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注目の新作ムービー 『High Life』人間と宇宙、何ひとつ省略されない本格SF映画

注目の新作ムービー

人間と宇宙、何ひとつ省略されない本格SF映画

High Life (邦題「ハイ・ライフ」)

久しぶりに知的興奮を覚えるSF映画だった。こんな体験はアンドレイ・タルコフスキー監督の名作「惑星ソラリス」を観て以来かもしれない。脚本・監督はフランスのクレール・ドゥニで、アニエス・バルダ監督亡き後、フランスの女性監督を代表する名匠のひとりである。

舞台はブラックホールの探査に向かう宇宙船。乗員は死刑を免れることを条件に乗船した囚人の男女と女性科学者の9人。船内はこの科学者による生殖の人体実験が行われていた。

船内に暮らす赤ん坊と青年・モンテ(ロバート・パティンソン)のふたりだけでゆっくりと始まる冒頭。一体、この船内で何が起きたのか。彼の目的は?次第に明かされていく船内の過去。だが、その描写は断片的で、見る者に集中力を求めてくる。黙々と船内農園で働いていたモンテ、科学者・ディブス(ジュリエット・ビノシュ)の妄執とも思える生殖へのこだわり、性行為を禁止された若い乗員たちのための快楽ボックスなど異様な船内生活が描かれていく。長い航海と厳しい管理下、欲望、支配、妄執などに疲れた乗員たちがさまざまな事件を起こしていく。

本作の主眼は密室に閉ざされた人間の性と生殖の観察にあり、宇宙は単なる背景なのだろうか。いや、本作は本格的SF作品である。冒頭、孤独の中で宇宙をさまようモンテと赤ん坊のふたりは、新しいエネルギー源を求めて、ブラックホールへの突入を目指しているのだ。

前面で登場する人間たち、背後にある宇宙とブラックホール、それぞれに緻密に描きこまれ、何ひとつ省略されない世界が見事に構築されていく。その張り詰めた世界に目と心を奪われ、最後まで緊張が解けることがなかった。

ドゥニ監督は71歳。その一貫性と独自性を再認識した。アフリカのフランス植民地で12歳まで育った彼女の作品は、初期の「ショコラ」「ホワイト・マテリアル」など植民地や植民地体験を描いたものが多い。本作のタイトル「High Life」も、アフリカの言葉で白人入植者を指しているという。であると同時に、密室で性を管理された白人乗員たちの暮らしは奴隷同然である。白人入植者の子として、アフリカ人使用人に囲 まれ育った彼女の体験と見たものが、宇宙船という舞台で再構築されたのではないだろうか。自由を奪われるということ、孤独を生き抜くこと、その先の未来には何があるのか。彼女の問いかけは続いている。

 

 

High Life

(邦題「ハイ・ライフ」)

上映時間:1時間50分

写真クレジット:A24

シアトルではSIFF Cinema Uptown、AMC Seattle 10で上映中。

 

アリゾナ州メサのリタイアメント・コミュニティー

アリゾナ州メサのリタイアメント・コミュニティー

 

ハイエンドのRVパーク、ラス・パルマス・グランド。夕刻に始まる社交ダンス・パーティーには8ドルの入場料を払えばビジターも参加できる。夕焼け空も美しく、思わず来て良かったと感動

今年の冬、雨のバンクーバーを一時逃れ、アリゾナ州都フェニックスの郊外に位置するメサに2週間滞在。 メサはテキサス州アーリントンなどと並んで、ブームバーブ(急速に発展した郊外都市)のひとつに数えられる。リゾート施設が乱立する一大リタイアメント・コミュニティーを形成し、冬には私と同じく米国北部やカナダ各地から避寒に訪れる「スノーバード」たちがやって来て、最長半年を過ごす。その仮住まいは大きく2種類に分けられ、独立家屋が集まってコミュニティーを形成するもの、モービル・ホームをゲート付きのRVパークに半永久的に設置したものとがある。買 い取りもレンタルもでき、トレーラー持参でキャンプ・サイトに滞在する人もいる。

 

メサへはフェニックス空港から東に車で約20分。宿泊した辺りはサボテンなど砂漠特有の植物が見られ、心地よい環境

私の場合は幸い、相棒ジェームズのダンス仲間の女性が彼氏と引っ越した新居に招待してくれた。着いた翌朝、ピックルボール・プレーヤーだという彼氏の案内で、公共コートが6面あるプロスペクター公園へ。毎朝、レンタカーでこの公園に通う日課ができ上がった。ピックルボールに次ぐ、われわれの第2の趣味たる社交ダンスも盛んなメサ。毎日どこかで生バンド付きのシニア向けダンス・パーティーが開催される。主にカントリー・ツー・ステップと呼ばれる簡単なもので、インターナショナル・スタイルの社交ダンスを習っている私たちにはちょっと物足りない。カップル用とシングル用のテーブルが分かれており、男性のシングル・ダンサーは少ないのでどこでも歓迎された。

Vパークのどこかで毎日行われるダンス・パーティー。 自分も含めたシニアたちが、人生の最終章を愉快に踊って過ごそうとしているように目に映る?

もちろん、食べ物も旅の楽しみ。バンクーバーで知り合った同地の住民からの入れ知恵で、昼食にイン・アンド・アウトというハンバーガーのチェーン店に入り、これにすっかりハマる。できたての「ダブル・ダブル」バーガーとポテトがいかにもうまそうに赤い盆に載っているのだ。もう1軒、安くておいしいステーキ屋のテキサス・ロードハウスも、特に若者なら1度は行くべき。ピーク時は行列ができるチェーン店で、山盛りの殻付きピーナツがテーブルに置かれ、食べ放題。ポテトやサラダ、ふわふわパンが付いた各種ステーキ定食が12ドル前後から選べる。冷凍肉は使わないというステーキに大満足。

バーガー・チェーンのイン・アンド・アウトは、新鮮な材料を使い、味もボ リュームも申し分なし。清潔な店内、スタッフのにこやかな接客、激安価格もうれしい

滞在中は幸い毎日快晴、快適。来年も南に避寒で行くことを続けたいと思うが、「カナダのカリフォルニア」とあだ名され、冬でもさほど寒くないバンクーバーを1週間でも留守にすると、年々増える「必要物資」がそろった自宅が恋しくなる。バンクーバーに住んで5年経ち、日常のルーティンができたこともあって、長期のスノーバードは自分には向かないように思う。

近くには西部の探鉱地を彷彿させる町が復活・保存され、観光客でにぎわう。写真はメサの東、アパッチ・ジャ ンクションという町にあるゴールドフィールド・ゴースト・タウン

注目の新作ムービー 『Us』鋭い時代性を感じさせるホラー

注目の新作ムービー

鋭い時代性を感じさせるホラー

Us (邦題「アス」)

17 年に脚本・監督を担当した異色ホラー映画「ゲット・アウト」が大ヒットし、アカデミー賞脚本賞も受賞したジョーダン・ピールの長編2作目。本作もユニークなホラー作品で、公開1週目で興業成績第1位と、最高のスタートを切った。

サマーハウスに休暇でやって来た仲の良いウィルソン一家の前に、彼らとそっくりな4人組が現れた。赤いジャンプスーツを着た彼らドッペルゲンガーは、まず父そっくりな男が父・ゲイブ(ウィンストン・デューク)を襲い、母そっくりな女「レッド」は母・デレード(ルピタ・ニョンゴ)に手錠をかけ、自分たちが彼らのダブルとして、いかに惨めな暮らしをしてきたかという恨みがましい話をする。強靭な体力を持つ彼らは、一家を殺して自分たちが取って代わろうとしていたのだ。逃げ出した娘・ゾーラ(シャハディ・ライト=ジョセフ)と息子・ジェイソン(エバン・アレックス)らは近くに滞在するタイラー一家の屋敷にたどり着き、この現象が世界中で起きていることを知る。

後半は命からがら生き延びた一家が、執拗に追いかけるドッペルゲンガーらと知恵を絞って闘う様子がスリリングに描かれていく。闘いの中心は母のデレードで、彼女が一連の謎のカギを握っているのだ。冒頭で描かれるデレードの 1986年のトラウマ体験と、当時の米国を熱狂させたチャリ ティー・イベント「Hands Across America」などが次第に意味を持ち始め、ドッペルゲンガーらがどこから来たのかという背景も明かされていく。

前作のような人種差別の現在を明確に描き出す方向には向かわず、裕福なアフリカ系一家を主人公に設定にすることであえて人種を透明化し、むしろ今の米国のライフスタイルや価値観そのものへと視点を大きく広げた感があった。

ドッペルゲンガーはホラー向きなのだろう。自分とそっくりな人間と出会う気味の悪さは想像しただけでゾッ。私の好きな映画に、黒沢清監督、役所広司主演の「ドッペルゲンガー」があるが、本作は出会いの心理的衝撃よりも、なぜ彼らが存在していたのかについての仮説を提示して卓抜していた。

コメディアン経験の長いピールはアイデアの玉手箱のような人なのだろう。本作にもさまざまなアイデアやひねりの効いた笑いなどが全編に散りばめられいて、観客によって見えてくるもの、感じるものが違う気がした。

 

Us

(邦題「アス」)

上映時間:1時間56分

写真クレジット:Universal Pictures

シアトルではシネコンなどで上映中。

 

イチロー選手、ありがとう!

今回のテーマ

イチロー選手、ありがとう!

3 月末、日本ではイチロー選手の引退が連日報道されていました。改めて、イチロー選手とシアトルの根強い縁を感じています。ちょっとイチロー選手をやっかんでいた日本のおじさんたちも、どうやら感動したようですね。

シアトルの皆さん、こんにちは。シアトルにとっては、最高な季節が足音を立ててやって来ますね。シアトルを思えば、いつもそこに行きたいと願うミヤザキです(笑)。

今回は、引退を決めたイチロー選手へエールを送るため、また、野球を人生の軸として置き、これから世界を担う若者たちに、きっとまだまだ貢献するであろうイチロー選手に感謝を込めて、コラムを書きたいと思います。

さて、「イチロー」「生年月日」とググりますと、1973年10月22日生まれと出てきます。シアトルでも紀伊國屋書店さんに置いているのですが、私は『13の性格』という人間鑑定本を出しておりまして、その中でイチロー選手の生年月日で該当するのが「4」の性格、つまり「アイデア」です。

アイデアって言うと、皆さんから「アイデアなんて出ない」と返されることが多いのですが、実はこれ、「着眼点が違う」という意味なのです。イチロー選手本人にインタビューできるのなら、イチロー選手の野球、海外を選んだ人生の分岐点や着眼点をぜひ聞いてみたいものです。

そして、イチロー選手の資質を見てみると、「新しい流れを起こす」という才能が。それも、ダブルでありました。それがわかった時、「あぁ、野球という分野で新しい時代を起こしたんだ」と、合点がいきました。 実際、イチロー選手は、多くの青年に勇気や進歩を与えたと思います。

人というのは、自分で脳に「できない」と制限をかけます。私だってそうです。しかし、できないと思うことは叶うはずもないのです。叶うはずもないことを目の当たりにすることで、叶うはずがなかったことは「自分の常識」に変わるわけです。

陸上選手も同じ。自己ベストを 0.01 秒を上回る度に常識は変わり、別の新しい選手もまた、そのタイムを塗り替えていきます。アメリカに渡って、メジャーリーガーとして自分の夢を成し遂げたイチロー選手は、後進の夢にまで、新しい流れを提供する人だったのだと気付きました。 想像の壁を越え、切り開いてくださったことに感謝し たい気持ちでいっぱいです。

最後に、これもお伝えしておかねばなりません。イチロー選手は、確固たる目標に向かって行ける人でもあります。目標に向かって、着実に突き進む。それは 時に、「自己主張が強い」だとか、「マイペース」だとか言われるかもしれませんが、人から何かしら「変わってる」と言われるくらいでないと。天下を取るような人とは、そういうものです。

また、忘れてはいけないのが、引退会見で妻の弓子さんに感謝していたイチロー選手の姿ですね。もしかしたら傍目からすると、人を振り回すイメージがあったとしても、人に寄り添うのがイチロー選手の軸かもしれません。

イチロー選手、長くにわたり、本当にありがとうございました!

