの何気ないひと言で嫌な気持ちになる、そんなこともあるかもしれません。こうした言動は「マイクロアグレッション(Microaggression)」と呼ばれ、見過ごされやすい差別として問題視されています。

マイクロアグレッションとは、偏見や差別心に基づく、微妙でささいな攻撃性のある態度や言葉のこと。受け取る側はモヤっとしますが、嫌味と同じで、わざわざ話の流れや雰囲気を壊してまで抗議するほどでもなく、結局はそのまま流してしまうことがほとんどです。たとえば、アメリカで生まれ育ったアジア系市民が「英語が上手だね」などと初対面の人に言われたり、アジア人が白人や黒人との間に生まれた子どもを連れて歩いているとベビーシッターに間違われたり、といった具合。女性に対する「若く見えるね」などの言葉も典型的なマイクロアグレッションの一例です。

自らも長年差別に苦しんできた中国系アメリカ人の心理学者でコロンビア大学心理学科教授のデラルド・ウィング・スー博士は、マイクロアグレッションを以下の3タイプに分類しました。

(1)小さな攻撃(Microassault)

冗談めかして行われる意図的な差別。怒って言い返すのが難しく、皆と一緒に笑いながら心で泣くことも。例:特定の人種や民族のしゃべり方をまねする。ステレオタイプ的な特徴を面白おかしく話す。

(2)小さな侮辱(Microinsults)

相手を傷付ける意図はないものの、無意識から差別的な言動を行う。例:アジア人に「数学得意でしょ」と言う。黒人の髪の毛を勝手に触ったり、肌の色についてコメントしたりする。比較的浅い付き合いのLGBTQの人に性的な質問をする。

(3)小さな無効化(Microinvalidations)

差別を矮小(わいしょう)化する。例:白人が黒人に対して「大事なのは中身だから肌の色は関係ないよ」と言う。

スー博士によると、この中でいちばんダメージを受けるのが「小さな無効化」です。例に挙げたように「大事なのは中身」と言われたら、表向きは正論なので何も言い返せず、心にモヤモヤした嫌な気持ちが残ります。こうした「肌の色は関係ない」というスタンスは「カラーブラインドネス」と呼ばれ、もともとはリベラルな思想ですが、根強く残る人種差別を語る口封じになり、逆に抑圧を強めると現在では考えられています。

マイクロアグレッションによる精神的ストレスは、受け取る側によっても大きく異なります。たとえば、「残業できる?」、「子どもを理由に休まれたら困るよ」といった上司の言葉は、育児に協力的な夫や親のいる女性と、頼れる人のいないシングルマザーを比べた場合、心理的負荷は全く異なるでしょう。本人の能力や適性とは関係なしに、環境要因によって不利な状況が生まれる場合もあるのです。恵まれた環境にいるママ友からの、「私も大変だし、気持ちわかるよ」といった励ましの言葉が逆にストレスになることも。

「そう言われたら、気にして何もしゃべれなくなってしまう」と思ったあなた、そういう人は他者の気持ちに敏感なのであまり気にする必要はないでしょう。その逆に、「私は絶対に大丈夫」と思った人ほど要注意。差別意識は24時間、空気のようにまとわりつき、私たちの無意識に取り込まれることを認識しましょう。そうすれば、会話の内容も自然と変わってきます。

大きな戦争も、最初の一歩は小さな差別意識から生まれます。まずは、マイクロアグレッションに気付き、自分が嫌な気持ちを感じたら、正直に相手に伝えてみましょう。また、子どもにマイクロアグレッションの概念を教え、外見や人種、ジェンダーに関するコメントは、知らないうちにその人を傷付けている可能性があることを伝えましょう。

相手の心がどうやったら満たされ、楽になるのかを意識しながら日常会話をする。そんな習慣を親子で身に付けられるのが理想です。そうして、平和の輪を世界中に広げていきたいものですね。

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*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考記事) 

スー博士の著書『日常生活に埋め込まれたマイクロアグレッション――人種、ジェンダー、性的指向:マイノリティに向けられる無意識の差別』(https://amzn.to/3qeILuT 

コロナ禍の2年間がもたらした影響~もうひとつのパンデミック~

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アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

コロナ禍の2年間がもたらした影響~もうひとつのパンデミック~

新型コロナのアウトブレイクから2年が経ちました。CDC(米疫病対策センター)によれば、アメリカの現在の感染死者数は95万人を超え、第二次世界大戦での米軍死者数(約40万人)の2倍以上を記録、保護者を失った子どもは14万人に上るなど、社会に極めて深刻な爪痕を残しています。「コロナ疲れ」や「コロナうつ」と言われるメンタルへの影響も大きく、世界では2020年の1年間でうつ病患者が5,300万人、不安障害の患者が7,600万人も増加し、中でも若者と女性への影響が深刻化しています。特に子どもたちは学校閉鎖が長引くにつれ、発達や学習の遅れ、孤独感や絶望感などの精神状態の悪化、自殺の増加が見られました。改めて、コロナ禍が子どもにもたらした影響を総括してみたいと思います。

