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コラム連載状態: 単発・不定期掲載中

スナップショット〜2026年3月号

グッドレイジー・ドーナツ昨年2月にイサクア・ハイランドにオープンしたテイクアウト専門のドーナツ店を訪れました。個性豊かな見た目のドーナツはどれも愛らしく、ふわふわの生地の中には軽い口当たりのクリームがたっぷりと詰まっています。2週間おきに入れ替わるフレーバーは約70種類と豊富で手土産に最適です。なお、木曜日から日曜日(午前8時から午後2時30分)のみの営業のため、事前に確認してから訪れると安心です。(Y)
中別府なかべっぷ雄作氏による講演
1月26日、シアトル日本人研究者の会会員を対象に、日本学術振興会サンフランシスコ研究連絡センター長(九州大学名誉教授)の中なかべっぷ別府雄作氏が講演しました。海外拠点の役割分担や研究者交流会支援、PIマップ(大学等における研究主宰者・責任者の一覧)整備、帰国発展研究などについて解説。質疑応答では応募要件や渡航費の課題も共有され、研究者の国際循環を後押しする取り組みが紹介されました。(M)
「カヤバ(KAYAVA.)」ベルタウンに
第2号店をオープン!
12月30日、記者インターンとボランティアスタッフを招き、姉妹

2024年10月にフリーモントで第1号店を構えたラーメン店「カヤバ」が、1月16日、ベルタウンに第2号店をオープンしました。昨年7月からのソフトオープンを経ての本格オープンとなります。黒で統一された店内は、厨房と客席の距離が近いオープンな造り。各テーブルに置かれたランプが落ち着いたムードを演出しています。看板メニューはフリーモント店同様、職人技が光る鶏白湯ラーメン。その味わいに改めて完成度の高さを実感しました。日本のラーメンが恋しくなったとき、本場の味をそのまま楽しめる一軒としてぜひ訪れたい店です。(Y)

シーホークス、歴史的優勝パレードに12sが集結
2月11日、スーパーボウル優勝を祝うトロフィープレゼンテーションと優勝パレードが開催されました。ルーメン・フィールドの無料チケット約5万枚は配布開始から数十分で終了し、当日も早朝から多くの「12s」が集まりました。フォース・アベニューからスペースニードル付近まで続く約2マイルの沿道はファンで埋め尽くされ、トロフィーを高く掲げる選手たちの姿に、歓声と拍手が巻き起こりました。快晴の空の下、頂点に立ったチームを称え、街全体が一体となる歴史的な1日となりました。GoHawks!(A)

JBAS新年会、 日米ビジネスの「潮目」を語る〜特別レポート

JBAS新年会、日米ビジネスの
「潮目」を語る

取材・文:溝江暁子 写真:JBAS提供

1月23日、ヒルトン・ベルビューで、シアトル日本商工会(春秋会)/Japan Business Association of Seattle(以下JBAS)の新年会が開かれました。2019年以来となる開催には、200人を超える関係者が集結。日米ビジネスの現在地と、次の一年に向けた連携の可能性を共有する場となりました。

会長あいさつ

JBAS会長・阿部茂樹さん(Civil Aircraft Engineering Service Co., Ltd.)

航空機産業をはじめ、技術もビジネスもそろうシアトルの地において、最後に壁になるのは「人」と「ネットワーク」です。日米の関係をこれからさらに発展させていくためには、人と人とのつながりが欠かせません。AIやITといった技術が急速に進化する時代だからこそ、情報を共有し、ネットワークを強化する場の役割はますます重要になっています。商工会が中心となって提言をまとめ、領事館や現地行政と対話し、企業と行政をつなぐ橋渡し役として力を尽くしていきます。今日のような出会いの積み重ねが、次のビジネスや協力関係につながっていくことを期待しています。

午後4時から始まったカクテルアワーには、来賓やビジネス関係者が続々と集まり、名刺交換や近況報告の輪が広がった。和やかな雰囲気の中で交流が深まると、あちこちで日英が入り交じる会話が聞こえ、航空、IT、物流、人材といった異なる分野の話題が交差していく。冬の夕暮れの光が差し込む会場では、久しぶりの再会を喜ぶ声と新たな出会いをつなぐ姿が見られ、ロビーは小さなビジネスフォーラムのような熱気に包まれていった。

©Japan Business Association of Seattle (Shunjukai)/ Perry Garvey

カクテルアワーのひととき。グラスを手に、参加者同士が談笑する

午後6時、ジャパン・クリエイティブ・アーツ/ちきり&太鼓の学校の立石鈴太郎氏らによる力強い和太鼓がレセプションの幕開けを告げ、ハロルド・タニグチ氏と河村和美氏が司会を務めプログラムが進められた。会場には、ワシントン州議会、ワシントン州日米協会、各県人会などの関係者をはじめ、多くの来賓が顔をそろえた。当会名誉会長、在シアトル日本国総領事館伊従誠いよりまこと総領事は、草の根交流の積み重ねが日米関係の基盤であると述べ、2026年の米国建国250周年や文化・教育分野での交流拡大についても言及した。

 ©Japan Business Association of Seattle (Shunjukai)/ Perry Garvey

「6年ぶりの開催に来場者数を案じていた」という阿部会長のスピーチとは裏腹に、会場は満席となり、新年会は大盛況のうちに行われた

来賓のあいさつに続き、新年の門出を祝う鏡開きが行われた。場内から上がる「よいしょ」の掛け声に合わせて、登壇者が木槌きづちを打ち下ろし、会場は一体感に包まれた。続いて、元駐越米国大使館大使・元駐日米国首席公使のマイケル・W・マハラック氏が新年の祝意とともに、日米関係において「太平洋に線を引かない」ことの大切さに触れ乾杯の音頭を取った。

後半には、BCA土曜学校、ジャパンフェア、民間航空技術サービス(株)、ワシントン州日米協会、レバレジーズUSインク、米国日本通運株式会社シアトル支店、東レ・コンポジットマテリアルズアメリカ社、米国ヤマト運輸シアトル支店の代表が登壇し、それぞれの取り組みを紹介した。航空機部品の現地対応や人材支援、物流サービスなど、シアトルを拠点に広がる日米ビジネスの現場が具体的に語られ、会場の随所で名刺交換や意見交換が続いた。

 ©Japan Business Association of Seattle (Shunjukai)/ Perry Garvey

色鮮やかな法被に身を包み、新年の祝樽を囲んで木槌を手に息を合わせる登壇者たち

対面開催の復活を象徴するこの日の新年会は、単なる賀詞交歓がしこうかんにとどまらず、次の一年に向けたネットワークづくりの出発点となった。変化の大きい時代の中で、JBASが担う「つなぐ役割」は、シアトルの日系ビジネスコミュニティーにとって、今後も重要性を増すだろう。

シアトル日本商工会(春秋会)
「春秋会」として創立。戦前1922年に領事館とシアトルの日本企業数社で結成された「木曜会」、1952年発足の「火曜会」を前身とする。ワシントン州シアトル圏の日本・日系社会と米国コミュニティーの間の貿易及びビジネス関係の促進、日本の教育と文化を推進する地元コミュニティーの取り組みの支援などを活動目的にしている

Japan Business Association of Seattle(Shunjukai)
2018 156th Ave. NE., #100, Bellevue, WA 98007
shunju@jbaseattle.org    www.jbaseattle.org

荒天シーズンを安心して乗り切る! シアトル生活実践ガイド〜特別レポート

荒天シーズンを安心して乗り切る! シアトル生活実践ガイド

取材・文:溝江暁子 写真:PSE提供

雨の季節。しとしとと降り続く雨で地盤が緩んだところに突風が吹くと、根の浅い木は倒れやすくなり、静かな雨が一転して停電や倒木、道路の冠水といった被害に見舞われることがある。こうした事態に備えて、日頃から家庭でできる準備を改めて確認しておこう。

PSEのクルーが電線設備の安全確認と復旧作業を進める現場の様子

まず見直したいのが、非常用キットの中身だ。水や食料は最低3日分、できれば1週間分を目安に用意しておくと心強い。保存食だけでなく、普段から食べ慣れているものを少し多めに買い置きしておくと、停電や外出困難な状況でも精神的な負担が軽くなる。意外と忘れがちなのが現金で、停電時にはATMやカード決済が使えないこともあるため、小額でも現金を用意しておくと役立つ。

停電時の過ごし方も、あらかじめ想定しておきたい。夜間の明かりにはキャンドルではなく、懐中電灯や充電式ライトを使う方が安全だ。日頃から冷凍庫に保冷剤や凍らせたペットボトルを入れておくと、停電時に冷蔵庫の温度上昇を防ぐことができる。日常の延長でできるひそかな備えが、いざという時の安心につながっていく。

安全面で特に注意したいのが、倒れた電線と一酸化炭素のリスクだ。地面に落ちている電線は通電している可能性があるため、決して近づかず、十分な距離を取ることが重要になる。また、寒さ対策として発電機やガスコンロを室内で使うのは非常に危険で、換気の悪い場所では一酸化炭素中毒になる恐れがある。

情報収集の手段も複数用意しておきたい。ピュージェット・サウンド・エナジー(PSE)の停電マップやmyPSEアプリを使えば、停電状況や復旧の目安時間を確認できる。スマートフォンのバッテリーが切れた場合に備え、電池式や手回し式のラジオ、モバイルバッテリーを用意しておくと安心だ。

人とのつながりも、防災の大切な要素の一つ。近所の人とあいさつを交わし、顔見知りになっておく。そんな小さな積み重ねが、停電時の情報共有や、高齢者や子どもがいる家庭を気にかけるきっかけになり、いざという時の助け合いにつながっていく。

荒天そのものは避けられないが、備え方は自分で選択できる。水を1本多く買う、保冷剤を凍らせておく、連絡方法を家族で話し合う。大きな準備はできなくても、こうした小さな行動の積み重ねが安心して暮らす力になるのだ。

荒天・停電への備えガイド

ピュージェット・サウンド・エナジーは、荒天時の安全確保や事前準備に関する情報を提供しています。myPSEアプリのダウンロードはこちらから www.pse.com/en/pages/get-the-pse-app

【安全のための備え】

1.キットを準備する
下のチェックリストを参考に、非常用キットを整えましょう。

2.行動計画を立てる
自然災害が起きたときに何をするか、家族で確認しておきましょう。

3.アプリをダウンロードする
myPSEアプリは、冬の荒天時に停電の報告や復旧状況の確認を行うための最も早い方法です。


非常用キット チェックリスト

□ 飲料水:7〜10日分(1人1日あたり約1ガロン)
□ 食料:7〜10日分(常温保存できるもの)
□ 現金:ATMが使えない場合に備え、小額紙幣で
□ 懐中電灯
□ ラジオ:電池式または手回し式
□ 予備の電池
□ 救急セット
□ ホイッスル(助けを呼ぶため)
□ 丈夫な靴・手袋
□ 防塵マスク(汚れた空気を吸わないため。綿のTシャツでも代用可)
□ 衛生用品(ウェットティッシュ、ゴミ袋、結束バンドなど)
□ 手動式の缶切り
□ 多目的消火器(A・B・C対応)
□ 保冷剤:今日から冷凍庫で凍らせておき、停電時に冷蔵庫へ入れて食品を冷やすため
□ 各家庭に特有の必需品
 ・乳児用品、ペット用品
 ・処方薬・市販薬
 ・緊急連絡先、重要書類

自分や家族、ペットのために、最低でも3日分の備蓄を用意してください。自宅・職場・車それぞれにキットを準備しておくと安心です。

非常時に備え、行動計画を事前に確認しておくと安心です。

関連情報:PSE.com/Storm

 

ワシントン州日米協会主催「ジャパン・イン・ザ・スクール」〜特別レポート

ワシントン州日米協会主催
「ジャパン・イン・ザ・スクール」

取材・文:加藤良子

ワシントン州日米協会(JASSW)が50年にわたり無料で提供している教育プログラム「ジャパン・イン・ザ・スクール(JIS)」には、「スーツケースの中の日本」と呼ばれる特別授業があります。日本の子どもが日常的に使う学用品をスーツケースいっぱいに詰めて、協会スタッフがピュージェット湾地域の小・中・高の学校を訪れ、日本の学校生活や文化を紹介します。今回はジョン・スタンフォード小学校4・5年生を対象に行われた授業の様子をレポートします。

授業では、日本の小学生が送る学校生活の1日を、登校から下校まで順を追って紹介する。まず児童たちの目を引いたのは、黄色い帽子とランドセル。ランドセルへの反応はさまざまで「箱みたい」「ジッパーがない」「そんなにたくさん入らなそう」「大きさは選べるの?」「燃えない素材で、防水加工されていそう」などコメントが飛び交った。交通安全のために黄色い帽子をかぶることが説明されると「日本は安全だから子どもが1人でも出歩けるんでしょう? だから日本に住みたいんだ!」という声も。この日のクラスは26人で、徒歩通学の児童はわずか2、3人。原則として保護者と一緒に通学しなければならない現状を考えると、日本の治安の良さが際立って見えたのだろう。

子どもを飽きさせないようテンポよく盛り上げていく様子は、まさにベテランの技

続いて取り出されたのは世界地図だ。日本では太平洋を中心にした地図が一般的だが、アメリカの地図は日本が右端の極東に配置されている。一方、オーストラリアでは南極が上部中央に位置する「逆さま」の世界地図が使われていることも紹介され、国や地域によって世界地図の視点が異なることが示された。

校舎の写真を見た児童からは「病院みたい」「日当たりが良さそう」といった感想が相次いだ。下駄箱のほか、家の中や病院、トイレなどでもスリッパに履き替える習慣があることが説明されると「面倒くさそう」といった素直な反応も。