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親は 4 タイプいる!あなたの子育てスタイル診断

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

親は4タイプいる!あなたの子育てスタイル診断

子育てをしていると、いろんな問題や悩みが出てきて「どう向き合えばいいの」と、途方にくれる時もありますね。子育ての学校などがあればいいのですが、大抵は自分が育った家庭での育児スタイルを繰り返してしまいます。

だけど、理想的な育児スタイルを知り、実践することで、子どもが自らの意識を高め、自立へと向かっていく可能性がグンと上がります。発達心理学者のダイアナ・バウムリンドは、親の役割を、1)社会性を高めるルール設定、2)情緒の発達のための感情サポート、の2つに大きく分け、その度合いにより以下の4つのタイプに分類しました。あなたはどのタイプに当てはまるでしょうか。

厳格(Authoritarian)タイプ

まず、厳格(Authoritarian)タイプは、ルールを設定したら有無を言わせず子どもを従わせ、飴と鞭を使い分けて子どもをコントロールします。子どもの気持ちを考えようとせず、「とにかく言うことを聞きなさい」と言うのがこのタイプ。子どもが言うことを聞かないと力でねじふせようとします。

ひと昔前の日本の父親像、もしくは最近のタイガー・マザーと重なりますが、こうした親に育てられた子どもは、情緒的な成熟や自立心に欠けるため、礼儀正しく成績優秀であっても心の奥底では自分に自信がなく、不安感の強い人間に育ちます。無意識で常に人の顔色をうかがい期待に応えようとするか、あるいは人の気持ちが理解できない傲慢で支配的な人、反抗的な人間になる可能性も。

迎合(Permissive)タイプ

その逆に、迎合(Permissive)タイプは、ルールの遵守よりも子どもの気持ちを優先し、子どもの要求に簡単に応えてしまいます。親子というよりも友だちに近く、問題のある行動に対して毅然とした態度を取ることができません。「まだ子どもなんだから」、「やりたくないならやらなくてもいいよ」と言うのがこのタイプの親で、子どもとの対立を避けてリ ミットを設定できません。

子どもは駄々をこねれば許して もらえるので、親を自分の思い通りにさせようと次第に支配的になります。自分のやりたいことを優先して学校の規則を無視したり、最後まで物事をやり遂げられる粘り強さに欠けるため成績もふるいません。将来的には、衝動的で誘惑に負けやすく、自己中心的で人間関係にトラブルを抱えやすい人になります。

尊重(Authoritative)タイプ

上記の2 つのタイプの中間で、理想的な育児スタイルなのが、尊重(Authoritative)タイプ。子どもの気持ちを尊重したうえで、ルールの必要性をきちんと説明し、自発的に判断するよう導きます。ルール作りを子どもと一緒に行い、「これについて、どう思う? どう感じる?」と聞くのがこのタイプの親。

子どもの気持ちを受け入れるのと同時にリミッ トも設定するため、子どもは安定した枠組みの中で育ち、規範意識や自立心が育っていきます。将来的には、高い自己評価を持ち、他人の考えも尊重しながら自ら考えて行動するこ とのできる精神的に成熟した人間に育ちます。

育児放棄(Neglectful)タイプ

最後に、育児放棄(Neglectful)タイプは、文字通り子どもに対して興味や関心がなく、ルールも愛情もないまま、衣食住だけを与える親です。育児全般の知識がない、仕事が忙しく子どもとの時間が少ない、ストレスで子どもの気持ちを考える余裕がない、などもこのタイプになりがちです。「子どもが何をしているかよく知らない」と言う人はこのタイプでしょう。こうした親に育てられた子どもは、自己評価 がとても低く、寂しさから非行に走ったり、うつ病などの精 神疾患にかかる可能性がとても高くなります。

一方が厳格タイプ、もう一方が迎合タイプでバランスが取れている家庭もあれば、タイプが異なることで夫婦や親子間 の軋轢を生む場合もあります。厳格タイプに育てられた人 が、その真逆の迎合タイプになってしまう場合も。また、も ともと不安を感じやすい抑制型の気質を持つ子どもは、子育 てのスタイルにさらに影響されやすいとのこと。あなたは どのタイプでしたか。自分が厳格タイプだと思うなら、子ど もの気持ちを尋ねることから、迎合タイプなら子どもと共に ルールの見直しから始めてみてはいかがでしょうか。

70歳にて素直になる? シニアの告白

70歳にて素直になる? シニアの告白

素直になる、言い換えれば先入観をなくして頭を「空」の状態で人や事物に接すると、不思議と今まで避けていたか興味を持たなかったいろんな分野で「好き」な範囲が広がるようだ。

白状するが、最近まで人を外見で判断し、こちらから声をかけないことがあった。退職して5年経った今では、気持ちに余裕ができたのか、生存本能からずる賢くなっているのか、「美しい人もそうでない人も、みんな本当はさびしいのかもしれない」と思うようになり、誰にでもニュートラルな笑顔で話しかけられるようになった。すると、相手からも好意的な反応が返ってきて、雪解けが始まることが多い。

近所の公園で催される年次ダンス・パーティー。市政府やスターバックスが協賛して無料のデザート付きサーモン・ディナーも供される

たとえば、近所のコミュニティーセンターへ、朝のシニア向けエクササイズに出かけると、ほとんど全員が女性(寿命の差か?)。筋トレなどルーティンを難なくこなす人、おそらく医者に言われて通うようになったなと思われる、インストラクターの指示についていけない人、いつも怖い顔つきの人など、いろいろだ。

2月に近所のコミュニティーセンターで催された旧正月のダンス・パーティーでは、シニアが中国式ラインダンスを披露

以前だったら、均整が取れた美しいシニアには、自分など相手にしてくれないだろうと思って近寄らなかったり、逆に重い体で髪の手入れも雑な見た目に美しくないシニア(自分のことは差し置いて失礼!)には近付きたくなかったりと、思えば傲慢な態度で距離を置いていた。

近頃は赤ちゃんと犬を見れば必ず「Hi」と挨拶することにしている

近頃はやっと見た目にとらわれることなく、近くにいる人にはきっかけをつかんで誰彼構わず共通の話題で声をかけられるようになった。話すうちに、医者の情報や腰痛に利くエクササイズなど、有益な情報が交換できることが多い。そして何よりうれしいことは、話しかけた人が明るい顔になること。「やった!」と、一瞬でも大きな充実感に浸れる。

社交ダンスのレッスンでもそうだ。ひとりで練習している熟練ダンサーは、4年経っても初心者の自分とは違う人種と、近寄りがたい存在に見える。でも、世話焼きの友人の引き合わせでダンスを相手してもらい、「素直」に礼を言うと、初めて親しみのある顔つきに変わった。話し出すと意外とナイス。

今までは見るからに熟練した相手をダンスに誘うことなど気後れして考えられなかった。「素直」になって自意識をなくすと、楽しく過ごせる時間が増えること請け合いだ

いつもはダンスに集中しているからこその真剣な表情なのだと気が付く。そのあと、こちらから誘って仲間たちと夕食を共にした。好機会は自分から前に出ないとやって来ない。これからも勇気を出して、誰にも躊躇することなく、残りの人生を精いっぱい楽しみたいと思うきっかけとなった瞬間だった。

年を重ねると子どもに逆戻りするという。でも、いろんな経験を踏まえての素直さは子どものそれとは少し性格が違う。それこそ「年の功」だと思うのだ。

子どもの本心を聞き出すテクニック

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

こどもの本心を聞き出すテクニック

子どもの本心を聞き出すテクニック

美容院やエステサロンで施術を受けるとき、つい本音を話してしまった経験はありませんか。実はこれ、俗に「愛情ホルモン」と言われるオキシトシンのせいかもしれません。

オキシトシンの語源は「早い出産」という意味のギリシャ語で、出産や授乳の際に分泌されるホルモンとして古くから知られ、陣痛促進剤としても使われています。その働きは、他者への愛情を感じさせる、好奇心や学習意欲が高まる、筋肉の緊張が緩む、心肺機能や胃腸の働きが良くなる、傷の治りが速くなるなど多岐にわたります。

また、ストレス・ホルモンであるコルチゾールの分泌を抑え、幸せホルモンと言われるセロトニンの分泌を促すことから、ストレスや不安感を軽減させてリラックス状態をもたらします。

オキシトシンは哺乳類にだけ分泌され、一夫一妻制の平原ハタネズミは血中のオキシトシン濃度が高いことから、オキシトシンが社会的な行動に関与しているとわかってきました。

2005年には、男性へオキシトシンを投与する実験で、恐怖心が和らぎ、他者への信頼感が増すことがわかり、世界的なニュースに。ちなみに、血中濃度が高過ぎる人は、愛情深いゆえか嫉妬深かったり猜疑心が強かったりするとのこと。

この研究により、オキシトシンは社会性に関するホルモンとして注目され、東京大学や金沢大学などでオキシトシン投与により自閉症の社会機能を改善しようという試みも始まっています。実際に、オキシトシンの血中濃度が低かった患者にオキシトシン点鼻薬を投与したところ、攻撃性が減り、日々の会話と笑顔が増えたそうです。

近年では筋肉の老化を防ぐなどの若返り効果が発見され、ますます重要度が高まるオキシトシンですが、どうやったら分泌されるのでしょうか。もっとも効果的なのが、人と触れ合うスキンシップです。ヘアカットやマッサージでつい本音をしゃべってしまうのも、オキシトシンが分泌されて信頼感が強まるからかもしれません。

これを子育てに活用しない手はありませんね。子どもとたくさん触れ合い、抱っこしたりマッサージしたりしてあげてください。子どもの情緒が安定して落ち着き、皮膚刺激により脳が発達。運動能力が高まるほか、親から子どもへの愛情も強まり、育児ストレスが軽減することがわかっています。

アメリカで行われた自閉症やADHD(注意欠陥・多動性障害)の子どもへの調査でも、毎晩寝る前に親が15分ほど手足やお腹、背中をマッサージしたところ、子どもの自律神経のバランスが整い、問題行動が減ったとのこと。

特におすすめなのが足裏マッサージです。足は「第2の心臓」とも呼ばれ、血液を心臓に送り返す大事な働きがあるほか、目や胃腸などたくさんの器官や内臓の反射区があります。ここをマッサージすることで、リラックス状態をもたらす副交感神経が優位になり、心身共に健康を維持できます。

多くのアスリートは、小さい頃に親から足裏マッサージをしてもらっていたそうです。イチロー選手の父、鈴木宣之さんも、毎朝毎晩欠かさずイチロー選手に足裏マッサージをして、特に夜は眠りに就くまでずっとマッサージを続けたそう。そのおかげで、親子共に気持ちのわだかまりがなくなり、子どもの心に触れることができたと言っています。子どもの本心を聞き出すにもベストな方法だし、親子の絆を強めるためにも、ぜひ日々の生活に親子マッサージの習慣を取り入れたいですね。

スキンシップに限らず、オキシトシンは友だちとおしゃべりしたり、誰かに親切にしたり、ペットと遊んだり、楽しいことや感動することでも分泌されます。オキシトシンの血中濃度は、老化と共に3分の1にも減少してしまいます。

インターネットの普及により他者との直接的な関わりが減っている現代人は、ストレスを抱え、どうしてもオキシトシン不足になりがち。子どもやパートナーに最近よくイライラしたり、肩こりや冷え性など自律神経の不調を感じたりしているなら、ぜひオキシトシンを増やす行動を意識して取り入れてみてはいかがでしょうか。

自分の心がワクワクするとチャンスを引き寄せる

今回のテーマ

自分の心がワクワクするとチャンスを引き寄せる

今回、皆さんに伝えたいのは「ワクワクして生きていきましょう!」「心をゆるめて進みましょう!」ということ。昔と今の自分自身を引き合いに表現して、コラムを進めたいと思います。

こんにちは。節分を迎え、本当に新しい年を迎えた気分になりました。
節分の豆は、もともと日本の神話で、イザナミを迎えに行ったイザナギが魔物に追いかけられ、桃を投げつけて追い払ったのが由来だそう。
実際に桃を投げつけたら後始末が大変だから豆なのでしょうね。

桜の開花ももうすぐ。実は10年以上前の私は、桜が咲いても美しいと思うことはなく、桜すら目に入っていなかったかもしれません。
おいしいモノを食べて「おいしい!」、きれいな景色を見て「きれい!」と感じることは大切。
かつての私は、せっかく人間が持って生まれた、体の細胞までが活性するような感情を生かさないまま、その日を終えるという生活をずっとしていました。
もちろん、その頃があっての今ですが……。

この間、ある本を人に勧められて、その中でこういう質問がありました。
「あなたが英語を覚えようと思った時、次のうちのどれを選択しますか?」というような内容でした。
「1、1日1個単語を覚える」「2、英語圏の人と友だちになる」「3、掃除をする」。
私は即座に答えを当てました。皆さんは何番でしたか?