今年1月に発表された、アメリカを含む11カ国における未成年者約8万人と保護者2万人近くを対象にした系統的分析では、2020年2月〜7月の期間に18%〜60%に及ぶ未成年者が強いストレスを感じ、不安やうつ症状を発症したとのこと。食生活や睡眠リズムも狂い、スマホやゲーム時間が増え、その逆にスポーツや運動時間が減少、肥満や身体的不調の訴えが増加しました。

現場で感じるのは、新型コロナ以前から子どもたちの精神状態は年々悪化しており、それにコロナという巨大なストレスがのしかかり、対応できない子どもたちが急増したということです。社会的隔離のストレスに加え、親のイライラも重なり親子げんかが絶えず、学校の長期閉鎖により逃げ場を失った子どもたちの心身に不調が出るのは当然の結果とも言えます。CDCの調査でも、2020年3月〜10月にかけて精神的症状の悪化から救急病院に運ばれた5〜11歳の子どもはコロナ前の2019年同時期と比べて24%増加、12〜17歳では31%も増え、2021年2月から3月に自殺を試みた12〜17歳の女子は2019年同時期と比べて1.5倍に跳ね上がりました。

現在、アメリカのティーンの4人に1人がうつ症状、5人に1人が不安症状を持つ状態にあり、昨年12月には米公衆衛生局が特例勧告を出し、精神状態の悪化を「もうひとつのパンデミック」と捉え、メンタルケアを最優先することを訴えています。子どもの希死念慮に親は気付かず、SOSのサインを出した時にはかなり悪化していることがほとんどです。「うちの子に限って」と思わず、親は注意深く子どもを見守る必要があります。

また、就学前の乳幼児に関しては発達の遅れが憂慮されています。乳幼児は口元を含む顔全体を見ながら感情を読み取り、言葉を発する時の口の動きを真似して言語や感情表現を身に付けていきます。「マスク保育」以降、表情の乏しさや言葉の遅れが指摘されており、保育現場では透明マスクを導入するなど対策を取っていますが、コロナ禍の保育が今後の発達にどういう影響を与えるかは未知数です。

いずれにせよ、子どもは大人の生きざまや社会のゆがみがいちばん色濃く出る、私たちを映し出す鏡です。若年層では、コロナによる死者よりも自死による死者のほうが多く、そこに至らないまでも精神的に追い詰められ苦しんでいる子どもたちが膨大な数に上ることを、私たちは重く受け止めるべきです。「子どものため」にやっていることが、逆に彼らを精神的に追い詰める結果にならないよう、何が大切かを今一度立ち止まって自問する必要があるでしょう。

たとえば、親がコロナへの不満ばかり言っていたら、子どもも同じように「コロナのせい」と環境や否定的な側面にフォーカスする思考パターンになり、「コロナさえなくなれば幸せになるのに」と自分の幸せを外部に委ねる考えを身に付けてしまいます。まずは大人が不満を言うのを止め、「自分にできること」に焦点を合わせ、子どもの話をただ聞いてあげてください。「でもそれはね」と言うのをちょっと我慢して、気持ちに寄り添ってあげるだけで、子どもたちは無力感や絶望感から脱して自分自身の力を取り戻していきます。 親が愛や感謝といった豊かな気持ちを子どもと共有することで、子どもに希望の種をたくさん分け与えていきたいものですね。

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(参考記事) 

https://jamanetwork.com/journals/jamapediatrics/fullarticle/2788069 

https://www.physiciansweekly.com/aap-issues-guidance-for-childrens-emotional-needs-during-covid-19 

https://tinyurl.com/yc4rv93s 

https://publications.aap.org/aapnews/news/17718 

https://www.additudemag.com/effects-of-covid-19-adhd-youth/ 

https://www.christianpost.com/news/more-youth-are-dying-of-suicide-overdose-than-covid-19-during-pandemic-cdc-director.html 

インセルやミソジニー、「非モテ」による犯罪と男の子の育て方

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インセルやミソジニー、「非モテ」による犯罪と男の子の育て方

子どもたちが日々接しているSNSですが、中には暴力を助長するような過激なメッセージが潜んでいることも。特に近年、大きな問題となっているのが「インセル」です。

インセルとは、「Involuntary Celibate(不本意な禁欲者)」の略で、「非モテ」とされる人々の中でも、自分の容姿に強いコンプレックスを持ち、「自分がモテないのは女性のせい」という強烈なミソジニー(女性嫌悪)を抱く人々のこと。その大部分は白人男性と言われており、「男女平等の社会は間違っていて、女性の権利は制限されるべき」、「全ての女性は男の金と外見にしか興味がない下等な生き物」、「女性は暴行や抹殺をされて当然」などと信じている人もいます。

インセル・コミュニティーで英雄的存在となった大量殺人犯が、白人と中華系ハーフのエリオット・ロジャー容疑者です。2014年5月、裕福な家庭で育った当時22歳だったロジャー容疑者はカリフォルニア大学サンタバーバラ校のキャンパス近辺で6人を殺害し、14人を負傷させた後に自殺。137ページにもわたる声明文を遺し、YouTube動画では「どうして君たち女の子が僕になびかないのかわからない。僕は君たち全員を罰する。不公平だ、犯罪だ」と、女性への強い憎悪と復讐(ふくしゅう)心をあらわにしています。