授業の最後は、日本の号令で締めくくられた。子どもたちが一斉に「起立!」と声を上げると、「あなたたちは言わなくていいんですよ」と声がかかり、ほほ笑ましい一幕が見られた。児童たちから「礼」を受けた担任のメリッサ・イーストマン先生も「気に入った」と満足げだった。

給食着やランドセル、上履き、雑巾。アメリカの小学校ではあまり見られない学用品が並ぶ

シアトルで暮らす中で、日本食や日本文化がさまざまな形で受け入れられていることを肌で感じるたびに、「ジャパン・イン・ザ・スクール」のような地道な活動が確実にその土壌を築いてきたのだと気付かされる。種がまかれ、芽が育ち、異文化を自然に受け入れられる人が育っていく。そうした人々がいつか情報を発信する側に立ち、やがて社会に優しい循環を生み出していくのだろう。異文化理解は単なる知識の習得にとどまらない。多様な価値観を尊重し、共に生きる社会を築くために欠かせないものだ。「ジャパン・イン・ザ・スクール」の授業は、そんな未来への希望を感じさせるものだった。

ワシントン州日米協会の「スーツケースの中の日本」は学校や教育機関からの申し込みに応じて無料で実施されている。関心のある教育関係者は、ぜひ問い合わせてみてほしい。

 
ワシントン州日米協会「ジャパン・イン・ザ・スクール」プロジェクト
高校生向けにはロールプレイング形式のプレゼンテーションも実施。これまで延べ6万人以上の生徒がプログラムに参加している。2009年には三菱商事および国際対話部から助成金を受けるなど、学校行事や地域の文化フェアにも参加しながら活動を続けている。

ボランティア募集の説明会を実施!
日本の学校生活や文化を紹介するボランティアを募集中。概要説明や練習会も開催される。当日参加も可能。

日程:2026月1日31日(土)2pm~4pm
場所:Bellevue Children’s Academy North Campus, Satellite
   14673 NE. 29th Pl., Bellevue, WA 98007
問い合わせ:☎︎206-374-0180、jis@jassw.org
詳細:https://jassw.org/education/jis

シアトル日本語補習学校第26代校長 鹿屋純一さん〜スペシャルインタビュー

教育への思いを胸に、子どもたちの未来の扉を開く
シアトル日本語補習学校第26代校長 鹿屋かのや純一さん

取材・文:西東円佳

「教育とは流水に文字を書くようなはかない業である(森信三の言葉)。だからこそ、子どものためになることを真剣に考えて取り組んでいきたい」そう語る鹿屋さんはシアトル日本語補習学校を「子どもたちの可能性を限りなく広げる学校」と表現します。インタビューを通して鹿屋さんが大切にしてきた教育観と、シアトル日本語補習学校の魅力に迫ります。

鹿屋純一鹿児島県出身。大学時代は名古屋市で過ごし、法学部で刑法を専攻。卒業後、鹿児島県職員として帰郷。友人の勧めで勤務の傍ら教員免許を取得し、20代後半から公立小学校教員として再出発する。国語科の研究を志すも、次第に算数科や視聴覚教育に傾注。2023年3月の定年退職まで海外(シンガポール)を含む10校で勤務。現在は文部科学省派遣教員として本校に着任し、2年目を迎えている。
学び方次第で生きる、年間40日の「日本語留学」
 
シアトル日本語補習学校は、日本の学校教育を基本としてアメリカという環境の中で学ぶ、いわば二つの教育文化の「良いとこ取り」ができる学びの場。多様な背景を持つ仲間との出会いや、異なる文化や価値観に触れるなかで、違いを受け入れ、他者を尊重する姿勢が育まれる。子どもたちは教科学習にとどまらず、広い視野と多面的なものの見方を自然と身に付けていく。 
 
最大の特徴は、週に1度、年間およそ40日の「日本語だけの環境」。アメリカの日常から離れ、日本の教科書を使用して学び、日本の生活習慣やマナー、文化の背景に触れる時間は、まさに「ミニ日本留学」だ。ここで得た経験は、子どもたちのアイデンティティーの核となり、将来の揺るぎない土台となる。また、多様な背景を持つ教職員や家庭が集まるコミュニティーも大きな魅力だ。経験や知識が共有され、子どもたちの「引き出し」が増えていく。さらに、幼稚園児から高校生までが同じ校舎で学ぶ環境では、年齢の異なる子どもたちが日常的に関わり合う。上級生が下級生を気にかけ、下級生が上級生の姿に学ぶ。高学年になるほど学びへの姿勢はより主体的になり、現地校と補習学校の両立を通して養った力は、卒業後の大学生活や社会でも確かな成果として表れている。 
 
日本語と英語に加え、現地校で第三言語へ挑戦する児童生徒も少なくない。ここで育まれる吸収力と異文化理解は、世界で生きていくための大きな強みとなり、柔軟で適応力のあるグローバルな人材へとつながっていく。
 
先生の話に真剣に耳を傾ける子どもたち
補習学校のボランティアグループ「おはなし会ひみつの本箱」による、子どもたちが大好きな読み聞かせの時間
 
児童生徒数が多いからこそできる行事で、子どもたちの心身の健康と成長を応援
 
補習学校の授業は、教師からの一方向の学びではない。子どもたち自身が考え、動き、学習活動をつくり出せる環境づくりを、常に大切にしているという。上級生の教室では、①自分で考える②ペアで話し合う③グループで深める④全体で共有する、というプロセスを繰り返す中で、子どもたちの自信が育っていく様子を日々実感しているそうだ。
 
補習学校では、日本の学校のように体育や道徳の授業があるわけではない。しかし、学びと運動は本来密接に結びついている。そのため、運動会やスポーツ大会は特別な意味を持つ。互いの力を認め合い、協力する喜びを知ること。人間関係が深まり、道徳的な心情が育つ時間。昨年できなかったことが今年はできるようになったと実感する瞬間。これら一つ一つが子どもたちを大きく成長させる。また上級生の姿を見て「自分もあんなふうになりたい」と憧れを抱く経験ができるのは、児童生徒数の多い補習学校ならではの価値だと語る。

設立当初から変わらない教育姿勢「きびしく学ぶ、たのしく学ぶ、ゆたかに学ぶ」

年に一度の中高部スポーツ大会。一致団結して臨み、クラスの絆と成長が刻まれる
 
シアトル日本語補習学校には、日本を離れアメリカで生活しながら豊かな経験を積んできた教職員がそろう。共通しているのは、児童生徒への愛情を持って向き合う姿勢。ただし、愛情と甘やかしは違うという認識のもと、身に付けてほしいことは毅然きぜん と伝える。そのバランスを大切にしながら授業をつくり、児童生徒の成長にしっかり寄り添っている。
 
校歌にも歌われている「きびしく学ぶ、たのしく学ぶ、ゆたかに学ぶ」という姿勢は、単に学力を高めるためのものではない。子どもたちが将来ぶれることなく成長していくための土台となるものだ。実際に、多くの卒業生が確かな力を培い、それぞれの道へと巣立っていった。
 
一方で、社会も教育も常に変化している。これからも日本の教育が目指す方向性をしっかりと理解し、その良さをシアトルで学ぶ子どもたちにどのように届けるかを考え続けたい。子どもの中にある「学びの種火」を守り育て、その火を子ども自らが燃やし続けられるような授業や学校づくり、さらには人生の生き方につながる種まきを進めていきたい。補習学校は「厳しい」というイメージを持つ家庭もある。宿題が多いなど、学びの定着には一定の負荷が伴うのも事実だ。しかし、それは子どもが確かな力を身に付けるために避けては通れないものと理解してほしい。
 
最後に、学び以外の魅力にも触れたい。例えば、毎週土曜日に持ち寄る手作り弁当。お弁当を頬張る子どもたちの姿は本当に幸せそうで、温かな空気が広がっている。子どもが学校に通う時期にしか育めない親子の絆が深まる時間。そんな温かな記憶を育む場所でもあってほしいと願っている。
 
シアトル日本語補習学校
Seattle Japanese School919 124th Ave. NE. #207, Bellevue, WA 98005
☎425-643-1661、office@seattlejschool.org
https://seajschool.org

スナップショット〜2026年2月号

北米報知の記事から母語教育を考える昨年12月20日、JICA横浜海外移住資料館によるオンラインセミナーが開催され、第5回JICA海外移住「エッセイ・評論」部門優秀賞を受賞した長沼彩香さんが登壇しました。1958年に姉妹誌・北米報知に掲載された記事「日本語の必要」を手掛かりに、海外在住者の45%が孤独を抱えるという視点から、母語教育と同胞コミュニティーの役割を考察。自身のカナダ移住経験や関連研究を紹介し、異文化適応とアイデンティティー維持の両立について提起しました。(M)
北米報知出版社忘年会 202512月30日、記者インターンとボランティアスタッフを招き、姉妹誌「北米報知」のスタッフと本誌発行人のトミオ・モリグチを囲んで忘年会を開催しました。それぞれが持ち寄った料理を囲み、和やかなひとときを過ごしました。 2026年も、スタッフ一同、より良い誌面づくりに取り組んでまいります!(R)

Happy Dogs ワン友の会〜あんなグループこんなグループ

取材・文フォーリー由香

愛犬と共に楽しい時間を過ごす
Happy Dogs ワン友の会

日本人の犬の飼い主が、犬同伴で集まるグループ「ワン友の会」に同行し、その様子を取材した。主催者はナオミ・シェラーさん。毎月開催しており、ドッグパークに行ったり、トレイルを歩いたり、ピクニックをしたりといった活動を行っている。飼ってはいないが犬が大好きな人や、飼うことを検討中の人も参加可能だ。当日は、犬は自宅に残して飼い主だけで参加する人、夫婦で犬を連れて参加する人など、参加のスタイルはさまざまだった。

グレイハウンドのモナカとポメプーのモチ

秋の恒例行事は窪田ガーデンでの紅葉狩りとのこと。今年は11月2日に訪れた。前日まで連日雨天で優れない天候だったが、その日は見事な快晴に。紅葉が見頃の時期でもあり、多くの人が訪れていた。

当日参加した犬は15匹で、参加人数も通常に比べ多かったようだ。シェラーさんの飼い犬、グレイハウンドをはじめ、ゴールデン・レトリバーやチャウチャウ、コーギー、トイプードルやパグなど、犬種やサイズ、年齢まで多種多様。これほど多くの犬が集まる場に立ち会うことはなかなかなく、少し迫力があった。その日が初参加という人も多くいた。

集合場所に集まった犬たちは、最初こそ緊張した様子でそわそわしていたものの、犬同士で挨拶を交わしながらマナー良く待っていた。7カ月のゴールデン・レトリバーがもう一匹のレトリバーと遊びたがっている姿が愛らしかった。

ガーデンの途中にあるオーバールックと呼ばれる石垣の展望台で、自己紹介の時間が設けられた。用事がある人は自己紹介の際に一言添えておけば、散策の途中でも自由に帰宅できる。こういった柔軟性は忙しい人にとってはありがたい。

テラス・オーバールックにて

約1時間の散策はあっという間だった。犬を連れて歩きながら参加者同士が交流しいろいろなことを学べる。例えば犬のグッズについて。口輪の使い方やその意義、給水ボトルなどについて学んだ。多様な犬種の飼い主と話ができるので、犬を飼うことを検討中や犬種選びに悩んでいる人にも参考になる情報が得られそうだ。また、子犬や幼犬を連れて行き、ほかの犬と触れ合うことで犬の社交性も育まれる。「群れで行動する犬にとって、他の犬と一緒に歩くことは良いこと」とシェラーさんが教えてくれた。

円月橋にて

最後に挨拶を交わす参加者とその犬たち

散策の最後には、適度な運動と新しい出会いに疲れて横になる犬の姿も見られ「A tired dog is a happy dog(疲れた犬は幸せな犬だ)」という言葉が頭をよぎった。犬も人も刺激的で楽しい時間を過ごせたに違いない。

2012年から続く同会は継続して参加できる積極的な参加者を募集中だ。興味のある方はメールで連絡を。

Happy Dogs ワン友の会

日程:月1回集合
場所:毎月異なる
会費:無料
問い合わせ:clubhappydogs@gmail.com (ナオミ・シェラー)
※勧誘目的での参加はご遠慮ください

今月の紹介者アンウィシャ・バタチャーヤさん〜シアトライトを直撃!