これのオチは、3の掃除なのです。
どれだけ技術を磨いても、あらゆる手段を取っても、大切なのは部屋を掃除すると家がきれいになりワクワクする気持ち、という寸法。
世間に挑戦ばかりして自己肯定もせず、ワクワクすることもせずにいた昔の私が、人生好転するわけもなかった、というわけです。

そうなった理由はたくさんありますけれど、あらゆるモノや感情を捨てる勢いで、この10年はリハビリのような生活をしてきました。
今は人生が180度変化し、お金のために働いていた頃と順番が逆になりました。好きなことをしてワクワクしていたら、あとからお金がついてくるイメージ。この生き方を、最近では理解されることも増えてきました。
けれど、企業戦士の方からは危機感がないとの意見ももらいます。どうして楽しくやらないのかな?
自分を追い込むだけならいいけれど、部下まで追い込むのはやめたほうが?ちょっと毒舌でした!(笑)

転職相談には、こうアドバイスします。条件や給料ではなく、「ワクワクするか?」を基準に。
魂レベルでワクワクしない会社は、条件がどれだけ良くてもチャンスがめぐって来ません。
日々頑張っている方、ちょっとやってみません? 
ワクワクすることを増やしませんか? 
いやな会社でも工夫したらきっとワクワクできると思うんです。
人は、チャンスも好転も、心が引き寄せるものだから。

最後までお付き合いありがとうございました。
ではまた、来月もお会いしましょう。あなたがあなたらしい1カ月を。

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注目の新作ムービー 『ROMA』重層的な豊かさを持った物語

注目の新作ムービー

重層的な豊かさを持った物語

ROMA (邦題「ROMA/ローマ」)

観るたびに、多くのことが見えてくる映画だ。
初回は主人公をたどるドラマに気を取られがちだが、2回3回と観ていくうちに、丁寧に描き込まれた主人公を囲む背景を通して、時代のうねり、白人と先住民との階級差を内包するメキシコの社会構造が浮かび上がる。秀麗な映像と重層的な豊かさを持った作品で、本年度のアカデミー賞外国映画賞、監督賞など受賞した。

舞台は1970年から71年にかけてのメキシコシティ、コロニア・ローマ地区。若いメイド、クレオ(ヤリッツァ・アパリシオ)と、雇い主である裕福な白人家族の物語である。メキシコ先住民で働き者、口数の少ないクレオは、子どもたちに優しく、女主人のソフィア (マリーナ・デ・タビラ)との関係も良好。

だが、ソフィアの夫が家を出て以来、彼女はしばしばクレオに当たるようになる。一方、クレオは恋人のフェルミン(ホルヘ・アントニオ・ゲレーロ)の子を妊娠、それを伝えた途端、フェルミンは消えてしまう。困り果てたクレオはクビを覚悟でソフィアに相談をするが、彼女はクレオの苦境を理解し、健診に付き添ってくれるのだった。

ドキュメンタリー・タッチで描かれるクレオとソフィア一家の生活。白黒画面で映し出される世界は、甘く懐かしい記憶をたどるようなイメージの連続で、その美しさにまず魅了される。子どもたちは、毎朝優しく起こしてくれるクレオを素直に愛し、テレビを囲んだ一家の団らんは実に和やかである。

さりげない演出を通して見えてくるのは、そんな一家の日常を支えるクレオら使用人の働きである。黙々と犬のフンを掃除し、食卓を片付け、洗濯をするクレオ。子どもたちがどんなに彼女を愛しても、クレオは使用人。彼女が破水して救急診療の受付に行った際、ソフィアの母はクレオの姓も生年月日も知らないのである。

脚本・監督は「天国の口、終りの楽園。」「ゼロ・グラビティ」などで知られるメキシコの名匠、アルフォンソ・キュアロンで、クレオは実在の女性。彼が生後9カ月の頃から家で働き、彼を育ててくれたメイドをモデルにした半自伝的映画である。

父の出奔後の母の苦悩や、71年にメキシコシティで起こった学生運動弾圧・虐殺「血の木曜日事件」を目撃するクレオの姿なども映し出され、家族も社会も激動の時期を経ていく様子が描かれる。

監督にとって、このクレオとの思い出は愛に満ちたものだったろうと想像がつくが、反面、先住民の献身の上の成り立っていた自己の特権的生活を振り返るという意図も感じられた。思い出べったりに回顧するのではなく、自分を育んだ女性を当時の社会構造、歴史の渦の中に置くことで自分と彼女を俯瞰する、そんな視点を持った作品である。

格差や不平等をこれ見よがしに描くことを避けて、それがあたかも自然の一部であるかのように物語に溶け込んでいた点も優れていた。それはクレオが否応もなく受容せざるを得なかった人生だったからだろう。彼女の体験を彼女が生きたように描くことで、返って彼女のしなやかな強さが際立つ。それこそがキュアロン監督が彼女に伝えたかった感謝のメッセージに思えてならなかった。

本作を映画館で観る機会を逃したのは残念だった。Netflixのストリーミングで鑑賞する場合、日本語字幕のオプションもあるので、英語が苦手の方にはおすすめしたい。

 

 

ROMA

(邦題「ROMA/ローマ」)

上映時間:2時間15分

写真クレジット:Netflix

シアトルではLandmark’s Crest Cinema Centerなどで上映中。Netflixでのストリーミングでも視聴可能。

 

多文化主義の国、カナダ その2

バンクーバーでの仲間は韓国・中華系を中心に、ほとんどが外国生まれの移民

5人に1人が1世移民のカナダ。トロント、バンクーバー、モントリオールでは、なんと全人口の80.9%を占める(2011年加統計局調べ)。移住して5年経つが、付き合う人たちはほぼ1世移民だ。

1974年にアメリカに渡り、ずいぶん視野が広がったと思っていたが、カナダに移って自分はまだまだであったと悟る。シアトルで接する海外生まれの住人は、在外邦人以外にあまりなかった。しかし、バンクーバーではいろんな移民たちと交流する機会がある。最初に住んだホワイトロックでの家主夫婦は、とても親切なウクライナとクロアチアからの移民だった。やがてバンクーバーに引っ越すと、わが相棒、韓国系移民1世のジェームズを通じて、多くの韓国系移民と出会った。若者が年輩に敬意を払うという習慣は、韓国系レストランの若いサーバーの接客にまで見られる。韓国系移民数人で会食すると、最年長者が箸を持つまで誰も食べ始めない。

バンクーバー のダウンタウンで毎夏行われる無料ダンス・パーティーは同市の人種構成の縮図

社交ダンスを始めたおかげで中華系移民とも交流がある。台湾系高年男性のJは、話し方が穏やかでフレンドリー。何でもそつなくこなす。香港系の中高年夫婦のKとGは、英語が流暢でマナーも国際的。食事に呼ばれたらお返しをしっかり返したがる。最近会った上海からの男女グループは、服装やマナーがとても洗練されていて驚いた。同じ中華系でも、南アフリカ出身の2児の父親Bや、ニューヨーク生まれの独身女性Nは、前述の中華系移民とは雰囲気が異なる。アジア系の外見を持つが、中華系としてのバックグラウンドは薄くなっているようだ。英語が母語で中国語は話せない。そんな彼ら同士で一緒にいる印象がある。

バンクーバー の冬の風景。コール・ハーバーを挟んで北側には山々を背景にノース・バンクーバーの街並みが見 える

60歳手前のイラン系移民Aはイラン人の伝統か、自分が数字に強いことを自慢し、家では北米のそれよりニュートラルだとロシア発の国際TVニュースを見る。テーブルにはいつもナッツが置かれ、訪れると食事を作ってもてなしてくれる。バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州には英国系移民も多い。どこか気取っているように感じるのは、私がブリティッシュ・アクセントに慣れていないからだろうか。一方、イタリア系男性Fは着こなしがダンディーで都会的。ノリが良く会話が弾むが、長くは続かない。

バンクーバーでも今年初の積雪。普段見慣れた景色がアッと美しくなる

出身国での習慣そのままで暮らす当地の移民たち。以上の例は、あくまで個人的経験に基づく。人は誰しも少なからず偏見を持つものだが、カナダに住むにはそれをなくしていく必要があると感じている。人と会う時は先入観をどこかにしまって、白紙状態にしてかかるのも一案か。カナダに住み始めて、これまでの偏見やステレオタイプが徐々に薄れているなぁと思うこの頃である。

社交ダンスと ピックルボールに加え、ボケ防止も兼ねてウクレレを始めた。果たしていつまで続けられるか?

「自分を大切にすること」に努力を

今回のテーマ
「自分を大切にすること」に努力を

職場で孤独です。小さな会社で事務をしていますが、同僚と折り合いが良くありません。先日新しい子が入って来て、その同僚とうまくやっており、2人の横で私は会話に入れずじまい。社内の男性との不倫関係にも悩んでいます。会社の私に対する評価も低く、転職を考えますが、やっと手に入れた正社員の仕事です。年齢も30歳過ぎたところで踏み切れません。(M/女性/日本)

ソイソース読者の皆さま、今月もよろしくお願いいたします。今回は、昨年末に編集部に届いたお悩みへ回答したいと思います。

さて、Mさんのお悩みを拝見していて、今は八方塞がりというイメージが伝わってきます。会社、同僚、彼氏、どれも別れたいけれどズルズル……とのことですね? このお悩みの解決方法ですが、いちばん大切なのは「自分がどうしたいか?」ということです。

まず、同僚との折り合いが悪いようですが、どういう関係なのかははっきりとわからないものの、相手への具体的な悪口は出てきていません。これは私の解釈ですが、解決につながるように見えます。人には、どうしても言葉でしか伝わりません。言葉でメッセージを伝えないと、相手には理解してもらえないのです。そして、こちらは他意がなくても、表情や行動、言葉で捉えられてしまいます。逆にこちらの努力があれば、克服できると考えます。

そういう私自身も、人への言葉の伝え方については、日頃から常に思案しています。どう声をかければ、相手に伝わるか。それを日々考えて、実行するだけでも変わると思います。人は、人間関係がうまく回り出すと、全てオセロのように変化し出すものです。さて、最初に書いた本題、「Mさんがどうしたいか」です。転職も不倫も同じく、です。たとえば、不倫について私はいつもこう話します。「ぬるま湯の風呂」なんですね。熱湯や冷水ならすぐ出てしまいますが、ぬるいといつまでも出られません。頑張るところが違うことに気が付いて欲しいと私は願っています。我慢すること、耐えること、流されること、それは自分にとって良い選択ではないのです。自分を信じること、大切にすること、変化すること、ここに努力をして欲しいのです。八方塞がりに思う現状を、変えるか変えないかはあなた次第。不倫だって、あなたにとってどれだけその人が好きか、ということです。必要なら仕方ない場合もあります。恋はするものでなくて、落ちてしまうものですからね。けれど、現状を手放すことや変化することは大変ですが、それをやった人には必ずご褒美があります。今、そこで悶々としているより、ひとつずつで良いので変えてみてはいかがですか?