この犯行は、多くのインセルたちに影響を与えました。2018年4月、25歳のアルメニア系とイラン系のハーフ男性がカナダのトロントで通行人の10名を車でひき殺し、16人を負傷させましたが、犯行直前にフェイスブックで以下のような投稿をしました。「インセルの反乱は始まっている! われわれは全員のチャドやステイシーを倒すのだ! 最高位の紳士、エリオット・ロジャー万歳!」。ちなみに、「チャド」と「ステイシー」というのは、性的に魅力を持つ男性と女性を指すインセル用語です。

インセルの危険思想が問題になり、コミュニティーの多くは閉鎖されましたが、その後も北米では類似した無差別テロが十数件も起きています。日本でも2021年8月、36歳の男が東京・小田急線の電車内で、乗客10人に重軽傷を負わせた事件が社会に衝撃を与えましたが、供述では「勝ち組の女や幸せそうなカップルを見ると殺したかった」と、北米のインセルたちと類似した発言をしています。

これらの犯人は共通して、共感性やソーシャル・スキルの欠如、家族や友人との精神的な絆の欠如、孤独感・不安・うつ症状、外見への極端なこだわり、女性と付き合うのは男として当然だという「特権意識」、物事を両極端に考え決めつける「二極思考」、不幸な状況は自分のせいではなく女性や社会のせいだという被害者意識を持ち、責任転嫁をする傾向が見られるのが特徴です。思い通りにならないのは全部「ママのせい」と泣き叫ぶ駄々っ子がそのまま大きくなり、その怒りをぶつける依存対象がママから女性全般に移ったとも言えるかもしれません。

また、ネットを中心とした交流では、レコメンデーション機能により同じような意見がどんどんプッシュされるので、多様な考え方に触れることなく誰もが洗脳される状況になりやすいという側面も。女性を嫌悪する人たちがフェミニストになりすまして、故意に非常識なコメントや意見を投稿し、「フェミニストはクレイジーだ」と悪評を立てて世論を誘導することもあり得るのです。

子どもを過激思想から守るために、親にできることは何でしょうか。まずは他人からの評価に振り回されない確固とした自己を確立するために、「あなたの考えは何?」、「あなたの気持ちがいちばん大事だよ」と、子どもの考えや気持ちに焦点を当てることです。次に、共感力とコミュニケーション力を高めるため、問題が起きたら子どもの気持ちにまず共感し、そのあとで相手の気持ちも考えるように促して問題解決をさせましょう。また、特定の文化や民族、ジェンダーに関する批判は控え、違いや多様性を受け入れて尊重する気持ちを育てることが大切です。

自分の人生の責任は、自分で取ることしかできません。他者批判は他者依存。自分のできることにフォーカスすることが、精神的な自立と言えるのかもしれませんね。そのためにも、子どもの考えを尊重しつつ別の考え方や価値観があっていいこと、心の弱さやみにくさもまた人間らしさであることを教えてあげましょう。そして、オンライン空間だけでなく、ボランティアや旅行、自然に触れるなど、さまざまな体験の機会を作ることで、極端に執着することのない器の大きな人間に育ってくれるといいですね。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

簡単に目標を達成するには?~価値観を見直してやる気を伸ばす~

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アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

簡単に目標を達成するには?~価値観を見直してやる気を伸ばす~

新しい年の幕開けです。今年はどんな年にしたいですか? 「新年の抱負はいつも三日坊主に終わってしまう」という人は大勢いることでしょう。けれども、上手に目標を設定することで、意外と簡単に目標を達成できるかもしれません。コツは、自分の価値観を明確にし、それに沿った目標を設定することです。

「こういう価値観を大切にして生きている」と深く理解し、その価値観に合わせた目標を立てると、楽しみながらチャレンジする意欲が出てきます。その逆に、何となく周りに影響されて「とりあえず今年もダイエットにしとこうかな」など気が乗らない目標を立てると、なかなか達成意欲が湧かずに長続きしないものです。

人間行動学の権威であるジョン・ディマティーニ博士の提唱する「価値の序列」などを参考にして、人間の活動を大きく分けてみると、「精神性」、「学習・知識」、「仕事」、「家族」、「人間関係」、「美容・健康」、「娯楽」の7つの領域に分けられます。「人生で何をしたいかわからない」と思っている人も含め、全ての人はいずれかの価値のジャンルに、より多くの時間、エネルギー、お金を使っています。つまり、それらを客観的に観察することで、自分の価値観が明確になり、目標も立てやすくなります。

具体的には、以下の質問に対して自分の中のトップ3を選び、7つの領域のどれに当てはまるかを書き出してください。

1) あなたの部屋やオフィスを占めているものは何ですか?

「こうだったらいいな」という理想ではなく、ありのままの現状から答えてください。たとえば、スマホやパソコンの場合は、それを何のために使っているのかという「目的」から価値観を見つけます。仕事にいちばん多く使っている場合は「仕事」、SNSや友人とのやり取りによく使う場合は「人間関係」など。

2) 何に時間を費やしていますか?