取材・文:西東円佳

今月の紹介者
アンウィシャ・バタチャーヤさん

インド・コルカタ出身。ピッツバーグの大学でコンピューターエンジニアリングを専攻し、2024年8月にシアトルへ。現在は大手旅行会社でソフトウェアエンジニアとして活躍している。故郷であるベンガル地方の味付けを得意で、スパイスと野菜をふんだんに使ったインド料理をよく作る。

 

グルメ​​

パイク・プレイス・マーケット近くにあるピロシキ・ピロシキのペストリーをよく買いに行きます。おすすめはサーモンパテ。サーモンとチーズの風味が絶妙に調和していて、やみつきになるおいしさです。

Piroshky Piroshky
https://piroshkybakery.com

 

 

ショッピング

日曜日には、バラードのファーマーズマーケットに足を運びます。地元で採れた興味をそそる農作物や、よい香りのキャンドルなどの手工芸品がたくさん並び、購入したものは部屋に飾って楽しんでいます。

▪️Ballard Farmers Market
www.sfmamarkets.com/visit-ballard-farmers-market

 

最近ハマっていること

タピオカ・ミルクティーの大ファンで、街 を歩きながら、気になる組み合わせや味を提供する店を見つけるのが楽しみの一つです。シアトルで初めて訪れたのは、ワシントン大学のそばにあったボバ・ジェム・ティー。そのとき飲んだウベフォームティーは、今でも心に残る一杯。残念ながら閉店してしまい、今はDIYティーラボに通っています。

■DIY Tea Lab
www.diytealab.com

 

お出かけ

フェリーに乗ってベインブリッジ島へ出かける時間は、長い一週間の疲れをすっとほどいてくれる、ちょっとしたご褒美のようなひととき。島内を歩いて巡ると、点在するユニークな石像をはじめ、さまざまな発見があります。そして忘れてはいけないのが、美しい海を眺めながら本格的な味を楽しめるタイ料理レストラン、ベインブリッジ・タイ・クイジーン。ぜひ訪れてみてください。

Bainbridge Thai Cuisine

 

 

『SHOGUN 将軍』講演と和心会のNPO認定祝賀レセプション〜特別レポート

 静かな琴の音から始まった夜
『SHOGUN 将軍』講演と和心会のNPO認定祝賀レセプション

取材・文:溝江暁子 写真:稲川幸則

アメリカ国内外で注目を集めたドラマ『SHOGUN 将軍』。その背景となる日本史をテーマに、和心会とタウンホール・シアトル共催による講演会が開催されました。講演後には和心会のNPO認定を祝うレセプションが催され、鏡開きとともに温かな祝意が広がりました。

岩崎氏が開会を告げ、講演の幕が上がった

12月8日、タウンホール・シアトルのグレートホールには、開場と同時に琴の音色が響き、来場者を厳かに迎え入れていた。和やかな雰囲気の中、和心会代表・岩崎由美氏が登壇し、同会がこれまで7年間にわたり日本文学・文化の公開講座を催してきたことを紹介。大学や領事館の協力に謝意を述べた。本講演はワシントン大学センター・フォー・ジャパニーズ・スタディーズおよび同大学アジア言語文学学科の支援を受けて開催された。地域団体と大学の連携によって実現したこの催しには、歴史やドラマに関心を寄せる幅広い層が集まった。

外の冷気とは対照的に会場は熱気に満ち、講演への期待が高まる中、ペンシルベニア大学東アジア言語文明学部のデイヴィッド・スパフォード准教授が登壇。全世界で話題となったドラマ『SHOGUN 将軍』を歴史学の視点から読み解いた。「『SHOGUN 将軍』は美しく魅力的な物語だが、描かれているのは 史実の日本ではなく、独自のパラレルワールドである」――。その核心をつく一言から講演は始まった。

会場は、スパフォード准教授の解説に聞き入る聴衆の熱気に包まれた

物語と史実、その距離をどう読むか

スパフォード准教授は、講演依頼を受けた時点ではまだドラマを視聴しておらず、準備のために一気に観たと明かした。歴史学者として学ぶ点は多くあったとしながら、作品の根底にある史実とフィクションの交錯には注意が必要であると指摘する。

登場人物は実在した人物をモデルにしているが、名前も設定も大きく改変されている。トラナガは徳川家康、マリコは細川ガラシャ、アンジンはウィリアム・アダムスに着想を得ているものの、描かれる政治的役割や人物関係、特に恋愛描写などは史実には存在しないと断言した。また、ドラマを巡る学界の反応にも触れた。歴史研究者たちが集まって「観るべきか否か」「日本史理解にどう影響するか」を論じる場が設けられたという。日本が西洋でどのように表象されてきたか、という長年のテーマが再び浮き彫りになった形である。

講演後のQ&Aでは多岐にわたる質問が相次ぎ、議論は白熱した

「忠義」は本当に中世日本の中核価値だったのか

講演の核心は、ドラマの中で繰り返される「忠義」という概念に向けられた。スパフォード准教授は、当時の史料の多くが忠義を褒め称える文言を含む一方、それは「本当に社会の中心的価値だったからではなく、そうであってほしいという願望が強かったからではないか」と指摘した。

戦国時代の日本は100年にわたり内戦状態であった史実を挙げ、もし忠義が社会の根本であったなら、これほど長い混乱にはならなかったはずだと語る。むしろ武士たちにとっては、倫理や理想よりも「生き残り、勝つこと」ことであり、実態と理想のあいだには深い乖かいり離があると語った。

さらに、ドラマの象徴的な一節「These are the rules, unless you win(掟はこうだ。ただし勝てば覆る)」に言及し、それを語るのが武士ではなく異国人アンジンである点を指摘した。史実では主従関係がきわめてもろく、対立はしばしば緊迫した形で表面化していたにもかかわらず、ドラマではその深層が十分に掘り下げられていないと批評した。

講演を終えて。歴史とフィクションの交差点

講演後のQ&Aは予定時間を超えて続き、作品の表象や史実とのズレ、武士像の形成過程など、多岐にわたる議論が交わされた。

最後にスパフォード准教授は、「『SHOGUN 将軍』をきっかけに歴史に興味を持つ人が増えるのであれば、それはとても望ましいことだ。史実を知ることで、ドラマはもっと深く、面白くなる」と結んだ。

歴史とフィクションの間にあるズレを入り口に、作品世界の背後に広がる日本史の奥行きを照らし出す講演となった。

本講演の模様はタウンホール・シアトルの公式YouTubeチャンネルで公開されている。
https://youtube.com/live/fljt4HdZa5Y

NPO認定を祝う鏡開きとレセプション

スパフォード准教授と伊従総領事が鏡開きを行い、祝宴の幕が開いた

樽酒ならではの香りを試すワシントン州日米協会会長・清水楡ゆ か華氏と在シアトル日本国総領事館 教育・JETプログラムアドバイザー迫本洋子氏

講演後、「よいしょ!」の掛け声とともに鏡開きが行われ、和心会がNPOとして認定されたことを祝うレセプションが開かれた。樽酒の香りが広がる中、杯を手に語らい合い、講演の余韻と祝意が入り混じる和やかな時間となった。和心会が長年続けてきた文化活動の広がりと、その新たな一歩を象徴する一夜であった。

和心会(Washin Kai)
日本文学・文化をテーマに講演や公開講座を継続的に開催。公式サイト:www.washinkai.info

麺屋武蔵 イサクア店/Menya Musashi〜人気のお店訪問

閑静な住宅街にあるイサクアのクラハニ・ショッピング・センター内に、近隣住民待望のラーメン店「麺屋武蔵 イサクア店」が10月11日にグランドオープンしました。

取材・文フォーリー由香

麺屋武蔵 イサクア店/
Menya Musashi

麺屋武蔵は、日本国内では東京都内に複数の店舗を展開し、海外でもインドネシア、台湾、シンガポール、そしてアメリカ・ワシントン州へと進出している。ワシントン州ではキャピトルヒル、フェデラルウェイ、カークランドに続き、4店舗目となるイサクア店が新たにオープンした。店舗運営を任されているのは、州内の全店舗で経験を積み、今年から本格的にマネージャーとして活躍する石川大信たいしんさん。にこやかな笑顔で迎えてくれた。

赤と黒のコントラストが印象的な店内の壁にはフレーム入りの剣豪・宮本武蔵のレトロな絵が飾られている

店内では、着席前に入口のタッチパネルで注文を行うスタイル。メニュー選びに悩みそうな場合は、事前にウェブサイトを確認して目星をつけておくと、混雑時でもスムーズに注文できるだろう。今回、見た目のインパクトに引かれて選んだのは「グリーン・ラーメン」。鮮やかな緑色が特徴で、豚骨ベースのスープにオリーブとバジルの香りがしっかりと効いた、実にユニークな一杯だった。

評判の3品。ローデッド・武蔵・フライ$10.75(左奥)、味玉$1.75がトッピングされた担々麺$17.50(中央)、チキン南蛮$13.75(右奥)

現在、イサクア店で特に人気を集めているのが「坦々麺」。豚骨ベースのスープにたっぷりとゴマが溶け込み、濃厚でまろやかな味わいが楽しめる。チリオイルとさんしょうの異なる辛味が絶妙に調和し、辛さの中にも香りと深みが広がる一品だ。

一方、全店舗で不動の人気を誇るのが、豚骨スープに辛味とブラックガーリックオイルを組み合わせた「ハイブリッド・ラーメン」。初めて訪れる人にはぜひ試してほしい看板メニューとのこと。

バジルの香りが立つユニークなグリーン・ラーメン$17.00。トッピングに味玉$1.75を追加

サイドメニューでは、「ローデッド・武蔵・フライ」と「チキン南蛮」が評判だそう。細めのフライドポテトの上に大ぶりのチャーシューをたっぷりのせたボリューム満点の一皿で、ポテトと一緒でも別々でも満足感がある。チキン南蛮は、下味のしっかりついた大きめの鶏肉をカリッと揚げ、中はしっとりジューシー。カレー風味のタルタルソースが相性抜群で、冷めてもおいしさが続いた。

どんぶりメニューやビーガン対応メニューも充実しており、何度も通ってさまざまな味を試したくなるラインアップだ。丁寧な接客にも満足で今後ますます地域の人々に愛される一軒になりそうだ。

麺屋武蔵 イサクア店/Menya Musashi
4516 Klahanie Dr. SE., Issaquah, WA 98029
営業時間:11:30am〜9pm
☎︎425-657-0091
https://menyamusashi.us  instagram:@menyamusashius

スナップショット〜2025年12月号

グリーンレイクの木々10月25日午後から26日午前にかけて、米国国立気象局はワシントン州北西部や中西部などに強風注意報を発令。西部地域では一時、2万人以上が停電の影響を受けたという報道がありました。翌週11月2日にグリーンレイクを訪れると公園内のあちこちで倒木や折れた枝木が散乱し、規制線が張られ、秋の嵐の強さを物語る光景でした。倒木などを見かけた場合は、キング郡の24時間対応窓口(206-477-8100 または 1-800-527-6237)まで報告を。(R)
窪田ガーデンの紅葉11月2日、取材で窪田ガーデンを訪れました。前日まで連日雨が続いていましたが、その日は見事な秋晴れに恵まれました。シアトルでも紅葉狩りスポットとして名高いこのガーデンには、他州から訪れる人も多く駐車場はかなりの混雑ぶり。20エーカーに及ぶ広大な庭園のあちこちで散策を楽しむ人々の姿が見られました。写真はテラス・オーバールックと呼ばれる石垣造りの展望台から撮った一枚です。(Y)

生きた言葉を届ける 日本語教材アプリ「サトリ・リーダー」〜特別レポート

 生きた言葉を届ける 日本語教材アプリ「サトリ・リーダー」

取材・文:加藤良子

「サトリ・リーダー」は、日常会話が息づくオリジナル小説をシャドウイングしながら日本語学習ができる音声アプリです。物語は1話あたり2、3分ほどで、毎週3話更新されます。38タイトルにおよぶシリーズはヒューマンドラマからホラー、サスペンスまで幅広く、総エピソード数は1,500を超えます。充実したコンテンツが利用者を引きつけ、20万ダウンロードを突破する大ヒットとなっています。

ブライアンさんとリカさんのこだわり

アプリを開発したのは、長年日本語学習支援ソフトの開発に携わってきたブライアン・ラックさんと妻のリカさん。夫婦で共同運営を行っている。教材となる物語の約75%はリカさんが執筆し、残りの25%は社内のもう一人のライターと、外部契約ライターが担当している。

「語学学習は難しすぎると続かないし、かといって子ども向けの教材では意欲的になりにくい」。リカさんは、いかに利用者のモチベーションを引き出すかに重点を置き、ブライアンさんは 「日本語学習者としての初心を忘れないこと」をモットーに、学習者の目線に立ち、細かな調整を行いレベルに合わせた内容に仕上げている。

左から瞬さん、清香さん、リカさんの姪の舞夕まゆさん、ブライアンさん、リカさん

声優による大きな貢献

アプリ開発で最初に直面したのは、音声収録の問題だった。はじめはブライアンさんとリカさんが自宅の寝室で録音を試みたが、雑音が入ってしまうためプロのスタジオ収録に切り替えた。このとき、リカさんの知人を通じて演技・ナレーションを習った経験をもつ江口しゅんさんと清香さやかさん夫妻が声優として制作に加わった。瞬さんは初めて挑んだ当時の収録を「台本の流れが自然なので、セリフそのものの不自然さに気を取られず、役の感情や行動といった本質的な流れに集中でき役者として演じることを純粋に楽しめた」と振り返る。2人は声優という枠を超え、発音やイントネーションの修正からセリフのアレンジまで対応。特に、イントネーションへのこだわりは徹底していた。瞬さんが九州出身のため、自然な標準語で表現するのに苦戦した際は、以前録音した中で最も自然に話せた音声の再利用をしたこともあったと笑う。

声優の力が加わったことで、平面的で無表情だった教材が生き生きとした物語として動き始めた。登場人物が亡くなる話では「通勤中に勉強のつもりで聞いていたら泣いてしまった」「言語を学んでいることを忘れていた」といったユーザーコメントが多数寄せられたほどだった。

清香さんは「多くの人が利用してくれているプラットフォームの一部になれたことが光栄」だと語る。職場で声優をしているのではと指摘されたこともあり、「気恥ずかしいけれどうれしかった」と笑顔を見せた。

母国語ではない言葉で物語を理解し感情移入できるという反響は、制作チームが一丸となって生きた言葉にこだわった成果といえ、大きな達成感となった。

「サトリ・リーダー」の学習画面

ハリウッド映画の原作者、
テッド・チャン氏とのコラボレーション

サトリ・リーダーでは今、新たな取り組みとしてアカデミー賞受賞作ハリウッド映画『メッセージ』の脚本家として知られるテッド・チャン氏の作品を教材として公開している。チャン氏はアメリカを拠点に活動するSF作家で、ヒューゴー賞やネビュラ賞など世界的な文学賞を多数受賞し、哲学的なテーマと繊細な筆致で高い評価を受けている。