努力するところを変えてください。あなたがあなたの人生をどうするかは、自分にかかっています。自分を大切にしましょう。必ずMさんにとっての新しい道が拓けます。途中にしんどいこともきっとあります。けれど、しんどくないとね。人は変わろうと思わないから。それも大切な感情なのです。

今の、八方塞がりの状況を打破しましょう。応援させてください。また、途中段階でもぜひ相談してくださいね。

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愚かしくなれる自由な女たち『The Favourite』

The Favourite
(邦題「女王陛下のお気に入り」)
上映時間:1時間59分
写真クレジット:Fox Searchlight Pictures
シアトルではシネコンなどで上映中。

映画ファンなら、本作の主人公であるアン女王を演じたオリヴィア・コールマンがゴールデン・グローブの主演女優賞を受賞したこと、アカデミー賞でも作品賞、監督賞、主演女優賞、助演女優賞など最多の10部門でノミネートされていることはご存じだろう。確かに本作へのこの注目度は納得。特異なスタイルで見せる極上のコメディーだった。

舞台は18世紀初頭、フランスと戦争中とは思えない優雅な生活を送っていた英国王室。統治者のアン女王は半病人状態で、重大な意思決定は幼なじみの側近、サラ・チャーチル(レイチェル・ワイズ)がひとりで担っていた。そこへ、サラを頼って没落貴族の従姉妹、アビゲイル(エマ・ストーン)がやって来て、召使いとして働き始める。

ある晩、女王とサラの親密な様子を目撃したアビゲイルは、野心を芽生えさせる。彼女は巧みに女王に近付き、サラとは正反対に甘い言葉で包み込み、次第に信頼を得ていく。そして、王室内で権力を失い始めたサラを、徐々に追い詰めていくのだった。

この3女性は実在し、女王とサラの間で交わされたラブレターなども存在する。デボラ・デイヴィスがそれらの手紙を元に脚本を書き上げたという。だが、本作が描くのは恋のさや当てなどという甘い話ではない。17人もの子を死なせて鬱となった女王の過食、肥満、わがまま放題な日々と、彼女の心を掴んで権勢を得ようと躍起になる女2人。そんな女の権力闘争を特大カツラと厚化粧の政治家の男たちが遠巻きに見守る。その滑稽さを、ある時は辛辣に、ある時はエレガントに描き、卓抜した面白さである。

かつてこんな映画があっただろうか。女3人の愛憎劇ならゴマンとあるが、この三角関係に愛など存在しない。ここで描かれるのは権勢を渇望するリアルな女、その知的ドタバタ・ゲームである。

監督はギリシャ出身のヨルゴス・ランティモス。09年の「Dogtooth」(邦題「籠の中の乙女」)がカンヌ映画祭で「ある視点賞」を受賞して世界の注目を集め、その後「The Lobster」(邦題「ロブスター」)「The Killing of a Sacred Deer」(邦題「聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア」)と続けて発表してきた奇才中の奇才である。自作脚本を元に、得体のしれない怖さとオフビートなユーモアという難しいバランスを持った映画世界をつくり上げてきた彼だが、本作では初めて演出だけを担当し、成功している。

近年多くの映画の中で、女は正義や愛、反面の邪悪を表現する存在として描かれてきた。だが、なぜいつも愛の側なのか、善悪なのか。それはどこか息苦しい。なりふり構わず愚かしくなれるのも女の選択、それもまた自由な女の姿なのではないか。ふと、そんな思いに得心する新時代の女性映画という気がした。

 

境界性パーソナリティー障害~いじめや虐待の影に見え隠れする病~

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

境界性パーソナリティー障害~いじめや虐待の影に見え隠れする病~

ここ数年、日本でも虐待により命を落とす子どもたちの痛ましいニュースが増えていますが、アメリカでは先進国の中でも虐待死の数が群を抜いて高く、米保健福祉省(DHHS)が発表した2016年の調査では年間推定1,750人。毎日5人近くの子どもが虐待で命を落としている計算になります。

ユニセフの調査では、アメリカでは2010年に330万人の子どもの虐待報告があり、10秒に1人が虐待またはレイプ被害に遭っているとのこと。私の働いているクリニックにも、虐待を受け傷付いた子どもが多く訪れます。

継父から性的虐待や肉体的暴力を受けたり、DV(ドメスティック・バイオレンス)被害者である母親がドラッグに溺れて育児放棄したりと内容はさまざまですが、虐待が長期間にわたるほど、そして幼少期から始まるほど、そのダメージは深刻なものになります。また、親への怒りを学校で発散させ、いじめっ子になったり、逆にいじめられても人間不信で誰にも相談できなかったりする子どもたちもいます。

DVの加害者や被害者の多くもまた、幼少期に親から虐待を受けていたというケースが多く、こうした虐待の影に、境界性パーソナリティー障害(BPD)が潜んでいる場合もあります。パーソナリティーとはその人固有の思考・行動パターンであり、それが一般的な思考・行動パターンの枠から著しく逸脱して社会生活に困難をきたしている状態が診断基準になります。

BPD患者の特徴は、自己像が不安定で常に空虚感を感じ、見捨てられることを極端に恐れ、感情の制御ができずに怒りを爆発させ、家族などの周囲の人たちを振り回します。また、それが自己に向けられたときには自傷行為や自殺につながります。

DHHSの調べによると2014年のBPD患者の自殺率は8~10%と極めて高く、一般人口の自殺率の50倍に上ります。アメリカでは人口の1.6%に当たる約400万人がBPD患者とされ、20~30代の女性に多いのですが、実際には男性の患者も多く存在するとされています。

境界性という名前は、統合失調症などの重い精神疾患と不安障害などの比較的軽い精神疾患の間にあるという意味で付けられましたが、この「境界」という言葉はBPDを理解するのに不可欠です。自分が誰なのかわからないため、他者による絶え間ない承認がないと不安でたまらず、自他の境界線を引くことができずに相手に依存してしまいます。

また、極端な二極思考を持ち、相手を理想化して期待を高め、相手が自分の思った通りに行動しないと全否定して攻撃します(脱価値化)。こうした心の動きは「分裂」と呼ばれ、防衛機能のひとつとして幼い子どもによく見られます。

精神分析家のメラニー・クラインは、幼児期までの子どもは「良い母」と「悪い母」を別人のふたりとして捉えており、母との安定したかかわりにより双方を統合して同一人物であることを受け入れるとしています。BPD患者の多くは、成長の過程で安心感と信頼を得られず統合がなされないまま成長し、二極思考から抜け出すことができません。

そして、理想化した相手には、自分がどんなに傷つけられても見捨てられないよう必死でしがみつき、脱価値化した相手はこき下ろし追い詰めます。衝動的な行動に出たあとは深い自己嫌悪に陥り、うつ状態や希死念慮(死にたい気持ち)に苦しめられます。最初はうつや不安症状でクリニックを訪れ、治療を進めるうちにBPDが判明するケースも多々あります。

BPDの発症には遺伝的な要因と環境的な要因が複雑に絡み合っており、一親等がBPDである場合は発症率が通常より5倍高く、BPD患者の9割以上には何らかの虐待体験があるとのこと。

BPD患者への効果的な治療法としては、ワシントン大学の心理学者であるマーシャ・リネハン氏が開発した弁証法的行動療法(DBT)が挙げられます。DBTは認知行動療法の一種であり、BPDの治療に特化したもの。マインドフルネス、対人関係、感情抑制、ストレス管理などのスキルを学ぶグループ療法、個人療法を組み合わせ、高い効果を上げています。悩んでいるようならぜひ1度専門家に相談してみたほうが良いでしょう。

多文化主義の国、カナダ その1

パンジャビ市場では毎年11月に祭、4月にパレードを開催。通りを歩くとほのかにカレーの香りがしてくる。宝石店などもあり、インド文化を垣間見る

古巣のシアトルを訪問すると、白人が多いのに気付く。ピックルボールをプレーするシニアもほぼ白人。この不寛容ムード漂うご時世、大勢の白人に囲まれるとドキッとしてしまう。一方、バンクーバー都市圏は人種が雑多で、マイノリティーの人種でほぼ半数が構成され、そのほとんどはアジア系だ。バンクーバーに戻ると、なぜかホッとするのはそんな理由からかもしれない。

リトル・イタリーでも7月に祭がある。イタリア文化に浸りながらの散策が楽しい。写真はレストラン「マルチェロ」の「神の子」と呼ばれるピザ窯

バンクーバーの人種構成の特色は隣人たちにも見られる。同じ階の住民は、スリランカ系家族、台湾系学生、ラテン系と中国系のカップル、そして筆者と、全て移民1世。あとは退職した白人のカナダ人女性、という具合だ。カナダ政府は、多文化主義を国の伝統とアイデンティティーのひとつと銘打つ。移民の先駆者たる英仏系住民が総人口に占める割合は1960年代には3分2に減少した。トロントとバンクーバーの大都市圏は70年代以降の移民がほとんどアジア系で、今では両都市圏とも白人は半数をやや下回る。ちなみにバンクーバー都市圏では中国系が最多で、その数なんと約50万人。インドを含む南アジア系でも約30万人いる。

キツラノにあるグリーク・タウン。2000年代に入るとギリシャ系住民は激減したが、2005年に「ギリシャの日」が復活し、毎年6月には祭も行われる

バンクーバーでエスニック色が顕著なのは、70年代からインド系の店舗が急増した「パンジャビ市場」だ。コマーシャル・ドライブに「リトル・イタリー」があるが、やはり70年代からエスニック色が強め。キツラノにある、70年前後に独裁政治を逃れて来たギリシャ人がつくった「グリーク・タウン」も、その影は薄くなっている。最大マイノリティーの中国系は、ダウンタウン東端に位置する「チャイナタウン」に加え、80年代に香港・台湾から富裕層が移住した南隣のリッチモンド市が代表的。リッチモンドは市の人口の半数以上が中国系で、「ゴールデン・タウン」と呼ばれる。近年目立つのは韓国系で、ウエストエンドと呼ばれるダウンタウン西端の一角は軒並み韓国料理店。筆者も相棒のジェームズ(韓国系)と、よく石焼ビビンバを食べに行く。東に車で30分ほど行ったコクイトラム市もまた、一大韓国村へと変貌した。

チャイナタウンはカナダ最大規模だが、リッチモンドが大きくなるにつれ一時ほどの活気は見られなくなった

さて残念ながら、われわれ日系は約3万人とごく少数派。戦前までガスタウンの東に位置した旧日本人街や、90年代から2000年代初頭にダウンタウンにあった「リトル銀座」と呼ばれる新日本人街も消滅した。現在は、バーナビーに日系施設が存在するくらい。日系食料品店も小規模なものが数軒と限られる。

1900年前後に栄えた旧日本人街では、今も寺や教会、日本語学校などが当時の面影を伝えている。日系人夏祭り「パウエル祭」も開かれる

カナダには政治的理由で自国を逃れた移住者が多いのも「カナダ人は優しい」と言われるゆえんか。自国での経験が、互いの文化や価値観を尊重して平和に暮らす、多文化共生の原動力になっているのでは、と考えさせられた。

コクイトラムとバーナビー両市の境にある「コリア・タウン」。Hマートとハンナム・マーケットの2大スーパーを中心に並ぶ韓国系の商店やレストランはざっと100軒を数える。日本的な商品もあり、筆者も時々買い出しに訪れる

2019年の運気

今回のテーマ

2019年の運気
今回はいつもと内容を変更して、2019年の運気を占います。今年のキーワードは「つなぐ」。そして、自分の整理をして来年に向かう年でもあります。総体的に2019年はみんな運気が上がるはずです!

新しい年を迎えました。皆さんは、今年をどう過ごそうとお考えですか? 今回は2019年の運気を占ってみました。たまにはマニアック路線で行きたいと思います。さて、2019年、私の鑑定によるキーワードは「つなぐ」です。皆さんはつなぐと聞いて、何を考えますか? 何を想像しますか?

たとえば、心理学の「トランスパーソナル」という説では、あの世とこの世もつながっていると言われます。先祖を大切にすると運気が上がるかもしれません。つなぐと言えば、海も国と国をつなげているので、その架け橋となるべく海外に渡るのも良いでしょう。仕事では人と人をつないだり、会社と会社をつなげたりということを意識してみてはいかがでしょうか。

そもそも、「ご先祖さまを大切に!」とは、皆さんの人生において叩き込まれていることかもしれません。けれど、今年はさらに大切にしてください。シアトルの皆さんは、実家が日本という方も多いでしょう。トランスパーソナルでは、無理して墓参りしに戻るなど、大掛かりなことはしなくてもいいのです。ただ、寝る前にベッドの上で手を合わせ、「ご先祖さま、今日も無事過ごすことができました。ありがとうございます!」と、祈るだけでもいいと思います。

私事ですが、うちは神道といって、仏でもキリストでもなく、神をまつっておりますので、墓もちょっと特殊です。古墳のようなものですね。墓参りは塩、米、榊という小枝を供えます。普通はしないのですが、うちでは祖父が好きだった蕎麦を供えたりもします。「おじいちゃん、茹でてないけどいいかな?」と思いながら(笑)。先祖は目に見えないかもしれませんが、つながっているわけですか
ら、気持ちが大切なのです。

人と人をつなげるのなら、あなた自身にも人のご縁の輪が広がるでしょう。人と人が出会うと、もちろん摩擦も起きます。けれど、出会った人は皆さんそれぞれに、あなた自身のためになる方が現れます。もし、許せない理不尽なことが起きたとしても、その出来事を通して、自身のスキルアップにつながります。一見、災難のように見えたとしても、次のステップに大切なメッセージが隠されているので、そこを宝物だと思って見つけてください。

仕事においても同じです。仕事で何かをつなげたとしても、見た目の良いことばかり起こるわけではありません。けれど、その年のキーワードによって、必ずちょっとチャンスをつかめるはずなのです。意識するだけで違うので、少し頭の中に置いてみてはどうでしょう。

最後にもうひとつプラスしましょう。今年は、経理で言ったら締め日。今まで、まとまりなくやってきたことをやり遂げてしまいましょう。変化するこの時期に整えておくことは大切です。

皆さんにとって、良い運気の波がやって来ます。素晴らしい1年でありますように。日本から応援しています。ではまた、来月お会いしましょう。あなたがあなたらしい1カ月を。

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ポピュラリティ/愛を求め続けた孤独な天才『ボヘミアン・ラプソディ』

Bohemian Rhapsody
(邦題「ボヘミアン・ラプソディ」)
上映時間:2時間14分
写真クレジット:20th Century Fox
シアトルではシネコンなどで上映中。

公開以来、米国でもヒットはしたが、日本では公開後から観客数が右肩上がりで、異例の大ヒットだという。50代の観客が多い。いや、クイーンを知らなかった20代の観客も多い。6回以上観ている人がたくさんいる。筆者も公開直後に観たのだが、また観たい衝動に駆られる。なぜなのだろう?