家事や料理の場合は「家族」、運動の場合は「美容・健康」など。

3) あなたがエネルギーを注いでいるものは何ですか?

子どもの教育であれば「家族」、また仕事関連動画の閲覧であれば「仕事」など。

4) 何にお金を使っていますか?

たとえば、本の場合はその内容によって「仕事」や「精神性」などと当てはめてみてください。

以上、3個ずつ、全12個出そろったら、いちばん多かった領域から順番に並べてみましょう。それがあなたの価値の序列になります。上位にあるものは時間もお金も費やすので発展し、下位にあるものはその逆に衰退していきます。さて、あなたの価値の序列はいかがでしたでしょうか?

たとえば、「仕事」を重視しているのに、実際は自分の時間やお金が「人間関係」に費やされているなどの違いがある場合は、それを意識して習慣を変えるだけでも生き方が変わってくるでしょう。また、自分では意識しなかったけれど、実は思ってもみなかった価値を大切にしていたと気付く場合もあります。

さらに、仕事が美容関連などのように、価値の領域が重なっている場合もあるので、自分の価値観をピッタリ来る最適な言葉に落とし込むことが大事です。価値観を具体的に表現すると、人生の基軸が確立され、自信にもつながります。

ちなみに、私の場合は上位から「仕事」、「家族」、「精神性」の順でした。自分なりの表現にすると、大事にしている価値の1位は「経験と知識を深め、人々の心の健康に貢献する」、2位は「健康で笑いの絶えない幸せな家庭」、3位は「人格と精神性を高める」となりました。これを元に、新年の抱負は、「子育てサポート・グループを作り、月1回のオンライン会合を行う」、「1日に1度は家族の誰かを笑わせる。栄養学・免疫学・東洋医学を学ぶ」、「『一日一善』を実行する。ボランティアに積極的に参加する」としました。書いているだけで実行するのが楽しみになり、ワクワクしてきました。

なお、価値の序列は人によって大きく異なります。パートナーや子どもの価値の序列を知るだけでも、相手への理解が深まると同時に、「自分を理解してくれない」と、落胆したりイライラしたりすることも減るでしょう。また、自分の価値の序列も時が経つにつれて変化していくので、定期的に確認しましょう。

いずれにしても、自分の価値観を明確にすることは、他人の意見に左右されないで、自分自身の人生を自由に送るために不可欠なものです。新しい年に家族で価値の序列をチェックして、それぞれに達成可能な目標を立てられると良いですね。皆さまにとって今年が飛躍の年になるよう願っています。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考資料) 

ジョン・ディマティーニ博士のウェブサイト 

https://drdemartini.com/values 

問題行動の多い子は親が原因なのか?〜子どもとティーンのこころ育て

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

問題行動の多い子は親が原因なのか?

子育てに悩みはつきものですが、特に癇癪(かんしゃく)を起こして暴言を吐いたり手が出たりする問題行動には手を焼きますね。直そうとすればするほど逆に子どもの抵抗を招き、「私の子育てが間違っていたのかしら」と自分を責め、落ち込んでしまう日々が続くことも。

しかしながら、問題行動の多い子は、親に原因があるというのは誤解です。もともとその子が持っている気質、日々のストレスや困難の度合いとその受け取り方、サポートやリソースの有無、友人関係、SNSやニュース情報など社会的、文化的な影響を含め、さまざまな要因が複雑に絡み合って子どもの人格が形成されます。親の影響だけではありません。

ただ、子育てスタイルの違いにより、子どもの自己肯定感や成績、問題行動に大きな影響が出てくるとも調査で明らかになっています。以前、このコラムでも紹介しましたが、子育てには命令して子どもを従わせる「厳格型」、子どもの要求に簡単に従ってしまう「迎合型」、子どもに関心を向けず放ったらかしにする「育児放棄型」、そして子どもの気持ちをしっかり認めつつも社会的なルールを伝え、子どもの自発性を促す「尊重型」の4つのタイプがあります。効果的な「尊重型」の子育てにより、子どもの自己肯定感および社会的協調性を高めることがわかっています。

注意したいのが、親の子育てスタイルは、子どもの性格によっても大きく影響を受けるということ。気難しく頑固な性格の子どもの親は、言うことを聞かせようとして「厳格型」になる傾向にあります。そして、正そうとすればするほど逆に問題行動が増え、親子関係も悪化するという悪循環に陥ります。

それでは、具体的にどうすれば良いのでしょうか。まずは、問題行動を正そうと怒鳴ったり命令したりするのは逆効果だと認識することです。特に、ハイリー・センシティブ・チャイルド(HSC)と呼ばれる人一倍繊細な子や、意志の強い子、発達障害を持つ子などは、親のネガティブな言動に極めて敏感に反応し、より激しく反抗するか無力感で心を固く閉ざします。こうしたタイプの子どもは、「尊重型」の子育てを維持するのが難しいのですが、実はその恩恵をいちばん強く受けるのも彼らなのです。

「尊重型」の子育てのコツとしては、子どもの問題行動そのものではなく、その「動機」に焦点を当てること。人は何かをするとき、大抵は「嫌なことから逃れるため」、「望むものを手に入れるため」、「他者の注意を引くため」、そして「退屈しのぎのため」という4つの動機から行動をしています。