教材として採用されたのは、彼の代表作「商人と錬金術師の門」の舞台を日本に置き換えた物語「歳月の門」である。上級者向け教材とされるこの長編は、江戸時代を舞台にしたタイムトラベル作品だ。主人公・房次郎ふさじろうが、神田鍛冶町(現在の東京都千代田区)の金物屋で見つけた不思議な「門」をくぐりタイムトラベルを経験し、将軍の前で「将軍様、この度はお目にかかれて誠に光栄でございます。」と語り始める場面から物語は展開する。SFファンも楽しめる壮大なスケールの作品でありながら、日本語学習教材としての緻密な言語設計も光る。

このコラボレーションは、学習者に「物語を通して日本を感じてほしい」というサトリ・リーダーの理念から生まれた。制作チームは、原作の舞台である中東を日本の江戸時代へ置き換えるため、江戸文化に詳しいライター兼編集スタッフの協力を得て徹底した時代考証を実施。指輪をかんざしに変え、砂漠の旅を和船の航海に置き換えるなど、細部まで丁寧に作り込んだ。特に、将軍への台詞に見られる「武家言葉」の丁寧さを学習者のレベルに配慮しながら調整するのに苦労があったという。

9月から始まった同物語は1年半かけて、全96話が順次公開される予定だ。日本語学習教材でありながら、文学作品としても味わえる挑戦的な試みとなっている。

「楽しい原体験」が学習意欲を支える力に

サトリ・リーダーでは各話ごとにコメント欄があり、これまでに2万件を超える質問や感想が寄せられている。リカさんとブライアンさんは、その全てに返信をしてきた。孤独になりがちな学習者を、彼らの温かな言葉が支えている。この温かく寄り添う姿勢こそ、サトリ・リーダーの大きな魅力だ。

ユーザーが感じる「日本語で物語が理解できてうれしい!」という原体験の背景には、制作に関わる人たちの細やかな配慮と情熱がある。この血の通った過程こそが学習者の心を動かすインスピレーションとなり、生きた言葉として届く。サトリ・リーダーは、子どもが物語に夢中になって言葉を吸収するように、これからもユーザーを新たな世界へと軽やかに導いていく。

アプリの詳細は、サトリ・リーダーの公式サイトにて確認を。各エピソード、最初の2話まで無料で楽しめます!
https://satorireader.com/articles

ラグドールのルルとフフ編〜うちのペット自慢

ラグドールのルルとフフ編

2025年、バンクーバーの節分は大雪。 
 
ずっとネコを飼うのが夢だった私は、友人に勧められてブリーダーの家を訪れた。室内で元気いっぱいに遊んでいる子ネコたちを見て帰路につこうとすると、来たときは静かだった少し大きめのネコが2匹、大きな声で必死に鳴き始めた。 
 
「この子たちは姉妹なんですが、性格が臆病なうえに模様もあまり人気がなくて売れ残っているんです」 
 
ブリーダーによると、この2匹が臆病な性格に育ったのは、ブリーダーの目が届かないところで同時期に生まれた兄弟姉妹にいじめられていたからだという。 
キスしてくるフフ
 
柵の中に入ると、くんくんと私の匂いを嗅いだあと、すぐにネコトイレの中に隠れてしまった。あれほどこちらに向かって鳴いていたのにも関わらず、怯えるように去っていく。 
 
「普段ならこの部屋に人が入ると、こっちを見ることもなく逃げるんだけどなぁ。縁があるのかもね。怖がりだけど、やっぱり遊びたくて、だからこうしてよく鳴いてるんですよ。入ったら逃げるんだけどね」とブリーダーが笑いながら話した。 
大好きな箱に入っているルル
 
縁という言葉を聞いて、中国から日本に転校した当時の自分を思い出した。クラスメートと遊びたくて気を引こうとしたけれど、いざ誘われると怖くて返事ができなかった7歳の頃の自分……。 
 
中国の言い伝えでは、ネコには人間に対する第六感があるという。きっとこの2匹も私の中に同じ匂いを感じて、くんくんと挨拶してくれたのだろう。 
 
姉妹仲良くコストコの箱でお昼寝するフフとルル
 
部屋の端っこでさみしかっただろうな。本当は大きな声で注意を引こうとするほどさみしがり屋なのに、人が来ると逃げざるを得ないほど怖い思いをしてきたんだね。震える2匹を見ていたら、涙が出そうになった。 
 
一緒に帰ろう。 
 
2匹には、中国語で幸せを意味する「福禄(フール―)」からそれぞれ一文字をとってフフとルルと名付けた。鬼はそと、福はうち。節分の日に出会えた小さな福、フフとルルに限りない幸福がより添いますように。
 
(リンリン/シアトル)
 
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スナップショット〜2025年11月

レニア吟社、秋の吟行句会とお茶会
9月13日、結成91年を迎えるレニア吟社がシアトル日本庭園にて秋の吟行句会とお茶会を催しました。当日はシアトル在住の会員13名が参加し、温かな日差しの中、色づき始めた木々を眺めながら句作を楽しみました。お茶会は庭園内の茶室で行われ、茶道裏千家淡交会シアトル協会の会員であり吟社会員でもある金城テリーさんが亭主を務めました。「衣擦れの音やはらかや秋の園」―― 絵美 (K)
海外日経新聞放送協会、年次総会に出席9月17日から19日に東京で開催された「第65回海外日系人大会」に先立ち、世界各国の海外日系新聞放送協会の会員が日本記者クラブに集い、年次総会が開かれました。多くの会員がオンラインで参加しましたが、さまざまな国の日系新聞の活動を知ることができました。午後には青木一彦内閣官房副長官を表敬訪問し、活動内容の報告や意見交換を行いました。海外で活躍する日本人・日系人の取り組みを間近に感じる、記憶に残る経験となりまし(H)
5番街のルイ・ヴィトンのビル
『ティファニーで朝食を』や『セックス・アンド・ザ・シティ』など、数々の映画やドラマの舞台となったニューヨークの5番街(フィフス・アベニュー)は、超高級ブランド店やブティックが軒を連ねるエリア。そこに昨年、ルイ・ヴィトンのトランクが積み上げられたような外観の巨大ビルがオープンしました。トランクの質感やロゴ、金具に至るまで本物そっくりです。その圧倒的な存在感に、道を行き交う旅行者の視線は釘付けになっていました。(Y)
フェアバンクスの空に揺れる光の舞バケットリストの一つ、オーロラ鑑賞を叶えるべく、9月中旬にアラスカ・フェアバンクスへ。見上げる夜空に淡い光がにじみ、ゆるやかなうねりとなって広がっていきます。やがて空いっぱいに光の帯が重なり合い、風も音もない中で、まるで空が呼吸しているかのように動き続けていました。今年は太陽の活動が11年周期のピークを迎え、オーロラが発生しやすいそう。その光景は、地球が放つ息づかいそのものでした。((A)

大人気ブロードウェイ・ミュージカル、シアトルに上陸!〜特別レポート

 大人気ブロードウェイ・ミュージカル、シアトルに上陸!

取材・文:西東円佳

ブロードウェイのロングラン作品の一つであり、1997年にトニー賞6部門を受賞したジャズ・ミュージカル「シカゴ」。今も世界中で高く評価され続けているこの名作が11月2日(日)まで フィフス・アベニュー・シアターにて上演中されました。その魅力について、同作の音楽監督として活躍中のアンディー·チェン氏に話を伺いました。

「シカゴ」の作品紹介

1975年にブロードウェイで初演された「シカゴ」は、1920年代の禁酒法時代、いわゆる「ジャズ・エイジ」のシカゴを舞台にしている。劇中歌『オール・ザット・ジャズ(All That Jazz)』を耳にしたことがある人も少なくないだろう。当時は伝統的な女性観に縛られない生き方を求める「フラッパー」と呼ばれる女性たちが徐々に増え始め、メディアのゴシップが世間をにぎわせていた時代だった。「シカゴ」の主人公は、殺人罪で収監された2人の女性、スターを夢見る主婦ロキシー・ハートと元ナイトクラブのスター、ヴェルマ・ケリー。彼女たちはメディア操作を得意とする悪徳弁護士ビリー・フリンの助言を受け、有名になり無罪を勝ち取ろうと行動を起こす。その過程で当時の腐敗した司法制度や名声を追い求める人間の滑稽さが浮き彫りになる。

ジャズやタンゴを基調としたエネルギッシュな音楽が特徴的な本作は、大人向けミュージカルであると同時に、アメリカ文化を理解するうえでも一度は観ておきたい作品の一つだ。

観劇レポート

10月24日のオープニングナイト、会場はすでに開演を心待ちにする観客であふれていた。注目していた「セル・ブロック・タンゴ(Cell Block Tango)」は女囚たちがなぜ投獄されたのか、どんな心情でいるのかを描く情熱的なタンゴ調のナンバー。曲が始まると同時に、観客から歓声が沸き起こり、ステージには熱い視線が注がれた。女囚たちの怒りや主張、抑圧からの解放を刻むように踏み鳴らされるヒールの響きや、犯した罪に対する複雑な感情を宿した鋭いまなざしに圧倒された。キャストたちが『シカゴ』を心から愛していることが、舞台の隅々から伝わってくる。彼らはそれぞれのキャラクターに独自の色を与え、作品に新たな生命を吹き込んでいた。

東洋の雰囲気漂う歴史ある劇場にて

その情熱を、全ての曲を指揮した音楽監督のアンディー・チェン氏が音楽で導いていく。キャストや観客との掛け合いを楽しむ演出によって、演者・観客・オーケストラが一体となり、2時間半があっという間に過ぎた。終演後、観客から大きな拍手とスタンディングオベーションが送られたのはいうまでもない。

Credit : Jeremy Daniel

自分の名前が新聞に載り、努力が報われた瞬間のロキシー

Credit : Jeremy Daniel

6人の女囚たちが魅せる、迫力ある「セル・ブロック・タンゴ」

Credit : Jeremy Daniel

弁護士ビリーをめぐる女囚たちの魅惑的なナンバーに注目

「先人が築いた真実を尊重し、継承していきたい」
アンディー・チェン氏インタビュー

アンディー・チェン◾アジア系アメリカ人。️ニューヨーク州北部の小さな町で育つ。音楽監督の修士号を取得後、信頼と機会を与えてくれた人々との出会いがきっかけで「シカゴ」の全米ツアーに2年間参加。今年度から音楽監督に就任。「まるで夢がかなったような、言葉にならない思いだ」と語る。


演奏を通して表現する「掛け合い」とは

私の最大の責任は、「シカゴ」の作家たちの意図と、長年にわたって受け継がれてきたこのリバイバル公演の創造性を守ることです。このショーは、照明や美術、音響、テンポ、音楽といったあらゆる要素が調和し、舞台上で一つになって息づいています。先人が築き上げた世界観を尊重しつつ、観客がより深く物語を体感できるように演出しています。楽譜そのものは明快でありながら、想像を広げる余白を残すよう心がけています。

バンドがショーの中でこれほど生き生きと息づくミュージカルは多くありません。キャストやミュージシャン、そして舞台裏のスタッフが一体となり物語を紡いでいます。そんな掛け合いや呼応の瞬間にこそ、このショーの「魔法」が宿るのです。ぜひその瞬間を見つけてみてください。きっと心に残る時間になるはずです。

ショーが「一体化」する瞬間とは

今年のツアー初日、ワシントン州ヤキマで行われたプレビュー公演は、忘れがたい時間でした。観客の皆さんは実感していないかもしれませんが、会場にいることで生まれる音の響きや感情の反応が、キャストの演技に影響を与え、物語の緊迫感をいっそう高めてくれます。観客もまた、このショーを完成させる一員なのです。そのエネルギーを、私たちは音楽を通してお返ししたいと考えています。

人間味あふれる仕事

音楽監督という仕事は、多くの課題を抱えていますが、それ以上にやりがいのある仕事です。公演運営やスタッフの調整を行いながら、週に7、8回、2時間半に及ぶ上演を指揮し続けるという、肉体的にも厳しい役割です。それでも、仲間のアーティストたちが懸命に取り組む姿を見守り、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、その力を引き出せることが、何よりの喜びです。

シアトルの皆さんにメッセージ

シカゴ」は愛と情熱の結晶です。そして強いメッセージ性を持つ作品でもあります。風刺と繊細さを基調に、マスメディアの力やセレブリティーにまつわる幻想を鋭く描くこの作品は、舞台上の華やかさを楽しむだけでなく、どの時代にも響く深い気づきや共感をもたらしてくれます。

この音楽と物語をシアトルの皆さんと共有できることを光栄に思います。どうぞお楽しみください。

Chicago

日程:開催中~11月2日(日)
場所:The 5th Avenue Theatre
   1308 5th Ave., Seattle, WA 98101
料金:$55.60〜
問い合わせ:☎206-625-1900、guestservices@5thavenue.org
チケット・詳細:www.5thavenue.org

 

映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』  俳優 西島秀俊氏 × 監督 真利子 哲也氏〜スペシャルインタビュー