伝説のロックバンド、クイーンの伝記映画というより、天才音楽家であるフレディ・マーキュリーの短い生涯を描いた作品である。正直なところ、映画作品としてあまり上出来とは言えない。70年代の英国で、インド系移民でゲイだったフレディが受けた差別と父との確執、成功後の音楽的選択をめぐるレコード会社との対立、そして、その後のフレディが託った孤独などが描かれていくのだが、表面だけサラーッとひとなでしたという印象は否めない。フレディの苦悩はこんなものではなかったろう、ちゃんと描いて欲しい、という不満は残るのだ。だが、それ以上にまた観たくなる。クイーンの楽曲が持つ、誰をも引き付けるポピュラリティと、どこかしら通底する気がした。

クイーンが活躍した70年代、彼らは特異な存在だった。75年に発表された「ボヘミアン・ラプソディ」は、ロックにバラードやオペラを組み込んだ6分の楽曲ということでマスコミや批評家は酷評したが、予想外の大ヒット。批評家の評価などを超えて、聴く者を捉えていく圧倒的な音楽性と大衆性、リアルタイムでクイーンを聴いた世代が、50代60代になってもまだ胸を躍らせて聴ける楽曲の数々、それがクイーンの魅力だ。

楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」の歌詞は辛く難解だが、この曲を聴いたことのある人は全世界にいる。難解とポピュラリティ、ロックなのにエモーショナル、その落差はフレディ・マーキュリーという孤独な天才の持つ二面性にも通じる。自分のセクシュアリティーを隠し続けるという孤独を抱えながら、パワフルなステージ・パフォーマンスで観客を魅了。自分らしさを全開放し、ポピュラリティ/愛を求め続けたフレディの生き方が、まさにステージ上にあったのではないだろうか。だからこそ、本作のステージ・シーンは圧巻、また観たい衝動に駆られる理由なのだ。

フレディを演じたラミ・マレックの神がかり的演技をまず特筆したい。専門コーチをつけ、1年をかけてフレディの体の動き、パフォーマンスを学んだというが、何度もフレディが画面上にいる錯覚を持った。本作成功の80%は彼の演技によるものと言って良いだろう。彼はこの役でゴールデングローブ主演男優賞に輝いた。

実はエンディングで落涙して「まさか、クイーンで泣くなんて」と驚いた。ロックにエモーションを持ち込んだのがクイーンだとすれば、日本的感性と水脈が通じ、それが日本での異例のヒットにつながったのではないだろうか。ハードコアなクイーン・ファンには不満の残る本作だろうが、クイーンを知らない世代にこのバンドの素晴らしさを見せつけた功績は大きかったと言える。

効果てきめん!運動が子どもの脳を変えていく

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

効果てきめん!運動が子どもの脳を変えていく

新たな年の始まり、新年の抱負は決まりましたか? 長年の運動不足を解消すべく、スポーツを始める人も多いことでしょう。最近の研究では、運動の驚くべき脳への影響が数多く報告されています。肉体的に強くなるだけではなく、脳を活性化させ、うつ病や認知症を予防し、集中力を高めて勉強や仕事の効率もアップさせるというものです。

長い間走ると気分が高揚することを「ランナーズハイ」と言いますが、これはモルヒネの6倍以上の鎮痛効果のある脳内伝達物質のエンドルフィン、また、マリファナ類似物質である内因性カンナビノイドの分泌が増えて起こるとされています。これらの脳内麻薬が脳内に増えることで不安感が和らぎ、リラックス効果をもたらします。

また、運動により、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの量も増えることがわかっています。セロトニンは心を安定させて前向きな気分にする脳内伝達物質で、実際に抗うつ薬のほとんどが脳内のセロトニン量を増やすよう作用します。

約11年にわたるヨーロッパでの大規模調査「HUNT」によると、全く運動をしない人は、週に1、2時間の運動をする人に比べて、うつ病を発症するリスクが44%も高まるという結果が出ました。1週間に1時間程度の運動でも効果があるのなら、ぜひ生活に取り入れたいですね。

ほかにも、たった1度のワークアウトで、セロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンの量が増え、その効果は2時間以上続くという調査結果も。うつ病の患者は一般的にこの3つの脳内物質レベルが低いと言われています。さまざまな研究で、運動は抗うつ薬と同程度の効果があるとされていますが、運動がこれらの脳内伝達物質の分泌を促すからでしょう。

また、セロトニンのもうひとつの重要な役割は、脳の神経細胞(ニューロン)を増やすことです。以前は、成人ではニューロンは増えないと言われていましたが、最近の研究でセロトニンが海馬のニューロンを新生させることが判明しました。

大脳辺縁系の一部である海馬は、タツノオトシゴのような形をしており、五感を通して入ってくる刺激を全て処理して情報を振り分け、長期記憶として保存します。正常に動いていれば大事な情報だけ記憶しますが、海馬はストレスに弱く、ダメージを受けると嫌な記憶を処理できずに不安感が強まります。

アルツハイマーや認知症、うつ病の患者の多くは海馬が萎縮し、その機能が阻害されています。運動によりセロトニン量を増やして海馬のニューロンを増やすことで、こうした病気にかかりにくくする脳を作ることができます。

子どもに関しても同様の調査結果が出ており、運動をよくする子どもは、ストレスに強く、自尊心も高く、不安やうつの予防にも効果的とされています。日本のスポーツ庁によると、6歳までに大人の8割の神経機能が発達するので、幼児期には1日1時間以上の運動遊びが必要だそうです。冬場は外遊びが少なくなりますが、ダンスや体操、トランポリンなど体を動かす遊びを積極的に取り入れたいですね。

また、ハーバード大学医学部のジョン・レイティ博士の調査によると、かけっこやダンスなどをして心拍数を上げた状態で勉強をすると、集中力、思考力、記憶力が急激に高まるとのこと。昔から言われている文武両道の人とは、頭が良くて運動もできるのではなく、運動ができるから頭が良いのかもしれませんね。勉強の合間に運動を取り入れ、親子でボール遊びや体操をするのも良いでしょう。

最後に、大人の脳を活性化させるために必要な運動量はどのくらいなのでしょうか。ニューヨーク大学神経科学部のウェンディ・スズキ博士によると、激しい運動を毎日する必要はなく、週に3回ほど、30分の有酸素運動で効果があるとのこと。

たとえば、掃除機を隅々までかけたり床拭きをしたりするほか、なるべく階段を使うようにする、子どものお迎えを早歩きでする、駐車場では車を遠くに停めるなどでもいいそうです。親子共に、日常生活に運動を取り入れて、脳を活性化させたいものですね。

雨のバンクーバーを離れて、ハワイ島へ

キラウエア火山を見に南下したついでに米国、かつ同島の最南端地点に立ち寄る。さらにブラック・サンド・ビーチでは大きな亀を見つけた

11月初め、友人ふたりとハワイ島に飛ぶ。5月に大噴火し出したキラウエア火山も夏が終わると静まり、何十年間で最もきれいな空気に迎えられた。コナは30度の暑さ。レンタカーで、まず島内唯一のコストコに立ち寄り、当面の食料を安く調達する。カイルア桟橋界隈はのどかな雰囲気。コナ・コースト沿いにホテル、レストラン、土産物屋が半マイルほど続く。

ビーチ沿いにヤシの木が並ぶ、コナのダウンタウン

翌日は島の東にあるヒロまで、2時間のドライブ。古くから日系人が住み、雨が多い街と聞く。着く手前で熱帯植物に囲まれたレインボー滝を見る。ヒロは人口4万人超えのハワイ島最大の都市。歴史的な木造建築が並ぶダウンタウンは、レトロなムードが漂う。昼食にトンカツ専門店を見つけて入ると、日本人の店長や客と話が弾む。「なぜ雨が多いヒロへ移住を?」と尋ねると、「降る確率は5割、降ってもすぐ止むので気にならない」とのこと。ファーマーズ・マーケットも立派だし、また来る時はこの街に泊まろうと思った。

東南海岸地域は米国中でも最も雨量が多く、まるで熱帯のジャングル。極彩色の植物がエキゾチック

デイライト・セービング・タイムがないハワイでは、午前・午後共に6時前後に夜が明け、日が暮れる。坂の上のショッピング・センターから見た夕日は見事だった。同時刻、広場で行われていた無料のフラダンス・ショーでは、コンテストに優勝した少女の美しく流れるような動きと、フラダンサー特有の極上の笑顔に感動した。

ヒロの中心街は古い建物が魅力的。ファーマーズ・マーケットは地産のフルーツや花でいっぱい

南北に走る11号線を南に数十分ドライブすると、道路脇に小さな町が見られる。日系人創業者の娘さんが店を守る1926年創業の生地屋を覗いてみた。ハワイ柄はもちろん、バティック(ろうけつ染め)や和柄の生地が所狭しと並ぶ。菊模様の生地がどうしても欲しくなった私のために、手先の器用な友人、ジェームズが襟なしのシャツ作りを引き受けてくれた。土産に「月と兎」模様の藍染めの暖簾用生地も購入。さらに南下すると、ハワイ諸島を発見した英国の探検家、キャプテン・クックが命を落としたとされるキャプテン・クックの町へ入る。歴史的な町並みを見るのは旅の楽しみだ。

一方、19号線を北に進むドライブでは、各時代の噴火によってできた火成岩に覆われる風景が続く。途中のカワイハエにポツンとあったレストランで昼食。地産の魚もハンバーガーもおいしくてラッキーだった。昼食後は東に向かい、山の上の野原に放し飼いされた牛や、多数の熱帯植物を見つつ、250号線を再び北へ走ると、島最北端の小さな町、カパアウに到着。初代カメハメハ大王が生まれたと伝わる神聖な土地で、大王像が立つほか、土産物屋もある。

カパアウのカメハメハ大王像はホノルルにあるものと同じだが、最初に造られたオリジナル作品

キラウエア火山は、ビジター・センターだけで火口までは見られずに終わった。わが趣味のピックルボールは、この島でも盛ん。最終日は、沖縄出身のヤエコさん、東京出身のミキさんとプレー後、みんなでランチを楽しみ、再会を約束して2週間の旅を締めくくった。

食は心理にも影響する

今回のテーマ

「いのちのくすり」は食べる物
食と心はつながっています。ぜいたくでなくても、しっかりとした食事を取ることで心まで満たされます。食の大切さを知りましょう。とはいえ、無理をするものでもなく、いちばんに大切なのは笑顔ある食卓です。

シアトルの皆さん、こんにちは。いかがお過ごしですか? 私は今、沖縄に来ています。

沖縄というと南国というイメージがありますよね。それが、私の考えていた沖縄とは違っていて、涼しい。いや、寒いですね。場所によっては軽く冷房まで入っていて、寒さを感じます。沖縄って常夏の島じゃなかった!どこに行っても季節は巡る。それはそうですよね。

さて、この沖縄訪問で心に残った言葉があります。それは「ぬちぐすい」。「いのちのくすり」という意味があり、「食は命とつながっている」ということだそうです。この「いのち」という言葉が、妙に私の心に響きました。そこで今回は、そんな食についてお話ししたいと思います。

嗜好や作物はその国と地域、文化などによって違いますが、やはり人が口にするもの。ぜいたくはしなくて良いとしても、季節の旬であり、新鮮であり、なるべく体に負担のない食べ物を口にしたいものですよね。食は精神に関係すると言われています。忙しくなると、どうしても便利なものに手を出してしまうものです。犯罪と食の関係性も取りざたされているように、やはり心理療法でも、食の大切さを伝えるカウンセラーは多いのです。

とはいえ、忙しいと時短に走るのも当然です。特に今は、女性が仕事に就く機会も増えている時代。料理研究家の方から聞いた面白い話があるので、ここで紹介しちゃいます。昔は、たとえば日本ですと、農耕民族なので米と汁、もしくは米と汁とおかず1品、一汁一菜で十分だった時代がありました。けれど、だんだんと国際的な食文化が取り入れられてきて、現代になって主婦の首を絞めている、というのです。女性進出の時代には、品数は減らして良し。そのうえで、しっかりした食事を取ろうということですね。