「授業中に騒ぐ」という行動ひとつとっても、その動機には、授業が難し過ぎる、逆に簡単過ぎる、注目されたいなど、さまざまな動機があるでしょう。子どもを変えようという気持ちをまずはちょっと横に置いて、本人に話を聞いてみましょう。

動機や目的がわかったら、それらを異なる方法で満たすことを考えます。問題行動により一時的に欲求が満たされても、本当の意味で満足することはできないと、子どももわかっています。たとえば、「授業内容がわからない」という理由で騒いで、一時的に授業から「逃れる」ことができたとしても、翌日また同じことの繰り返しになります。その代わりに、宿題を一緒に見てあげる、学習障害や発達障害の可能性を探る、認知のゆがみを正す、感情コントロール・スキルを学ぶなど、異なる方法で「授業についていきたい」という欲求を満たすことを子どもに教えてあげましょう。

また、「注目されたい」という動機の場合、先生がその子を怒るという行為は「罰」ではなく「報酬」になることも。「注目されたい」気持ちの奥には、「寂しい」という気持ちが隠れているかもしれません。親が子どもの話を熱心に聞くなどして、「一緒にいて欲しい。大事にされたい」という欲求を満たしてあげましょう。

こうして子どもの行動の奥底に隠れた動機や欲求を考えてみると、問題行動は子どもから親への「私を見て」というメッセージかもしれませんね。子どもを責めるのではなく、その動機に焦点を当てて根気強く子どもと接していけば、問題行動は次第に減っていくでしょう。親も同じように自分を責めるのではなく、欲求を大事にしながら子育てをしていきたいですね。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考資料) 

メタ分析:子どもの気質による子育ての影響の違い 

https://psycnet.apa.org/record/2016-39046-001 

 

問題行動が長期化する前に止める方法 

https://www.psychologytoday.com/us/blog/the-older-dad/201303/stopping-problem-behaviors-they-take-hold 

うつ病は心の弱さではない~うつの原因遺伝子が発見~

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

うつ病は心の弱さではない~うつの原因遺伝子が発見~

新型コロナウイルスの感染拡大により、うつ病が世界で急増したことが経済協力開発機構(OECD)の調査により明らかにされました。調査によると、うつ病やうつ状態の人はパンデミック宣言以降、米国ではなんと3.6倍に増加したとのこと。「コロナうつ」という造語もできたほど社会で大きな波紋を呼んでいる新型コロナウイルスですが、実は、うつ病の原因自体もウイルスである可能性が高いという新説が登場し、注目を集めています。

2020年6月、慈恵医科大学の近藤一博教授らは、うつ病の原因は、誰もが持っている「ヒトヘルペスウイルス6型(HHV-6)」に含まれる遺伝子であると発表しました。HHV-6とは、赤ちゃんの頃から幼児期にかけて、私たちのほぼ100%が感染するウイルスで、感染すると高熱を伴う突発性発疹を引き起こします。

ヒトに感染するヘルペスウイルスには8種類あり、唇に水膨れができる口唇ヘルペスは「単純ヘルペスウイルス1型」、水ぼうそうと帯状疱疹は「水痘・帯状疱疹ウイルス」という同じウイルスによるもの。ヘルペスウイルスは症状が治まっても体内にとどまり、宿主の体が疲れて免疫機能が落ちると次の宿主に移動するため再活性化します。

HHV-6もまた宿主が弱ると活性化し、口の唾液中に出てきます。そこから鼻の奥にある匂いを感じる脳細胞「嗅球」に到達して再感染を起こします。すると、ウイルスの持つSITH-1遺伝子が「SITH-1たんぱく質」を作り出し、これが脳細胞を死滅させ、脳のストレスを強めてうつ状態を引き起こします。ちなみに、SITH-1という名前は、映画「スター・ウォーズ」に登場するジェダイの騎士の宿敵、シスの暗黒卿にちなんだものだそう。

また最近では、うつ病は脳の炎症によるものという「神経炎症説」も話題です。病気やけが、疲労、ストレスなどにより、免疫細胞を活性化させる役割を持つ「炎症性サイトカイン」が発生しますが、大量発生して脳に入り込み、そこで炎症を起こして脳細胞を傷付け、うつを発症させるというもの。近藤教授は、脳のストレスをさせるHHV-6のSITH-1遺伝子というリスクファクターがあり、それに脳の炎症が引き金となって、うつ病が発症するのではないかと推測しています。

さらに、腸内環境もうつ病と深く関わっていることがわかってきました。国立精神・神経医療研究センター神経研究所の研究によると、うつ病患者の腸内のビフィズス菌数は、うつ病でない人に比べて極めて少ないそうです。健常な人の腸内細菌をうつ病の人の大腸に移植する腸内フローラ移植により、うつ病が治ったケースも報告されており、腸と脳は互いに影響し合う「脳腸相関」という概念が脚光を浴びています。

生物の進化の過程で最初にできた臓器は、脳や心臓ではなく腸です。また、幸せホルモンであるセロトニンの8、9割は腸で作られていることからも、腸を整えることが脳や心の健康に直結すると言えそうです。