「バベルの塔」で、僕らは何を見つけるのか
映画『Dear Stranger/ディア・ストレンジャー』 
俳優 西島秀俊氏 × 監督 真利子まりこ 哲也氏

取材・文:中島雅紘

ニューヨークを舞台に、家族の断絶と再生を描いた映画。息子の失踪を機に、夫婦はそれぞれの過去と向き合います。アメリカ人の話す英語の奔流、妻の家族が交わす中国語、また、無意識に割り振られた社会的役割、貧困と隣り合わせの生活感……あらゆる隔絶が緻密に描かれる中で、それでも生きることを決意する西島さん演じる賢治の姿。本作を通して突きつけられた「破壊の先に創造はあるのか」という問いを胸に、主演の西島秀俊さんと真利子哲也監督に話を聞きました。

西島秀俊■大学在学中に俳優活動を開始し、1992年に本格デビュー。『ニンゲン合格』(1999/黒沢清監督)、『Dolls ドールズ』(2002/北野武監督)などに出演。主演作『ドライブ・マイ・カー』(2021/濱口竜介監督)では、米アカデミー賞国際長編映画賞を受賞。近年は『首』(2023/北野武監督)、『Sunny』(2024/Apple TV+)など国内外の作品で活躍中。
真利子哲也■独自の創造性で注目を集める映画監督。長編デビュー作『イエローキッド』がバンクーバー国際映画祭で受賞。『ディストラクション・ベイビーズ』ではロカルノ国際映画祭最優秀新進監督賞などを受賞。『宮本から君へ』では日本と海外で高い評価を得た。2019年よりハーバード大学客員研究員として滞在し本作の構想を練った。
Photos courtesy of Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

真利子哲也監督。言葉の先にある「感情の輪郭」を見つめて

―今回の映画制作を、作中でも描かれた「バベルの塔」に例えると、どのくらいの高さまで到達できたと感じますか。
 
真利子監督:まさに「バベルの塔でどこまで行けるか?」という大きな挑戦でした。想像していたよりもずっと高く到達できた実感があります。現場では英語や韓国語、スペイン語、手話が飛び交う中、関わった全ての人が、我々が何をしようとしているのかを懸命に理解しようとしてくれました。「良い作品を作る」という共通目標があったからこそ、お互いを理解し合えたのだと思います。
 
西島さん:真利子監督同様に想像していたより高い塔になったと思います。まず、素晴らしい脚本がありました。そして「映画を作る」ということ自体が共通言語のようなものを生み出し、撮影は想像していたよりもずっとスムーズに進みました。もちろん、言葉が分からないことによる戸惑いはありました。例えば、劇中でジェーンの両親の家を訪ねるシーンでは、脚本があるので何が起きているかは分かっているものの、交わされている言葉自体は全く分からない。言語はただの音の違いではなく、その背景には文化があり、そこには全く違う世界があると感じました。そういう異なる文化や価値観が交わる中で、我々は塔の土台を築いたのだと思います。そして、この塔の本当の高さは、これから観客の皆さんがどう積み上げ、どう受け止めてくれるかで決まるのかもしれません。
 
Photos courtesy of Roji Films, TOEI COMPANY, LTD.

本音をぶつけ合うジェーン(グイ・ルンメイ)と賢治(西島秀

―作品作りの中で、記憶に残った場面はありましたか?
 
西島さん:グイ・ルンメイさんの演技は本当に素晴らしかった。撮影初日から最後まで、彼女の全てが素晴らしかった。同じシーンを何度繰り返しても、毎回違い、どのテイクもパーフェクトな演技をする。すさまじい集中力でしたね。僕自身は見ることができなかったのですが、初日に撮影された一人人形劇のシーンでは、「ここまでのことをやるのか」と現場の空気が、高まったといいます。
 
真利子監督:ダイナーの外でジェーンが賢治に激しく感情をぶつけるシーンは、脚本では描ききれなかった部分を書き足して、実際、どうなるか分からないまま新たに撮影したものでした。編集でその映像がつながったとき、「撮ってよかった」と心から思いました。
 

―映画全体を貫くテーマとして「破壊と再生」があると感じました。破壊の先に創造はあると思いますか?

真利子監督:創造的なことに限らず、日常の中で「もうどうしようもない」と感じるようなことがあっても、その先にはきっと何かがあるはずだと信じたいですね。
 
西島さん:僕はこれまで、常に「破壊して創造する」という姿勢でキャリアを歩んできました。昨年の独立もその一環です。より世界を理解し、良い演技を追求する。自分を前に進めるための未来は「破壊の先」にしかないと思っています。もちろん、無理に壊す必要はありませんが、どうしても行き詰まる瞬間は、誰にでもあるのではないでしょうか。
 

―最後に、シアトルのような多文化都市で暮らす日本人や日系人に向けてどんなメッセージを届けたいですか?

真利子監督:僕自身は多文化社会の当事者ではありません。だからこそ、そうした人たちに丁寧に取材を重ねながら脚本をつくりました。おそらく、観る人それぞれが持ち帰る感情は違うと思います。世界のさまざまな場所で暮らす人たちが、自分ごととして感じてもらえる作品になったらうれしいです。

西島さん:僕が演じた賢治は、不完全で矛盾を抱え、トラウマにとらわれた人物です。母国でない国で暮らしていると、自分が何を信じ、何を大切にし、何を愛しているのかを、より試される機会が増えると思います。自分の愛情が独りよがりでなく、相手をおもんぱかるものなのかを突きつけられることも多いでしょう。そうした思いを抱えている方にこの映画を観ていただきたいです。観終わったとき、不思議な爽快感があると言われます。きっと何か一条の光のようなものを感じてもらえるのではないかと思っています。

 

インタビュー後記

現代社会は新たなバベルの塔を築いている最中なのだと感じました。さまざまな人が共に生きる日常の中で、たった一人の「親愛なる見知らぬ誰か」とつながろうとする努力が、一条の光になり得るのではないでしょうか。破壊の先で、私たちは何を、そして誰のために築こうとしているのでしょうか。バベルの塔は伝説の中で未完の象徴として廃虚のように描かれていますが、その物語には今なお語り継ぐ価値があるように思います。果たして、現代のバベルの塔はいつか完成するのでしょうか。そんな問いが渦巻く深い時間を過ごすことができました。

常に感謝の気持ちを忘れない プロアイススケーター  ミハル・チャフィンさん〜スペシャル・インタビュー

大人気の「ディズニー・オン・アイス〜レッツ・ダンス〜」が西海岸を中心に2026年春まで公演予定です。今月には、ワシントン州ケントとエバレット、スポケーンでも公演が行われます。キャストとして活躍し、キャプテンやサポートディレクターの経験を持つプロアイススケーター、ミハル・チャフィンさんにお話を伺いました

取材・文:西東円佳

© Feld Entertainment, Inc.
ミハル・チャフィン■神奈川県海老名市出身。アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれ、兄がいる。 8歳のときにワシントン州ピュアラップに移住。11歳でフィギュアスケートを始める。16歳の頃、友人のフィギュアスケート公演を観たことをきっかけに、競技だけでなくパフォーマンスにも魅力を感じる。18歳の現役高校生のとき、『ディズニー・オン・アイス』(Feld Entertainment, Inc.)のオーディションに合格。卒業後より同社にてプロスケーターとしてのキャリアを重ねる。

「Have a good one」は、欠かさず伝えたい言葉

「ディズニー・オン・アイスで9年も活動しているなんて、自分でも信じられないくらいです。それほど毎日、心が満たされているんです。職場の仲間は家族のような存在なので、私はファミリーと呼んでいます。とても楽しい毎日です」。そう語るチャフィンさんは、アンサンブルキャストとして一つのショーで複数の役を演じ分ける。「昨日よりもうまくなりたい」という気持ちを持ち続けることが観客のためでもあり、自分自身のためにもなるという。「こうした姿勢で日々に向き合えば、舞台以外の場面でも同じように成長でき、良い経験につながっていくと思います」。観客のために技術と心を磨き続ける、その真摯な姿勢が伝わってくる。

本番前、チャフィンさんが必ず仲間にかける一言がある。それが「Have a good one! (頑張っていこうね!)」だ。大切なお客さまの前でパフォーマンスできる喜びと感謝を忘れないように、という思いが込められている。同じ演目を何度も繰り返す公演では心も体も疲れてしまう仲間は少なくない。そんな時、チャフィンさんの一言は「一人じゃないよ。みんながサポートしているよ」というメッセージとして響く。「ありがとう」と返されると、それが自身の励みになるという。「仲間から頼れる存在と思ってもらえるのは本当にうれしいこと。これからもそうあり続けたいですね

二つの文化を混ぜて作る食事の楽しさ
 
ツアー中は移動が多く、新しい料理や文化に触れることも楽しみの一つだ。宿泊先で仲間たちと食事を作ったり、食を通じて交流を深めることも多いという。そんなチャフィンさん流の異文化での食の楽しみ方を尋ねた。「どこに行っても日本と全く同じ材料がそろうことは少ないです。でも、二つの文化を組み合わせてみるのはどうでしょう。例えば、アメリカの卵料理をアレンジして豆腐料理にするのもいいですし、ゴマ油を使えば現地の食材でも日本風の味に近づけられます。餃子を作りたいときに具材がそろわなければ、ブタひき肉を別の種類に替えたり、キャベツの代わりに玉ネギとニンジンにしてもおいしくできます。日本人として『これはアリなの?』と思うかもしれませんが、その土地の文化と自分の文化を混ぜて作るごはんが、いちばん楽しめて、おいしいと思います」。完璧でなくてもいい。柔軟に文化をミックスさせることでより楽しく、異文化を身近に感じられる。そんな素敵な考え方を教えてもらった。
 
@Miharu Chaffin
得意料理の具だくさんカレーはほかのキャストにも大好評!


「地元」ワシントン州で観客のみなさんに会えるのが楽しみ!

「ディズニー・オン・アイス~レッツ・ダンス~」は、まるでパーティーのような華やかなショーだ。開演15分前から流れるディズニー音楽で、すでに会場のボルテージは最高潮に。ミッキーたちも登場し、観客と一緒に歌ったり踊ったりして盛り上げてくれる。
 
キャラクターだけでなく本格的なフィギュアスケートのパフォーマンスも見どころ。中でも注目は、スケーターが氷上から9メートル以上も舞い上がる「アクロバティック・フープ」! 観客のすぐ近くまで滑ってくるシーンもあり、臨場感たっぷりだ。
 
「『ディズニー・オン・アイス』はどの年代の方にも幸せな時間をお届けできると思います。ぜひ観に来てください!  ワシントン州での公演をとても楽しみにしています!」
 
なお、ケントでの公演は今月26日(日)まで。エバレットでの公演は今月30日(木)から11月2日(日)までだ。その後も西海岸でのツアーが続く。最新の公演情報は公式ウェブサイト
 
© Feld Entertainment, Inc.

DJブースで会場を盛り上げるミッキーとたくさんのキャラクターたち

info.
ケント公演
期間:開催中〜26日(日)
場所:accesso ShoWare Center 
   625 W James St., Kent, WA 98032
料金:$38 .60〜

エバレット公演 
期間:10月30日(木)〜11月2日(日)
場所:Angel of the Winds Arena 
   2000 Hewitt Ave., Everett, WA 98201
料金:$44.06〜
詳細・問い合わせ:www.disneyonice.com/en-us/lets-dance-kent-everett

※スポケーン公演は公式ウェブサイトにて確認を

一夜限りの寿司と日本酒の饗宴「Sake & Sushi Night」〜特別レポート

 一夜限りの寿司と日本酒の饗宴きょうえん「Sake & Sushi Night」

取材・文:溝江暁子 写真:Aaron Mills

シアトル・パイオニアスクエアのレストラン、84イェスラーを舞台に、8月19日「Sake & Sushi Night」が開催されました。企画を手掛けたのは、日米間で多彩な文化交流やビジネス支援を行うエンコンパス・ジャパン。130年以上の歴史を持つ青森の老舗・桃川株式会社とマディソンパークにある名店Sushi Suzuki、そしてイタリアンをベースに地元食材を生かし独自の料理を展開する84イェスラーが一堂に会し、日本酒と寿司のマリアージュをテーマにした一夜限りのコラボレーションが実現しました。

満席の84イェスラーを舞台に、寿司と日本酒が織りなす一夜限りの宴が幕を開けた

イベント冒頭では、桃川株式会社/SakeOne Corporationの元取締役、村井京太氏が登壇し、蔵の歩みと米国での挑戦を語った。桃川の酒質を再現するために軟水にこだわり、オレゴン州フォレストグローブに現地醸造所「SakéOne」を立ち上げた経緯や、「アメリカでも本物の日本酒を知ってもらいたい」という思いから始まった挑戦は、今や現地のワイナリーに並ぶ存在へと成長。この夜は、純米酒から大吟醸、にごり酒まで、多彩な味わいが提供された。1990年代、日本で主流だった熱燗の文化が駐在員を通じてアメリカに伝わったものの、アルコールを温めて飲む習慣がない現地では日本酒は必ずしも良い印象を持たれなかった。そこで日本酒をリザーブ・ホワイトワインのように「冷やして楽しむ上質な酒」として提案し、市場の普及に尽力してきた桃川株式会社の歩みは、多くの客の関心を集めた。

一貫一貫に心を込めて寿司を仕立てる鈴木シェフ

寿司を振る舞ったのはSushi Suzukiの鈴木安孝シェフ。兵庫県出身の鈴木シェフは、日本での修行を経て渡米し、16年以上にわたりシアトルで寿司を握り続けてきた。「良い食材をまっすぐに届けたい」という言葉どおり、日本各地から直送された魚や、地元の旬の素材を巧みに取り入れた寿司は、この夜のハイライトの一つとなった。