その土地ならでは食を大切に、ありがたく食べたいと感じる沖縄訪問でありました。シアトルは、伊勢神宮のある私の育った三重県に似て、新鮮でおいしい海の恵みのある場所。ありがたく「いのち」をいただけるはずですよね。でもね、食事の内容も大切ではあるけれど、やはり十三導的には、心の優先順位で言えばこだわりより食卓に笑顔だと思います。私も母をやっているのですが、子どもの食を大切にと、仕事と家事を無理していた頃がありました。子どもからすれば、無理してイライラしている母より、手を抜いていても母がニコニコしているほうが良いと、少し大人になった娘に言われたことがあります。

いちばんの心の「いのち」は、ちゃんとした食事を心がけながらも、自分に負荷をかけない。手を抜いたって、心が満たされるほうが大切です。自分の心が満たされれば「いのち」へもつながります。

あ、そんなことを書いて、自分の言い訳にもなっている私でした(笑)。忙しいと、ついインスタント系に手を出しがちだけれど、改めます! さてまた来月もお会いしましょう。あなたがあなたらしい1カ月をお過ごしください。

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子どもが進んで宿題をするようになる~マズローの欲求5段階説~

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

子どもが進んで宿題をするようになる~マズローの欲求5段階説~

師走に入り、何かとあわただしい日々が続いていますね。やるべきことはたくさんあるのに、やる気が出なくてつい後回しにしてしまうことはありませんか。子どもも同じように、学校から帰って来てすぐに取りかかれば終わる宿題なのに、ギリギリになってからやるというパターンに陥っている場合も。今回は、子どものやる気をぐんと引き出す方法を紹介します。

もともと人間には何かを追求したい、成し遂げたいという自己実現の欲求が備わっています。アメリカの心理学者、アブラハム・マズローは、私たちの欲求や行動の動機には5つの段階があるとしています。第1段階は、生物として不可欠な食欲や睡眠欲などの「生理的欲求」で、この欲求が満たされると、第2段階である安心して安定した暮らしをしたいという「安全欲求」が生まれます。

安全欲求が満たされると、第3段階である友だちや仲間と一緒にいたいという「社会的欲求」が芽生えます。その次に生まれるのが、第4段階の「承認欲求」であり、これには他者から認められたいという欲求と、自分は自分のままでいいと受け入れる自己肯定感も含まれています。

最後の段階である「自己実現の欲求」は、人生で本当にやりたいことを実現するため自分を磨き、能力を最大限に発揮したいという、まさに人間を人間たらしめる欲求です。物理的、経済的に恵まれている人でも、承認欲求や自己実現の欲求が満たされていない場合、強い不安や無力感を感じたり、うつ状態になったりする場合があります。

また、この欲求の5段階は必ずしも順番に進んでいくのではなく、たとえば社会的な欲求や承認欲求が満たされていなくても、自己実現を目指す人たちは大勢います。自己実現の欲求は、他者から言われたからではなく自分がやりたいという「内発的動機づけ」に基づくもので、「好きこそものの上手なれ」ということわざ通り、自発的にどんどん知識や経験を身に付けていきます。

これと対照的なのが「外発的動機づけ」であり、たとえば成績が良かったら欲しいものを買ってもらえるなど、報酬や罰による動機づけです。こうした賞罰はうまく使うと非常に効果的ですが、使い方によっては逆効果になる場合も。子どもがやりたくて始めたおけいこでも、親が介入してお金やモノなどの報酬を与えることで、純粋な好奇心である内発的動機づけが低下してしまう「アンダーマイニング効果」などがその一例です。

それでは、子どもが宿題や手伝いを進んでやるようになるためには、具体的にどうすればいいのでしょうか。内発的動機づけのカギとなるのは、自分で決めたという「自己決定感」、自分はやればできるという「自己効力感」です。また、外発的動機づけであっても、自己実現の欲求とうまく結びつけ、自分の将来の夢につながるものと考えれば、目標を達成したいという「達成動機」が高まり、内発的な動機づけに近付きます。

まずは、小さなことでもいいので子どもに決めさせて、自己決定感と達成動機を高め、できたら努力や達成した成果を褒めて、自己効力感を強化してあげましょう。

ハーバード大学の歴史で最も長いという75年間にわたる調査によると、成功している幸せな人の共通点として、子どもの頃、よく手伝いをしていたという結果が出ています。仕事の現場ではやりたくないこともやる必要がありますが、継続して手伝いをすることで粘り強く仕事に取り組む姿勢を身に付けられるとのこと。こうした情報を子どもにも伝え、宿題や手伝いは、将来に自分の夢をかなえることに直結するのだと納得してもらうのも手です。

また、子どもの集中力の持続時間(小学低学年で15分、高学年で30~40分、中高生で45~60分)を念頭に置いて、何をするのかを具体的に紙に書き出し、テーブルや机の上を片付けて集中できる環境を整えましょう。席に着いたら最初に落書きでもいいので何か一緒に書くなど、手を使わせると脳が動き出します。自己決定感と達成動機をうまく使いながら、粘り強く作業に取り組む姿勢を子どもに身に付けさせることが大切でしょう。

悲しみを振り切った女の見たもの『Widows』

Widows(邦題「妻たちの落とし前」)

上映時間:2時間9分
写真クレジット:20th Century Fox
シアトルではシネコンなどで上映中。

凄腕4人組による強盗が失敗し、強盗犯の男たちは全員死亡。しかも、彼らが盗んだ金は地元ギャングのものだった。ギャングは強盗犯の妻、ウィドウ(未亡人)たちに金を返せと迫り、追い込まれた女たちは初めての強盗を企てる。

映画史の中に多くの名作秀作が残る「Heist(強盗)もの」のジャンル映画だ。監督は、「それでも夜は明ける」でアカデミー作品賞を受賞した英国の俊才、スティーブ・マックイーン。つまりは、通り一遍のジャンル映画ではない。

銃など持ったこともない女たちが計画実行する強盗という異色さだけでなく、犯行の背後にワケあり、ひねりあり、時代性も描きこまれた極上エンタテインメントだ。原作は英国刑事ドラマの名作「プライム・サスペクト」を書いたリンダ・ラ・プラント。男社会を生き抜く、賢くしぶとい女を描かせたら彼女の右に出る作家はいないだろう。ドジって命を落とした男たちの後始末から始まる強盗計画の中で、悲しみを振り切った女たちが何を見るのか?

プラントの女性像を象徴するリーダーは、強盗団のボス(リーアム・ニーソン)の妻・ヴェロニカ(ヴィオラ・デイヴィス)だろう。彼女が他のウィドウたちに声をかけ、計画を牽引していく。ギャングに店を荒らされ、やる気になった子持ちのリンダ(ミシェル・ロドリゲス)、美貌のアリス(エリザベス・デビッキ)ははかなげで危うい存在だったが、次第に自分の力を自覚していく。

事件の背後にあるシカゴ地元政治家とギャング兄弟との勢力争いが、計画を二転三転させていく展開もスリリングで、女たちが確信犯へと変貌を遂げていく姿が見ものだ。そして、最後に明かされるヴェロニカの執念の理由。時代性の矢が見事に的を射る感覚があった。

Heistものは歴史が古く、ジャン・ギャバンが渋い強盗を演じた「暗黒街のふたり」や胸のすく強盗技を見せる痛快な「オーシャンズ」シリーズなど多種多様。一攫千金を狙った男たちの夢が仲間の裏切りで頓挫、または難攻不落を落として大金ゲットなど、結末は明暗を分ける。欲望の果てに強盗たちは何を得るのか。失望の苦味か成功の歓喜か、まさに人生そのものを感じさせる不朽のジャンルと言える。本作はそんな歴史の中に必ず残る秀作と確信した。

お茶出しと既成概念

先日、70歳の誕生日を迎え、ついに70代に突入。社交ダンスやピックルボールを通じてできた仲間が集まってくれた。バンクーバーに移って早5年が経つ。退職してもなぜか忙しい毎日を送っている

古い話で恐縮だが、今でも時々思い出す教訓がある。シアトル日本国総領事館に勤めていた1993年の秋、ピュージェット湾内ブレーク島で初のAPEC会議が開かれた。当時の細川護煕総理も出席し、日本政府在米他公館から応援に駆け付けた館員・職員と共に、シアトルの総領事館スタッフはシアトル・ダウンタウンのホテルに泊まり込んだ。24時間体制で日本からやって来た役人、報道陣、約200人の世話に当たるためだ。わが班は報道陣の事務室兼休憩所に配備された。

ここには臨時で雇われた地元の日系婦人もおり、普段は日本人観光客のガイドをパートでしているとのことだった。物腰が低く誰にでも平等に、丁寧に応対する、実に感じの良い人だ。彼女の仕事は「お茶出し」。丁寧にお茶を請う職員や記者ももちろんいたが、「あっ、そこのおばさん、お茶」と、乱暴に命令する若い衆も見られた。しかし、嫌な顔ひとつせず、全身からにじみ出るように優しい言葉をかけつつ対応する姿は極めて自然に感じられた。

職場での女性のお茶出しは「既成概念」のひとつだと思う。女性の仕事だと思い込んでいる日本人は、今でも存在するようだ。お茶出しをする女性は、嫌でもそうするのがサバイバルと思っているのかもしれないし、社内がうまく回るのならそれで良しとしているのかもしれない。しかし、長く続いた慣習を、問題にならないからと男女共に鵜呑みにして従うことには、自分は抵抗がある。総領事館勤務時、へそ曲がりな私は、この慣習に小さいながら抵抗する意味もあって、訪問客によく自分でお茶を入れて持って行った。中年過ぎの男がお茶を運んできたことに、訪問者は決まってびっくり、恐縮するのを私は面白がった。

コーヒーは砂糖を入れないとうまくないので抹茶を飲むようになった。健康維持のため、最近は甘い物や塩を半分程度に落としている

女性スタッフに代わって自分がお茶を出すことにしたのは、出張でモンタナ大学を訪問した際の出来事がきっかけだ。当時のマンスフィールド・センター所長、ポール・ローレン教授(男性)が、来訪の挨拶を交わした後、そのまま一緒に台所に向かい、会話を始めながら、私たちに緑茶をいれてくれたのだ。所長、それも男性が自らお茶を用意するというのは、日本の会社や役所では考えにくいことだ。その行為ひとつで突然、その場がフラットで心地良い空間に変わり、リラックスした雰囲気になったのを覚えている。もともと日本の茶道には、このようなもてなしの精神があったのではなかったか。

女性のお茶出しは「既成概念」のひとつだと思う。男性がお茶を出すのも良いものだ

お茶を出してくれるおばさんは「ただのおばさん」ではない。最近わかったのだが、APEC会議でお茶出しをしていた彼女は、何やら良家の子女という。70代に入った自分は、表面だけで、または既成概念で、人物や物事を判断したりそのまま鵜呑みにしたりせず、疑ってみることを忘れないようにと言い聞かせる。

緑茶ハイとハイボール

今回のテーマ

人の縁を理解するのは勇気が要る
たまに恋愛コラムを書くと、すごく反響があります。この世はやはり何事も、「恋がベース」なのかもしれません。今日はそんな話から始めていこうと思います。

私の会社ではリクルート業務もありますが、これだって恋愛と一緒ですよね。「なんか、最近の彼に満足できない」と思っているところに、「君の願いを叶えてあげる」と、新しい素敵な彼が現れたら?乗り換えもあり得るわけです。それと同じく、転職だって、現職に満足していたら、聞く耳なんて持つはずがない。恋だって相手に満足していたら、新しい恋には行かない。このたとえ話、世の中の立派な男性が聞くと、ふざけた例題のように思えるかもしれません。でも、結局は人間のすることですから。転職だって恋愛と同じなのは事実です。

さて先日、ある学者の方と、リクルートの話から恋の話に発展しました。それで私がたとえたのが、やはり私らしく「お酒」(笑)。お酒の席だったというのもあるのですけれどね。自分はとても緑茶ハイ(焼酎のお茶割)が好きなのに、ハイボールを緑茶ハイと言って飲んでいるというストーリー。つまり、ハイボールは自分に合っていないのに、ハイボールを飲み続けながら、緑茶ハイだって思い込もうとしているイタい人の話なのです。どこをどう味わってもハイボールなのに、緑茶ハイだと思い込もうとしている。きっと、最初は思い込みのスタートなのだけれど、どこかで本当は違うって理解している自分もいる。そんな自分に向き合わないといけないのに怖くて向き合えない。

これって恋愛でも、仕事でも、日常でやっている人、多くないですか?私もやってきたコトだらけです。何度傷つけられても、「そんな人じゃない」ってやつです。いや!そんな人だから!(笑)

目の前の人を自分の好みに合うよう創り上げて、認められないということは、自分の心に目を向けていないってことになりますね。そして、相手にも失礼なわけですよ。ハイボールなのに、「なんで緑茶ハイの味がしないの!」って怒られてもねえ。こういう恋愛をやっている人、結構います。

周囲からすると、冷静に見ているので、「イタいことしているね」って言われてしまいます。気が付かないのは当人だけでしょうか? きっと本当はわかっているんだと思います。それを認める勇気が、人には必要なのではないのでしょうか。私はそう思います。もしそれに気が付けたら、「私はハイボールを好きになる!」と転換するか、いっそ緑茶ハイを探す旅に出るか。さあ、どっち?このコラムを読んで、「私のことだ」って思った人、いませんか?