今のところ、うつ病になる要因はひとつではなく、さまざまな要因が複雑に影響し合い、個人のストレス耐性を超えた時点で発症するものと見られています。うつ病の特徴である「自分・周囲・将来」への極端に悲観的な見方も、自分の心と身体からの「ちょっと休もう」のメッセージと考えられます。

特に、刺激に対して敏感に反応してしまうHSP(ハイリー・センシティブ・パーソン)や発達障害を持つ人は、ストレスを感じやすいうえに無理して頑張ってしまう傾向があります。心と身体の声に耳を澄まし、少し「疲れたな」と思った時には休むなどして、自分に合ったライフスタイルを探してみましょう。

将来的には、うつ病は身体の病気と同じように誰でもなり得る病気だという認識が社会に広まり、血液検査で予備軍を発見したり、炎症を治療するなど腸内環境を改善したりといった包括的な治療法が取られるようになるかもしれません。「うつは甘え」「心の弱さ」といった誤解や偏見が減っていくことを願います。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考資料) 

新型コロナウイルスの与える心理的影響(OECD調査・20215月) 

https://www.oecd.org/coronavirus/policy-responses/tackling-the-mental-health-impact-of-the-covid-19-crisis-an-integrated-whole-of-society-response-0ccafa0b/ 

慈恵医科大学の近藤一博教授らによる論文 

https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(20)30372-2#%20 

国立精神・神経医療研究センター神経研究所の研究 

https://www.ncnp.go.jp/up/1465432520.pdf 

先生やクラスメートの前で話せない子どものサポート

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

先生やクラスメートの前で話せない子どものサポート

9月から本格的な対面授業が再開しました。1年半ぶりに学校へ戻った緊張と不安感から、頭痛や吐き気を訴えたり、行きたくないと泣き出したりする子どもも大勢いたそうです。もともと集団生活を苦手とする内気なタイプの子は、クラスで緊張して、ひと言もしゃべることができずに1日が過ぎてしまうことも珍しくありません。新しい環境に慣れたら話せるようになる子がほとんどですが、中には話せない状態が長期間にわたり続く子もいます。こうした子は、場面緘黙症(SM)を発症しているかもしれません。

SMとは、家ではよくしゃべるのに、学校など特定の場所ではほとんど全くしゃべれない状態が1カ月以上続いており、本人もとても辛い思いをしている状態です。アメリカ言語聴覚学会(ASHA)によると、子どもの約0.5%に見られ、大抵は小学校に上がる前から徴候が見られます。診断される年齢は6〜8歳頃と発症時期よりも遅く、その理由は、単に引っ込み思案な子と思われて見過ごされてしまうからです。女の子に多く見られ、その割合は男の子の約2倍です。

SM発症の要因としては、生まれながらに不安や緊張を感じやすい繊細な気質が挙げられます。親の育て方とはあまり関係ありません。また、海外に引っ越して言葉がわからない不安な状況に置かれた、先生やクラスメートから傷付くことを言われた、などの環境的な要因も大きく影響します。周囲からは「無視している」、「反抗的」などと誤解されがちで、本人もそれを敏感に察知するため、より心を閉ざしてしまいます。「今さら話したら変に思われる」と思い込み、さらに長引く場合もあるので、できるだけ早期に介入することが大切です。

治療法としては、まずは本人と場面緘黙について話し合うことから始めます。大抵の子は、小学校に上がる前には自分がしゃべれないと自覚しており、どうしていいかわからずにひとりで悩んでいます。まずは、緘黙は治るということを教えてあげましょう。「話したくない」と拒否している子も本当は困っているはずなので、「誰もが練習したら話せるようになる」と伝えます。

次に、学校側にもSMについての理解を深めてもらいます。「ひと言でいいからしゃべりなさい」などの無理強いや焦らせる言葉は逆効果になると伝え、本人がその場にいていいんだと思えるように、温かく見守る環境を整えます。クラスで緘黙に関する絵本を読んだり、本人が書いた手紙や家庭での様子を撮ったビデオを見せたりと、先生やクラスメートに知ってもらうだけでも、その子の不安感や居心地の悪さは和らぎます。

本人の話す練習については、あくまでその子の意見を聞きながら無理のない目標を立て、根気強く取り組みます。最初から大勢のクラスメートの前で話すのは難しいので、まずは先生やカウンセラーが家庭訪問などで親との会話を聞くことから始めます。質問をして「はい・いいえ」などの簡単な言葉やジェスチャーで答えてもらう、仲の良い友だちと手紙の交換をする、などとできそうなものからチャレンジします。

また、見知らぬ人と話すほうが不安を感じにくいので、旅行先で現地の人と話す、新しい趣味や習い事を始める、店で買い物をしてレジの店員さんにお礼を言う、なども良いですね。小さな成功体験をたくさん積ませ、自信を付けてあげましょう。ほかにも、自然に触れて運動をしたり心身共にリラックスしたりする機会を作る、不安を軽減させる感情コントール・スキルを学ぶ、「間違ったことを言ってはいけない」という思い込みを正す、といった方法も有効です。