金目鯛の炙り、昆布締めの地元産えび、北海道の時鮭ときしらずの握りは、それぞれが酒の個性を引き立て、また酒に引き立てられる存在として提供された。なかでもえびの握りには、鈴木シェフが旅先で出合った食材「森のキャビア」と呼ばれるフィンガーライムが添えられていた。プチプチとはじける果汁の酸味が加わることで、伝統的な寿司に異国の風が吹き込まれ、唯一無二の表情を見せていた。クライマックスを飾ったのは、大トロの握りや炙りトロの握り、そして縞鯵しまあじの握り。脂の甘みとゆずこしょう、さんしょうの刺激を大吟醸が鮮やかに洗い流す。この瞬間に体感した寿司と酒の完璧な融合は鮮烈だった。

並んだ村井酒造の銘酒。純米から大吟醸まで、表情豊かな味わいが夜を彩った

この夜のメニューは、寿司と創作料理7品に6種類の日本酒を巧みに組み合わせた構成。料理と酒が呼応しながら、ひとつの流れをつくり出していた。最初に提供されたのは、トロとキャビアを挟んだもなか。軽やかなもなかの皮の香ばしさと濃厚な魚卵の塩味、しその爽やかな香りが杉玉すぎたま純米吟醸の柔らかな香りと見事に調和し、会場の空気を一気に引き込んだ。続く自家製ブリオッシュにうなぎをのせた一皿は、伝統的な蒲焼きのタレにハーブの爽やかさが加わり、料理人の遊び心を感じさせた。さらに、繊細な甘みが際立つズワイガニの茶碗蒸には、にごり原酒のコクが寄り添い、まるで語り合うように響き合った。また、この夜の料理を支えるだしには、鹿児島県枕崎の名産、かねも鰹節店の良質な鰹節が用いられ、その深いうま味が一皿ごとの味わいに奥行きを添えていた。デザートはホワイトチョコレートと抹茶のムース、ピーチのサバイヨン、ポピーシードケーキ。大吟醸を使ったカクテルと合わせ、和と洋が交錯するフィナーレを彩った。ブルーの色合いは、天然素材のバタフライピーという植物で演出。見た目も味わいも驚きに満ちた一皿だった。

料理と日本酒が織りなすペアリング。互いの個性が響き合い、会場を沸かせた

この夜のフィナーレを彩る一品

会場を提供した84イェスラーは、治安悪化や空洞化といったの課題を抱えるパイオニアスクエアにある。オーナーの高橋進氏は「地域が衰退するのを見ているだけではなく、飲食を通じて街を明るくしたい」という思いで店を運営している。地元食材を生かした独自のスタイルを基盤に、時に和のエッセンスを織り交ぜる料理は、この夜のコースでも存在感を放った。タラの西京焼きを思わせるギンダラの一皿や、寿司と並んで提供された創作料理は、84イェスラーならではのスタイルを強く印象づけた。高橋氏は「私たちはパイオニアスクエア、ダウンタウンでユニークで質の高いサービスと料理、居心地のいい雰囲気を築くことを目指している。地域のゲストハウスとして、みなさまにかわいがられたい」と語り、街とともに歩む姿勢を示した。

84イェスラーを率いる高橋オーナーと開店時からの常連客であるゲインズ夫妻

桃川株式会社の挑戦、Sushi Suzukiの技、84イェスラーの舞台が重なり合った今回のイベントは、シアトルにおける「食を通じた文化交流」の新しいかたちを示した。伝統を大切にしながらも革新を取り入れ、寿司と日本酒の新しい可能性を追求する姿勢は、今後のさらなる展開を期待させるものである。日本の食文化とシアトルの街を結び、一期一会の出会いを紡ぐこの夜の会場にはグラスを合わせる音と笑顔が響いていた。

84 Yesler

84 Yesler Way, Seattle, WA 98104
営業時間:4pm~9pm 定休:日~火
☎206-624-1111、sarac@84yesler.com
www.84-yesler.com instagram:@84yesler

Sushi Suzuki

4116 1/2 E. Madison St., Seattle, WA 98112
営業時間:5pm~10:30pm 定休:月火
☎206-466-6621
www.sushisuzuki.com instagram:@sushisuzuki.seattle


SakéOne

820 Elm St., Forest Grove, OR 97116
営業時間:11am~5pm 定休:火水
☎503-357-7056、tastingroom@sakeone.com
www.sakeone.com instagram:@sakeoneoregon

イチロー氏、日本人史上初のMLB殿堂入り、背番号も永久欠番に〜特別レポート

 イチロー氏、日本人史上初のMLB殿堂入り、背番号も永久欠番に

取材・文:和泉拓也

日本人として初めてアメリカ野球殿堂入りを果たしたイチロー氏。背番号「51」もマリナーズ史上4人目の永久欠番となり、シアトルの球場は祝福の熱気に包まれました。

8月5日から10日にかけて、シアトルのTモバイル・パークでイチロー氏のアメリカ野球殿堂入りとマリナーズ史上4人目の永久欠番を記念する「イチロー殿堂入りウィークエンド」が開催された。

期間中はさまざまな記念グッズが配布され、5日から7日の3試合では先着1万人に殿堂入りを記念したフィギュア玩具のファンコPOP!、8日には先着2万人に2004年シーズン262安打を達成した試合のレプリカジャージー、10日には先着2万人にクーパーズタウンで授与された表彰盾のレプリカが配布された。

© Jack Ellis / Seattle Mariners

Tモバイル・パークにはイチロー氏を祝福する歓声や拍手が響き渡っていた

9日の試合前には、背番号51の永久欠番セレモニーが開催され、冒頭では現役時代の功績を振り返る映像が上映された。続いて本人が登場すると、会場は割れんばかりの拍手とイチローコールが沸き上がった。また、来シーズンにはTモバイル・パークの前に銅像が建立されることも発表され、ファンの熱気は最高潮に達した。式典の模様はマリナーズ公式YouTubeチャンネル(www.youtube.com/live/vGQfdb51Zx0?si=srxoPcDV2pYHw2iO)から視聴できる。

スピーチでは「この2週間で2回も英語でスピーチをさせるなんて、誰のアイデアですか。これは私のキャリアの中でも最も難しい挑戦の一つです」とユーモラスに切り出した。続けて、同じ背番号51を背負ったランディ・ジョンソン氏への感謝を 述 べ 2001 年に入団した際、すでに偉大な歴史を持つ番号を快く譲ってくれたことへの敬意を表した。また、来年予定されているジョンソン氏の永久欠番セレモニーに参加できることを楽しみにしているとも語った。終盤では現役選手たちに向けて「勝利には必ず困難とプレッシャーが伴う」と強調し、その重圧を受け入れたうえで最高のパフォーマンスを模索する姿勢の大切さを説いた。最後に「意思と情熱は常にチームと共にある」と結んだ。この言葉は、長年チームの中心で活躍してきた選手だからこそ説得力を持ち、スタジアム全体を包むような大きな感動を呼んだ。

© Jack Ellis / Seattle Mariners

マリナーズのファンの前でスピーチを行うイチロー氏

さらに10日の試合前には記者会見が行われ、イチロー氏はシアトルとファンへの思いを改めて語った。現在はマリナーズ会長付特別補佐兼インストラクターとして活動する一方、日本では女子野球の普及や高校球児の指導にも取り組んでいる。多忙な日々を過ごしていることを言及しつつも、「必要とされるのであれば、シアトルでもそうした活動をしていきたい」と述べた。さらにシアトルという街について、普段はクールで落ち着いた雰囲気で、いつも陽気というわけではないが野球が盛り上がると一気に熱を帯びると語り、前日の球場の熱気を「ほかの球場ではなかなか味わえない特別な空気」と表現し、この街が持つ独特の魅力を再認識している様子がうかがえた。

スナップショット〜2025年10月号

ソイソースの歓送迎会7月27日、弊社オフィスでポットラック形式の歓送迎会を開催しました。ソイソースの記者インターンやボランティアを含む計11名が参加し、中央のテーブルを囲むように椅子を並べ、和やかな雰囲気の中、互いに持ち寄った食事と会話を楽しみました。 弊紙のために長期で尽力してくれた2名を温かく送り出すと同時に、新たに3名の仲間を迎え、新しいメンバーで力を合わせて前進していくための第一歩にふさわしい明るい集いとなりました。(Y)
第1回ソイソース交流会
8月23日、ベルビューのレイクヒルズ図書館にて、第1回交流会を開催いたしました。普段執筆をされているライターの方々や、読者の皆様をお招きし、軽食を囲んで和やかな歓談のひとときをお過ごしいただきました。初の試みで反省点もありましたが、ご来場いただいた皆様が互いに交流を深め、新たなつながりを築く機会となりましたら、幸いです。(R)
夏の終わりを彩るシティポップの調べ
8月24日、シアトルのワイナリー、バコヴィーノ(Bacovino) にて、日本人7人組バンド「9PM」によるJ-POPライブが開催され、80年代シティポップ、J-POPの名曲たちが夜風に溶け込むように響きわたりました。来場者たちはワインを片手に、懐かしさと新鮮さが入り混じるひとときを味わい、会場全体が一体となったその瞬間は、夏の記憶のひとつとして刻まれました。(A)
時を超えてよみがえる日本美術8月25日、シアトルの84イェスラーにて「アート・ウォーク 日本美術展」が開催されました。オーナー夫人・高橋勝子さんの祖父、明治から昭和にかけて活躍した佐久間吉太郎氏の絵画や江戸時代の和本など、祖父から孫へと受け継がれた遺品の数々が展示され、和紙の質感や墨の濃淡が際立つ空間に、侘び寂びの世界が広がりました。異国の街角に静かな日本の美が息づく夜となりました。(A)

今月の紹介者 スティーブン・ランドルフさ〜シアトライトを直撃!

取材・文:和泉拓也

今月の紹介者
スティーブン・ランドルフさん

5月号の本コラムで紹介したヘレン・ランドルフさんの夫。今年で仕事をリタイアし、シアトルでセカンドライフをどう過ごそうか思案中。

 

グルメ​​

グリーンウッドとダウンタウンにあるイタリア料理店ラッツィス・ピッツェリアは妻と何度も訪れているお気に入りのレストランです。おすすめはチキン・ミートボールのサブマリンサンド。大きなミートボールとチーズのバランスが最高です!

Razzis Pizzeria
www.razzispizza.com

 

ショッピング

フリーモントにあるケンズ・マーケットに毎週末買い物に出かけます。小さなスーパーマーケットですが、オーガニック商品や新鮮な野菜が豊富に取りそろえられているため、ほかのスーパーマーケットではなかな見つからないような商品にも出合えます。

▪️Ken’s Market
www.kensmarkets.com

 

最近ハマっていること

ここ数年は鳥の写真を撮ることにハマっています。時間があるときはスカジット郡やワニータ・ベイ・パークに足を運びます。大自然の中を飛ぶ鳥たちをお気に入りの一眼レフカメラに収めることはもちろん、撮影した写真を知人と共有するのも楽しみの一つです。

 

お出かけ

暖かいシーズンはビーチに行くことが楽しみです。家の近くにある、ゴールデン・ガーデン・パークは心穏やかになれる特別な場所。その近くにあるレイズ・カフェ(5月号の当コラムでも紹介)にもよく足を運びます。

■Golden Garden Park
www.seattle.gov/parks/allparks/golden-gardens-park

 

 

スティッチ・カフェ/Stitch Cafe〜人気のお店訪問

日本でも若者世代を中心に人気沸騰中の編み物。そんな編み物とカフェが融合したスポットが2024年10月にオープンし、話題になっています。期待が高まる中、どのような体験ができるのか実際に訪れてみました!

取材・文長本紋奈

スティッチ・カフェ/Stitch Cafe

通常のカフェ営業に加え、毛糸やその他のアート作品なども販売しているスティッチ・カフェ。ライトレールのキャピトルヒル駅から徒歩15分ほどの場所にあり、車がない人でもアクセスしやすい立地にひっそりとたたずんでいる。

販売中の毛糸(最安値$15.00〜)

日本では昨年ごろから若者世代を中心に密かなブームを巻き起こしている編み物だが、同店での毛糸販売は斬新だ。客が毛糸を持参できるうえ、購入した毛糸をそのままカフェの席に持っていき、すぐに編み始めることができる。2階はカウンターやテーブルが多く用意されており、編み物仲間が自身の毛糸や道具を持参し、共に制作できるスペースとなっている。そのため、編み物を楽しむ人々の憩いの場として親しまれつつある。また、一部スペースにはカフェ利用客なら誰でも無料で使える毛糸やかぎ針などの編み物用品がそろっているため、道具を持っていない初心者でも気軽に挑戦できるのがうれしい。用意されている毛糸の種類も豊富なので、きっと自分の好きな色が見つかるはず。

無料で使える毛糸やその他編み物用品

ドリンクやデザートメニューも充実している。今回は店員おすすめのほうじ茶ラテを注文。味は本格的でほうじ茶の深みがしっかりと感じられ、カフェとしても十分楽しめるクオリティーだった。

注文したほうじ茶ラテ($7.5)

店内で流れる落ち着いたBGMを聴きながら、おいしいドリンクを片手に編み物に没頭するというリラックスした優雅な時間を過ごすことができた。編み物は一人でしても楽しいが、同じ趣味を持つ者同士で語らいながら手を動かすのもまた格別だ。コミュニティーが広がる場としてもおすすめなので、編み物に興味がある方にはぜひ一度足を運んでみてほしい。

スティッチ・カフェ/Stitch Cafe
1408 E. Pine St., Seattle, WA 98122
営業時間:水〜金 10am〜6pm 、土日 10am〜5pm 定休:月火
https://stitch.cafe
@stitch.cafe.seattle

米国発、異世界転生の物語を紡ぐ Web 小説家 ブランドン・リーさん〜スペシャルインタビュー

近年、小説投稿サイト発の「転生系」*アニメがヒットする傾向が続いています。そんな中、アメリカ発のウェブ小説を原作に日本でテレビ放映されたアニメ『最強の王様、二度目の人生は何をする?(英題: The Beginning After the End)』(以下『TBATE』)が注目を集めています。本作は、ウェブコミック&ライトノベル投稿サイト「Tapas」で1億5,000万回以上の閲覧数を記録するほどの人気を誇り、2026年にはシーズン2の配信も予定されています。今回は原作者でシアトル在住のブランドン・リーさんに話を伺いました。
*主人公が一度死を迎え、別の世界や時代に生まれ変わるとういう設定

取材・文:加藤良子 写真:Crunchyroll

ブランドン・リー(ペンネーム:TurtleMe)■韓国生まれ、アメリカ・ロサンゼルス育ち。カリフォルニア大学バークレー校で心理学を学び、金融業界で働いたのち、趣味で始めた小説執筆をきっかけに作家へと転身。
@turtleme93
▪️アメリカ発のウェブ小説が日本でアニメ化されたことについて、原作者としての気持ちを聞かせてください。

英語のウェブ小説・ウェブコミックシリーズが日本でアニメ化されるのは、もしかとするとこの作品が初めてかもしれません。たとえそうでなかったとしても、非常に誇らしくに思っています。同時に、その先駆けとしての責任の重さも感じています。一連の出来事はまるで夢のようであり、アニメ制作の世界について多くの学びがありました。自分の物語が国境を越えより多くの人々に届き、共感してもらえたことはこの上ない喜びです。

▪️日本のアニメ制作会社との作品作りはいかがでしたか?