人の縁を手放すのも理解するのも、勇気が要ります。転職に悩んでいる方、その恋が本当はおかしいと思っている方は、1歩踏み出す勇気を持ちましょう。

ちなみに私は現在51歳で独身ですが、60歳までにパートナーを見つけようと思っています。全く諦めていないことをお伝えしておきます(笑)。このコラムでは恋愛相談も受け付けていますので、「相手を攻略する方法を教えてください」などあれば、私が伝授しますよ。それではまた来月!あなたがあなたらしい1カ月を送れますように。

あなたのお悩みを相談してみませんか?
恋愛、仕事、家庭など、人生のお悩みを「伊勢のおばちゃん」にスッキリ解決してもらいましょう。掲載は匿名です。お悩みの内容と在住エリアを書いて、ソイソース編集部(info@soysource.test-alba.com)までお送りください。お便りお待ちしています!

うちは大丈夫?「ゲーム障害」という名の精神疾患

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

うちは大丈夫?「ゲーム障害」という名の精神疾患

本格的な冬の到来を感じるこの時期、外遊びの機会も減り、子どもがスクリーンを利用する時間が増えますね。特に、テレビゲームは飽きない仕かけが盛りだくさんで、やり始めて気が付いたらあっという間に数時間経っていたなんてことも。気晴らし程度ならストレス解消に効果的ですが、ゲームにのめり込み過ぎて家庭や学校生活がおろそかになり、注意をすると逆ギレされるような状態であれば、ゲーム障害の1歩手前かもしれません。

ゲーム障害とは、世界保健機関(WHO)が今年6月、新たに認定した精神障害で、ゲームをやりたいという衝動が抑えられず、学業や仕事よりもゲームを優先させ、日常生活に重大な支障をきたしているのが1年以上続いている状態です。患者数はゲーム利用者の2~3%と推測され、状況や年齢により1年未満でも診断可能。

私の働くクリニックでも、子どもが深夜までゲームを続けて昼夜が逆転し、デバイスを取り上げると暴言を吐いて暴力的になり、困り果てた親が相談に来るケースが増えています。ピュー研究所の2008年の調査によると、アメリカの12~17歳におけるゲーム利用者は、男子が99%、女子が94%と大多数であり、どの家庭にとっても程度の差はあれ、子どものゲームのやり過ぎは懸念材料であると言えるでしょう。

さて、このゲーム障害について、ゲーム業界団体は、世界中で26億人がゲームを楽しんでおり、ゲームに依存性はないと反対意見を表明しています。確かに、ひと昔前は依存と言えば、アルコールやドラッグのような薬物による依存を指していました。

しかし、最近ではギャンブル、ポルノ、買い物などの特定の行為によって得られる刺激にも同様の依存性があるとわかっています。ゲーム依存者の脳も、薬物依存者の脳と同じように、理性をつかさどる前頭前野よりも欲望や感情をつかさどる大脳辺縁系のほうが優勢になり、欲望をコントロールすることが困難です。

さらに、子どもの脳は前頭前野が未発達で、大人よりも衝動的で依存しやすい脳だと言えます。たとえば日本では、「コンプリートガチャ」と言われる課金を誘導するスマホゲームのシステムにより、未成年の高額課金トラブルが続出し、2012年に全面的に廃止されました。こうしたゲームは射幸心をあおるギャンブルに近いものであり、開発企業の責任は重いと言えます。

子どものゲーム依存が進行すると、不安や焦燥感、無気力状態、反抗的態度、強い怒り、暴言・暴力、学力の低下、社会活動の減少、睡眠障害、偏食、体調不良といった症状が見られます。「何度言ったらわかるの。なぜ止められないの」などと叱ったり諭したりしても、逆に相手を追い詰めることに。

依存の背景には、ゲーム自体の依存性のほか、依存しやすい性格、家庭や学校生活でのストレス、挫折体験、または知的障害を伴わない発達障害などさまざまな要素が考えられます。

まずは、家の中を安心・安全な場所にして居場所を作り、本人の悩みを聞いてあげることです。そして、ゲーム障害の症状や依存の仕組み(意志の強さとは関係なく脳の報酬系が障害されて起こる)をきちんと説明し、本人に納得してもらいます。

次に、ゲーム利用時間の記録を取って実態を把握し、「食事中はスマホを見ない」、「夜9時以降はゲームをしない」などのルールを話し合って決めます。映画や音楽鑑賞、スポーツなどゲームの代わりとなる楽しみを見つけることも大切です。

家庭での努力でどうしようもない場合は、専門機関への相談をおすすめします。フォールシティーにある「reSTART」は、全米初のインターネット依存患者向けの更生施設です。本人がかたくなに治療を受け付けない場合、まずは家族がセラピーを受けること
も効果的です。

いずれにせよ、最初の兆候を感じた時に、そのうち飽きるだろうと軽く考えずにすぐさま対策を講じることが大切です。そして、最初に決めた時間や頻度などのルールはしっかりと守るようにすることが必要でしょう。

テニスの全米オープンに見る日米社会の違い

『ザ・グローブ・アンド・メール』紙では、性差別を受けたことに抗議するのは当然の権利と述べていた

最近のニュースで日本人として大いに気になったのは、テニスの全米オープン。新星、大坂なおみ選手が、ベテランのセリーナ・ウィリアムズ選手に圧勝と聞いて、初めて大坂選手の存在を知った。10月16日に21歳となった彼女は2001年から米国に住んだとはいえ、両選手の言動を見る限り、日米社会・常識の両極端な一面が露になったかのように思える出来事だった。

見物席からコーチがジェスチャーで示唆したこと、怒ってラケットを地面にたたきつけて壊したこと、審判を罵倒したこと、これらの違反行為で1ゲームの罰則を科せられたウィリアムズ選手。「自分はコーチを受けていない」、「男性選手なら審判に暴言を吐いても罰せられないのに性差別だ」と、執拗に審判に抗議し続ける。一見、スター選手にありがちな傲慢な態度だが、スクリーンに映された彼女は真剣そのもので、情熱や誠実ささえ感じられるのだ。

9月10日付の地方紙、全国紙共に大坂選手のことはあまり取り上げておらず、メンズ・ファイナルやウィリアムズ選手中心の記事となっている。上は地方紙の『バンクーバー・サン』

ウィリアムズ選手は長い間、人種差別、アンチ・ドーピング・テスト最多回数、性差別などを受けたとして抗議し続けてきたという。今回の審判にも、1ゲームを奪った泥棒だと食ってかかり、「謝れ!」としつこく迫る。このような態度は、物を大切に扱い、感情を表に出さず、目上の人間に盾突かないよう教えられ(洗脳され?)てきた日本人の多くにとっては見るに耐えがたい。彼女のコーチもまた「大坂のコーチもジェスチャーをしていたのに不公平」と、人がしたから自分も、という大人げない態度なのである。

アメリカ社会を生き抜くには、彼らのように自分の意見を貫くべきなのか。それが許されるどころか、称賛さえされるのか。客席でもSNSでも、彼女に同情ないしは同調する人たちが大勢いたようだ。勝敗が決まったらブーイングも。「勝った大坂選手に失礼じゃないの?」と、日本人はさらに驚く。ギャラリーのほとんどが女王のウィリアムズ選手を応援するのも、弱者を励ます傾向のある日本社会の常識とは違うと感じた。

バンクーバーのダウンタウンでは、街角で肩が触れ合っても「アイムソーリー」と、みんな礼儀正しい。日本でいう「ごめんね」か「すみません」に当たると思うが、米国ではあまり聞かない。「カナダ人はナイス」とよく聞くが、単なるステレオタイプでもないのかもしれない

このような激しいやり取りが続いたにもかかわらず、感情を表に出さず、淡々と勝負に集中し続けた大坂選手。勝った瞬間も顔を隠すように、すぐ日除けを下げる。そんな彼女を見て、「やはり日本人」と思ったのは私だけだろうか。

アジア系含め、幅広い人種が住むカナダは「多文化主義」を国のアイデンティティーとし、2016年の統計によると、バンクーバー都市圏では白人・先住民以外の住民が50%以上を占める。そのためか、目立った人種差別は見られない

でも、試合後のブーイングに対し、ウィリアムズ選手が「もうやめよう」と呼びかけ、大坂選手を笑顔で讃えたことで、わが心中のもやもやは吹っ切れた。素早い変わり様だが、ウィリアムズ選手に寛大さや礼儀正しさがあったことがわかり、ホッとしたのだった。

恋愛は向き合ってなんぼ「メッセージの伝え方」

今回のテーマ

恋愛は向き合ってなんぼ
人間関係でいちばん感情が出るからこそ、学習しやすい恋愛。その恋愛でも不可欠なのは向き合うコト。そして、伝え方。

シアトルの皆さま、こんにちは。秋になり、少し涼しくなった日本ですが、大きな台風などで災害に
遭われた方もいます。皆さまのご家族は大丈夫だったでしょうか? お大事にしてください。

さて、いつもビジネス、ビジネス、時に子育てでお話をする機会が多い私ですが、当然のコトながら恋愛関係の相談もお受けしています。恋愛というものは、心理学でもいちばんに感情が出やすい人間関係だと言われています。そう、友人ならば時に意見が食い違っても譲り合えるが、恋人や夫婦だとそうはいかない! 「ごめん、仕事が入ったの」と友人が言ったら「あ〜マジで? 仕事なら仕方ないよ」と言えるが、恋人だと「え〜! 私だって忙しいのに」と、怒り千万。ありがちな話ですよね。

相談されても、双方の話を聞くと、本当にどっちも悪くないってケースがほとんど。そうなると、ど
う解決するかとなります。私の場合には、相手の潜在的な資質をお伝えして、「相手の苦手なコトは避けてあげましょう」という策も使います。実は彼女は、ドタキャンに怒っているのではないのかもしれない。自分でも気が付かないでいる根本に触れてしまっているケースが多いのです。「忙しいのに時間を空けていた!」と怒れば、彼からすると、ただの理解のない彼女となりがちです。

私の友人で、こういうケースを見事に変換した出来事があったので例に挙げます。彼女は定期的に彼氏に一方的にけんかを仕かけては「もう別れる!」と言い出すんです。彼氏はそのたびに大慌てをしていましたが、そんなコトを継続していくうちに、円満になっていったわけです。

彼女は幸せになることが怖かったのです。誰だって「幸せになりたい!」と思って当然なのですが、実は人間には「幸せになるのが怖い」症候群も多いのです。彼女の場合には、幸せになるのが怖くて、慣れない感覚の変化に怯えて、相手を試してしまっていたのだと思います。「君が好きだ!」「ありがとう!」となるところが、「君が好きだ!」「ウソ……本当なの?」というケースは、少なくないのです。

けれど、けんかという形でも彼女は彼に伝え続けて、それを彼氏が受け止めていったから、この話は最終的に円満に落ち着いた、ということです。話し合いを持つコトを、多くの人は避けたがりますが、向き合うコトの大切さ、必要性をしみじみ思うのです。

もうひとつは、やはり言葉の伝え方。「私だって忙しいのに!」ではなくて「とても楽しみにしていたのに。だから、ナーバスになるのよ」と、素直に何が辛いコトなのか伝える。そうすれば、彼氏も「そうか、ごめんね。君にとって急なキャンセルはダメージになるのに、どうしようもない案件が入って。でも今度、埋め合わせするね!」って。ほらね? 向き合って、言葉を投げかければ、お互いのトリセツを理解し合っていけるってものです。そうしたら、コトは円満に進んでいきますよね。

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バイリンガル児が陥る「アイデンティティーの危機」とは

子どもとティーンのこころ育て

アメリカで直面しやすい子どもとティーンの「心の問題」を心理カウンセラー(MA, MHP, LMHC)の長野弘子先生(About – Lifeful Counseling)が、最新の学術データや心理療法を紹介しながら解決へと導きます。