孤立感を覚えやすいSMの子にとって、友だちはとても大切。コミュニケーションの方法は言葉だけではありません。音楽やスポーツ、ゲーム、アニメなど好きなものを分かち合うことで絆が深まります。一緒にゲームをするだけで、何も言わなくても心は通じ合うもの。安心できる人、場所、状況を少しずつ増やしていき、自分は受け入れられているという経験を積んでいけば、時間はかかりますがSMは克服できます。焦らずじっくり向き合うことで、子どもの心が開いていくといいですね。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考資料) 

「場面緘黙症」アメリカ言語聴覚学会(ASHA 

https://www.asha.org/practice-portal/clinical-topics/selective-mutism/#collapse_2 

スポーツ・チームに学ぶ、子どもにやる気を出させる声がけの仕方

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

スポーツ・チームに学ぶ、子どもにやる気を出させる声がけの仕方

東京五輪・パラ選手たちの熱き戦いは、私たちに多くの感動と勇気を与えてくれました。数々の困難を陰で支えるコーチの存在は絶大で、特に試合前に語りかけるコーチの言葉が選手を奮い立たせ、勝敗を大きく左右することも。こうした短い激励のスピーチは「ペップトーク(Pep Talk)」と呼ばれており、現在ではビジネスや学業、メンタルヘルスの分野にも幅広く取り入れられています。このペップトークを子育てにも取り入れ、子どものやる気を最大限に引き出してみませんか。

ペップトークの「pep」とは「元気付ける」という意味。一見簡単そうですが、「頑張って!」といった単純な励ましでは、子どもはなかなかやる気にならないもの。テキサスA&M国際大学のジャクリーン・メイフィールド教授とミルトン・メイフィールド教授の研究によると、効果的なペップトークには、「方向性」、「共感」、そして「使命感」という3つの要素が含まれているそうです。

「方向性」では、目標や目的は何で具体的にはどうすればいいのかという明確な情報を伝えます。方向性や目標がはっきりしないと、目的地のないまま車を運転しているようなもので、どこにも行き着くことができません。「あなたの目標は、〜だね」、「そのためには〜をする必要があるよ」など、具体的にやることを示します。

「共感」では、本人の努力を認め、直面している困難や辛い気持ちを一緒に感じて寄り添ってあげることです。「誰よりも頑張ってきたよね」、「よく耐えたね」という風に、寄り添ってあげると気持ちが落ち着きます。その逆に、「そんな風にネガティブに考えちゃダメだよ」などと否定すると、やる気を失うことに。

最後の「使命感」は、「何のためにそれをやるのか」という動機付けを明確にしてあげること。自分のやっていることは意味があると思えば、人は指示されなくても自分の意志で自発的に動きます。やる気は、行動する理由があれば自然に出てくるもの。「あなたにしかできないことだと思う」、「あなたの頑張りが私の励みになっているよ」、「楽しんできてね」など、本人の個性や気持ちを大事にするような言葉をかけてあげてください。

その逆に、子どものやる気や自信を奪ってしまう言葉もあります。スタンフォード大学の心理学教授であるキャロル・ドゥエック博士の研究によると、子どもを2つのグループに分けて問題を与え、一方には「君は賢いね」と「才能」を褒め、もう一方には「よく頑張ったね」と「努力」を褒めました。その後、次の問題を子どもに選ばせた際に、「才能」を褒められたグループの多くは簡単な問題を、「努力」を褒められたグループの多くは難しい問題を選んだとのこと。

また、両グループの子どもに難しい問題を解かせたところ、「努力」を褒められたグループのほうが成績は良く、「才能」を褒められたグループの子どもたちは、自分の点数を実際よりも高めに報告した子が3倍多かったそうです。このように、才能を褒めると「自分は賢いので問題が解けないのは恥ずかしい」と思い、挑戦を避けて問題が解けなかった際にはうそをついて自分を良く見せようとします。親が良かれと思って「賢いね」などと褒めていると、「自分は人よりも優れているはず」という考えが強化され、失敗を恐れて挑戦を避ける完璧主義的な性格に陥りやすくなります。

やる気や自信を付けさせるには、「努力」にフォーカスすることが大事。言葉の力は、本当に絶大です。実は、ペップトークの3要素がふんだんに使われている格好の教材が、日本にはたくさんあります。それは、ズバリ漫画です。特に、夢に向かって果敢に立ち向かう主人公を描いた「努力・友情・勝利」の少年漫画は、まさにペップトークの塊。親子で漫画やアニメを一緒に観ながら、主人公の言動について語るだけでも大きな効果があるでしょう。ペップトークの3要素を意識しながら、「自分の能力や人格は生まれつきのものではなく、いくらでも成長できる」という信念を子どもに伝え、子どものやる気と自信を伸ばしていきたいものですね。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考資料) 

The Science of Pep Talks 

https://hbr.org/2017/07/the-science-of-pep-talks 

Carol Dweck Revisits the ‘Growth Mindset’ 

https://www.edweek.org/leadership/opinion-carol-dweck-revisits-the-growth-mindset/2015/09 

 