アニメ制作会社と仕事をするのは今回が初めてだったため、他社との比較はできませんが、一般的に脚本や演出などの最終的な判断は制作会社が下すことが多い中で、本作を手掛けたスタジオ・エーキャット(Studio A-CAT)は、脚本に対する私の意見にとても柔軟に対応してくれました。言葉の壁はありましたが、Crunchyroll(クランチロール)がプロデューサーとしてだけでなく、仲介役としても支えてくれたことに感謝しています。アニメは原作とは異なる表現媒体ですが、その違いを理解し尊重しています。

 
©TBATE Anime Production Committee
▪️日本の創作物に見られる「中世ヨーロッパ」の世界観に違和感はありますか? また、自身のファンタジー作品を創る上で意識した点を教えてください。

アニメや漫画では、ヨーロッパ風のファンタジー設定に独自の文化的要素を加えることがよくありますが、私はそれを異なる文化を融合させる手法の一つと捉えています。韓国からアメリカに移住した経験から、私は東洋と西洋の要素を自然なかたちで組み合わせるよう心がけてきました。例えば、『TBATE』では、西洋ファンタジーに登場する代表的な種族であるドワーフやエルフ、ドラゴンといった要素に加え、エルフの衣装や修練、転生といった東洋的な概念も盛り込んでいます。私が最も大切にしているのは、読者が共感しやすい世界観を創ることです。そのために、さまざまな文化的要素を生かしながらも、物語全体の整合性や説得力が損なわれないよう意識しています。

▪️ウェブ小説をアニメ化するにあたり、最も大変だったことは何ですか?

アニメ制作の性質上、各シーズンは独立した物語として完結する必要があるため、長編のストーリーを1シーズンに凝縮しなければならないという課題がありました。原作を読んでいない視聴者にも納得感のある最終話を届けつつ、次の展開に期待を持たせる構成にすることは、とても重要なポイントでした。

▪️孤独な前世を生きた最強の王グレイが、なぜ少年アーサーとして生まれ変わって素直に生きられたのか。その心理について詳しく教えてください。

2度目の人生で愛や友情を知ったグレイ(アーサー)にとって、それは癒やしの経験でもありました。圧倒的な力を持つ王でありながら、孤独の中で生きてきた彼にとってこの人生は初めて人とのつながりを得られる機会だったのです。過去への後悔を胸に、彼はこの新たな人生を「愛を学ぶ時間」として大切にしています。愛する人々やその生き方を守るため、彼はさらに強くなろうと努力する一方で、力が増すほどに、失うかもしれないものの重みも増していきます。この葛藤こそが、愛する人々のためにより良い人間でありたいと願う気持ちと、彼らを失いたくないという思いの両方を生み出し、彼を突き動かす大きな原動力となっているのです。

▪️本作は、アメリカ発・英語オリジナル・日本制作という独自の制作体制によって、アジアと西洋を結ぶ新たなアニメーションの可能性を示しました。このような制作スタイルは、今後のウェブ小説、アニメ、漫画業界にどのような影響を与えると予想されますか?

東洋と西洋、両方の物語文化の中で育った私は、物語には国や文化の違いを越えて共感できる普遍的なテーマがあると感じています。これからのウェブ小説やアニメ、漫画業界は、さらにグローバル化が進み、多様な背景を持つクリエイターたちが活躍する場が広がっていくでしょう。私の作品がその流れの一助となれているなら、これほどうれしいことはありません。

例えば、韓国文化をベースにしながらも、世界中の観客を魅了したソニー制作の『K-POPガールズ!デーモン・ハンターズ』のような作品は、こうした変化の現れといえるでしょう。今後も、国境や文化を越えたコラボレーションはますます増えていくはずです。

 
 

スナップショット〜2025年9月号

禎子像再建へ、祈りと希望を込めて
© David Yamaguchi

6月8日、シアトルのクエーカー教会で、広島の被爆者・佐々木禎子さんの像再建と寄付を目的とした式典が開かれました。アーティストのサヤ・モリヤスさんが旧像の足元を土台に着物姿で袖を羽のように広げた禎子さんを表現した新デザインを発表。被爆してもなお翌年には芽吹いた広島のイチョウの葉をかたどった照明が像を静かに包み込みます。新像の除幕式は2026年8月6日(木)に行われる予定。再建費用の寄付は下記公式サイトで受け付けています。(A)
www.sadakorenewalproject.com/the-campaign
ABCTVシアトルロケ、戦後80年の記憶をたどるテレビ朝日系列、ABCテレビの撮影クルーが、8月4日らか4日間、戦後80年企画の取材でシアトルを訪れました。原爆開発に関わった街リッチランド、灯篭流し、パナマホテルなど、戦争やその影響をアメリカの視点から撮影、終戦から80年となる8月15日の週に関西圏で放映されました。写真は戦争花嫁として渡米したツチノ・フォレスターさんとABCテレビの岩本計介アナウンサー。歴史を多角的に捉え、視聴者に新たな気づきと問いを投げかけました。(A)
グリーンレイクに灯された祈り
8月6日夜、1984年以来続く追悼イベント「フロム・ヒロシマ・トゥ・ホープ」が開催され、「平和」や「愛」と書かれた紙灯篭が湖面に漂い、原爆犠牲者への祈りと平和への願いが淡く光る幻想的な光景が広がりました。今年は、戦後80年の節目にあたる年。基調講演のスタン・シクマ氏は「沈黙はあなたを守らない。声をあげ、未来に希望を灯そう」と訴え、その言葉は多くの参加者の胸に静かに響いていました。(A)
背番号「51」、マリナーズ史上4人目の永久欠番に8月9日、かつてシアトル・マリナーズで活躍し、現在は会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏の背番号「51」が永久欠番になることを記念したセレモニーが、Tモバイル・パークで開催されました。当日はこれまでの功績を称える特別映像や、イチロー氏のスピーチに加え、来年球場前に銅像が建立されることも発表され、球場は大きく盛り上がりました。翌10日には記者会見が開かれ、永久欠番への思いを始め、シアトルへの感謝やプレーオフ進出を狙うチームへの期待を語りました。(T)

居酒屋 超バナナ/Izakaya Supa Banana〜人気のお店訪問


伝統的なエッセンスを残しつつ、現代風にアレンジされた料理。その一皿ごとに「新しい味!」という発見がある、注目の居酒屋レストランを紹介します。

取材・文白木満海

居酒屋 スーパーバナナ/Izakaya Supa Banana

昨年の11月、急速に地域開発が進むレドモンドにオープンした居酒屋「超バナナ」。オーナーシェフのウィング・ラムさんは、かつて日本の料理人から学んだ伝統的な和食の味をベースに、独自のアイデアと工夫を融合させた創作料理を提供している。店内は木を基調とした家具で統一され、清潔感のあるモダンな雰囲気が漂う。料理には全て自家製ブレンドの醤油やドレッシング、ソースが使われており、徹底したこだわりと創作性が光る。

持ち帰り用のスパークリング・フルーツ・ソーダ (白桃味)

抹茶コーヒーゼリー、みそ汁、自家製ドレッシングのサラダ

ランチメニューの「ちらしセット」に含まれるみそ汁はなめこと海苔が入った優しい甘みのある一杯。自家製ドレッシングを使ったサラダは、別オーダーのコーヒーゼリー入りのほろ苦い抹茶ドリンクとの相性も良く、食事全体を心地よく引き締めてくれた。中でも印象的だったのが、フォアグラ・スパム寿司。フォアグラの濃厚な脂とスパムの塩気が絶妙に合い、口の中でふわっととろける食感が楽しめる。また、甘エビとウニの寿司は、新鮮な甘エビと濃厚なウニの組み合わせが贅沢で、口の中が幸せで満たされる一品。パプリカパウダーを練り込んだ皮に包まれた和牛餃子は、鮮やかな赤い見た目もさることながら、ジューシーな和牛のうま味とゆずダレの爽やかな酸味が見事に調和している。デザートには、ゆず風味の「フワ・チーズケーキ」がおすすめ。さっぱりとした味わいに、表面を覆うクレームブリュレのキャラメリゼがアクセントを添え、食後の締めとして満足度が高い。

オーナーおすすめメニューの数々

ドリンクメニューも充実しており、厳選されたクラフトビールや爽快なハイボールが料理をさらに引き立てる。刺身、寿司、一品料理、そしてランチセットに至るまで、全てに店のこだわりが感じられ、次回は違うメニューを試してみたくなる。活気あふれるレドモンドの中心地で、新たな食の体験を味わってみてはいかが?

居酒屋 超バナナ/
IZAKAYA SUPA BANANA

7119 Woodlawn Ave. NE., Seattle, WA 98115
営業時間:月〜土 7am 〜 9pm 日 7am 〜 5pm
☎ 206-888-8068、hellopachaco@gmail.com
www.pacha-collective.com

浦和レッズ vs インテル・ミラノ観戦〜特別レポート

 浦和レッズ vs インテル・ミラノ観戦

取材・文:石嶋伶羽

6月21日、ルーメンフィールドで開催されたFIFAクラブワールドカップ2025・グループE、浦和レッズ対インテル・ミラノ戦を観戦しました。

クラブW杯に日本のチームが出場すると聞き、「これは行くしかない!」とチケットを即購入。筆者にとって初めてのサッカー生観戦となった。

試合が行われたルーメンフィールド

2022年のAFCチャンピオンズリーグでアジアを制覇しクラブW杯出場権を獲得した浦和レッドダイヤモンズ(浦和レッズ)は、埼玉県さいたま市を本拠地とするJリーグ所属のプロサッカークラブで、チームカラーは赤。熱狂的かつ組織的なサポーター文化でも知られている。

アメリカではサッカーは、アメリカンフットボールや野球、バスケットボールほど人気が高くない印象だったが、思った以上に観客が来ていて驚いた。小雨が降る中、浦和サポーターがゴール裏の座席に赤いシートをかけ応援席を真っ赤に染め上げる。その光景と試合前から続く声援の熱量と一体感に感動。筆者もその熱気に飲まれ、休憩以外はほとんど立って観戦していた。

© FIFA提供

浦和レッズの選手たち

インテルが攻め込む展開が続いたが、前半11分、浦和の渡邊凌磨選手が数少ないチャンスを確実に決めて先制! 周囲の歓声に合わせて思わず大声を上げながら拍手。現地の観客からも「すごいね」と応援に感心する声が聞こえ、応援が選手と一体となって試合を作り上げているのだと実感した。

後半はインテルが攻勢を強め、浦和は必死に守る展開に。78分、ラウタロ・マルティネスがボレーで同点ゴールを決め、さらにアディショナルタイムにはバレンティン・カルボーニが逆転ゴールを放ち、試合は1‑2でインテルが勝利……。悔しさの残る結果となったが、最後の笛が鳴るまで声を張り上げて歌い続ける浦和サポーターの姿はとても印象的だった。

試合後、選手たちが応援席の前に並び一礼すると、「よく頑張った!」と温かい声が飛び交った。勝敗に関係なく最後まで全力で応援を続けるその姿勢に心を打たれた。勝ち負けを超えて、「いい試合を見られてよかった」と思える非常に印象深い初観戦となった。

シアトルが生んだ新進気鋭のアーティスト UMI (うみ)さん〜スペシャルインタビュー

R&BやローファイをベースにしたUMIさんの音楽は、「ヒーリング・ネオソウル」という新しいジャンルを提唱しています。ゆったりとしたメロディーと心地よい歌声は、ほっと安らぐ温かさで聴く人の心を癒やしてくれるよう。その才能は着実に世界へと広がりを見せ、2023年にはアメリカを代表する野外フェス、コーチェラ・フェスティバルに出演。さらに、大人気アイドルグループBTSのテヒョン(Vブイ)とのコラボレーション楽曲を発表するなど、今、世界中から注目を集めている若手アーティストです。

取材・文:加藤良子 写真:本人提供

© Jospeh Collier
UMIシアトル出身のシンガーソングライター。アフリカ系アメリカ人の父と、日本人の母を持つ。4歳から作詞作曲を始め、シアトル郊外のタホマ高校に在学中にYouTubeやSoundCloudに楽曲の投稿を開始。2017年にシングル『Friendzone』でデビュー。2018年リリースの『Remember Me』はSpotifyで1億6,000万回以上再生される大ヒットとなった。LGBTQ+コミュニティーからも支持を集め、癒やしをテーマにした作品が数多く発表されている。8月22日には、ニューアルバム「People Stories」を発売予定。
@whoisumi
▪️生まれ育ったシアトルで、特に思い出に残っている場所はありますか。
 
幼児期はビーコン・ヒルのジェファーソン・パーク、その後はレドモンドのティーンセンター(旧消防署)で開かれていたオープンマイクのステージに何度も立ち歌っていました。メープルバレーに引っ越してからはレイク・ウィルダネス・パークがお気に入りでした。
 
▪️シアトルは独自の音楽文化を持つ街でもありますが、ご自身の音楽活動において、街や地域の文化が影響を与えた部分はありますか?
 