バイリンガル児が陥る「アイデンティティーの危機」とは

多様な文化や価値観が共存するアメリカ。そこで暮らすティーンエイジャーにとって、「自分はどんな人間なのか、どんな人生を歩みたいのか」といったアイデンティティーをめぐる問いは、とても切実なものです。「自分は日本人でもアメリカ人でもない」と感じて、自分の存在意義に不安感をつのらせる日系アメリカ人やハーフの子どもは少なくありません。アイデンティティーの概念を提唱した発達心理学者、エリック・エリクソン氏によると、アイデンティティーとは「これが私なんだ」と、心の底から自分らしさを実感する感覚であり、自分と相対する世界に対して境界線を引くことで確立するとされています。

特に12歳から18歳までの青年期は、アイデンティティーを確立するために大切な時期。家族や社会からの要求と自分の欲求をうまくすり合わせ、アイデンティティーを統合するのは大変な作業です。クリニックを訪れる子どもの多くも、言葉の壁や人種格差、宗教や価値観、性的指向の違いなどによってアイデンティティーの危機に直面し、深刻な劣等感や罪悪感に悩んでいます。この時期にアイデンティティーの確立がうまくいかないと、役割の混乱が生じて、「自分がどんな人間で、何をしたいのかわからない」というアイデンティティーの危機に陥ります。エリクソン氏によると、こうした状態は、対人不安、無気力、回避行動、問題行動につながり、社会思想や宗教に全く無関心か、その逆に狂信者を生み出すことも。

アイデンティティーとは切っても切れない関係にあるのが、言葉です。複数の言語環境で育つ子どもが陥りやすいのが、いずれの言語も年齢レベルに達しない「セミリンガル」。特に思春期以降は、認知学術的言語能力(CALP)と呼ばれる抽象的、論理的思考に見合う言語能力が発達しますが、セミリンガルの子どもたちはCALPが未発達に。学習面だけではなく精神面でも自分の考えや感情を的確に表現することができず、アイデンティティーの危機を招きやすくなります。まずは、英語か日本語、どちらでも良いので、第1言語をマスターしてCALPを身に付けること。英語でCALPを身に付け、日本語は日本文化を理解するためという割り切りも必要です。

また、文化によってアイデンティティーの形もさまざま。エリクソン氏のアイデンティティーの概念自体が欧米の自我モデルであるため、日本を含めた異文化圏の子ども全てに当てはまるとは限りません。心理学者の河合隼雄氏は、日本人のアイデンティティーは欧米人の個人主義に基づくものとは異なり、他者との関係性や全体としての調和の中で形成されていくとし、その日本的な心の世界を「母性優位」と位置付けました。彼は「母性はすべてのものを全体として包みこむ機能をもつのに対して、父性は物事を切断し分離してゆく機能をもっている」(『中空構造日本の深層』)と述べています。日本的な視点で父性優位のアメリカ人を見ると「自己中心的で空気が読めない人」、その逆にアメリカ人が日本人を見ると「自分がなく付和雷同的な人」に見えてしまいます。こうした主観的な解釈は、親が異文化に対して不寛容だといっそう強まるため、それぞれの文化の長所を積極的に見つける姿勢が大切です。

さらに、個人だけではなく共同体も全体としてのアイデンティティーを有しています。政治学者のフランシス・フクヤマ氏は、保守派とリベラル派の闘争は、イデオロギー闘争ではなく白人とマイノリティーのアイデンティティー闘争であると述べています。自分の存在意義に不安感をつのらせる子どもたちは、日本とアメリカ、どちらの国民的アイデンティティーにも自分が足りないという感覚を持っています。

コップに水が半分入っているときに、水に注目するか空っぽの部分に注目するかで意味合いが変わるように、自分は日本人でもありアメリカ人でもあり、複数の文化や価値観を持つことは逆に素晴らしいことだと子どもに伝えていくことが必要でしょう。親が先回りをし過ぎることなく、子どもが何をしたいかを尊重しながら多様な文化や価値観を包み込む姿勢を持ちたいですね。

網膜裂傷

シニアの間で盛んなピックルボール。夏はアウトドアでプレーし、ピクニックも楽しむ。90歳と92歳の男性がミックス・ダブルスでプレーしていたことも。その年齢になってもプレーができることを切に願う

今年2月、両目の白内障手術をようやく終えた。窓から高層ビルの輪郭がはっきり見えると喜んでいたら、5月末、急に右目の視界が怪しくなった。フローターと呼ばれる、黒点やクモの巣模様、白い雲のような膜が浮かんでは消える。周りのシニアは「そんなの普通。私なんかしょっちゅうよ」と言うが、心配性の私は再び眼科医にかかった。検査すると、網膜裂傷が数カ所見つかった。すぐに専門医に回され、裂傷が再確認されるとそのまま手術室へ。何種かの目薬がどくどくと目に落とされる。やがてアジア系の手術医がやって来るも、英国風アクセントが聞き取りにくい。この日はもうひとりの医師が不在で、午後5時という遅い時間も災いしてか、それとも性格なのか、態度が荒っぽい。10年前、シアトルでも同じ手術を左目にしたが、その丁寧さに比べ、今回の「ハイ次」的な扱いには不安が募る。

手術が始まると、「うわっ、こんなのあり? 目がつぶれそう」と、いきなりパニックに。まぶしい黄色のサイケデリック模様が視界に広がり、視界はやがて無数の星のような点々で埋まる。医師は眼球のあちこちを乱暴に押さえ、裂傷目がけてレーザー・ガンで光をこれでもかとガンガン打ち込む。痛みはあまりないが、不快感が半端ない。「こんなの耐えられない」と思うも、「まな板の鯉」である。

長~く感じた15分の治療がやっと終わる。「先生、ずいぶん荒っぽいね」とは言えず、ずっと外交畑にいたためか礼儀が勝り、いやいや謝意を述べる。ピックルボールは1週間NGとのこと。目を押さえながら、悲しく頭を垂れて帰途へ就く。家に着いて1時間もすると、正常の視力に戻った。

サプリメントの種類が徐々に増える、わが薬棚。果たして効果は?

次のアポから、本来の担当である柔らかな物腰の中年医師が応対。安心した矢先、検査で再度裂傷が見つかり即再手術へ。治ったと思っていた私はがっかり。「加齢によるもの」だと、近頃よく聞く理由が返ってきた。加齢が原因と認めたくないので、早速インターネットで調べると、白内障の手術後は網膜剥離になる可能性が1.5%あるという。網膜裂傷はその前兆で、主な自覚症状は視界に光が走ったり、フローターが増えたりすることだそうだ。そんな警告はなかった。宝くじに当たったこともないのに、こんなのに限って、わずか1.5%の確率内に「当たる」とは……。結局、5回目の受診で、やっと裂傷なし。その日は医師とハイ・ファイブを交わし、帰るとピックルボールを4時間プレーした。

部屋の窓を覗けば、バンクーバーのダウンタウンの風景がくっきりと。遠くにはイングリッシュ・ベイも垣間見える

私のようなケースはやはり「稀」だそう。しかし「裂傷の間に治療すれば、治るもの」とも言う。私はポジティブな面を見るようにした。年を取り、体にいろんな故障が出るにつれ、こういう風に逆境にめぐり合っても、明るい事実に焦点を当てるようにするのがシニアの生き方か。

日本の猛暑にひと言申す。

今回のテーマ

~人間関係と同じく、天候ともコミュニケーションは必要~

人間は、季節や天気とも関係性があります。それを受け入れることで、天候ともコミュニケーションが取れるようになり、自分の味方にできます。

シアトルの皆さま、こんにちは。いかがお過ごしですか? ちょうど9月の頃、シアトルに日本の友人を連れて滞在したことを思い出します。空は真っ青で、青い湖が目の前に広がり、シアトルってこんなに素敵な場所なのかと感動したものです。

なんて、語り出したのには訳があります。今年の日本の夏は大変な猛暑で、気象庁がこの猛暑を「災害」だと発表したのです。約40度って気温が平気で出ちゃうのですから、この温暖化が続いたら、今
後はどうなっていくのだろう?と、心配する声も。そんな調子なので、人々の口からは「暑い!」「もう嫌だ!」と、当然ながらそんな言葉が飛び交います。

私が考案した「十三導」では、「気候を願うなかれ」という説があります。たとえば「明日はお出かけだから、晴れるといいな」というのは「挑み」(自然に生きるのと反対)になるから、なるべくあるがままを受け入れると良いという話です。雨が降ったら「あ~、今日は雨で良かったのだろうな」とか「今日は心の浄化の日だと思おう」とか、その日の天気も自然に受け入れようという意味合いです。とはいえ、明日から家族でキャンプに行くというのに、それでも天気を意識しないというのは、不自然ですよね。せっかくの旅行なのだから、晴れたほうが良いに決まっている!(笑) だから、なるべくねって程度でお伝えしています。

とはいえ、どうしてもこの猛暑だと、LINEのグループ投稿にも「暑い暑い」と目に飛び込んできます。人の心理も異常になってきているのかもしれないとまで感じていたら、心理カウンセラー仲間がこういう話を教えてくれました。「暑くて嫌だ!」と声にするなら、少し言葉に変化を付けると良いのだそう。確かに暑いのは暑いから言葉に出てしまうのは仕方がないけれど、その後に「だから……だよね」と、フォローを付けるというのです。たとえば「暑いね! だからビールがおいしいよね!」と
いった具合。これは風水的な考えもあるらしいのだけれど、文句ばっかり言っていると余計に夏バテ
になったり、身体に支障が出たりしやすくなるんだよねって。なるほど~と思いました。人間関係も
コミュニケーションが大切なように、天候ともコミュニケーションは必要なのだろうなと。

人ってつい自分たち人間だけが生きているイメージになりがちですが、宇宙や地球やあらゆるものと共存しているのです。気候だって、勝手なことばっかり言われたら、なんとなく伝わるのだろうなって思います。「あなたの天気のおかげで、今日はこんな良いことがあったよ」。そう伝えているような言葉の使い方のほうが、周囲の人だって気分が良い。言葉って「言霊」っていうだけあって、本当に大切かもしれませんね。

さて、また来月にお会いしましょう。ありがとうございました。

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ラブコメの王道を行く娯楽作品

Crazy Rich Asians
(邦題「クレイジー・リッチ!」)

上映時間:2時間 写真クレジット:Warner Bros. Pictures シアトルではシネコンなどで上映中。

劇場公開後2週間連続で興行収入ナンバーワンという大ヒットを続けているロマンチック・コメディーだ。しかも、メイン・キャストが全てアジア系。これは93年の「ジョイ・ラック・クラブ」以来という。ラブコメ苦手派ではあるが、楽しめる作品だった。

ニューヨーク大学で経済学を教えるレイチェル(コンスタンス・ウー)が、恋人のニック(ヘンリー・ゴールディング)の親友の結婚式に誘われ、彼の母国であるシンガポールに行くことに。着いてみると、彼の一族ヤング家はシンガポールを代表する大富豪で、超セレブなライフスタイルに仰天。しかも、初対面のニックの母(ミシェル・ヨー)に見下され、ニックを狙う女たちの嫉妬といじめの標的となって、レイチェルは落ち込んでいく。だが、大学時代の親友(オークワフィナ)の心強い応援を得て、レイチェルは誇りを取り戻し、次第にヤング家の富と家柄重視の影に触れていく。

愛し合うふたりの障害となる頑固な母と狡猾な元カノ、主人公を応援する親友とその家族やゲイのデザイナー、美貌のニックの従姉妹などなど、かなり多くの脇役が登場。悩める主人公の物語と同時に、セレブ暮らしに慣れきった彼らのクレイジーなエピソードも多く描き出されていく。

ラブコメの主人公は最後に必ず結ばれる。そんな謎のない作品の命題は、その結末までをどう見せていくか。本作はその紆余曲折にラブコメの王道を行く見慣れた脇役を登場させ、多くの笑いの要素を加えていくのだが、よく整理されていて、混乱がなかった。これはなかなか至難の技である。

また、へこんでいた主人公が自分を取り戻していく過程も、ウーの好演のおかげで説得力十分。舞台がシンガポールという新鮮さに加え、ゴージャスな設定、よく書けた脚本と手際の良い演出など、全てがうまく機能して、作品の成功につながった。監督はダンス映画やアクションを手がけてきたジョン・M・チュウで、無駄のない演出が軽快で特筆したい。

原作はシンガポール出身のケビン・クワンの同名小説。たぶん、この原作が大ヒットのカギではなかったか。クワン自身のよく知った世界、巨大な富を持つことの不遇な側面を実際に体験、見聞きした人だからこそ書けた物語で、このシンデレラのような非現実的物語にリアリティーという重しを加えていた。