知らないうちに別の自分が現れる?~解離症状と忘れられたトラウマの記憶~

子どもとティーンのこころ育て

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知らないうちに別の自分が現れる?
~解離症状と忘れられたトラウマの記憶~

車の運転中にどうやって家にたどり着いたか覚えていない、読書や音楽に没頭して自分が呼ばれていることに気付かない、そんな経験はありませんか? このように自分の意識や感覚が自己から切り離されることを「解離」と呼び、誰もが日常的に経験しています。ただ、幼少期に受けた虐待や事故など耐え難いトラウマを経験した人が、自分の心を守るために頻繁に解離を起こしてしまう場合もあります。自分の体が自分のものじゃない感覚や、自分がふたりいるような感じ、気付いたら見知らぬ場所にいるなど、生活に支障を来すほどの場合は「解離性障害(Dissociative Disorders)」の可能性が考えられます。

解離性障害には大きく分けて、1)つらいトラウマ体験やその時期の記憶が思い出せない「解離性健忘(Dissociative Amnesia)」、2)自分を外から眺めているような体外離脱の感覚、あるいは夢でも見ているような非現実感が続く「離人感・現実感喪失(Depersonalization/Derealization Disorder)」、3)ひとりの中に別人格が複数存在する「解離性同一性障害(DID:Dissociative Identity Disorder)」があります。

1)の解離性健忘の一種には、気が付くと知らない場所にいたり、記憶が喪失して家や職場から突然いなくなったり、中には蒸発してしまうケースも。これは「解離性とん走(Dissociative Fugue)」と呼ばれ、記憶のない期間は数時間の場合もあれば、数十年に及ぶという人もいます。

なお、3)の解離性同一性障害の患者は、TVドラマや映画に登場する多重人格者のように明確な人格交代が観察される割合は5%にすぎません。大部分は周囲には気付かれずに、性格に問題のある人だと煙たがられたり、虚言癖や嘘つき呼ばわりされたりしています(注1。解離状態で過食や自傷行為をして、気付いたら腕が血だらけという場合もあり、本人は自他共にひどい不信感に陥り、孤独感や絶望感から抑うつ、摂食障害、薬物依存なども併発しやすくなります。また、患者の多くは心的外傷後ストレス障害(PTSD)の基準も満たしています。

解離性障害になる人は、身体的、性的、または精神的虐待を幼少期に受け続けた人がほとんどで、その記憶自体を思い出せない人も大勢います。心理学者のマーティン・セリグマン博士が行った実験では、犬を檻に閉じ込めて電気ショックを繰り返し与えたところ、檻を開け放っても諦めて逃げなくなったそうです。この状態を「学習性無力感」と呼びますが、私たち人間も「逃げ場がなく安全な場所がない」状況に置かれると、戦ったり逃げたりすることを諦め、凍り付いたように動けなくなります。

「身体」が逃げられない状態に置かれた子どもは、最終的な防衛手段として「意識」を逃がします。脳は意識がまひした時の体験を言語化して記憶できないため、恐怖体験が未処理のまま残り、解離性障害を引き起こすのです。 

トラウマ研究を長年続けてきた精神科医のベッセル・ヴァン・デア・コーク氏は、著書『身体はトラウマを記録する』(注2の中で、トラウマ記憶の多くは非言語領域に留まっているので、言葉中心の心理療法だけでは効果が薄いと指摘しています。したがって、体の感覚にフォーカスする訓練(ヨガ、武道、マインドフルネス)、非言語的なアプローチ(アートセラピー、プレイセラピー)、神経回路に働きかける療法(鍼、タッピング、EMDR:眼球運動による脱感作と再処理法、ニューロフィードバック:脳波訓練法)などとの併用が不可欠になります。

また、最新の脳科学研究によると、私たちの誰もが複数の心を持っており(注3、トラウマによりそれが断片化されるそうです。このように切り離された自己の一部と対話を深め、調和や統合を図る「内的家族システム(IFS:Internal Family Systems)」療法も効果的です。いずれの方法も、身体感覚を手がかりにしながら自己対話を進めることで、「自分の主導権は自分が握っている」という主体感覚を取り戻すことが大切です。


*同記事は、ノースウェスト大学院で臨床心理学を専攻し、シアトル地域の大手セラピーエージェンシーで5年間働いたのちに独立し、ライフフル・カウンセリングで米ワシントン州認定メンタルヘルスカウンセラー(認定ID:LH60996161)としてセラピーを行う長野弘子さんが、学術データや経験をもとに執筆しているものです。詳しくは、ライフフル・カウンセリングなど専門家へご相談ください。

(参考資料) 

(注1Dissociative Disorders: An Overview of Assessment, Phenomonology and Treatment. 

https://www.researchgate.net/publication/231337464_Dissociative_Disorders_An_Overview_of_Assessment_Phenomonology_and_Treatment 

 

(注2)『身体はトラウマを記録する――脳・心・体のつながりと回復のための手法』ベッセル・ヴァン・デア・コーク著 

https://tinyurl.com/x9m9j4kf 

 

(注3)『右脳と左脳を見つけた男認知神経科学の父、脳と人生を語る』マイケル・S・ガザニガ著 

https://tinyurl.com/2xpxa8z6