雨が多いシアトルでは自然と室内で過ごす時間が長くなり、物思いにふけったり、ノスタルジックな気持ちになることがよくありました。雨には、心の内にある感情を見つめさせてくれる力があると感じています。私の音楽は内省的でノスタルジックな響きを持ち、不完全でありながら質感豊かな自然の世界と通じるものがあります。そうした感性を育んでくれたのは、シアトルの雨と豊かな自然だと思います。
 
▪️SNSに自身の動画を地道に投稿を続ける中で、少しずつ手応えを感じるようになったきっかけがあれば教えてください。
 
人前で歌うのが怖くて、高校生の時にSoundCloudとYou Tubeに動画を投稿し始めたのですが、毎週アップロードするうちに次第に反響を得るようになりました。ビヨンセの「7/11」をアコースティックでカバー(笑)。そのユニークさが評価されフォロワーが増えたことで、自分らしくあることが誰かの心に届くのだと実感できました。
 
▪️テヒョンさんとのコラボレーションは、どのようなきっかけで実現したのでしょうか?
 
Vさんが私の曲「Midnight Blues」をインスタグラムのストーリーで共有してくれたんです。「彼にコラボを提案してみたら」と母に言われて……正直、クレイジーだと思ったけど、とりあえず聞いてみたら、なんとOKの返事が! いくつか楽曲を送った中で、彼が選んだのが「wherever u r」で、彼が兵役に入隊する直前に無事レコーディングを終えることができました。特に思い出に残っているのは、ボーカルのアイデアを日本語、英語、韓国語の3言語でやり取りをしたこと。いろんな言語を使って音楽でつながれた時間がとても楽しく、新鮮な体験でした。
 
▪️2023年のコーチェラ出演は、どのような経緯で決まったのでしょうか?
 
コーチェラは、私のビジョンボードに5年間ずっと載せていた憧れの舞台でした。ヨーロッパツアー中に出演が決まったときは、本当にうれしかったです。そこからは、肺活量や持久力のトレーニングに加え、ステージで流す映像制作のほか、ハープやアフリカのドラムなどを取り入れた新しいセットも組むなど大変でした。フェス当日、舞台裏は大混乱。ステージの設営からサウンドチェックまで、全てを15分以内でこなさなければならなかったんです。無茶だと感じつつ「この経験を乗り越えられたら、もうできないことなんてない」と思ったのを覚えています。
 
▪️「ソイソース」の読者には、ミックスルーツを持つ人がたくさんいます。かつてアイデンティティーに悩んでいたというUMIさんが今、過去の自分へメッセージを送るとしたら、どんなことを伝えたいですか。
 
無理に周囲に溶け込まなくても良いのです。誰もが少しずつ個性的なのに、そうでないふりをしているだけ。自分が何者なのか分からなくても、ロールモデルが見つからなくても大丈夫。大事なのは誰かのようになることではなく、説明のつかない自分自身になることです。全てがきっちり説明がついて理解される必要なんてないんです。
 
▪️忙しい毎日を送る人の中には、つい心のケアを後回しにしてしまう人もいるかと思います。そういった人に伝えたいことがあればお願いします。
 
心のケアを後回しにするのは、腰痛があるのにストレッチをしないようなものです。心を整えることは特別なことではありません。心は生きていく上で欠かせない土台だから。もし心を置き去りにしていたら、本来送れていたはずの暮らしを楽しめず、自分らしくいられていないかもしれません。
 
穏やかで幸せな世界にするには、一人一人が心を大切にすることから始まります。本当の幸せは、澄んだ心から生まれるのだと思います。
 
▪️UMIさんのようにアーティストを目指す人に向けて、何かメッセージがあればお願いします。
 
完璧を目指さなくても大丈夫。まずは作品を作って共有してみてください。私自身、どこへ向かっているのか分からないまま進んでいることがあります。でも、前進あるのみです。
 
あなたを見つけてくれる人はいるはずです。大切なのはまず自分自身をしっかり見つめること。真のアーティストはトレンドを追うのではなく、自分の内側から作品を生み出します。そこから、自分のスタイル、つまり「新たな波」を作り出す力を持っていきます。だから、SNSや周囲の雑音から少し離れて、自分の声に耳を澄ませてみてください。それが難しいと感じるなら、まずは瞑想を始めてみるのも一つの方法です。アーティストとして進んでいくには、そうした静けさと向き合う力が必要だと思います。

スナップショット〜2025年8月号

ワシントン州日米協会「夏のレセプション」
6月27日、ワシントン州日米協会(JASSW)の会員向けレセプションが、ポート・オブ・シアトルのアトリウム&デッキで開催されました。約70名が参加し、スターバックス初代社長ハワード・ベハー氏の講演のほか、日米の絆をテーマとしたスピーチや協会の活動紹介が行われました。後半は和食ビュッフェを囲みながら、日米のビジネスや文化をつなぐ活発な交流のひとときを楽しみました。(A)
伝統と創造が彩る、 鵜川有さんの着物ショー
©Kimono Art

7月13日、「ジャパンフェア2025」で、きものコーディネーター鵜川有さんによる恒例の着物ショーが開催されました。本誌発行人トミオ・モリグチ、娘のデニース・モリグチさん(宇和島屋CEO)、そしてその娘の三世代に加え、弊社GMブルース・ラトリッジもモデルとして出演。鵜川さんが手掛ける和遊着®︎は、着物を自由自在にアレンジする独自のスタイル。伝統に現代の感性を融合させた装いの美は観客を魅了しました。(A)
ワイルド・ホース・モニュメント
普段はエメラルド・シティと称される緑豊かな景色に囲まれて暮らしていますが、少し足を伸ばして、シアトルから南東へ車で約2時間の砂漠地帯を訪れました。コロンビア川を見下ろす高台から丘を10分ほど歩いて上ると、縦一列に駆け抜けるように並ぶ実物大の鉄の馬15頭を間近に見ることができます。さらに近くには、フレンチマン・クーリーと呼ばれる珍しい火山岩の地形もあり、併せて訪れるもおすすめです。(Y)
イエローストーン国立公園への旅シアトルから片道約12時間のドライブを経て向かった先は、主にワイオミング州に位置するイエローストーン国立公園。バイソンを始めさまざまな野生動物や、迫力ある間欠泉を見物でき、現実世界とは思えぬ光景を堪能できました。写真中央に写っているのは子バイソン。バイソンの幼少期は成獣に比べて毛色が赤茶色であるなど、新たな学びの多い貴重な体験となりました。(A)
スペースニードル下に熱気球が登場
Instagram@kourin.photo

ソイソース読者からのお便り。6月22日、スペースニードルのふもと、シアトルセンターで初となる熱気球イベントが開催。6つの熱気球が展示され、飛び立つと誤解してしまった観客が多かったようですが、今回は地上での展示のみ。それでも、間近で美しく光る熱気球の姿は圧巻で、来場者はその幻想的な光景を楽しみました。 (R)

第51回シアトル国際映画祭(SIFF)〜特別レポート

 第51回シアトル国際映画祭(SIFF)

取材・文:山本拓実

5月15日から25日にかけて、第51回シアトル国際映画祭(SIFF)が開催されました。1976年に創設されたこの映画祭は、現在では北米最大級の規模を誇るイベントです。

今年は「Escape to the Reel World(映画の世界への逃避)」をテーマに世界74カ国から集まった245本の作品が、シアトル市内および近郊の7会場で上映され、5月26日から6月1日までは一部映画がストリーミング配信された。

オープニング・イベントはパラマウント・シアターでの映画上映と、路上でパーティーが行われた。上映作品は、ゲイの若い小説家と彼の世話を受けながら共同生活を送る4人の高齢女性たちとの奇妙でユーモラスな日々を描いたアイルランド映画、『フォー・マザーズ』。上映中は会場のあちこちで笑いが起きていた。上映後にはシアター前のナインス・アベニューが封鎖され、トゥッタベラなど地元飲食店の屋台が並び、DJによる音楽に合わせて踊ったりと、にぎやかなパーティーが繰り広げられた。

会場のSIFFシネマ・アップタウン。上映回数が一いちばん多く、10日間で映画が117回上映された

日本人監督の作品も毎年上映されており、今年は黒沢 清監督の『Cloud クラウド』そら 音央ねお監督の『HAPPYEND』の2作品が上映された。筆者は『HAPPYEND』を鑑賞。舞台は監視社会化が進んだ日本の近未来都市。閉塞感に満ちた高校で自由を求めて反発する若者たちの友情と葛藤が描かれている。満席の会場からも作品への注目度の高さがうかがえた。

オープニング・ナイトの会場、パラマウント・シアター

最終日には、歴史産業博物館(MOHAI)でクロージング・パーティーが行われた。観客投票によって選ばれる「ゴールデン・スペース・ニードル・オーディエンス・アワード(観客賞)」ではニュージーランド映画『Tinā』が最優秀作品賞に輝いた。投票は上映後に配布されるバーコードを読み取って評価する仕組み。自分の一票が受賞作を決めるという参加感もSIFFならではの醍醐味だ。

オープニング・ナイトの会場にはレッドカーペットが敷かれ、写真撮影スポットも設けられていた

チケットは一般販売のほか、会員割引や回数券も用意されている。来年はぜひSIFFに参加し、お気に入りの一本を見つけてみてはどうだろうか。

Seattle International Film Festival
www.siff.net/festival

深く響く音と歌詞で世界中を虜に ロックバンド ONE OK ROCK〜スペシャルインタビュー

日本を代表するロックバンド、ONE OK ROCK(ワンオクロック)が結成20周年となる今年2月に、アルバム『DETOX』をリリース。5月13日から6月7日にかけて、自身の過去最大規模となる北米ツアーを展開し15都市を巡りました。5月14日にはシアトルのワム・シアターでライブが行われ、ボーカルのTakaさんがインタビューに応じてくれました。

取材・文:フォーリー由香 写真:本人提供

ONE OK ROCK日本発のロックバンド。恋愛や社会問題をテーマにした歌詞と力強いロックサウンド、エモーショナルなメロディーが特徴。国内外で高い人気を誇る。ボーカルのTakaを中心に、ギターのToru、ベースのRyota、ドラムのTomoyaの4人で活動し、独自の世界観と迫力のあるライブパフォーマンスで世界水準のロックバンドとして進化を続けている。
@oneokrockofficial 
▪️ライブ前にルーメンフィールドで始球式を務められました。Takaさんは得意なスポーツや普段よくするスポーツはありますか?
 
幼い頃にサッカーをしていたのでサッカーはでき、野球も少し経験がありますが、基本的に観るのは格闘技が好きです
 
▪️20年にわたり共に活動してきたメンバーには「それぞれ家族のような役割がある」と別のインタビューで語られていました。誰がどの役割に当てはまりますか?
 
お父さん、お母さん、お兄ちゃん、弟、もしくはお姉ちゃんなど、4人家族という構成で役割が状況に応じて変わっているイメージです。
 
▪️ライブ中、「観客が掲げていた下着をTakaさんが身に着ける」という場面がありました。日本ではあまり見られないようなアピールに驚きましたが、海外ファンはユニークですね?
 
初めてヨーロッパツアーをやったときに、ある国でファンが下着を投げてきて、日本ではなかなかなく、文化ももちろん違うので、それが衝撃的かつ刺激的でした。その映像を見た別のファンが、今も下着を投げてきているのかなと想像します。
 
▪️最新アルバム『DETOX』には、どの曲からも強いメッセージが伝わります。海外で活動するうえで最も大切にしていることは何ですか?
 
10年海外でやってきた中で、今だけを見れば成功しているという結果に見えるかもしれませんが、あくまでも通過点で僕たちは僕たちのペースで歩んできたことが結果につながっているのだと思うので、やり続けることが大事だと考えます。
▪️ライブ中に英語と日本語で語った励ましの言葉や世界平和への思いが心に深く響きました。普段、そうした思いを特に強く感じるのはどんなときですか?
 
ミュージシャン、表現者として作品に思いを落とし込むのは今後の時代に影響すると思っています。平和なときにこういう音楽は必要にならないので、日常が平和じゃないからこそ、こういうことを表現するアーティストが増え、必要になるのではないでしょうか。
 
▪️夢を追い続けているものの、思うように結果が出ずに葛藤している人たちにどのような言葉をかけますか?
 
結果にこだわり過ぎてしまうとがわだけを見て本質を見失いがちなので、先述した通り結果はあくまでも通過点ととらえ、あまり結果にこだわらずに、今やるべきことを一個一個やっていくというスタンスが一番大事なんだと思います。